Ch.079 魔法の言葉を囁いて


梓「こんにちはー」

律「おーう」

目の前にあるごつい4WDから返事が聞こえた。

律「あずさー悪いんだけどそこにあるレンチとってくれない?」

梓「えっと、これかな」

律「サンキュー」

私は車の手前にしゃがみこんだ。
コロコロと台車の転がる音と一緒に車体の下から律先輩の手が伸びてきたのでレンチを手渡した。
どうやら台車に背を乗せて車の下で作業しているらしい。

律「あ、これじゃないや。他のレンチがその辺にあるだろ?」

台車の動く音がして今度は律先輩が顔を出した。

律「……あっ」

梓「あんっ」

車の前でしゃがみこんでいた私の股の間に律先輩が顔を差し込んできた。

梓「ちょ……律先輩何やってるんですか!」

律「何ってレンチ取ろうとしただけだよ」

梓「ひゃああ! 喋らないで!」

短めのスカートをはいていた所為で律先輩の顔が私のパンツに密着してしまっている。
さらに律先輩の口が私のアソコに……。

律「そう言われてもなー。レンチとしか言わなかった私も悪かったな。
私が欲しかったのはコンビネーションレンチっていうやつでレンチの両端に同一サイズのめがねレンチとスパナが付いているものなのよ。仮締めと本締めが一本のレンチで使い分けできるっていうすぐれものさ」

律先輩が喋ると私の身体に振動が伝わってきた。
その振動を一身に受けるのは私の大事な部分。
かつて無い衝撃が私を襲った。
律先輩の声がパンツによって振動を増幅されてなんだかよくわからないけれどそんな感じのはず。

梓「あ……は……」

律「どうした梓?」

小刻みに震える私を気遣って律先輩が私の名前を読んだ。
その瞬間私はじんわりと痺れるような感覚に襲われる。

梓「えっ、何……んはぁ……!」

その感覚に耐え切れなくなって前のめりになる。
律先輩の平らな胸に手をついてしまった。

梓「はあ、はあ」

どういうこと?
さっきよりも激しい感覚……というか快感が。
それはさっきのレンチだかスパナのようなどうでもいい話をしていた時の比じゃない。
もしかして言われた言葉によって快感が変わるのだろうか。
ってそんな事考えてる場合じゃなかった。

梓「律先輩早くどいて……」

律「むしろ私がどいて欲しいよ。動けないっての」

梓「ああっ!」

律「……ん? 梓お前……パンツ濡れてるんだけど」

梓「ひっ、やだ……やだ……んああぁあああああぁぁぁ……!」

言われた瞬間、猛烈な羞恥心と快感に襲われた。
アソコから脳天を貫かれたような激しさで何も考えられなくなる。
だらしない声を発して腰をびくつかせて頭が真っ白になって……。
気付いたら律先輩に覆いかぶさってしまっていた。

律「えーと……何だかよくわからないけどゴメン、大丈夫?」

梓「んひっ、ら、らいじょうびゅでふ」

全然大丈夫なんかじゃない。
かつて無いほどの快感を連続で味わってしまった。
それも段々強くなる快感を。
でも今ので確信した。
何を言われたかによって快感の度合いが違うんだ。
私はヨロヨロと立ち上がると律先輩の元を後にした。

律「おーい……私に用があったんじゃなかったのか?」

梓「ごめんなさい……また来ます」

私はふらついた足取りでホームセンターへ向かった。


私はホームセンターで木の板に車輪が付いただけのシンプルな台車を購入した。
結構な出費だった。
それを抱えて平沢家のチャイムを鳴らした。

唯「はーい」

暫くして出てきたのは唯先輩だった。
憂が出なかったと言うことは家にいるのは唯先輩だけか。

梓「お久しぶりです唯先輩」

唯「あずにゃん! 急にどうしたの?」

梓「突然なんですけど久しぶりに桜高を見に行きませんか?」

唯「桜高?」

梓「はい、だめですか?」

唯「うーん……暇だったしいいよ。ちょっと準備するから上がって待っててね」

梓「ありがとうございます」

唯先輩の準備が完了すると私達は桜高へ向かって歩き出した。

唯「桜高か~久しぶりだね」

梓「はい」

唯「ところであずにゃんは何を持っているの?」

梓「これですか? 詳しくは秘密ですけど桜校で遊ぶための道具です」

嘘をついた。
私は最低だ。
そんな最低な自分の行為に興奮している私が最低だ。

梓「今日は休日だし確かテスト期間中だから生徒は誰もいないと思いますけど」

唯「あ~テストか。なんだか懐かしいや」

会話をしていると桜高が見えてきた。

梓「まず校庭に行きましょう」

唯「校庭?」

よくわかっていない唯先輩を無理やり校庭に連れて来た。
そして台車を唯先輩に見せる。

唯「台車……だよね」

梓「台車です」

唯「……これで遊ぶの?」

梓「まあまあ、とりあえず仰向けで乗ってみてください」

唯「え、うん……。これでいいの?」

唯先輩を台車に乗せることに成功した。
よし、よし、よし。

梓「そしたら足でこいでみてください」

唯「こう?」

カラカラカラ。
校庭の隅で台車で遊ぶ私達。
いつ誰かに見つかるかわからない。

唯「……お。結構楽しいかも」

梓「よかったです」

梓「じゃあ私は向こうに行ってますから先輩は台車をこいで来てください」

五十メートルは離れただろうか。
台車に寝そべった唯先輩が小さく見える。
あ、動き始めた。
のろのろと台車が発進する。
学校に着いてからずっと怪訝そうな顔をしていたけどちゃんとやってくれるみたい。よかった。
あぁ……もうすぐ唯先輩が私の所へ。

梓「はあはあ……」

まだ数メートルしか動いていない。
じれったい。じれったいけどわざわざ五十メートルも離れたのにだって意味がある。
何事も我慢して手に入れた方がその時の喜びはひとしおだ。

梓「はあはあはあ……」

ああっ、唯先輩コースずれてる。それにスピード遅すぎ。

梓「うくぅ……!」

やっぱりだ。
唯先輩ならじらしてくれると思ってた。
身体が熱くなってきた。
息も苦しい。
早く……はやくぅ……。

あっ。
もう少し、もう少しですよ先輩。

梓「こっちです先輩」

唯「あ……あずにゃん……これ結構疲れるんだけど……はあふう」

梓「あと……あと三メートルですから!」

来る……唯先輩が来ちゃうう。
私はしゃがみこんで唯先輩を迎える準備をする。

梓「もうちょっとですよ……はあ……はあ……」

唯「へえ、はあ……なんであずにゃんが疲れてるの……?」

梓「あ……」

ここにきてスピードを落とすなんて……。
気が狂いそうだ。
もうすぐそこまで来ているというのに。

唯「あとどれくらい?」

梓「はあ……はあ……え? あ、一メートルです」

唯「おっし。とうっ!」

梓「えっ!」

唯先輩は両足で地面を蹴って台車に勢いをつけた。
この距離でそんなスピード出したらどうなるか……予想する前に唯先輩の顔面が私のアソコに着弾した。
ザシュ。
そんな音がした。

梓「んああっ!」

唯「!?」

梓「か……かは……っ」

ぶつかった衝撃で思わずのけぞってしまった。
唯先輩は何が起こったのか把握しきれていないみたい。

梓「先輩……大丈夫ですか?」

さあ、唯先輩何か喋って。

唯「…………え?」

梓「っはぎぃぃぃ……!」

なんてこと。
たった一言、たった一文字の感動詞。
しかしそこからは何もわかっていない唯先輩の無垢さを感じられて、その無垢さを利用して騙している背徳感がむくむくと膨らんでくる。
そこに追い討ちをかけるように羞恥心が流れ込んできた。
唯先輩と接触したことで私のパンツが濡れている事を思い出させられたのだ。律先輩の時にだいぶ濡らしちゃったし今までじらされた事もあってびちゃびちゃ。
さらにパンツが湿った所為なのか振動の強さが倍になっていた。

梓「っあ……う……」

身体を震わせながら快楽の波に耐える。
まさかここまでの快感が得られるとは思わなかった。

唯「はあ……はあ……」

私が必死に耐えているというのに唯先輩は息を荒くして私に刺激を送り続けている。
ここまで台車をこいで息があがってるから仕方ないんだけど今の私にはそれだけでも致命傷だ。
まずここは耐える事にして次の唯先輩の言葉でイこう。
きっと私の名前を読んでくれるに違いない。何が何だかわからないといった感じで「あずにゃん……?」と。名前の破壊力は律先輩の時に実証済みだ。今の状況と合わされば何倍もの衝撃が私を――

唯「へっっぶしっ!!」

あ――
一瞬でもっていかれた。
メーターが振り切れてしまった。
そんな……こんな時にくしゃみをするなんて……唯先輩のバカ。
もうすぐ来ちゃう。
何がよかったのかわからない。
振動? 衝撃? それともくしゃみが私の琴線に触れたの?
言葉ですらないのに。
くやしい。
こんなのでイきたくない。でももうだめ。頭に靄がかかってきた。
あ、あ、きちゃう、きちゃう、き――

梓「や、ら、あ、あ、あ……んんんんんぅううううううぅぅぅぅぅ!」

唯「――あずにゃんてば」

梓「ひぐっ」

あ……あー……。
漸く戻ってこれた。
ありえないほど気持ちよかった。
けどくしゃみでイったなんて思いたくない。
きっとくしゃみの勢いと濡れたパンツの症状効果だよね。
決してくしゃみなんかでイってしまう自分に酔っていたからじゃない。

唯「あずにゃんどうしたの? 大丈夫?」

梓「あっ! 今は……喋らないで……うあひっ」

腰がいう事をきかない。
何もわかっていない唯先輩の上でビクビクと震えている。
唯先輩は私の事を心配してくれているのにそれが私を余計にゾクゾクさせてる。

梓「す、すいません……唯先輩」

唯「だいじょうぶ?」

梓「ひぎぃ……!」

だいじょうぶ。
なんて濁音の多い言葉なんだ。今の私にはつらいよう。
先輩が優しくするほどに私の快感が増していく。

これ以上気持ちよくなったらどうなっちゃうの。
怖い。
怖いけど……あとにひけない。
もう気持ちよくなることしか考えられない。
もうどうにでもなっちゃえ。

梓「唯先輩……」

唯「どうしたの?」

梓「あんっ……私唯先輩の事が……好きなんです」

気持ちよくなりたい一心で口から突いて出た言葉がこれだった。
確かに唯先輩のことは友達として好きだ。でもそれだけ。
なのに大変な事を口走ってしまった。
唯先輩は何て答えるのだろう。
それを受け止める私のアソコはどうなってしまうのだろう。
今までの関係が崩れるかもしれない。そしたらどうしよう。……そう思うことすら快感に変換される。

唯「え……あずにゃん?」

梓「んん……ふあ」

戸惑った声。
さあ今度はどう返すんですか。
ああ、今必死に考えているんだろうなあ。
それとも思考停止しちゃってたりして。

唯「えっと……ごめんなさい」

梓「あ……っ!」

唯「あずにゃんの事は好きだけど……後輩として、友達として好きなの」

梓「は、あ……んんんん!」

唯「だから、ごめん」

梓「ほぁ……ふぁああ……!」

ああああ振られちゃった。
だけど最高に気持ちいい。
唯先輩の辛そうな声が私のアソコに響いている。
でも足りない……。

梓「そうですか。じゃあ嫌いって言ってください」

唯「え……どうして」

梓「ん、なんとなくです」


梓「ほら、私とは付き合えないんでしょう? なら早く言ってください。私のことなんて嫌いだって――」

唯「そんな事言えるわけないじゃん!!!!」

梓「ひぐうううううっ! ……く、へ、あ……!」

あああああやっぱり唯先輩はずるい。
そんな大声出されたらアソコが壊れちゃいますよ。
唯先輩の思いが湿ったパンツを通過して倍増して伝わる。
今の言葉で全身に電気が走ったみたいだ。
もう……い、く……

唯「あずにゃんのバカ!!」

梓「あひぃっ!? な、なにを……」

唯「さっきも言ったじゃん。あずにゃんの事……友達として好きなの! それなのにいきなり嫌いなんて言えるわけ無いでしょ! 今日のあずにゃん変だよ!!」

梓「ひゃ、ひゃめてぇ……も、もういってるからぁ……! んっ、んぐっ」

唯「普段のあずにゃんならあんな事言わないでしょ? ……もしかして何かあったの?」

梓「はっ、あっ、あっ、あっ……はあっ、あ、な、なんでもないですっ……だからしゃべら、あぁんっ!」

唯「どうしちゃったのあずにゃん……あ、あれ? あずにゃん、なんだかパンツがねばねばしてきてるんだけど」

梓「んぎいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

――あ、あれ。
私失神しちゃってた……?
うっすら目を開けると唯先輩のジーンズが目に入った。
そっか、唯先輩に倒れこんじゃったんだ。

梓「ぁ……唯先輩ごめんなさい」

唯「あ、あずにゃん起きた? 大丈夫?」

梓「んっ……なんとか」

死ぬかと思った。
もうイってるのに唯先輩が話をやめないんだもの。
それに私の言うバカみたいな事に必死になってくれて、そんな健気な先輩の言葉に加えて……ネバネバって何よまったく。最高。
力が抜けてしまってろくにうごけない。
先輩の口は私のアソコにくっついたままだしどうしよう。
今何か言われたらまた飛んじゃうかも。

梓「唯先輩……ひとつだけお願いがあります」

唯「何?」

梓「私の名前を大声で叫んでくれませんか?」

唯「…………うん、いいよ」

梓「思いっきりですよ? これでもかって言うくらいの大声を――」

唯「ああぁああああああああああああああぁ!!!!」

梓「っ…………っ!」

あ――
声がでな、い……
からだか、ガクガクって悲鳴上げてる……

唯「ずううううううううううううううううううう!!」

梓「かはっ……! あ……が……っ!!」

あ、もう、もうきちゃう。
先輩の叫び声は今までのことばよりずっとすごいよぉ。
きもちよすぎるおなかがひくひくしちゃう。
わたしぜったいだらしないかおしちゃってる。

唯「にゃあああああああああああああああああ!!!」

梓「いぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

唯「んんんんんんんんんんんんん!!!!」

梓「んんんんんんんんんんんん!!!!」


あの後再び気を失った私は唯先輩に台車で運んでもらったみたい。
アスファルトのゴツゴツとした振動が心地よかったのをなんとなく覚えている。

今度は憂に頼んで論文を発表してもらおうかな。
とびきり難しいやつがいい。
そんなくだらない事を考えていられるのも唯先輩との関係が壊れなかったからだ。
あの時の私はどうかしてたよ。
もう無茶な事は控えないとなあ。

それともうひとつ。
この経験を通して今までの考え方を改める事が出来た。
それは歌詞の重要性。
私が音楽を聞く時は大体ギターを中心に楽器を聴いている。
ヴォーカルもメロディラインとして聞くから歌詞に重きを置いていなかった。
軽視してたんだ。
だけど、言葉の重みを知ることが出来てからそんな事はなくなった。
歌詞の、言葉の大切さに気がつくことができた。
そこに隠された思いにも。
そう考えると澪先輩の歌詞も捨てたもんじゃない……かも?

バンドは楽器だけじゃない。
素敵な演奏と歌詞に愛を込めれば全身が痺れるような快感を与えられる。
私はそんな音楽をやっていきたいと思います。



END



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最終更新:2011年07月22日 21:53