Ch.040 唯「対価」


唯「明日体育か……」

唯「スネ毛使わなきゃ」

唯「今日は早めにお風呂入ろうっと」

カポーン

唯「はー……生きかえるぅ……」

唯「そうだスネ毛使っちゃおう」

唯「すー……はー……」

唯「んんんんん……ハーゲンダッツストロベリー!」

ポンッ!

唯「よしっ! ……おっと、スプーン出すの忘れてた」

唯「ふううう……プラスチックのスプーン!」

ポンッ!

唯「完璧ですっ。いただきまーす」

唯「あーおいしかった」

唯「それに今のアイスとスプーンでスネ毛はみんな使ったみたいだ」



こんにちは、私です。
最近すごい力を手に入れました。
ずばり……『身体の一部を消費して何でも出来る』です。
『何でも』っていうのは多分どんな事でも出来ると思います。
まだそんなに試してないけどね。
この力はとっても便利だよ~。
爪を切る必要もムダ毛の処理もする必要もなくなってとってもらくちんです!



唯「はぁ~いいお湯だった」

憂「お姉ちゃん明日のテストの勉強した?」

唯「テスト?」


唯「そっかー明日からテストだったや」

憂「えっ、勉強してないの?」

唯「うーん……」

唯(ちょっと爪伸びてるからこれを使おう)

唯「大丈夫! 余裕だよ」

憂「ほんとかなぁ……」

唯「ほんとだよ~」


唯「ほらね?」

澪「す、すごい……全教科高得点だ」

律「どうしちゃったんだよ唯ぃ」

唯「ぐふふ。それよりせっかくテストが終わったんだからアイス食べに行こうよ!」

律「いいね!」

紬「いこーいこー」

唯「れっつごー」

律「なあ唯~いつもどうやって勉強してるの?」

唯「えっ、それは~うーん……」

澪「何故そこで考える」

律「お、アイス屋が見えたぞ!」

唯「おおっ!」

律「唯!」

唯「がってん!」

ダダダダダ

澪「おい! まだ赤信号だ!」

律「大丈夫大丈……」

ブロロロロ!

律「いっ!?」

紬「りっちゃん!!」

キキー!

唯「りっちゃーーーん!!」

澪「!!」

紬「……あ!」

律「……へ?」

私はその時無我夢中でりっちゃんを助けようとして……
気が付いたらりっちゃんを抱えて横断歩道を渡り終えていました。

律「ゆい……?」

唯「りっちゃん大丈夫?」

律「へ、あ、うん。それよりどうなったんだ?」

紬「りっちゃん!」

澪「りつ!」

律「私は平気。唯が助けてくれたみたい」

澪「よ、よかった……このバカ」

律「ごめん」

紬「すごいね唯ちゃん」

唯「いやーまぐれまぐれ……」

紬「私にもよく見えなかったけどりっちゃんが轢かれると思った瞬間二人がここに……」

律「私にも何がなんだか……超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあなかった」

唯「あ、あはは」

唯(多分超スピードだよ)

律「はー。アイス食べるか」

唯「そうだね……っ!」

澪「どうした? もしかして怪我したのか?」

唯「ううん、大丈夫だよ。ほらアイス食べに行こう」

痛みの原因は左手の人差し指の爪がなくなっていたから。
無我夢中で加減も何もなかったからしょうがないか……。
今度から気を付けよう。

この事件以降私は力を上手く使う練習をするようになった。
おかげで咄嗟の出来事にも対処できるようになったしもう爪をなくすことはないと思う。
大抵の事は爪1ミリかムダ毛でなんとかなるし。

紬「あっ!」

唯(ムギちゃんがティーカップ落とした! ほいっ!)

紬「……あら? 割れてない」

唯「ふう」

ベキッ

律「あちゃースティック折れ……」

唯「はぅ」

律「折れ……てない……あれ?」

さわ子「足が疲れ……」

唯「ハッ」

さわ子「……あら?」

律「いやー平和な毎日だな」

澪「そうだな」

紬「だね~」

力を使うようになって気付いた事がある。
それは私達の身の回りには危険が一杯あるという事。
ていうか最近増えてきてる気がする。
その度に私が防いでいるんだけどちょっと心配になってくるよ。
私がいないところで何かが起こったりしたら……。

律「唯どした?」

唯「なんでもなーい」

グラッ

澪「うわっ地震!?」

さわ子「けっこう大きいわね」

唯「言ってる傍から……」

紬「おさまった」

澪「怖かった」

唯「うん」

律「あちゃー、棚から本が落ちてる」

紬「食器は……無事みたい」

律「じゃあティータイム再開で」

澪「のん気だな……」

唯「まあまあ、何もなかったんだからいいじゃん」

澪「まあそうだけど」

紬「そういえば梓ちゃん遅いね」

唯「そうだね~早く補給したいよ」

律「梓遅いな」

澪「電話にも出ない」

紬「私ちょっと探してくる」

唯「私も」

ガチャ

唯「あずにゃんのケーキ食べちゃだめだからね」

律「食べねーよ」

紬「きゃあああ!」

唯「どうしたのムギちゃん!?」

紬「あ、梓ちゃんが階段の下で倒れてる」

律「な!?」

さわ子「さっきの地震で階段から落ちたのかしら……りっちゃん保健の先生呼んで来て!」

律「わかった!」

澪「あ、梓……」

さわ子「目立った傷はないけど…………」

唯「あっ……あ……」

唯(落ち着かなきゃ。落ち着かなきゃ)

唯「……よし」

紬「唯ちゃん?」

唯「ふー……」

唯「あずにゃん!」

唯(あずにゃんのためなら爪の一枚や二枚どうってことない!)

梓「……ん」

唯「あずにゃん大丈夫?」

梓「あ……唯先輩」

澪「気が付いた!」

唯「痛いところない?」

梓「いえ、特には」

紬「よかったぁ~」

唯(ふぅ……なんとかなった)



唯「――っていう事があって大変だったんだよ」

憂「梓ちゃんが無事でよかった」

唯「うん」

憂「今日の地震大きかったもんね」

憂「今テレビでもやってるけど震源地はもっと酷いみたいだよ」

唯「そうなんだ……ん、トンネルで救助?」

憂「トンネルに親子が生き埋めになっちゃてるんだって。子供はまだ3歳だとか……」

唯「あう……」

唯「……ふんすっ」

憂「お姉ちゃん?」

唯「なんでもないよ。あ、憂テレビ見て! 助かったみたい」

憂「本当だ! よかった~」

唯「それじゃチャンネル変えてもいい? ためしてどすこいが見たんだけど」

憂「いいよ。今日のテーマは……人間の反応速度?」


――――

律「最近嫌な事件が立て続けに起こるよな」

澪「うん。地震もあったし地球に隕石が落ちそうになったり……」

紬「隕石は軌道修正したらしいけど先日の富士山噴火は怖かった」

律「噴火は半日で止まったみたいだけどびっくりしたよな」

梓「そうですね」


梓「あの、唯先輩」

唯「……え、なあに?」

梓「なんだか元気ないみたいですけど大丈夫ですか?」

唯「大丈夫だよ~」

澪「それじゃそろそろ始めるか」

唯「……あ、ゴメンみんな。私手ぇケガしちゃってて……」

律「ありゃ、じゃあしょうがないな」

唯「ゴメンね」

律「んじゃそろそろ帰りますか」

澪「そうだな」

紬「……あら? あれなんだろ」

梓「何ですか?」

紬「ほら、あのへんの空に……」

梓「何か光ってますね」

律「どれどれ。ん、んー?」

澪「なんだか大きくなってないか……?」

梓「もしかして隕石でしょうか?」

澪「いや、この前の隕石は軌道がかわったはずだぞ」

律「……おい、こっちに落ちてくるぞ」

紬「校庭に落ちる! みんな伏せて!」

ドオォォーーーン

澪「うわあああ!」

梓「きゃあああ!」

紬「びっくりした」

律「……あ、運動部の奴らが見に行ってるぞ」

澪「や、やめといたほうが……」

律「私に言われてもな……ん?」

律「うそ……隕石(?)の中から人が出てきたぞ」

澪「ええっ!?」

律「ここからじゃ良く見えないな」

紬「……宇宙人かな?」

律「見えるの!?」

紬「うん。それに何か言ってる……」

律「何て言ってるんだ?」

紬「ええと……ピーピーうるさいヒヨコたちに挨拶してやろうかな……かな?」

宇宙人が手を上げた瞬間、眩い光が広がってきて……
私は咄嗟に力を使った。
冷静に使ったけど欠落が酷い。
向こうの力が強すぎる所為だ。

律「まぶしっ」

澪「なんだ、どうしたん……」

紬「嘘……校庭が……」

梓「消し飛んでいる……」

唯「痛ぅぅ」

律「どした……ってお前手から血が出てるぞ!」

唯「大丈夫大丈夫」

唯「それよりみんなは部室から出ちゃ駄目だよ!」

ガチャ バタン

梓「唯先輩どこに行くんですか!?」

律「あいつまさか校庭に行くつもりじゃ……」

梓「引き止めましょう!」

ガチャガチャ

梓「あれっドアが開かない!?」


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最終更新:2011年07月21日 02:47