・・・・・

先輩B「これは…違う。これも……違うなぁ」ガサゴソ

純「あ、あの…やっぱいいです。また今度で」

純(部屋すごい散らかってきたし)

先輩B「そう~?」

先輩A「お待たせ…ってなんでこんな散らかって!?」

先輩B「卒アル探してたら散らかったアル」

先輩A「もーなにしてるの。ほら、片付けるの手伝うから」

先輩B「すまないね~、かあさん」

純「……あれ? これなんですか?」

先輩B「どれ?」

純「ほら、この……箱?」

先輩B「……なんだろ」

純「なにか入ってますね」

先輩B「ん~……」ガサガサ

先輩B「開けてみよっか。気になるし」

先輩B「んっ…くっ……!」ギギッ

先輩B「ダメだ~、固くて開かない。純やってみて」

純「よっ……ぐぐっ……」ギギギッ

純「ぷはぁー! ……ムリです全然」

先輩A「どうしたの?」

先輩B「これ、開けられる?」

先輩A「なんの箱?」

先輩B「なんかの箱。開けてみてよ」

先輩A「なんかの箱ねぇ……んーっ!!」ギギギッ

先輩A「……だめ、開かない」

純「ここまでしても頑なに開かないとなると……なにか貴重なものでも入ってるとか?」

先輩B「そんなもんうちにはないと思うんだけどな~」

先輩B「ハンマーで叩き割ってみる? ハンマーあったけ?」

先輩A「なかったと思う」

純「うーん、なにが入ってるか気になるなぁ」ガサガサ

先輩B「もし開いたら中身は純にあげるよ」

純「ほんとですか? お金とかでも?」

先輩B「お金だったら山分け」

純「山分け…まぁいいや、とにかく開けてみないことには」

純「くぅぅ~~っ!!」ギギギッ

先輩B「力入れすぎて顔真っ赤になってるな」

先輩A「タコさんみたい」

純「どんだけ固いのこれー!」

先輩A「私も手伝うね、純ちゃん」

純「セ、センパイ」

先輩A「せーのでひっぱるから、いくわよ? せー……」

純「のっ!!」

先輩A「もう一回! せー……のっ!!」」

カパッ

純「開いた!!」

先輩B「お~」

先輩A「はぁ…やっと開いた。何が入ってるの?」

純「えーっと、手紙です」

先輩B「手紙?」

純「はい」

先輩A「なんて書いてある?」

純「えー……と」

『ばーか』

純「……」

先輩A「……」

先輩B「……」

純「なんか…すごい腹立つんですけど」

先輩B「これは確か…わざと開けづらいように作ったイタズラ道具の一つかな」

先輩A「イタズラっていうか、悪質ないやがらせよ」

純「苦労して開けたのに……」

先輩A「もー、こんなの捨てちゃうからね?」

先輩B「箱は残しておいて、使えそうだから」

純「うーん……」ゴロゴロ

純「あっ、この棚CDいっぱい入ってる」

純「センパイも音楽好きなんですねー。ほとんど知らないミュージシャンだ」

先輩B「まぁそれぐらいはね~」

先輩A「はい、片付けおわり。あとはお皿を洗って……」

ピピッ

先輩A「あっ、お風呂沸いたみたいだから先に入っちゃって」

先輩B「……まるで本物のお母さんダナ」

純「手際いいですよね」

先輩B「そんで私が娘だとすると……純はペットか」

純「ペット!?」

先輩B「さーてーと、お風呂行ってきていいよ」

純「あっ、わたし最後でいいです。部長お先にどうぞ」

先輩B「そう? そんじゃあ悪いけど…」

先輩B「私のタオルと下着は~?」

先輩A「そこに置いてあるでしょー?」

先輩B「は~い」

純(あれで本当に独り暮らししてるのかな……)

先輩A「洗い物洗い物…」トテトテ

純「……」

純(私もやった方がいいかな……センパイばかりに仕事させるのも悪いし)

ジャー

先輩A「ふぅ…」

純「手伝います、センパイ」

先輩A「ありがとう、純ちゃん」

ジャー

純「センパイ」

先輩A「なぁに?」

純「部長って普段はいつもあんな感じなんですか?」

先輩A「あんな感じって?」

純「なんていうか、だらーっしてるっていうか」

先輩A「うーん……そうね、あんな感じよ。そういえば一年の頃からずっとそうね」

純「ブレてないんですね部長って」

先輩A「先輩も注意してたりしたけど、よく煙に巻いたりしてたっけ」

純「あはは、私が一年のときもそういうのありましたね」

先輩A「……あっ、でも一年の頃は少し周りに壁を作ってる感じがしたかな」

先輩A「それがだんだんと緩くなっていって」

純「壁?」

先輩A「うん、一年のときは今より少しだけ尖がってたかなぁ」

純「あの部長が?」

先輩A「別にグレてたりとかそういうわけじゃないのよ? まぁ…ちょっと距離を置かれてたって気はしてたかも」

純「へー……」

先輩A「そういえばあの子、二年生に進級するときにこんなこと言ってたのよ?」

先輩A「『後輩が来るのイヤだな』って」

純「えっ…」

先輩A「不安だったのかもね。自分は本当は甘えん坊で妹気質だから、後輩の面倒なんてみれないと思って」

純「……」

先輩A「だからそんなあの子が部長をやるって聞いたときは、驚いちゃった」

先輩A「でも、たまに『やっぱり自分は部長に向いてない』とか弱音を吐いたりもするんだけどね」

純「なんか、意外……」

純「……」

純「センパイ」

先輩A「うん?」

純「部長は…今はわたし達のことどう思ってるんでしょう」

先輩A「……」

純「部長ってわたし達二年や一年に優しいですけど……本当は面倒だって思われてた…り?」

先輩A「うーん……」

純「……」

先輩A「……やっぱり不安なんじゃない?」

純「え?」

先輩A「純ちゃんが今感じてるように、あの子も…私も不安になる時もあるわ」

先輩A「自分がどう思われてるのか……あの人にとって自分はどういう存在なのか、考えると辛くなる」

純「……」

先輩A「その相手が特に可愛い可愛い後輩だったら、ね」

純(可愛い…後輩……)

ジャー……キュッ

先輩A「洗い物おわりっ。少しくつろいでよっか」

純「あっ、はい」

純(私って――…)

純「……」

先輩A「本当はね、今とっても嬉しいはずよ。純ちゃんが泊まりに来てくれて」

純「……」

純(私って…結構大切にされてる?)

・・・・・

先輩B「お風呂上がったよ~」

先輩A「はーい。じゃあ私入りに行くね」

先輩B「はいは~い」

純「……」ジーッ

先輩B「どうした~? こっち見つめて」

純「コホン……部長、肩揉みます」

先輩B「なに、急に。気持ち悪いよ」

純「いいじゃないですかー、お疲れでしょうに」

先輩B「疲れてないしなんだよその喋り方~」

純「なんでも言ってくださいね! 何でも言うこと聞きますから!」

先輩B「えっ、ちょ、ほんとにどうしたの」

純「私、ジャズ研大好きです! ジャズ研最高!!」

先輩B(こりゃいよいよ頭がおかしくなってる……)

・・・・・

先輩B「とまぁ、そんなことがあって~」

先輩A「へー」

純「ぐぅ……ぐぅ……」

先輩B「なんかテンションおかしかたっよ、純」

先輩A「センパイの家に泊まれて興奮してたんじゃない?」

先輩B「なんじゃそりゃ」

純「ぐぅ……ムニャムニャ……」

先輩B「……」

先輩A「よかったね」

先輩B「なにが?」

先輩A「なんでもなーい」

先輩B「なんだよ~、言ってよ~」


―――――――――
――――――
―――

月曜日

梓「まったく唯先輩も律先輩も遊んでばっかだし」

梓「そろそろ文化祭の練習に身を入れなきゃいけない時期なのにー!」

憂「大変だね~」

梓「私がいくら注意しても聞かないし……私のことどう思ってるんだろう」

純「大切に思ってるに決まってるじゃない!」

梓「……え?」

憂「純ちゃん?」

純「後輩のことを大切に思わない先輩なんていないのよ! ましてやそれが、たった一人の後輩だとしたら!」

純「そう、軽音部の人たちも梓のことを大切に思ってるはず!!」

梓「純…どうしたの?」

純「梓、わたし達って幸せ者だね! うんうん!!」

梓「う、憂…今日の純は一体……?」

憂「さぁ……?」

キーンコーンカーンコーン

先輩C(今日もゴールデンチョコパンを確保できたな)

先輩C(さらに朝コンビニで買ってきた期間限定メロンパンも加えたら……ふふふ、なんて充実したデザートなんだ)

先輩C「もどったぞ」

先輩B「おかえり~」

先輩A「相変わらず早いのね」

先輩C「まぁな……ん? この箱は?」

先輩B「その中にメロンパン入ってるよ~」

先輩C「? なんでそんなこと…」ガチッ

先輩C「ん?」

ギギギッ

先輩C「なんだこの箱!? 固いぞ!!」

ギギギギッ!!

先輩C「ど、どうなってるんだ!! これじゃあ私のメロンパンが!?」

先輩B「三秒以内にあけるにから揚げ一個」

先輩A「三秒以内にあけるにエビフライ一個」

先輩B「それじゃあ賭けにならないじゃん」

先輩A「あっ、そっか」

先輩C「おい! これは一体どういうことか説明しろ!!」カパッ

先輩A・B「あっ、開いた」


##14 おわり



28
最終更新:2011年07月12日 01:01