唯「ひどい……校庭がめちゃくちゃ。それにみんなが……」

唯「どうしてこんな事したの?」

宇宙人「ぷぴぃぃぃぃぃぃぃ」

唯「何言ってるかわかんないよ……」

宇宙人「ぷぴいいいい」

突然宇宙人が私に向かって殴りかかって来た。
力を使ってそれをかわす。
宇宙人は驚いているみたいだった。
やっぱりこの宇宙人は……私達を殺そうとしている。

さっきの宇宙人の動きは恐ろしいほど早かった。
私がかわせたのはほとんど無意識で力を使うことができたから。
何回もそんなことが出来るとは思えない。
こうなったら……

唯「ふんすっ」

身体能力と知覚速度を上げる。
これで宇宙人の攻撃が見えるはず。

宇宙人「ぷぴいいいいい」

唯「ごはぁ!?」

宇宙人のパンチが私のお腹を貫通した。
そんな……何も見えなかった……ていうか痛い痛い痛い死ぬ!
私は必死で貫通したお腹を治した。
左手の小指がすっごく痛いけど死ぬよりまし。

唯「はあ……はあ……」

宇宙人「ぷ、ぷぴい」

なんだか怪しんでるみたい。
まあ普通なら死んでるもんね。

でもこのままじゃあ私やみんなまで死んでしまう。
もっと身体能力と知覚速度を強化しないと。
こうなったら大盤振る舞いだぁ。

唯「ふんすっ!」

左手がものすごく痛い。
隕石落下の時だって指は使わなかったのに……。
ついでに痛みも消してしまおう。

宇宙人「ぷぷぃぃぃいいい」

来る!
今度こそ大丈夫のはず。
宇宙人が振りかぶる。
見える、見えるよ!
見えればかわす事もできるもんね。
私は宇宙人の攻撃をかわし続けた。

律「なんだ……唯は何やってるんだ」

紬「ど、どうなってるの……」

この宇宙人さんに説得は無理だね。
仕方ない、人(?)をぶつのは初めてだけどみんなの命が掛かってるんだ。

唯「ふっ!」

当たった!
……あれ、効いてない。

宇宙人「ぷぴ」

意識を刈られそうになった。
また宇宙人の攻撃が見えなかった。
……まだ私はもったいぶってたんだね。
それなら今度こそ。
とりあえず傷を癒して、それから今度は左腕を肘まで使った。

唯「うりゃあ!」

右手で殴った。
宇宙人が転がっていく。

唯「ど、どうだこのぉ……」

宇宙人は立ち上がる。
ええっ大して効いてない!
なんだか怒らせただけみたいだ。

唯「そんなあ……」

宇宙人「ぷぴいいいいいいい」

宇宙人が右手をかざした。
次の瞬間そこから光が発射されて私目掛けて飛んできた。
避けなきゃ!
いや駄目だ後ろには校舎が……みんながいる。
こうなったら私もまねしてみるしかない。
私も右手をかざす。

唯「ほあっ!!」

出来た!
私の手の平から光が発射される。
やればできるのね。
そして宇宙人との激しい打ち合いが始まった。

私が光を放出し続けると左腕の感覚がドンドンなくなってくる。
今二の腕の辺りまで……いや、考えるのは止めよう。気持ち悪くなる。

唯「ふぐぐぐぐ……!」

だめだこのままじゃ私の身体がなくなる……一気に力を放出しよう。

唯「ふーんーすー!!」

やった! 勝てる!
宇宙人は私の光に押されてドンドン民家のほうへ……えっ!?
しまっただめだ!
慌てて光を空へ方向転換させた。

唯「はあ……はあ……」

どうしよう……。
民家は無事だけど宇宙人も無事だぁ。
私は左腕に加えて咄嗟に使った右足の所為で上手く立てない。
しかたない。
飛ぼう。

唯「はー……はー……」

私は浮いた。

宇宙人「ぷぴぃぃぃぃぃぃぃ」

宇宙人が雄たけびを上げながら突進してきた。
有無を言わせぬ力押しだ。
私は満足に使える右手と左足で必死に応戦する。
けど明らかに手数が足りない。
やっぱりさっきの光で倒すしかない。
あ、よく見たら宇宙人も浮いてる。
それなら……!

唯「ついてきなさい!」

私は空高く舞い上がった。
宇宙人もついて来ている。
このまま雲の上まで行けば気兼ねなく光を放出できる。
なんとかなりそうだね。

宇宙人「ぷっぴぃ」

唯「へっ?」

油断した。
足を掴まれた。

宇宙人「ぷぴいいいい」

唯「ふぐっ!?」

思い切りお腹を殴られた。
は、吐きそう……。
宇宙人はそこから猛ラッシュ。
足をつかまれたままじゃろくに攻撃を防げない。
ヤバイ……意識が……。

宇宙人「ぷぴいいいいいい」

唯「!?」

宇宙人が私のことを地上に向かって投げ飛ばした。
朦朧とする意識の中で宇宙人が口をあけてそこから光を発射したのを確認した。

唯「げほっげほっ……」

地面に衝突する手前でなんとか体勢を立て直す。
上を見やると巨大な光が私目掛けて降り注いできている。
あんなのが落ちてきたら学校はおろか日本が大変な事になってしまう。
軽音部のみんなが死んじゃう……それだけは嫌だ。
私は右足を諦めた。

右足を力に変えてそれを右手から……あれ、右手が動かないや。
右手を見ると関節がひとつ増えていた。
痛みを消してなかったら大変だった。
この際吐き気も消しておこう。
右手が使えないなら……これでどうだ。
宇宙人のまねをして口を大きく開けた。
そして口から光を放出する。

唯「んがぁーーーー!!」

宇宙人「ぷぴいいいい」

宇宙人の光と私の光が空中で衝突する。
辺りは激しい衝撃に見舞われてた。

唯「んがーー!」

あごいたいよう。
……。
あ、あれ?
もしかして私押されてる?

そんな……右足全部使ったのに!
このままじゃ地球にぶつかっちゃう!
そうしている間にも光は着実に地球へ向かってきている。
こっちだって色んなところを使って思いっきり打ち返してるのに歯が立たない。

唯「ん、んあ……」

あごいたいよう。
光はとうとう私の目の前にまで来てしまった。
あ、駄目だ……。
もう駄目だ。
私は光に飲み込まれた。

梓「唯センパーイ!!」

ああ、あずにゃん……ごめんね守れなくて。
私もあずにゃんも死んじゃうんだ……?
死ぬ?
うそ、私もあずにゃんもみんなも死んじゃうの!?
無理無理無理!
死にたくないよ!
死なせたくないよ!
でももう……いやいやこうなったらやけくそだ!
私の身体を光に変えて……

唯「おっしゃああああああ!!」

私を激しい光が包み込む。
むしろ私が光なのかも?
私は宇宙人に向かって突進した。
私自身が光に包まれて宇宙人の光を押し返す。
宇宙人まで一直線だ。
すっごい早いよ。超スピード。
これで倒す事ができても私は宇宙の果てまで行っちゃうかな……。
いやいや今は宇宙人を倒す事だけ考えなきゃ!

唯「おりゃああああああああお引き取りくださいっ!!」

宇宙人に体当たりした。
私と宇宙人はそろって宇宙に飛ばされた。
宇宙人はそのままどこか遠くまで行ってしまった。
やった……やったよみんな。
みんなを守る事ができた。
でも私は……今身体がどのくらい残ってるのかもわからないや。
みんなにもう一度会いたいよ……。

律「う……どうなったんだ?」

梓「唯先輩……」

梓「今唯先輩が空に行ったような気が」

澪「校庭に唯の姿がない。それじゃあ本当に……」

紬「唯ちゃんが……唯ちゃんが命を懸けて私達を守ってくれた」

律「唯、ゆいぃ」

梓「唯先輩……ありがとうございます」

それから1年後。
学校も元通りになりました。
私達はようやくもとの生活に戻れそうです。



梓「こんにちは」

澪「お疲れ」

律「おっす」

紬「お茶入れるね」

梓「ありがとうございます」

みんなはどこか寂しそうにしています。
やっぱりあの時の事を気にしてるんでしょうか。

梓「練習……しましょうか」

澪「そうだな」

紬「そうね」

律「やるか!」

口には出さないけどきっとみんなもう一人のギタリストの事を考えているはずです。

それが少し嬉しい……えへへ。
みんな心配かけてごめんね。
私はドアを開けて部室に突入した。

唯「平沢唯ただいま戻りました!」

澪律紬梓 「!!?」

澪「あ……あ?」

紬「唯ちゃん!?」

梓「唯先輩!? 死んだんじゃあ……」

唯「えー死んでないよ!」

律「だ、だってお前宇宙に行ったじゃんか!」

唯「いやーあの時は本当に死ぬかと思ったよ」

唯「まず酸素がなくても生きていけるようにして次に髪の毛を使って身体を修復してそれから――」

唯「というわけで随分時間が掛かっちゃったけどこうして戻ってくる事が出来ました!」

律「なんだかよくわからない。お前は人類なのか?」

唯「むー当たり前だよ」

梓「よ……よかったぁ……」

唯「あずにゃん! 心配かけてごめんねぇ~むぎゅうううう」

梓「うえええん」

澪「よかった……本当によかった」

私は平和を勝ち取りました。
でも……

さわ子「みんな大変よ!」

唯「さわちゃん!」

さわ子「唯ちゃん!? どうして……!? いやそれより」

唯「それより!? しどい!」

さわ子「聞いて、なんでも北海道が爆発したらしいの!」

律「はあ!?」


紬「爆発って……爆弾とかですか?」

さわ子「詳しい事はわからないけど北海道が丸々なくなったみたいだからそうかもしれないわね」

澪「そ、そんな……」

私はその原因を知っているかもしれない。
また何者かが悪い事をしているのかも。

唯「私ちょっと見てくるよ」

律「はいぃ?」

唯「私なら何とかできると思うし。それに何とかしないとここも危なくなりそう」

梓「唯先輩……?」

唯「大丈夫大丈夫! 今度はもっと早く帰ってくるよ!」

唯「とうっ!」

紬「飛んだ!?」

澪「あ……アヘ……」

唯「ちょっと行って来るねー!」



それにしても……
私がこの力を手に入れてから嫌な事がたくさん起こるなあ。
なんでだろ?
まあ仕方ない、ちゃっちゃと片付けて早く憂の顔を見に帰ろうっと。
この力があると便利だしみんなを守れるもんね。
……お、青森が見えてきた。
よーしがんばっちゃうぞ!



END



Ch.041 唯「あずにゃんもミルキーいる?」


「あずにゃはぁん!」

「うわっぷ!」

「すんすん。あはぁ~あずにゃんいい匂いがする」

「嗅がないで下さいよ」

今日も早速唯先輩に抱きつかれた。これで5日連続。
まったくもう。唯先輩はいっつもいっつも所構わず抱きついてくるから困る。
おまけに人の匂いまで嗅ぎ出すし……。
そういう唯先輩だってなんだか甘ったるい匂いがするじゃないですか。
この匂いはなんだろう。赤ちゃんの匂いっていうのかな。
甘いミルクのような匂い。
唯先輩らしいと言えばらしいかな。
でもなんだか……お母さんのイメージもあるような気がする。
普段はだらしないけどそれでもやっぱり先輩で、いざという時に頼りになるし。
お母さんのような優しくて暖かい匂い。
唯先輩って体温高めだから余計にそう感じるのかも。
はあ……あったかい。いい匂い。
赤ちゃんぽいけどお母さんのようでもある不思議な匂い。
こうしていると子猫を抱きしめている時みたいに胸がきゅんてする。
……あ。また流されちゃった。
やっぱり私って甘いものに弱いのかなあ。



END



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最終更新:2011年07月21日 02:48