律「……」

ガチャッ キー

律「」ピク

梓「あ、やっぱりここにいた」

律「……何だお前か」

梓「何だとは何ですか」

律「何しに来たんだよ」

梓「お昼を食べに」

律「教室で食え」

梓「一緒に食べましょうよ」

律「一人で静かに食いたいんだ」

梓「けち」

律「何とでもいえ」

梓「せっかくウインナーあげようと思ったのに」

律「」ピクリ

梓「ほら、たこさんウインナー」

律「……」

梓「私の手作りですよ。早起きして作ったんです」

律「……」

梓「料理は慣れてないんですけど案外上手くいきました」

律「……卵焼き」

梓「へっ?」

律「その卵焼きもつけろ」

梓「よくばり」

律「うっせ」

梓「仕方ないですね、それでいいですよ」

律「ん。座れよ」

梓「失礼します」

梓「いい天気ですね」

律「ん。暑いぐらいだ」

梓「夏ですから」

律「そっか。もう夏か」

梓「でも、日陰だから涼しいです」

律「暑い日陰があってたまるか」

梓「それもそうですね」

律「……」

梓「はい、どうぞ」

律「……何してんだ」

梓「何って、あーん」

律「自分で食えるから」

梓「……」シュン

律「……分かったよ、さっさとしろ」

梓「!」パアァ

律「ちっ」

梓「はい、あーん」

律「」パクッ

律「……」モグモグ

梓「どうですか?」

律「甘い」

梓「……」

律「……」

梓「甘い卵焼きは嫌いでしたか?」

律「……」

梓「ごめんなさい、気がつきませんでした」

律「……」

梓「そっか、失敗」

律「美味しい」

梓「えっ?」

律「美味しいって言ったんだよ」

梓「本当ですかっ?」

律「お前にお世辞なんか言うか」

梓「わぁ、嬉しいです」

律「……ウインナーも」

梓「はい、どうぞ」

律「……」モグモグ

梓「……」

律「」ング

梓「……」ジー

律「……美味しい」

梓「えへへ」

律「……」ムシャムシャ

梓「……」ジー

律「何だよ」

梓「律先輩ってお昼はいつもサンドウィッチなんですか?」

律「別に。何となく」

梓「栄養偏っちゃいますよ」

律「ほっとけ」

梓「いーえ、ほっとけません」

律「……」

梓「うーん……そうだ! 今度私がお弁当を作ってきます!」

律「いらん」

梓「そんなこと言わないで。頑張って作りますんで」

律「いらんものはいらん」

梓「あうぅ……」

律「……」

梓「ぐすん」

律「……作ってくれたら食べるよ」

梓「本当ですか!?」

律「材料がもったいないからな」

梓「わぁい! 私、頑張ります!」

律「ん、頑張れ」

梓「ふぅ~、お腹いっぱいです」ポンポン

律「ウインナーと卵焼きごっそさん」

梓「お粗末様です」

律「……」

梓「」ゴロリ

律「何してんだ」

梓「うぅん、律先輩のひざ枕気持ちいいです」

律「暑い。重い。どけ」

梓「いいじゃないですか」

律「よくねーし」

梓「……けち」

律「ほら、どいたどいた」

梓「あぁもう、ひざたてないでくださいよ」

律「私の勝手だ」

梓「肩なら寄りかかってもいいですか?」

律「……」

梓「いいんですね」

律「好きにしろよ」

梓「ありがとうございます……んしょ」

律「……」

梓「えへへ~、楽ちん楽ちん」

律「……やっぱ重いからどけ」

梓「いやですよーだ」

律「肩動かすぞ」

梓「やめてください。頭地面に打っちゃいます」

律「受け身でもとれよ」

梓「とりません」

律「何でだよ」

梓「何でも」

律「……」

梓「どかさないんですか?」

律「めんどい」

梓「そうですか」

律「……」

梓「えへへ」

律「……」

梓「やっぱり律先輩は優しいです」

律「うっせ、黙ってろ」

梓「くすっ、恐い恐い」

キーンコーン カーンコーン

律「……」

梓「チャイム鳴りましたよ」

律「んなもん聞きゃ分かる」

梓「そうですね」

律「……」

梓「戻らないんですか?」

律「ん、めんどい」

梓「授業は?」

律「知らね」

梓「ふぅん」

律「……」

梓「……」

律「お前は戻れ」

梓「私ももう少しいます」

律「いや帰れよ」

梓「……」

律「二年のうちからサボんじゃねえ」

梓「律先輩こそ受験生のくせにサボっちゃ駄目じゃないですか」

律「私はいいんだ」

梓「後になって苦労しますよ」

律「今でも大いに苦労してるよ」

梓「嘘つき」

律「嘘じゃねーよ。部活にバンドにドラムに……」

梓「全部軽音部絡みなんですね」

律「悪いか」

梓「いえいえ、ご立派」

律「……」

梓「いつも部長の仕事頑張ってますもんね」

律「ん、多分」

梓「律先輩は、やることはちゃんとやる人です……不真面目だけど」

律「一言余計だ」

梓「それは失礼」

律「ちっ……」

律「……」

梓「……」

律「……あっ」

梓「どうしたんですか?」

律「もう一つ苦労してることがあった」

梓「?」

律「後輩」

梓「……それも軽音部絡み」

律「お前はやけに私に絡むよな」

梓「いけませんか?」

律「別に」

梓「じゃあ、いいじゃないですか」

律「うん、まあ」

梓「……」

律「……」

律「私に付き合って不真面目になっていいのかよ」

梓「私の自由です」

律「そうだけど。でも、お前っていかにも真面目キャラだし」

梓「まあ、中学までは授業さぼらない程度には真面目でした」

律「高校入ってからは?」

梓「この通りです」

律「ふぅん」

梓「律先輩のせいですね」

律「何でだよ」

梓「律先輩がサボるから」

律「それこそ私の自由だ」

律「お前は澪とかムギの方に懐きそうなのに」

梓「二人ともすごく尊敬してますよ」

律「ふぅん」

梓「格好いい澪先輩、優しいムギ先輩……もちろん明るい唯先輩も尊敬してます」

律「私は?」

梓「尊敬とは別次元です」

律「どういう意味だよ」

梓「さぁ」

律「何だそれ」

梓「悪い意味じゃないと思いますよ?」

律「なら許す」

梓「相変わらず単純ですね」

律「うっせ」

梓「くすくす」

梓「あ、見て律先輩」

律「ん?」

梓「入道雲」

律「ほんとだ」

梓「でっかいですね」

律「こっち来なきゃいいな」

梓「あっちいけー、あっちいけー」

律「それじゃ雨乞いしてるみたいだぞ」

梓「……はっ」

律「ずっと北の方にあるし大丈夫だよ」

梓「じゃあ、あっちの方は大雨ですか?」

律「多分な」

梓「雷とか鳴ってるんですか?」

律「そうじゃねーの」

梓「こわいです……」ギュッ

律「……」

梓「……」ギュウゥ

律「どさくさに紛れて抱きつくな」

梓「分かりました?」

律「大体お前は雷なんか怖がるような性格じゃないだろ」

梓「そうでした」

律「……」

梓「……」

律「放せよ」

梓「いやです」

律「暑い。重い」

梓「無理矢理放せばいいじゃないですか」

律「……」

梓「放さないんですか?」

律「めんどい」

梓「そうですか」

律「……」

梓「満更でもないって顔してますよ」

律「黙ってろ」

梓「はーい」

律「……」

梓「りーつせんぱい」キュッ

律「……」ハァ


イッチニー ファイト イッチニー ファイト

梓「かけ声が聞こえてきますね」

律「暑い中ご苦労なこった」

梓「あれ律先輩のクラスじゃないんですか?」

律「さぁ」

梓「ほら、澪先輩やムギ先輩らしき人が」

律「……」

梓「後ろの方でへばってるのは唯先輩かな?」

律「……」

梓「あ、こけた」

律「っ?」

梓「大丈夫かな……あ、誰か近づいていった」

律「……」

梓「あの眼鏡の人は和先輩かな」

律「……」

梓「ふふ、幼なじみっていいなぁ」

律「おい、梓」

梓「何ですか?」

律「日陰入っとけ」

梓「ちょっと暑いけど大丈夫ですよ」

律「お前すぐ日焼けするだろ」

梓「あ、それは嫌かも」

律「それに、熱中症なっても知らねーぞ」

梓「……そうなったらどうします?」

律「ほっとく」

梓「嘘つき」

律「……」


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最終更新:2011年07月23日 01:40