律「やろうぜ、百物語!」
唯「ひゃくものがたり?」
紬「百物語っていうのは怪談話を100話語るの。それで100話目を語り終わると本物の怪が……」
澪「うわーーっ!」
律「まあ落ち着けって。別に怪談じゃなくていいからさ、とりあえず100話」
紬「どんな事を話すの?」
律「何でもいいよ、昨日の夜ご飯何を食べたとかそんなのでも」
澪「それなら――」
律「もちろん怖い話でも」
澪「やっぱりやめよう」
唯「まあまあ、みんな楽しい事話せばいいじゃん!」
澪「ならいいけど……」
律「そうと決まればムギ、お茶とお菓子を頼む!」
紬「がってん!」
唯「じゃあ1人につき20話だね」
梓「20話ですか。多いですね……」
律「そんなかしこまった話じゃなくていいんだって」
唯「とりあえずやってみようよ!」
紬「誰から話す?」
律「んー……ジャンケンで勝った人からにしよう」
唯「オーケー。それじゃいくよーっ」
唯澪律紬梓「じゃーんけーんポン!」
END
Ch.001 日和
図書館で勉強ちう
唯「頭が『た』で真ん中が『き』、最後が『ん』……りっちゃんクロスワード難しい」
澪「たぬきうどん……」
唯「おお!」
紬「それどういう食べ物?」
律「丸ごと入ってるんだよ、たぬき」
紬「ほぉ」
澪「全然勉強にならないじゃないか」
律「まあまあ、私ちょっとトイレ」
澪「私参考書取って来る」
紬「ねえ唯ちゃん、たぬきってどんな味なの?」
唯「へ? さっきりっちゃんが言ってた事は嘘だよ」
紬「そうなの?」
唯「そうそう、本当のたぬきそばは掻き揚げが入ってるんだよ!」キリッ
紬「そば? うどんじゃなくて?」
唯「そうだよ~たぬきはそば、きつねはうどんってね」
紬「狐のうどん?」
唯「赤いきつねに緑のたぬき!」
紬「アカギツネはともかく緑の狸なんて日本にいるのかしら?」
唯「あるある! 日本人なら一度は食べておかないとね」
紬「狸って外国にもいるのかな?」
唯「どうだろー、カップヌードルはノーボーダーだからあると思うけど」
紬「ヌー? ……プードル?」
唯「あっそういえば近所のワンちゃんがうどん食べてたな」
紬「えっ犬が?」
唯「うん、ドッグなんとかっていう塩分が控えめの麺なんだって」
紬「ドッグ……たぬき……きつね……動物も麺を食べるのかぁ」
唯「そうみたいだよ」
律「…………」プルプル
澪「ん? そんなところに隠れて何やってるんだよ」
律「う……あ……」
律「あーーーーーーっ!!」ダダダダダ
澪「うわあっ!」
澪「どこ行くんだよ律の奴……」
澪「あいつ唯とムギの事を隠れて見てたんだよな?」
澪「何かあったのか?」チラ
紬「唯ちゃんは狐のうどんと狸のおそばを食べた事があるのよね」
唯「もっちろん!」
紬「それは人が食べてもおいしいの?」
唯「もちろんだよ~」
紬「じゃあワンちゃんのうどんは?」
唯「それは食べた事ないやー」
紬「ワンちゃんのはあまりメジャーではないみたいね」
唯「そだね~私もこの前初めて見たし」
紬「どれも気になるわぁ」
唯「私もワンちゃんのうどん気になるよー」
紬「スーパーに売ってるのかな」
唯「私見たことないや。やっぱりうどんの国にあるんじゃないかな」
紬「うどんの国!?」
唯「近所のワンちゃんの飼い主さんはお土産で貰ったんだって」
紬「いや……でも……それは流石に……」
唯「ムギちゃんは行った事ある?」
紬「ないわね……」
唯「そっかー。もし行く事があったらお土産よろしくね!」
紬「うん、それにその国なら狐のうどんもありそう」
唯「きつねならどこでも売ってるよ?」
紬「えっ!? でも狐ってもっと北のほうにいるんじゃ……」
唯「えっ?」
紬「あっ、意外とメジャーなペットだったのかしら」
唯「やだなあムギちゃん」
唯「きつねは油揚げだよ!」
紬「えっ?」
唯「えっ?」
澪「あーーーーーーっ!!」
紬「!?」
唯「!?」
澪「赤いきつねと緑のたぬきは商品名! うどんの国は香川県! 狐はよくわかんない!」
紬「どっどうしたの澪ちゃん?」
唯「わかった! 澪ちゃんお腹すいたんでしょー?」
澪「あーーーーーーっ!!」ダダダダダ
唯「澪ちゃん?」
紬「いっちゃった……」
END
Ch.002 先に行け
学校
唯「はあはあ」
律「くそー数が多すぎる!」
澪「このままじゃあ……」
和「まずいわね」
紬「とにかく校門を出ないと」
梓「……」
律「よし校門を抜けたぞ!」
唯「あずにゃん? 何してるの早く!」
梓「……先輩方は先に行って下さい。私は正門で時間を稼ぎます」
ガラガラガラガラ
澪「梓っ!?」
梓「ここは私が引き受けますから」
唯「な、何言ってるのあずにゃん……」
梓「早く! あまり長くは持ちません」
律「梓……わかった」
唯「りっちゃん!?」
律「みんな行くぞ!」
唯「でもっ」
梓「唯先輩。後から追いつきますから」
唯「あずにゃん……ありがとう」
和「唯急いで!」
唯「……うん」
律「それでムギの家へはどうやっていくんだ?」
紬「電車に乗って三駅!」
澪「駅が見えた……ひっ!」
和「……曽我部先輩」
恵「ここから先へは行かせないわ」
澪「はぅあ……」ブルブル
律「くそ、時間が……」
和「唯」
唯「うん?」
和「先に行って」
唯「和ちゃん!?」
和「ここは私に任せて」
唯「和ちゃん……そんな」
和「梓ちゃんの頑張りを無駄にしたいの?」
唯「う……わかった。でも絶対無理しちゃダメだよ!」
澪「ここがムギの家……」
律「でけえ……」
紬「みんな早く!」
澪「まずい! 追っ手が!」
紬「玄関に入ればひとまずは……」
ガチャ
紬「早く入ってりっちゃん!」
律「……」
澪「……律?」
律「澪! 先に行っててくれ!」
バタン
澪「律っ!? りつーー!」
ドンドン!
唯「りっちゃん……」
澪「……ばかりつ」
紬「この廊下をまっすぐよ」
唯「うん……」
澪「……」
唯「澪ちゃん」
澪「……あ、なんだ?」
唯「りっちゃんの所に戻ってあげて」
澪「えっ……」
唯「ここまで来れば私とムギちゃんだけでも大丈夫だから」
澪「そんなのわからないだろ……」
唯「戻りたいんでしょ?」
澪「う……」
澪「唯、ムギ……ごめん、先に行っててくれ!」
紬「あそこの階段を上れば……」
さわ子「……」
唯「さわちゃん……」
紬「ここは私の出番ね」
唯「ムギちゃん」
紬「唯ちゃん、先に行ってて。階段を上った後扉を開けてまっすぐよ」
唯「……わかった」
唯「ごめ――」
唯「――え?」
紬「すぐに追いつくから!」
唯「うん……ありがとう!」
唯「この扉を開ければ後はまっすぐ……」
ガチャ
唯「あっ」
憂「お姉ちゃん……」
唯「憂……」
憂「お姉ちゃん……どうしても行くの?」
唯「うん。もう後には戻れない」
憂「おねえ……ちゃん」
唯「……ここで待ってて」
憂「行かないでよ……」
唯「ごめんね」
唯「先に行かないと」
唯「私が……先に行かなきゃ!」
END
Ch.003 加速装置への対処
唯「んー……」
紬「どうしたの?」
唯「なんか奥歯に違和感があるんだよね……」
律「甘いもの食べ過ぎて虫歯になったんじゃない?」
唯「痛くはないんだけど……ん……」
唯「んん……カチ」
唯「うおっ! カチって言った!」
唯「りっちゃん歯がカチって言った!」
唯「……あれ、どしたのりっちゃん? そんなスローモーションみたいな動きして」
唯「ねえってばー」ペチペチ
唯「……あれ?」
唯「りっちゃん! りっちゃんってば!!」ベチベチ
唯「ていうかみんなも止まってるように見える……どうなってるの?」
唯「ねえむぎちゃん、澪ちゃん、あずにゃん!」
唯「もームギちゃんまで~。デコピンっ」パチン
唯「みんなの分のケーキ食べちゃうぞー?」
唯「モグモグ……カチ」
律「ふぶぅぼあっ!!?」
紬「むごぉ!?」
ドンガラガッシャーン
唯澪梓「!?」
梓「律先輩と澪先輩が吹っ飛んだ!?」
澪「……唯、今何かしたか?」
唯「何ってちょっとデコピンしたり……」
梓「デコピンで吹っ飛ぶわけないじゃないですか」
澪「いや。二人を攻撃したっていうのに私には唯が少しぶれたようにしか見えなかった」
澪「ペロ……これは加速装置」
唯「んむうっ」
澪「梓、唯の歯を抜くぞ」
唯「ええっ嫌だよ!」
澪「だって危ないじゃないか」
唯「やだー。カチ」
梓「消えた!?」
唯「こっちだよー」
澪「後ろか!」
梓「……って」
梓「なんで裸なんですか!?」
唯「へ? きゃあ!」
澪「摩擦熱だ! 摩擦熱で服が燃えたんだ!」
梓「なんで人体が燃えてないんですかね」
ガッシ
紬「唯ちゃんつかまえたあ……」
唯「しもうた!」
澪「ムギ! 巴投げだ!」
紬「どすこーい」ポーン
唯「ひゃああ!」
澪「加速装置の弱点は空中にいる間は意味をなさない所なんだ!」
澪「奥歯折りパンチをくらえっ」
唯「げふぅ」
澪「ふう……。唯が空を飛べていたら私達に勝ち目はなかったよ」
END
最終更新:2011年07月21日 02:30