唯「ペンダント」


唯「はあ、はあ、やばいよー遅刻だよー」

おばあさん「あ!ちょっとそこの・・・お嬢さん!」

唯「え?私ですか?」

おばあさん「ここの住所にどう行ったらいいかわかる?」

唯「えーと、あーここ私の家の近くの公園だ!連れてってあげるよおばあちゃん」


公園

唯「ここだよー」

おばあさん「ありがとう。助かったわ」

唯「いえいえー。おばあちゃんはこんな公園に何か用なの?」

おばあさん「私も昔はこの辺りに住んでてね。この公園でよく遊んだのよ」

唯「へーそうなんだあ」

おばあさん「案内してくれたお礼にこれをあげるわ」

唯「わあ!綺麗なペンダント・・・でもこんな高そうなの」

おばあさん「いいのよ。私が作ったものだから」

唯「えーすごい!おばあちゃん職人さんなの?」

おばあさん「まあそんなところね。これはね、特別なペンダントなの。
      あなたがもし何かに困って、やりなおしたいって思ったときに真ん中についているボタンを押すといいわ」

唯「??どういうこと?」

おばあさん「まあ、その時になったらわかるわ。ただし、使う時は本当に使うべきかどうかちゃんと考えるようにね」

唯「うーん、よくわかんないなあ。あ!そういえば学校!遅刻しちゃう!じゃあおばあちゃん、私もう行くね!」

おばあさん「ええ、案内ありがとう」


――――

唯「おはよー!」

律「おはよう・・・って遅いよ!もう1時間目終わったぞ!」

紬「どうしてたの?具合悪かったり・・・」

唯「違うよー!なんかね、おばあちゃんが道に迷ってて、一緒に目的地まで行ってあげたんだー」

紬「唯ちゃん優しいわね♪あれ?そのペンダントどうしたの?」

律「なんだ?制服にペンダントなんてつけて」

唯「そのおばあちゃんにもらっちゃったんだ」

紬「見たことない形ね・・・真ん中にスイッチみたいなのがついてるし」

律「それより唯、次の授業は小テストあるけど勉強したのか?」

唯「あ!忘れてたあ!」


キーンコーン

律「ふう、終わった終わった。昨日澪と勉強しといてよかった。唯は・・・だめだったみたいだな」

唯「うう・・・オワッタ」

あれ、そういえばさっきのおばあちゃん、何かに困ってやり直したい時にペンダントのボタンを押せって・・・
今まさに困ってるよね。

唯「だめもとっ!えい!」

ポチッ

ギュオーーーン

律「おはよう・・・って遅いよ!もう1時間目終わったぞ!」

紬「どうしてたの?具合悪かったり・・・」

唯「え?一時間目?もう二時間目おわったのに」

律「何言ってるんだ?今一時間目が終わって、お前が今来たんだぞ」

紬「あれ?そのペンダントどうしたの?」

これって、さっき私が学校に来た時の会話・・・もしかして、時間が戻ってる!?てことは・・・

唯「次って、もしかして小テスト?」

律「そうだぞー。ちゃんと勉強したか?」

やっぱり・・・さっきのテストならだいたいの問題は覚えてる。今からそこだけ勉強しておけば!

キーンコーン

律「ふう、終わった終わった。昨日澪と勉強しといてよかった。唯は・・・なんだその笑顔」

唯「ぐふふふふ、べつにい」

やった!やっぱりあのペンダントは時間を巻き戻す機械だったんだ!これでもうテストは怖くない!」


それからの私は絶好調だった。テストを一回受けてから問題を覚えて巻き戻せばいいので、長々とテスト勉強をする必要は無くなった。
部活でも

唯「♪♪」

澪「唯、最近どんどん上達してるな」

律「成績もめっちゃ良くなってるんだよなあ。普段勉強してる感じしないのに」

梓「いいじゃないですか。唯先輩が上手くなって私は嬉しいです」

唯「ありがとーあずにゃーん」ダキッ

本来なら勉強をやらなきゃいけない時でも好きなだけギー太を弾けるから、自然と腕も上がっていった。

律「そうだ、唯。数学でちょっとわからないところあるんだけど」

唯「えー?そんなの私もわからないよ」

律「あんな成績いいのに?なんか妙なんだよなー」

でもそうやってしばらく日々を過ごしているうちに、私はだんだん退屈になってきた。

唯「部活行こうよー」

律「今日はもうテスト前期間だろ?しばらく部活はなしだ」

唯「ええー」

律「お前と違って私たちは勉強しなくちゃいけないからな。じゃ」

紬「じゃあね唯ちゃん」

気のせいか、みんなもちょっと冷たくなった気がする。
なんの努力もしてない私がいい成績をとるのは気に食わないのだろうか

1人で部室に行ってもつまらないので、私も家に帰ることにした。すると、和ちゃんと澪ちゃんに出会った。

唯「和ちゃん!澪ちゃん!」

和「あら、唯」

澪「今帰り?」

唯「そうだよー。2人は?」

和「これから澪の家で勉強会するのよ」

澪「律やムギも来るはずなんだけど・・・聞いてないか?」

唯「え・・・聞いてないし、私誘われてない」

和「まあ唯は最近勉強しなくてもなぜか成績いいから、誘う必要ないと思ったんじゃない?」

澪「2人も悪気があったわけじゃないと思うよ」

唯「私も行く!みんなといっしょに勉強する!いい?」

澪「うん。もちろんいいけど」

なんか寂しかったので、私も勉強会にお邪魔することにした。りっちゃんとムギちゃんは気まずそうに謝ってきたけど。私は別に気にしてない

澪「この問題は・・・」

律「なるほどなるほど」

和「律・・・さっきから聞いてるだけじゃない」

でもやっぱり退屈だった。しなくていいとわかってるのに、勉強なんて真面目にできるはずがない。

ペンダントをもらうまでは、こういうテスト勉強もイベントみたいなものだったなあ。
りっちゃんと一緒に和ちゃんや澪ちゃんに泣きついて・・・みんなで一緒に勉強して、休憩のときのお菓子がすごく美味しくて

唯「うう」ポロポロ

和「唯?どうしたの?」

唯「ううっ和ちゃん・・・」グスッ

澪「いきなりなんだ?」

紬「なんで泣いてるの?」

恥ずかしいところ見られちゃったな・・・時間を巻き戻してみんなに忘れてもらおう

唯「・・・」

ダメだ。そうやってすぐに時間を戻そうとするからこんなことになっちゃうんだ。
頑張らなかったらなにも面白くない。成功して嬉しいのは、その分頑張ったからなんだ。
私にはこのペンダントは必要ない。誰かにあげちゃおうか・・・いや、やっぱり・・・

唯「よしっ」

ポチッ

ギュオーン・・・

おばあさん「案内してくれたお礼にこれをあげるわ」

唯「おばあちゃん・・・ごめんなさい!私にはそれは必要ないから!」

おばあさん「・・・そう、よかった」ニコッ

唯「ほえ?」

おばあさん「あなたならきっと、わかってくれると思ってたわ。唯」

唯「おばあちゃん、もしかして・・・」

おばあさん「その気持を、大切にね。じゃあ、また会いましょう」

唯「あ、待って!また会うってどこで!?」

おばあさん「未来で」

シューン

唯「消えた・・・」

ペンダント、無くなっちゃったかあ。でも、これでよかったよね?

唯「あ、そういえば今日って・・・やば!」

唯「遅刻だーーーー!」

ダダダダダダ

おわり



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最終更新:2011年07月19日 03:13