##15
――鈴木家
憂「それなに?」
純「これ? これはキャットポールって言って、猫が爪とぎとかして遊ぶやつ」
憂「ふーん」
「にゃー」
憂「あっ、あずにゃん2号だ」
純「勝手に変な名前つけないでよ」
憂「あずにゃん2号だもんねー」
「にゃー」
憂「よしよし」ナデナデ
憂「ちょっと大きくなった?」
純「うん、成長期だもんね」
「にゃあ」ゴロゴロ
純「さてと、時間だし行こっか」
憂「うん。またね、あずにゃん2号」
純「だからあずにゃん2号じゃないって」
「にゃー」
純「梓は来ないかー、残念」
憂「部活があるからしょうがないよ」
純「そっか、まぁいいや」
憂「そういえば天体観測やりたいって言ってたけど、あの話は?」
純「んー、中止」
純「ジャズ研のセンパイに聞いてみたらさ、星が見えるスポットってここからかなり遠いところにあるんだって」
純「しかも夜遅くにならないと星も見れないし、わたし達だけで行くのは無理かな」
憂「そうだったんだ」
純「せっかくそのための望遠鏡も買ったのに……」
憂「大人になったらみんなで行こうよ」
純「そうだね。ま、今日はプラネタリウムで我慢しますか」
憂「楽しみだねー」
・・・・・
――軽音部
律「はー、流石に今日は練習したー」
紬「お疲れ様、りっちゃん」
律「最近けっこう頑張ってるよなー、わたし達」
澪「文化祭に向けてそろそろエンジンをかけないといけないしな」
梓「そうですね。まだ時間もありますしもう一度セッションでも……」
唯「お茶が飲みたいのです」
梓「……」
唯「お菓子も食べたいのです」
梓「ダメですー!!」
唯「あぅ~…だってもう疲れたよー」
澪「まぁ十分ぐらい休憩するのはいいんじゃないか?」
梓「はぁ……十分だけですよ?」
唯「やったー! きゅうけー!」
唯「ん~っ! 疲れきったあとのお菓子は美味しいー!」
律「口の周り、よごれてるぞ」
唯「おっとと」
梓「それ食べたらがんばれますか?」
唯「たぶんバッチリです!」
梓「たぶんじゃ困ります!」
梓「ただでさえ先輩たちは劇の練習とかで時間が割かれてるんだから、集中してください!」
律「唯だってそれぐらいは分かってるさ、な?」
唯「はぁ~…今日はもう十分練習したなぁ」
律「おーい、フォローしてやってんだぞー、ヤルキダセー」
唯「イエッサー!」
澪「劇か……考え出すだけで緊張してくる」
律「心配するな澪!」
澪「律……」
律「一年のときにライブでパンツ丸見せしたことに比べれば全然恥ずかしくないって」
澪「それは言うな!!」
紬「でも楽しみだわ、ロミオとジュリエット。そういえば梓ちゃんのクラスでは何をやるの?」
梓「喫茶店です」
唯「いいねぇ、絶対行くよあずにゃん」
梓「はい。憂も喜びますよ」
澪「今思えば、わたし達のクラスも喫茶店とかの方がまだよかったな……」
律「そんなこと言っても無駄だぞ。うちのクラスの担任を忘れたのか」
唯「誰だっけ?」
律「えっと……あれ? 誰だ?」
さわ子「私よ!!」
唯・律「冗談冗談♪」
澪「先生いつからいたんですか……」
さわ子「失礼ね、さっきからいたわよ」
唯「それで、喫茶店とさわちゃんがどうしたの?」
律「さわちゃんが担任なんだぞ? 絶対メイド服やら何やら着せられるじゃんか」
澪「あー……」
さわ子「あのね、クラスの出し物で私がそこまでするわけないでしょ」
さわ子「みんながやりたいって言うならやるかもしれないけど」
澪「みんなやりたくありませんって……」
唯「私はやりたいなー」
紬「私も~」
澪「やりたい人いた!?」
律「それでさわちゃん、なんの用? ケーキならもうないよ」
さわ子「そうじゃなくて、もうそろそろ部活の時間も終わりなんだから早く帰りの準備をしなさい」
梓「あっ……十分過ぎてた!?」
紬「あら、本当ね」
さわ子「はいはい、もう帰る」
梓「せ、先生、もう少し待ってください! あと一回セッションするだけなんで」
さわ子「もう、仕方ないわねぇ」
梓「先輩たちも早く!」
唯「これ食べてから…」
梓「後にしてください!!」
唯「あぅ~……」
律「しょーがない、時間もないしちゃちゃっとやるか」
・・・・・
――帰り道
律「あー、今日も一日が終わった感じだー」
唯「お疲れ様ですりっちゃんさん」
律「あいお疲れ様です唯さん」
澪「この後は劇の練習しないとな」
律「ハァ~…つかれる~」
澪「ほら、わたし達はこっちだぞ律」
律「あいよ。じゃーなー」
唯「また明日ね」
紬「ばいば~い」
梓「お疲れ様でした」
唯「あっ、そういえばお母さんにお使い頼まれてたんだ」
梓「おつかい?」
唯「うん、今日は憂の帰りが遅くなるから私が代わりにおつかいするんだ」
梓「へぇー……」
梓(そういえば今日は純とプラネタリウムに行くって言ってたっけ)
梓「憂がいないくて寂しくなりますね」
唯「ならあずにゃんがうちに来てくれる?」ギュッ
梓「い、行きませんって」
紬「唯ちゃん、私もそのおつかいについてっていい?」
唯「え? いいよ」
梓「ムギ先輩、急にどうしたんですか?」
紬「一度でいいからおつかいをしてみたかったの!」
梓(それはムギ先輩にとってのおつかいになるのだろうか……)
唯「じゃあ一緒に行こっか、ムギちゃん」
紬「うん!」
唯「あずにゃんはどうする? 一緒に来る?」
梓「私は帰ります」
唯「え~、あずにゃんも一緒に行こうよー」
梓「遠慮します」
唯「ちぇ~」
梓「それじゃ、失礼します。お疲れ様でした」
唯「うん。ばいばいあずにゃん」
――中野家
梓「ただいまー」
シーン・・・
梓「……あれ?」
梓(あっ、そうだ。今日はお母さんも用事があって帰りが遅くなるんだった……)
梓「……はぁ」
梓「夕飯作ってくれたかな……」トテトテ
梓「えーっと……」
梓「……」キョロキョロ
梓「ないし……」
梓「こんなことなら唯先輩のおつかいについていけばよかったかも……」
~♪
梓「あっ……」
梓(憂からのメールだ)
梓「どれどれ…」
『プラネタリウムすっごくきれいだったよ。今度は梓ちゃんも一緒に行こうね!』
梓「へー……楽しそう」
梓「『うん、行こうね』」ポチポチ
梓「……あっ、そうだ」
梓「『二人はこれから何か用事ある?』っと。送信」
~♪
梓「きた! えっと……」
『これからご飯食べに行くよ』
梓「!!」パァァ
梓「『私も、そっちに行っていい?』」
『うん、いいよ。○○駅の前で待ってるね』
梓「やった、ありがと憂。さっそく準備しよっと」
・・・・・
純「梓なんだって?」
憂「今こっちに向かってるって」
純「なぁんだ、結局こっちに来ることになったんだ」
憂「それにしても、プラネタリウムきれいだったね」
純「うん」
純(途中で少し寝ちゃったけど……)
憂「私も天体観測したくなったなぁ」
純「いつか行こうよ。このままじゃ買った望遠鏡ももったいないし」
憂「うん!」
・・・・・・
ガタンゴトン、ガタンゴトン
梓(あと一駅……)
梓「……」
梓(そういえば夜の電車ってめったに乗らないからなんか新鮮)
ガタンゴトン、ガタンゴトン
梓「……」
梓(文化祭か……)
梓(今年も成功すればいいなぁ)
梓「……」
・・・・・
梓「着いたはいいけど…憂と純どこかな」
梓「うーん……」キョロキョロ
憂「……」
純「……」
梓「あっ、いたいた。憂、純……」
「あれ、憂ちゃんと純ちゃんじゃない?」ゾロゾロ
「ほんとだー」
梓「!?」
憂「あっ、久しぶりー! 中学の時以来だね」
純「どうしたの、こんな所で」
「みんなで遊んでたの」
「ほら、わたし達同じ高校だし」
純「そういえばそっか」
「憂と純も遊んでたの?」
憂「うん、プラネタリウム見に行ってたの」
ワイワイガヤガヤ
梓「……」コッソリ
梓(中学の同級生かな……五、六人いる)
梓(まずい……出るタイミング失った……)
ワイワイガヤガヤ
梓「……」
梓(行った方がいいのかな……でも今行くのは気まずい……)
梓(どうしよう、このままあの人たちが帰るまでやり過ごすか……)
ワイワイガヤガヤ
梓(けど中々離れない……)
梓「……」
梓(思い切って行ってみようかな……)
梓(こんな時、唯先輩だったら)
唯『やっほー、おまたせー』
梓(律先輩だったら)
律『今日は大勢いるな。よし、みんなでご飯食べに行こう!』
梓(トンちゃんだったら)
トンちゃん『カメェェェッー!』
梓(なんでそこでトンちゃん!? こんな時になに考えてんの私!!)
「そういえば今日マコちんが彼氏とデートしててぇ」
純「うそっ!?」
「そうそう、おがちゃん達もこの後来るんだよ」
憂「へー、みんな集まるんだ」
「今日はなんかプチ同窓会みたいだよね」
ワイワイガヤガヤ
梓「……」
梓(なんか…入る隙がない……)
梓(中学の同級生か……みんな何してるんだろ)
ワイワイガヤガヤ
梓「……」
梓(どうしよう……)
――――――――――――――
――――――――――
―――――
「二人は何してるの? この後ご飯食べに行くんだけど一緒に行く?」
純「ごめん、友達待ってるの。またね」
憂「そうだ。今度うちの学校で文化祭があるから来てね」
「行く行く、クラスは?」
憂「2年1組だよ」
「オッケー、絶対行くね」
「じゃあまた」ゾロゾロ
純「うん、バイバイ」
憂「じゃあねー」
純「久しぶりに会えて楽しかったね」
憂「うん、今度同窓会したいなー」
純「それにしても梓、遅いなぁ。もう着いていい頃なのに」
憂「電話してみるね」
プルルル、プルルル
憂「もしもし梓ちゃん? いまどこ?」
憂「…そうなんだ……今着いたんだって」
純「え?」
憂「あっ、いたいた。梓ちゃーん!」
梓「ごめん、二人とも。遅れちゃった」
純「遅れすぎだって、何してたの?」
梓「え? えーと……降りる駅間違えちゃって」
純「もー、おっちょこちょいなんだから」
憂「でもよかった、何事もなくて」
梓「うん…ごめんね」
純「早く食べに行こ、もうお腹ぺこぺこ」
憂「うんっ」
梓「……ほっ」
純「何食べに行こうかなー」
憂「そうだねぇ……」
梓「……」
純「梓、どうしたのぼーっとして」
梓「へ!? あ……ううん、なんでもないよ」
純「怪しいなー……何か隠してる?」
梓「なにも隠してないって」
純「ふーん、まぁいいけど」
憂「梓ちゃん、はいこれ」
梓「え?」
憂「プリザーブドフラワーっていうの。プラネタリウム見に行ったついでに買ったんだ」
純「梓にあげるね」
憂「ほら、この中に星座の模様が入ってるんだよ」
梓「これ……」
純「梓に何かおみやげでも買おうって話になって二人で選んで買ったの」
純「小さいやつだけど、かわいいでしょ?」
梓「……うん」
憂「よかった、喜んでくれて」
梓「これ、大切にするね」
純「うむ、家宝にしたまえ」
憂「ふふっ、純ちゃんったら」
梓「……」
梓(コソコソ隠れて……何やってるんだろう、私)
梓「はぁ~……」
純「どうしたの?」
梓「私って、情けないなぁって思って」
純「今度からは降りる駅を間違えたりしちゃダメだよ?」
梓「そうじゃなくて……ま、いっか」
純「?」
憂「あっ、あそこのファミレスに行こっか」
梓「うん」
純「よかったー、ようやくご飯だ」
梓「……ごめんね、二人とも」ボソッ
憂「え?」
純「ん?」
梓「ううん。…いつか三人で本物の星座、見に行きたいね」
憂「うんっ、三人で絶対に行こうね!」
純「その時は正座しながら天体観測しよっか。星座だけに!」
梓「……え?」
憂「純ちゃん?」
純「……」
梓「……」
憂「……」
純「この話は流す方向でお願いします……」
純(流れ星になりたい……流すとかけて)
##15 おわり
最終更新:2011年07月12日 01:03