――――
梓「唯先輩、ちょっとは待ってくださいよー」
唯「だって、あずにゃんに会えると嬉しいんだもん」ダキッ
梓「もうっ、抱きつかないでくださいよ」
唯「わたしだって、どのあずにゃんにも抱きつくわけじゃないんだよー?」
梓「やれやれ///」
唯「あずにゃん今日は向こうのほうに行こうよ」
梓「いや向こうは…」
唯「なんでさ?はやく行こ行こー」ダッ
梓「…」
唯「わあ……あずにゃんここは?」
梓「死体処理場らしいですよ…わたしたちの」
唯「こんなところがあるんだね……あずにゃん何探してるの?」
梓「いや、前はここに律先輩がいたんですよ」
唯「あっ、あそこの小屋じゃないかな?行ってみようよ」
梓「そうですね」
トントン
梓「誰かいませんかー」
律「はーい…って梓かよ」ガチャ
梓「覚えててくれたんですか」
律「まあな、壊れてるからちゃんとわかるんだよ。それにこんなとこに来たのお前くらいしかいないからな」
唯「わたしもいるよー」ヒョイ
律「へえ、唯か」
唯「」ジー
律「どうしたんだ?」
梓「中に入れてくれオーラですよ」
律「やだよ。帰れ帰れっ」
唯「りっちゃんとわたしの絆はそんなものだったの?」
律「いいか唯…唯とわたしは会ったこと……」
唯「知ってる!!でも、今からりっちゃんと仲良くなりたいんだよー」
律「ふうー勝手にしろよ」
唯「やったあ!」
律「なあ、お前あいつ改造でもしたか?」
梓「さあ」
律「ムギーなんか唯と梓が来たからー」
梓「ムギ先輩なんてどこにいるんですか?」
律「そこ」
唯「パソコンみたいなのが置いてあるだけだよー?」
律「だから、それがムギなんだよ」
梓「えっ、それってどういう…」
紬「こんにちは♪唯ちゃん梓ちゃん」
梓「わわっ」
唯「すごいっ、しゃべれるんだー」
紬「ふふっ、声も聞こえるわよ」
律「目はみえないけどな」
唯「どうなってるの?」
律「ムギの人工知能をパソコンに移してあるんだ」
梓「…そんな」
紬「梓ちゃん、これでも毎日が楽しいのよ」
梓「辛かったりはしないんですか?」
紬「ううん、ぜんぜんよ。だってりっちゃんが毎日わたしのためにお話してくれるんだもの」
紬「完全に壊れてたわたしをここまで直してくれたのもりっちゃんなのよ」
梓「へぇーけっこういい人じゃないですか」
律「う、うるせーし。わたし外にいるからな」バタン
唯「照れてる」
梓「照れてますね」
紬「うふふ、唯ちゃんと梓ちゃん息ぴったりね」
梓「えっ///」
唯「そうかな///」
紬「照れてるわよ~」
――――
唯「りっちゃんここにいたんだー」
梓「見直しましたよ、律先輩」
律「そうだろ」
唯「また会いにきていい?りっちゃん」
律「りっちゃんになら道をぷらぷらしてれば会えるんじゃないか?」
梓「わかってるくせにです」
唯「りっちゃんにはしるしがついてるからすぐにわかるね」
律「しるし?」
唯「そうだよー。顔を見ればすぐりっちゃんだとわかるよ」
律「確かにそう考えればこの顔も悪くないかもなー」
唯「またねーりっちゃん!」
――――
唯「憂、ただいまー」
憂「おかえりーお姉ちゃん」
唯「いい匂いがしますなー」クンクン
憂「さすがだね?今日はお姉ちゃんの大好きなハンバーグだよー」
唯「やったあ!!」
憂「えへへ」ニコニコ
唯「早速いただきまーす」モグモグ
憂「どうかな?」
唯「言うまでもないね。憂の作ったものは世界一だよ!」
憂「ありがとー。今日も梓ちゃんと遊んでたの?」
唯「そうだよー」
憂「だって、お姉ちゃんは梓ちゃんのことが好きなんだよね?」ニコニコ
唯「うん!でも、憂のことも大好きだよー」ダキッ
憂「…」
唯「そうだ、今日りっちゃんとムギちゃんと仲良く…憂?」
憂「…嘘つき」
憂「お姉ちゃん、嘘つかないでよ!!」
唯「う、ういぃ…」オロオロ
憂「なんでわざわざ嘘つくの?お姉ちゃんが梓ちゃんのこと好きなのは誰でもわかるよ?梓ちゃんが家に来たときだって……」
唯「…うぅ」
憂「……ロボットだからだよね。主人には逆らえないよね………だからロボットなんて嫌いなんだよ!!…わたしのこと好きなんて言わなくていいから」ポロポロ
唯「……ごめんね、憂」ギュー
憂(ロボットなのになんであったかいんだろ)
憂「……わたし…寂しくて、かまって欲しくてこんなことして……ホントにダメな妹だよね」
唯「そんなことないよ!憂は優しくて、料理も上手くて、いろんなこと知ってて…最高の妹だよ」
憂「でもわたし…お姉ちゃんに友達ができたって聞いたとき嫉妬して、それで……」
唯「それはわたしが…」
憂「ううん、こういう時背中を押してあげるのが本当の妹だよ……どうしたらわたしたち本当の姉妹になれたのかな?」
唯「憂…」
憂「ごめんね、こんなに手を焼かせる妹で」
唯「大丈夫だよ!憂、わたしはロボットだからねっ。手が焼けたくらいなんでもないよ?」
憂「…比喩だよ?」
唯「知ってる」ニコッ
憂「…ふふっ、おかしいよ」
唯「えへへーでしょでしょー」
憂「……あのさ…今日は一緒のベッドで寝てもいいかな?」
唯「もちろんだよ!」
――――
男「梓、少しこっちにきてくれないか?」
梓「何ですか」トコトコ
男「悪いな」ポチッ
梓「」プシュー
男「このコードをコンピューターにつないでっと」
男「……あとは」カタカタ
男「……これか」ポチッ
唯『あずにゃーん』ダキッ
男「ちっ…イチャイチャしやがって」
唯『この手のひらがあずにゃんとわたしのしるしだよー』
男「しるし?…たしかに唯と出会ってからの梓はぎこちなかったが」
男「あれは…絵が消えないように利き手を使っていなかった………俺はそんなこと気にもしなかった」
男「……」
男「くそっ、たかがロボットじゃないかなにを躊躇してるんだ?」
男「そう…たかがロボットだ」
ポチッ『消去』
――――
憂「いよいよだね、お姉ちゃん?」
唯「えっ、う、うん」
憂「緊張しちゃダメだよーリラックスリラックス」
唯「うん、リラックスリラックス♪」
憂「じゃあ、この信号渡ったらお別れだねー」
唯「…」
憂「そうだよね?絶対上手くいくよ!」
唯「憂……今までありがとう!憂は最高の…」
憂「お姉ちゃん!……信号青になったよ?」
憂「……?」
唯「背中…」
憂「えっ?」
唯「背中押してよ……そしたら、本当の姉妹になれるから!」
憂「…それは比喩だよ?」
唯「知ってる」
憂「……背中押すってのはいいかも、涙を見せなくてすむから」
唯「…うん」
憂「いってらっしゃい」ポンッ
唯「いってきまーす!!」
――――
梓「気がついたらここに……何か忘れてる気がする…そうだ、今日は唯先輩が大切な話があるって」
梓「はあ、もう間に合わないだろうなー。何があったんだろ……あっ唯先輩が手に描いてくれたマーク見えなくなってる」
梓「たしかこんなんだっけ」カキカキ
梓「地面に1人で絵描いてると本格的にみじめだな………」
ダキッ
梓「?」
唯「あーずにゃん」ニコッ
梓「わわっ、唯先輩?」
唯「ほらっ、ちゃんとマーク消えてないよ」ジャーン
梓「…よかったです」
唯「あずにゃん探したんだよ?」
梓「すいません……でも、わたし何してたか記憶がなくて…帰る場所もないんですよ」
唯「わたしも帰る場所ないんだー」エヘヘー
唯「じゃあ行こっか?」
梓「どこへ?」
唯「頼れる友達のところだよ」
コンコン ガチャ
唯「よっ!りっちゃん」
梓「こんにちは、律先輩」
律「また、お前らかよー」
梓「また、とはなんですか」
唯「実はかくかくじかじかで」
律「あーそりゃお前ら捕まるな」
梓「捕まる?」
律「基本ロボットは主人なしじゃその存在を認められないんだよ。ロボット二人なんかで暮らしてたら捕まるよ。捕まって、記憶なんかを消されて、さよならだ」
梓「じゃあ、律先輩は…?」
律「ああ、わたしはこの仕事があるからなー特別措置だ。」
唯「…そんな」
律「まあ、方法がないわけじゃないけどな」
梓「あるんですか!?」
律「その向こうにトンネルがあるだろ、そこをくぐればいいんだよ」
唯「えっ!それだけで?」
律「ああ、それだけで別の世界に行ける」
梓「じゃあ、なんで誰も行かないんですか?」
律「普通のやつはその向こうに行こうとなんかしないさ。それをするのは頭がいかれちまったやつだな」
律「まあ、防衛ロボもいたことはいたんだけど今はいない」
唯「なんで?」
律「さあ、ヒーローがショットガンでブッ飛ばしたんじゃないか?」
唯「じゃあ行くね!いろいろありがとう!」
律「ああそうだな。はやく行ったほうがいい」
梓「ムギ先輩にもよろしく言っておいてください」
律「りょかーい…」
唯「?」
律「なんというかさうまく言えないんだけど、例えば高校の廊下なんかですれ違ったりしたら、わたしたちいい友達になれたかもな」
律「つまり、まあ幸せにやれよってことだよ」
梓「律先輩!」
律「ん?」
梓「…今でも、わたしたちは友達ですよ」
律「ふふっ…そうだなーわたしたちは友達だ」
唯「じゃあねーっ」
梓「さようならーっ」
――――
憂「お姉ちゃん、行っちゃったなあー」
憂「うん、これからは気持ちを切り替えて強く生きてかないとね………はあ」
憂「あれっ?この店のマーク見たことある…うーん……そうだ!お姉ちゃんがよく手のひらに描いてたっけ」
カランカラン
店員「いらっしゃいませー……って憂じゃん!」
憂「え、えっと………」
店員「純だよっ純!…ほらっ中学のとき同じクラスで…」
憂「たまたま同じ高校だった……斉藤さん?」
純「わざとっ!?」
憂「うん」
憂「お、覚えてるよ…わたしたちの中学からあの高校行ったのわたしたちだけだもんね」
純「そうだよっ。それで憂には一度話しかけようと思ってたんだ……なのに不登校になっちゃうなんて」
憂「えへへ」
純「まったく憂は勉強もできて、かわいくて、スポーツも万能でわたしの憧れだったのに……なんでなの?」
憂「それは……えっと」
純「やっぱ、嫌なら言わなくてもいいよ」
憂「でも、学校行こうって今日決めたよ」
純「よしっじゃあわたしが毎日迎えに行ってやろう」
憂「いいの?」
純「もちっ!よしっこのケーキはわたしの奢りだ」ドンッ
憂「純ちゃんが作ったの?」
純「まさか」
憂「ふふっ、よかったら今度一緒にケーキ作らない?」
純「お願いします!憂師匠!」
――――
事務員「何かあったのか?」
澪「いや、わたしの教育した梓が脱走したらしい」
事務員「そりゃ大変じゃないか」
澪「そうなんだよ。だから、今から死体処理場周辺を聞き込みだよ」
事務員「それにしては嬉しそうじゃないか」
澪「手のかかる子供ほどかわいいって言うだろ?」
事務員「そういう問題じゃないだろ」
澪「いや、そういう問題なんだよ」
――――
律「ムギー。唯と梓は行っちゃったぜ。よろしく、だって」
紬「うふふっ、あの二人なら大丈夫よ、きっと」
律「ああ、そうだな…」
紬「…澪ちゃんのこと考えてるの?」
律「まあな。ムギはなんでもお見通しだな」
紬「真っ暗な世界にいると、逆に目に見えないものが見えるようになるのよ」
律「残念だけど、もうすぐムギの体完成しそうなんだぜ……あんまりうまくないけどな」
紬「十分よ」
コンコン
紬「あらっ、最近は来客者が多いわね」
律「あいつらのせいで、ノックがあるとなんかいいことが起きるんじゃないかって気がしちゃうな」
紬「今回もいいことがあるわよ♪」
律「じゃあそうなんだろうな。ムギはなんでもお見通しだからな!」
コンコン
律「ちょっと行ってくるよ」
律「はーい」ガチャ
律「………」
律「ってお前かよっ!!」
紬「ふふふっ」
――――
カツンカツン
梓「…どこまでいけば抜けられるんでしょうね」
唯「もうけっこう歩いたよー」
梓「暗くて、寒いですよね。1人だったら引き返してました」
唯「あずにゃんがいてよかったよ」
梓「わたしもですよ。唯先輩が…」
唯「あっ、あずにゃん見て!」
梓「もう…なんですか?」
唯「あそこ花が咲いてる!」
梓「よく見えますね」
唯「暗やみに目がなれちゃったよーほらっここ、ここ」
梓「なんで、こんな暗やみに花が咲くんでしょうね?」
唯「わかんないなーでも、きれいだよっ」
梓「たしかにすごくきれいです」
唯「あっ、あずにゃん!」
梓「今度はなんですか?」
唯「光が見えるよっ!」
梓「やったですっ!これで抜けられますよ」
唯「ほらっ、あずにゃん手だして?」
梓「?」スッ
唯「じゃあ行こうかっ?」ギュッ
梓「はいっ」ギュッ
終了です
最終更新:2011年07月19日 02:50