菫(何だかんだでドーナツショップに来ました)
純「でさ、やっぱり種類が豊富なんだから色々食べたいじゃん」サク サク
菫(初めて来た私に『オススメを教えてあげる』と、純先輩が六種類のドーナツを持ってきて下さいました)
純「でも晩ご飯前の微妙な時間だし、そんなに一杯食べられないよね?」サク サク
菫(各々三つずつドーナツを食べるのかと思いきや、純先輩はナイフとフォークを借りてきてどんどんと二等分しています)
純「だけどこうやって半分こしてトレードしたらさ、同じ値段と量で二倍の味が楽しめる訳」サク サク
菫「まぁ、そうですね」
純「梓が怒るんだ~、『そんな食べ方行儀悪いよ!』って。ナイスアイデアだと思わない?」サク サク
菫「あはは……確かに行儀は良くないかも」
純「え~、スミーレも梓の肩持つの?」ブー
菫「いえ、純先輩のアイデアはナイスだと思いますよ」
純「でしょでしょ!ふふ~ん、アリガト」サク サク
菫「ど、どういたしまして?」
純「よし!出来た~。スミーレはこのお店初めてなんだよね?」
菫「はい。作ったり、お土産で戴いたりはあるんですが、こういうお店で~というのは初めてです」
純「お土産にドーナツ……何だか高級そうな感じが」
菫「いずれにしてもこのお店に有るのよりはシンプルなものばかりですね」
純「まぁココはバラエティが売りだからね」
菫「どれも美味しそうです……」
純「じゃっ、食べようか」カチャカチャ
菫「はい。あれ?先輩フォーク使うんですか?」
純「折角だしね。あ、スミーレの分貰うの忘れてたな」プスッ
菫「いえ、別にそのまま取りますから」
純「じゃあはい、アーン」スッ
菫「へ?」
純「コレ今一番のオススメなの。美味しいよ~」
菫「いや、そういう事じゃなくてですね」
純「まぁ食べてみてよ」
菫「あの、自分で取りますから……」カァァ
純「ん?……あぁそっかゴメンゴメン。なんかノリでやっちゃってたや」パク
菫「あはは……」パク
純「どう?美味しくない?」モグモグ
菫「美味しいです。チョコのトッピングと中のクリームがまた」モグモグ
純「でしょ?で、こっちのは面白いよ」モグモグ
菫「面白い?」パク
純「多分その食感のドーナツは知らないんじゃないかな?」ヒョイパク
菫「……そうですね。モチモチしてます」モグモグ
純「これは最近出た新商品で、焼いてるんだって」
菫「コレもまた、何だか違った食感ですね。メープルシロップが甘い」モグモグ
純「で、コレがさっきのモチモチの別バージョン。個人的にはこっちの方が好き」モグモグ
菫「ん……コーティングしてるものが違うんですね」モグモグ
純「黒糖なんだって」ヒョイパク
菫「へぇ~。……これは?」ヒョイ
純「それはね、一番普通のドーナツ」
菫「なるほど。……あ、でもコレも美味しい」モグモグ
純「でしょ?」モグモグ
菫「シンプルなのも悪くないですね……」ゴックン
純「後は、コレだね。チョコドーナツ」プスリ
菫「周りの黄色いのは何でしょう?」
純「何か良く分かんないんだけど美味しいよ?はい、アーン」スッ
菫「ちょっ、またですか?」
純「あ、ゴメン。またやっちゃった」アチャー
菫「もう……じゃあいただきます」アーン パク
純「え?」キョトン
菫「うん、確かに美味しいです。どれも甲乙付け難いですね」モグモグ
純「ちょっとスミーレスミーレ」プスリ
菫「はい?」
純「……もう一口」スッ
菫「アーン」パク
純「く~!可愛い~!この子ったら可愛い~!」
菫「ちょっと!そんな大声出さないで下さい!」アセアセ
純「あぁゴメン。いや、でも、だって、ねぇ?」
菫「先輩のノリに応えるのも良いかなと思っただけですよ」
純「いや~、何だろう。ときめいて死にそう」
菫「大袈裟ですって、もう」
純「……私も食べさせてほしいな」チラ
菫「はい!?」カァァ
純「良いじゃん良いじゃん!ノリでしょノリ!」
菫「いや、でもそれは流石に恥ずかしいですって」モジモジ
純「え~!?お願い!この通り!」パシン
菫「う~……じゃあ一回だけですよ?」
純「わ~い!じゃあはいっ!」
菫「え~っと、どれが良いですか?」
純「スミーレが選んだのが良い!」アーン
菫「そうですか……じゃあこれで」プスリ
純「あ~ん」
菫「どうぞ……」スッ
純「はむっ!」パク
菫(……何だか可愛い)カァァ
純「お~ぉいし~ぃい!」モグモグ
菫「ちょっと純先輩!お店の中ですから!」アセアセ
純「店員さん!このドーナツ最高です!」
<どうもありがとうございま~す
純「いや~、スミーレが食べさせてくれたとなるといつもの二倍は美味しいね」モグモグ
菫「私はさっきの二倍は恥ずかしいです……」モジモジ
純「あ~ん」
菫「へ?あ~……じゃあどうぞ」スッ
純「あむっ!」パク
菫「続けてどうぞ」プス スッ
純「んむっ!」パク
菫(どうしよう……楽しくなってきちゃった)
純「モフモフ。何だかんだでスミーレも乗り気じゃないの」モグモグ
菫「純先輩が可愛らしくてつい……」
純「んう!」ビクン
菫「そんなに顔真っ赤にしないで下さいよ、私も恥ずかしいんですから……って、純先輩?」
純「……!!」ドンドン
菫「もしかして、喉に詰まりました?」
純「!!……!」コクコク
菫「大丈夫ですか!?水飲んで!」
純「……!……!」ゴクゴク
菫「え~っと、後は」ハラハラ
純「ん……!……ぷはぁ!」ハー
菫「あ、良かったぁ~」フゥ
純「ホントにときめいて死ぬ所だった……」ハァハァ
菫「すみません、私の所為で……」
純「いやいや、ちょっといきなり過ぎてビックリしただけだから。大丈夫大丈夫」
菫「いえ、でも」
純「そんなに私可愛かった~?」テレテレ
菫「え、はい。何ていうか小動物の様な」
純「小動物?」キョトン
菫「そうですね、え~っと、う~ん……はいどうぞ」スッ
純「あむっ」パク
菫「はぅ……」
純「もぐもぐ……可愛い?」
菫「何といいますか、頭をなでたくなる可愛さですね。どうぞ」スッ
純「ん~?どうなのそれって。まぁ良いか。あんむっ!」パク
菫「あはは……」パク
純「ふみーへっへは」モグモグ
菫「はい?」
純「ゴクン……スミーレってさ。中学の時とか遊んでなかったの?」
菫「え?どうしてですか?」
純「いや、私は中学の時から友達とファーストフードとか当たり前だったからさ」
菫「まぁ……そうですね。中学の頃は学校とお家の往復でした」
純「やっぱりその、メイドとしての修行的な?」
菫「はい。礼儀作法の勉強や使用人としての修行に手伝いにと、生活の主がそれでしたね」
純「学校と仕事で埋まる中学生活とか……私じゃ耐えられない」
菫「父が執事をしておりますし、それに居候の身として私自身が望んでしている事でしたから」
純「そうなんだ……凄いね。尊敬しちゃう」
菫「そんな事ないですよ……」テレテレ
純「え?じゃあさ、今は大丈夫なの?そんな事何も知らずに軽音部に入れちゃったけど」
菫「それはですね」
純「まさか、帰ったら怒られたりしてる?」アセアセ
菫「いえ、大丈夫ですよ。紬お嬢様のお計らいでして」
純「ん?どうゆう事」
菫「え~っとですね……」
* * *
紬「菫ちゃん、桜高合格おめでとう」
菫「ありがとうございますお嬢様」フカブカ
紬「でね、早速なんだけど合格のお祝いがあるの~」
菫「そんな!お祝いの言葉だけでも十分ですよ」アセアセ
紬「いいの。私がしたい事なんだから」
菫「そうですか……。では謹んでお受けいたします」
紬「……私ね、この三年間の高校生活が凄く凄く楽しかったの」
菫「はい、良く聞かせていただきました」
紬「軽音部に入って、色んな新しい事を知ったわ。アルバイトもしたし、バンドのライブもしたし、何より一生大事にしたい友達が出来た」
菫「素晴らしい事ですね」
紬「えぇ、素晴らしい事よ。だからね?菫ちゃんにもそういう高校生活を送ってほしいの」
菫「と、言いますと?」
紬「菫ちゃんはこの三年、使用人としての成長が素晴らしかったわ。もう何処に出しても恥ずかしくないくらい」
菫「恐縮です」
紬「頑張ってたものね、色々お手伝いしてくれて。でもね、中学での生活はそればっかりだったでしょう?」
菫「それは……私が望んでしてる事ですから」
紬「……良い子ね、菫ちゃん」ナデナデ
菫「あ、ありがとうございます」テレテレ
紬「でも、それじゃ駄目」
菫「はい?」
紬「貴方には高校生活を過ごす間、只の居候として暮らしてもらいます」
菫「え、どういう事ですか?」
紬「家の仕事は一切しなくて良い様にしておくわ。まぁ、たまにお手伝いのお願いはするかもしれないけど」
菫「えぇ!?」
紬「もう両親や斎藤には伝えてるから大丈夫。貴方は普通の高校生として暮らしなさい」
菫「え、あの、突然そう言われましても……」
紬「大丈夫。高校生活は掛け替えのない大切な思い出になるから。きっと菫ちゃんにもウチの仕事より大事なものが見つかるわよ」
菫「そうでしょうか……」
紬「……不安かしら?」
菫「はい……」
紬「ん~、そうねぇ。じゃあ早速、高校に行くついでに一つお願いしても良い?」パン
菫「はい!何なりと」
紬「実はね、軽音部の部室で使っていたティーセットを置いたままにしちゃってるの」
菫「はい」
紬「それを片づけてもらっても良いかしら?」
菫「軽音部のティーセットを片づける……」
紬「新学期が始まる前に速やかに片づけてね」
菫「はい!」
* * *
菫「……と、いう訳でして」
純「へぇ~」
菫「高校の三年間は、普通の高校生として過ごす様に言われたんです」
純「なるほど」
菫「ですので、部活や交遊に関しては割かし自由にさせていただいてまして」
純「そっか~。ムギ先輩に感謝だね」
菫「えぇ、本当に紬お嬢様には良くして戴きまして」
純「私も感謝しないと」
菫「へ?」
純「だってムギ先輩がそうやってくれたから、こうやってスミーレと出会えて仲良くなれたんじゃん?」
菫「そ、そうですね……」カァァ
純「ムギ先輩もぽわぽわしてる様で、色々考えてくれてるんだよね」モグモグ
菫「どういった意味でですか?」
純「スミーレを軽音部に向かわせれば確保されるって思ってたんでしょ?多分」
菫「そうですね。『やっぱり確保されちゃった?良かったわね』と言われました」
純「その上、ティーセットは使って構わないって」
菫「はい、そうです」
純「ホント、スミーレにティーセットに、感謝してもしきれないよ」
菫「私もです。高校生活が毎日楽しいです」
純「私と居れて?」ニヤニヤ
菫「それは……それも有りますけど」カァァ
純「ホントに?嬉しいなぁ。はい、ア~ン」
菫「んむ」モグモグ
純「でもスミーレにも勿論感謝してるよ?」
菫「え?」モグモグ
純「毎日お茶淹れてくれてさ。何だかんだで日課になっちゃってるし」
菫「それは私がしたくてしてる事ですから。私も楽しいですし」
純「そういってくれると嬉しいな。んあ」アーン
菫「はい、どうぞ」スッ
純「はむ。にしてもあれだね」モグモグ
菫「何でしょう?」
純「スミーレってホント良く流されるよね。はい、ア~ン」
菫「んむ。そうですか?」モグモグ
純「だって、もう平気で食べてるじゃん」ニヤニヤ
菫「……はっ!」カァァ
純「折角だし、写メ撮っちゃおうか?」パカッ
菫「やっ止めてください!」アセアセ
純「え~、良いじゃん面白いし」
菫「恥ずかしいだけじゃないですか」アタフタ
純「そんな事無いって~。ん?憂からメール?……ブッ」
菫「憂先輩からですか?」
純「なんかスゴイのが来た」スッ
菫「コレ……梓先輩ですか?」マジマジ
純「『梓部長のファッションショー開催中です』だってさ」プププ
菫「はぁ~、可愛いですねこの服」
純「さわ子先生の手作りじゃないかな?」
菫「スゴイですねぇ」
純「でも、ココに来てて良かったね」
菫「そうですか?あちらも楽しそうですけど」
純「先生の事だからスミーレ用の衣装も作ってるよ多分、いや絶対」
菫「……ファッションショーするのは嫌ですね」
純「でしょ?まぁ私にはあんまりインスピレーションが刺激されないらしいけど」
菫「そうなんですか?純先輩ならハロウィンの魔女みたいな恰好とか似合いそうですけど。三角帽子の」
純「そぉ?マント羽織って?」
菫「はい。可愛いですよきっと」
純「んむぅ……。でもそうゆうの先生には言わないでね。衣装作られても困るし」テレテレ
菫「あはは……確かに」
純「あ、もう一通来た。……今度はゴスロリ」
菫「あれ?奥田さんも一緒だ」
純「あの子こういうの好きなんだね。ノリノリじゃん」
菫「そうですね、知りませんでした」
純「憂も先生の手伝いしてるって言ってたし、梓は逃げ場無いね」ケラケラ
菫「ご愁傷様です」
純「よ~し、じゃあ私達もへんしんしよう!」
菫「返信ですか?」
純「トランスフォームしよう!」
菫「いや、出来ませんよ」
純「簡単簡単。ドーナツ頬張って~、ハムスターみたい!とか」
菫「え~っと……」
純「はい頬張って~」ヒョイヒョイ
菫「はぁ……ほうでふは?」モグモグ
純「やば……持って帰りたい」ウズウズ
菫「はやふひまひょうよ」モフモフ
純「そうだね。じゃあ先ず一枚」カシャ
菫「え!?なんでわたひだへ?」
純「ん?あぁ、これは私用だから」モグモグ
菫「いやいや」モフモフ
純「よ~ひ、じゃあよっへよっへ……じゃあほるよ~」モフモフ
菫「はい」モフモフ
純「はい、ひーふ!」カシャ
最終更新:2011年07月18日 02:26