* * *
琴吹家!
菫(紬お嬢様に相談……先生はしていいと言ってたけど……)
菫「はぁ……ただ今帰りました」
紬「あら菫ちゃん、おかえり~」
菫「お!お嬢様!?おかえりなさいませ!」バッ
紬「もぉ、そんなに畏まらなくて良いのに」ヤレヤレ
菫「今日はいかがなさいましたか?」
紬「菫ちゃんが悩んでるってさわ子先生から連絡が有ってね」
菫「え?まさか本当にそのような事で?」
菫(本当に先生の言った通りに……)
紬「だって大事な事じゃない」
菫「そんな!私如きにその様に気を使っていただかなくても」
紬「良いのよ。私がしたいんだもの」
菫「はぁ、左様でございますか」
紬「むぅ。もっと普通に喋ってくれていいのよ?」
菫「いえ、その様な事」
紬「何だったら昔みたいに『つむぎおねえちゃん』って呼んでくれたって良いのに」
菫「無理を言わないで下さい……私は琴吹家に仕える身ですから」
紬「そぉ?残念。あ、だったらそう『指示』すれば良いの?主人として」
菫「え?」
紬「菫ちゃんは私の事を紬お姉ちゃんと呼ぶ事!」
菫「えぇ!お嬢様それは……」
紬「お・ね・え・ちゃ・ん」
菫「紬お姉ちゃん、勘弁して下さい……」
紬「たまには良いじゃない」
菫「父に見つかったら怒られてしまいます」
紬「だったら私が叱りつけるわ」
菫「……変わりましたね、紬お嬢様も」
紬「お・ね・え・ちゃ・ん、でしょ」
菫「そうでした。……高校に入ってから、素直になりましたね」
紬「そう?」
菫「昔は私がお姉ちゃんと呼ぶと父が怒るのを見て、我慢して下さったでしょう?」
紬「そうね。でもワガママは言っても良いものなのよ。たまにはね」
菫「そうでしょうか」
紬「えぇ。軽音部の皆に教えてもらった事の一つ。『我慢ばっかりしてても苦しいだけだろ?』って」
菫「はぁ……」
紬「あ、今日は私の話じゃ無かったわね」
菫「え?」
紬「さっ!私の部屋に行きましょ」ガシッ
菫「あの、お嬢様?」
紬「うふふふふふふ」ズルズル
菫「お、お姉ちゃん?」ズルズル
紬「今日はたっぷりお話しましょうね~」ズルズル
菫「え、え~……」ズルズル
紬の私室!
紬「はい、菫ちゃんどうぞ」スッ
菫「すみません、お手数をおかけして」
紬「良いのよ~。可愛い菫ちゃんの為だもの」
菫「可愛い……ですか」
紬「えぇ。純ちゃんだってそう言ってたんでしょう?」
菫「っ!」ボン
紬「うふふふふふふ」キラキラ
菫「先生からお聞きに?」
紬「えぇ、ちょっとだけ」
菫「そうですか……」
紬「……どう?」
菫「どう?とは」
紬「うふふふふふふふ」キラキラ
菫「お姉ちゃん、何か怖いです」
紬「はぅ……やっぱり良いわねぇ、お姉ちゃんって呼ばれるの」ウットリ
菫「そうですか?私も一人っ子なので分かりかねますが」
紬「まぁ、その話は今は良いわ。それより菫ちゃんの事だもの」
菫「うぅ……逃げられない……」
紬「気付いてなかったの?」
菫「そういう意識すら、有りませんでしたね……」
紬「そうなの」
菫「先輩方も、先生も、私の事を好いてくれてるとは思ってましたが……」
紬「そんな風に想われてるなんて思いもしなかった?」
菫「はい……」
紬「嫌?」
菫「嫌……という訳では。ただ考えても無かったものですから。女同士ですし……」
紬「そう。じゃあ考えるのはこれからでも良いんじゃない?」
菫「へ?」
紬「純ちゃんの事、嫌いになった?」
菫「いえ、そんな事は……」
紬「じゃぁ、付き合える?」
菫「付き……合えるか判断出来る程、純先輩の事を知らないんです」
紬「なら今はそれでも良いじゃない。無理に今結果を出す必要は無いわよ」
菫「そうですか?」
紬「そうよ。そうそう、『お友達から始めましょう』っていう事よ」
菫「お友達から……」
紬「まずは仲良くなるのが大事じゃない?」
菫「そう……ですね」
紬「お互いもっと知りあわないとね」
菫「はい。ありがとうございました」
紬「どう致しまして」
菫「うん、明日頑張ってみます」
紬「後ね、一つ大事な事」
菫「はい?何でしょうか」
紬「『女同士』が良いんじゃなくて『貴方と』が良いのよ。そこは覚えててあげて」
菫「え?どういう事ですか?」
紬「貴方『で』良い、じゃなくて貴方『が』良いのよ」
菫「……」カァァ
紬「さて……新しい菫ちゃんの誕生ね!ハッピーバースディ!!」
菫「」ポカーン
紬「おめでとう!!」
菫「え~っと……何でしょうそれは」
紬「最近りっちゃん達がよくやってるから、私も一度言ってみたかったの~」
菫「はぁ……そうですか」
紬「……違った?」テヘ
菫「はい、多分」アハハ
* * *
次の日の部室!
純「何だよ梓、『フォローするから!』とか言っといて先行っとけって……」トントントン
純「憂も居ないし、スミーレと二人きりになっちゃうじゃん……」ソー
純「やっぱり、先に来てる。でも来てくれてて良かった……」ホッ
純「さ~て、どうしたもんかなぁ」ウロチョロ
純「う~、ん~、あ~、も~」ウロチョロ
純「うん!勢いに任せよう!」ガチャ
バタン!
純「おぉスミーレ!君の笑顔は太陽よりも」ビシッ
菫「昨日は申し訳有りませんでした!」バッ
純「明るい貴方が最後まで言わせてくれない……」
菫「あ、あのですね純先輩?」
純「はい何でしょう」
菫「昨日のお話なんですけど……ね?」モジモジ
純「あぁ、良いの良いの。昨日のは全部冗談だからさ。いきなり帰っちゃってゴメンネ?」
菫「え?」
純(何言ってんの私!)
純「勝手に嫁だ~とか変な事言っちゃって、気悪くしちゃったかな?」
菫「え、いや、そんな事は」
純「バカみたいだよね、あんな冗談で盛り上がっちゃってさ」
菫「あの、純先輩?」
純「スミーレもさ、面倒だったら直ぐに止めてくれて良いよ?」
菫「待って下さい!」
純「え?」
菫「本当に……冗談だったんですか?全部」
純「……うん」
菫「本当ですか?」
純「……」
菫「昨日先輩が帰った後に、先生が来たんです」
純「そう、なんだ」
菫「誰も居ないの?って聞かれて昨日の事説明したんです」
菫「何で純先輩が帰ってしまったのか、分からなくて、嫌われたのかと思って、相談したんです」
純「へぇ~。で、なんて?」
菫「『純ちゃんが今日あなたに言った事、全部冗談じゃないとしたら嬉しい?』と言われました」
純「ブフゥッ!」
純(直球じゃないの!何言っちゃってんのあの人!)
菫「先生は、私の話を聞いてそういう結論に至ったそうです」
純「そう、なんだ……」
菫「でも今、先輩は冗談だって言ってるじゃないですか」
純「う……うん」
菫「どちらが正しいんですか?」
純「それは勿論……」
菫「勿論?」
純「……わ……私。じゃなくて、さわ子先生が正しいよ」
菫「本当ですか?」
純「そうだね、嘘吐いてゴメン」
菫「いえ、こちらこそ気がつかずスミマセンでした」
純「いやいや、スミーレは悪くないよ。こっちが勝手に好きになっただけなんだもん」
菫「はぇ!?」ボン
純「あ!……言っちゃった」
純(こんなタイミングで言ってどうすんの私!)
菫「えぇ~っと……」カァァ
純(もう駄目だ~!)
菫「あ、ありがとうございます……」テレテレ
純「その後は『ゴメンナサイ』ですよね?」ショボン
菫「え?何でですか?」
純「へ?だってスミーレは私の事好きじゃないんでしょ?」
菫「そんな事無いですよ!」
純「うぇ!?」カァァ
菫「あ!いえ!そういう事じゃ無くてですね!」アセアセ
純「あ、やっぱしそうだよね……」シュン
菫「あああの違います!純先輩の事は好きですよ!」アタフタ
純「マジで!?」キラキラ
菫「え!?いやいやそういう事じゃ無くて!」アウアウ
純「じゃぁやっぱり……」シュン
菫「ですから、あの、お友達から始めさせていただく、というのはいかがでしょうか。……あれ?先輩?」
純「……私達ってまだ友達ですら無かったんだ……そっか~……」ズーン
菫「いえ!これは言葉のあやでして!」アタフタ
純「良いよ良いよ、慰めてくれなくても……」ズズーン
菫「あぁ!純先輩がどんどん沈んでしまっている!」
純「奥さ~ん、知ってるでしょ~、
鈴木純で~ございます」ズーン
菫「奥さんって誰ですか!?と、とにかくですね!」
純「うぃ?」
菫「その、そういう関係になれる程、純先輩の事知らない……んですよ」
純「そぉ?」
菫「だって……二人で遊んだ事とかも無いですし」
純「そういえばそうだね」
菫「でも、純先輩の事をもっと知りたいと思うんです」
純「ほんと!?」
菫「はい。私の事ももっと知ってほしいと思ってます」
純「うんうん!もっと知りたい!」キラキラ
菫「先程のはそういう意味でですね……え~っと」
純「……そっか、そうだよね。スミーレさ」
菫「は、はい!」
純「ドーナツ好き?」
菫「はい、まぁ」
純「じゃあ今から食べに行こう」
菫「え?」
純「一緒にドーナツ食べながらさ、お喋りしようよ」
菫「はぁ」
純「ほら、行こ行こ!」ギュッ
菫(手!?)「え、でも部活は?」
純「良いの、たまには。サボっちゃおうよ」
菫「良いんですか?」
純「真面目だなぁ。じゃあ梓には連絡しとくよ」パカッカチカチ
純「『可愛いスミーレは私が戴いた!今日は帰ります。スミーレがケーキ用意してるから食べてね』……良し」
菫「戴いたって……」カァァ
純「さぁ行くよスミーレ!まずは私の好きなドーナツを知ってもらうんだから!」
菫「あ、はい!」
ガチャ バタン
タッタッタ……
……ガチャ
梓「……行ったね」
憂「そうだね」
梓「マナーモードにしておいて良かった」
さわ子「ちょっと、どうするのよ」
梓「良かったじゃないですか」
さわ子「違うわよ。今日のお茶はどうするのよって」ブーブー
梓「生徒の仲を良くするのも大事でしょ……」ヤレヤレ
憂「まぁまぁ。私が淹れますから」
さわ子「わ~い!憂ちゃん大好き!」キャルン
梓「先生、可愛くないですよ」
さわ子「なっ!貴方達ってホント私に失礼よね!」プンプン
梓「いえ、それ程でも」
さわ子「なんで謙遜するのよ」
憂「はいどうぞ~。スミーレちゃんのケーキも一緒ですよ~」カチャカチャ
さわ子「ありがと。……うん、憂ちゃんのお茶もグッドよ!」ビシッ
憂「ありがとうございます。はい、梓ちゃんも」スッ
梓「うん、ありがと。……はぁ」
憂「ん?どうしたの?」
梓「いや、今日も練習できないな~って思って」
憂「あぁ、そうだねぇ」
さわ子「二人の仲の方が大事なんでしょ?良かったじゃないの」モグモグ
梓「まぁそうですけどぉ……」フーフー
さわ子「まぁ、お友達からでも十分じゃない。仲良き事は美しきかなってね」
梓「はぁ」
さわ子「……じゃあ折角だし私達も仲良くなりましょうか?」ニヤリ
梓「はい?」
さわ子「ほら、可愛い梓ちゃんともっと仲良くなりたいじゃない」
梓「ななな何ですかその流れは!?」
さわ子「やっぱりそろそろね、ネコミミ推しだけじゃ苦しいと思うの」
梓「そっち!?っていうかネコミミも推してないです!」
さわ子「憂ちゃん。アレ出して」
憂「は~い」ガラガラ
梓「アレ?って何よソレー!?」
さわ子「いや~、こないだ憂ちゃんと衣装の話で盛り上がっちゃって」
憂「次のライブの衣装とか、どんなのが良いかなって」ガラガラ
さわ子「取り敢えずゴスロリからパンクから、10着ほど作ってみました!」イエイ
憂「ちなみにこちらは全部梓ちゃんサイズです!」イエイ
梓「10着!?っていうか何で憂まで乗り気なの?」
憂「私も作るの手伝ったから思い入れが出来ちゃって」
さわ子「憂ちゃんのお陰で捗る捗る。ホントありがとうね」
憂「いえ、私も楽しかったですし」
さわ子「ホント良い子だわ。さ、梓ちゃん逃げちゃ駄目よ?」ガシッ
梓「いやー!助けてー!」ジタバタ
さわ子「何よ、全部新作なのよ?唯ちゃん達は見た事もない衣装よ?何が不服なのよ」
梓「そんなの着せられる事自体が不服ですよ!」
憂「そんな……梓ちゃんの為に一生懸命作ったのになぁ……」ヨヨヨ
さわ子「私達も、軽音部の為に!頑張ったんだけどなぁ……」ウルウル
梓「うぐっ……」
憂「な~」チラリ
さわ子「な~」チラリ
梓「う~ん、え~?」
憂「梓ちゃん着てみるだけでも、駄目かな?」ウルウル
梓「う……憂がそこまで言うなら」
憂「本当!?」
さわ子「よし来た!先ずはコレね!」
憂「はい先生!梓ちゃんどうぞ」
梓「……う~、どう?」
さわ子「いやん可愛い!憂ちゃん、カメラと照明!」
憂「バッチリです!」
梓「カメラって何!?」
さわ子「さ!ガンガン行くわよ~!梓ちゃん先ずはその場でクルっと一回転してみようか!」
梓「やっぱりい~や~!」
* * *
?「部室に来てみたら部長がファッションショーしてた。どうも奥田です」
?「自分でも何言ってるか分からないけど、取り敢えず帰ろうかな」
?「名前が発表前だからって?だし。扱えないからって休みって事にされちゃたまったもんじゃないよ」
?「きっと来月には奥田×梓とか、奥田×菫とか出ちゃうくらいバキっとやるから」
?「乞うご期待!」ビシッ
梓「見てないで助けてー!」ニ゛ャー
さわ子「あっ、ちょうど良かった!はいコレ!レフ板持って!」
?「はい、了解です」
梓「手伝うなー!」
END
これにて本編終了でございます。
スミーレの発音はアモーレとかアンドレとかと同じ発音じゃないかな?
と考えて、そのまま話を書いたら何かこんな結果に。
多分純×菫は高校生編で一番無さそうな組み合わせな気もしますが……。
菫に関してはもうオリジナルキャラ状態です。これ最初に書くべきでしたね。
まぁ何が言いたいかっていうと
純は可愛いし、菫も可愛いし、奥田ちゃんも将来性に期待!って事です。
それでは、ここまで目を通してくださった方がおられるのならば、お付き合いありがとうございました。
純×菫なかよし編とか、より一層需要なさそうですね。
最終更新:2011年07月18日 02:24