梓「悔しいからです!!」

梓「本当に使いたいギターがあるんですが、それを使うとギー太と比べられるからなんです!!」

梓「もちろん、ギターを知らない人にはわからないことですが」

梓「ギターを知っている人にはすぐわかってしまうようなことなんです。」

梓「ムギ先輩?世の中にはグレードという階級があるのはご存じですよね?」

ムギ先輩はあらゆるヒエラルキーの頂点にいることを承知の上での質問だった。

紬「それはわかってるけど...」

梓「ギターも同じなんですよ!!」

梓「唯先輩のギー太は高校生が持ってるギターとしては頂点に居るんです。」

梓「そんなギターと重ならないようするために、今のギターを選んで弾いているんです。」

紬「重なったらダメなの?弾きたいギターを弾いたらいいじゃない?」

梓「それは...」

梓「QPが可哀想なんです。」

紬「QP?」

梓「あっ、ごめんなさい(ペコリ)。QPは私がとても大事にしているギターの愛称なんです。」

梓「もっとも愛称と言っても私の家族にしか通用しませんが...」

紬「ううん。いいのよ。それより QP ってギターの事を聞かせて」(チョットwkwk)

私は QP こと、レスポール Jr の事をできる限り詳しく説明した。

  • とてもシンプルなギターであること。
  • レスポールシリーズのスチューデントモデルであること。
  • それでいて、そのパワフルな音色で著明なギタリストが多々愛用していること。

ムギ先輩は聞き役に徹してくれたから、私は言いたいことを洗いざらいぶちまけた。

そのせいか、モヤモヤした気分はずいぶんと解消された

けど...

梓(あっ!!ムギ先輩はそんな話をされても困るだけだよなぁ~)

案の定、ムギ先輩は苦虫か亀虫を噛みつぶしたような顔をしている。

梓(ところで亀虫って噛みつぶしたらどうなるんだろ?)

どうでも良いことが頭をよぎってしまった。

紬「梓ちゃん?一度そのギターの音を聴かせてくれない?」

紬「梓ちゃんの好きなギターがどんな音色なのか知りたいの!!」

紬「音色と梓ちゃんの指向がわかれば、梓ちゃんのモヤモヤを解消できるかもしれないし...」

梓「部室にですか?」

梓「唯先輩が混乱しないですかね?」

梓「高校生でギターを何本も持ってるって信じてもらえるでしょうか?」

紬「大丈夫よ!!、唯ちゃんは『梓ちゃん大好き』だから気にしないはずよ!」

梓「..........」

紬「大丈夫よ!!音楽って楽しんだもの勝ちでしょ?だから今のバンドにこだわる必要もないし」

紬「今のバンド以外のユニットも面白いと思うの」

紬「テクニック的に梓ちゃんが満足できるかどうかわからないけど挑戦してみるのも楽しいよね!!」

ムギ先輩はクラシックで培ったテクニック(+天性の音楽才能)からか恐いもの無しのようです。

おまけに知らないことを知りたいという好奇心が加わって、私の QP に興味深々です。

ムギ先輩にお願いすれば、おそらく私の欲求を満たしてくれる状況を作ることも可能だけれど、

ムギ先輩はそれを望まないことでしょう。

ムギ先輩の凄いところは高校生としての分をわきまえているところです。

無茶な事でも実現できるだけの境遇にありながら、ギリギリのところで抑えているのがムギ先輩。

もし、ムギ先輩に甘えてしまったら私たち軽音部部員達は全員社会不適格者になったことでしょう。

ムギ先輩は上層階級だからこそ、その影響を知っているんでしょうね。

本当に頼りになりますムギ先輩!!。


次の日、私は QP こと レスポール Jr を持って部活に行った。

律「...」

澪「...」

ちょっとびっくりした先輩が二人。

紬「へぇ~」

ムギ先輩は興味津々です。

で、肝心の唯先輩はというと


唯先輩はなにも気にしていません。

梓(助かった~)

私はギターを自在に選べる環境にいることに対する少なからない嫉妬を懸念したけど、

梓(杞憂ってこういうことなんだなぁ~)

紬「そのギターって可愛いわね?、そのギターの方が梓ちゃんに似合ってるよ(ウフフ)」

律・澪「梓って、ギターを何本か持ってるのか?」

梓「えっ?、あっ...そうですね。両親がジャズミュージシャンなので恵まれてるかも知れません。」

梓「でも、このギターは私が本当に弾いてみたかったギターなんです。」

梓「唯先輩のギー太と比べられると思うと気が引けるんで披露できなかったんですが」

梓「このギターがとっても気に入ってるんです。」

早速、ギターを弾いてみたところ、一瞬のうちにムギ先輩はギターの特性を見抜いたみたいです。

紬「見た目とは思えない位にパワーがある上に音がきれいね!!」

紬「特にクリアな高音はとっても気持ち良いと思うわ!!」

紬「ねぇ?澪ちゃん?りっちゃん?」

紬「梓ちゃんのこのギターを活かした演奏ってできないかしら?」

紬「もちろん今の軽音部の5人の活動が基本だけど、課外活動的な感じでユニットを組んでもいいんじゃない?」


ムギ先輩曰く

紬「5人いるんだから、HTT以外のユニットやソロの可能性は30通りあるんだから、
  梓ちゃん中心のバンドがあってもいいんじゃない?」

30通りの根拠がわからないけど、ムギ先輩は 2の5乗から、HTT と誰もいないの2通りを引いたらとか...

紬「そうねぇ~梓ちゃんはギターが上手いしジャズが好きだから、ジャズがいいんだけど」

梓「そうですねぇ...でもジャズはリズムが難しいから澪先輩や律先輩ではちょっと難しいと思いますよ。」

紬「う~ん...」

梓「あの~ムギ先輩?」

紬「なぁに?」

梓「ジャズじゃないんですけど、ジャズっぽいロックで演奏してみたい曲があるんですけど...」

紬「へぇ~、じゃあその曲を演奏すればいいじゃないの!!」

梓「それがですね~、なんというか...その~」

思い切って言ってみたが、いざ演奏するとなるといろいろな問題があった。

まず、

梓「その曲のギターがメチャクチャ速いんです。」

梓「高速メタルの速さじゃ無くって、泥臭い速さなんです。」

梓「だから格好いいんですけど、今の私のレベルでは演奏できる自身がちょっと...」

紬「へぇ~梓ちゃんでも手を焼くんだぁ~」

ムギ先輩?私は先輩と違って、コンクールで賞を取る程の腕前じゃないんですよ...

それに好きだから弾けるってもんじゃないです。

梓「私はムギ先輩と違って、演奏面ではまだまだ未熟ですよ...」

紬「うふふっ!!そうよねぇ~」

紬「ねぇ?梓ちゃん?」

紬「今度、その曲を聴かせてくれない?」

紬「梓ちゃんの弾きたい曲って、と~っても興味があるわぁ~」キラキラ

梓「わかりました、今度持ってきます。」


家に帰って、早速その曲が入った CD を捜し出した。

原盤は廃盤だったんだけど父親が学生の時に CD で再発売という代物。

日本では知っている人が少ないけど、かのウッドストックにも出演した伝説のバンドだそうな...

その CD を手にしながら、ふと...

梓「そういえばお父さんはが『レスポール Jr と言えば、あのバンドだよなぁ』と言ってたバンドがあったっけ?」

梓「お父さんは CD かアナログ盤はあるはずっていってたけど...」

梓「まぁ、今回はいいや」

CDを鞄にいれながら、

梓「ムギ先輩なら、この演奏をうまくアレンジしてくれるかな?」

と思いながら、20年ほど前に録画した VHS からおこした DVD も一緒に鞄にいれた。

梓(ムギ先輩はどんな反応をしてくれるかな?それに本当にユニットが組めるのかな?)

ムギ先輩!!期待してしまいましたよ!!ちゃんと期待に応えてくださいね!!

小学生の時の遠足前夜のようなワクワク感がどこからともなく湧いてきた。


翌日の放課後の部室、練習もせずにいつも通りのティータイムを興じている中、私はムギ先輩に CD と DVD を渡した。

その様子を目ざとく見つけたのは律先輩。

律「梓!!それなんだよ?」

紬「あ~これ?実は梓ちゃんの秘蔵コレクションを貸してもらう約束をしてたのよ!!」

紬「ね~?梓ちゃん」

梓「へっ?あっ、ハイっ!!」

澪「梓の秘蔵のコレクションかぁ~、私も興味があるなぁ~」

紬「澪ちゃんには後で貸してあげるわよ。梓ちゃんいいでしょ?」

梓「へっ?あっ、ハイっ!!」

紬「あっ!!そうそう!!それでね?」

紬「この秘蔵のコレクションの曲で良い曲があったらね?」

紬「梓ちゃんをメインにしたユニットで演奏してみない?」

梓「へっ?」(ここでそれを言うの?)

唯・律「それなんか面白そう!!」

梓(うーん、こればっかりは唯先輩の出番は無いかもしれないけど...)

梓(唯先輩には唯先輩のためのユニットを組んでもらうことにしよーっと)

紬「でしょ~?」

紬「それでね、一度聴いてみて私たち向けにアレンジできればな~って思ったの。」

ムギ先輩はそういいながら、私に軽くウィンクをくれた。

梓(ムギ先輩って、本当に物事に動じないなぁ~)

梓(あたかも自然に振る舞ってるけど、私には予想外の連発ですよ!!)アセアセ

それにしてもムギ先輩のウィンク!!その可愛いさは反則です。

少々ハプニングがあったけど、いつも通りの放課後を過ごし家に帰ったら、ムギ先輩からメールが届いた。

紬『梓ちゃんの演奏したい曲ってCDの2曲目でしょ?』

梓「うっ!!あたってる!!」

紬『DVDの方の曲はちょっとアレンジが難しそうだけど、HTTでも演奏できるよ』

DVDには一曲しかいれていなかったんで、すぐにわかってもらえるとはおもっていたけど

梓「あの曲をアレンジできるの?しかもHTT向けに?」

と、思もいつつも、実はできることはわかっていた。

要は「ムギ先輩のお墨つき」が欲しかったんだと思う。

紬『ある程度アレンジが固まったから、明日にでも皆に提案してみるからね』

紬『演奏することが決まったら、梓ちゃん!!』

紬『頑張ってね』

...........................

アレンジが固まったって?

もう何も言えません。

そこまで私に協力してくれるとは思ってませんでした。

たとえ皆に反対されたとしてもムギ先輩には感謝します。


...翌日の放課後...

紬「ねぇねぇ、みんな聞いてくれない?」

一同「ん?」

紬「実はね?私、梓ちゃんをメインにしたユニットで演奏したい曲を見つけたの」

澪「例の秘蔵コレクションか?」

紬「ん!!そう」ニコニコ

紬「でもね?とーってもギターが難しいの!!」

紬「唯ちゃんがいくら天才だったとしても、これはテクニックの部分なんで残念ながら唯ちゃんには無理なのよ」

唯「チェーっ」

唯「あ?でも、あずにゃんがやってみたいんなら私は構わないよ!!」

唯「あずにゃんはいつも私達を影で支えてくれてるから、たまにはあずにゃんを皆で支えたいよね!!」

紬「ありがとう唯ちゃん!!」

律「で?それはどんな曲なんだ?」

紬「それはね、この曲なの」

ムギ先輩は皆の前で、自分で作成したであろう CD を再生した。

一曲目は例の「2曲目でしょ?」で見事に的中させた曲

Ten Years After の Undead というライブアルバムに入っている

  • At The Woodchopper's Ball,

という Jazz のスタンダードのロックバージョン。

ギターとオルガンがリードを取るインストナンバーだけど

とにかくギターが速い!!

何も考えずに速い!!

テクニックではなく単に速い!!

野性的なギターが魅力な曲。

ムギ先輩は律先輩が4ビートで打てれば大丈夫とか言ってるけど、

梓(この曲のギターが弾けたら Go Maniac のソロなんて子供の遊びですよ...アセアセ)

そして、次の曲は 1992 年にバルセロナで開催されたギタリストの祭典で伝説のギタリスト「レス・ポール」が演奏した。

  • How High The Moon.

ギター2本とウッドベースのトリオによりこの演奏にムギ先輩は大層感動したそうです。

ただ、ムギ先輩は

紬「アレンジは難しくないけど、雰囲気が大事だから女子高生が演奏するには枯れすぎてるかな?」

ごもっともです。

この曲は聴き手に徹するに限ります。

梓(この曲を演奏するのは50年後の方がいいかな?)

そして、ムギ先輩は意外な曲を聴かせてくれました。

紬「この曲って、結構面白いのよ」

紬「たしかにだらだらと長い曲だけど、演奏は難しくないのに妙に印象が残るのよ」

ムギ先輩が最後に聴かせてくれた曲はなんと Mountain の

  • Nantuchet Sleighride

えっ?なんで?

梓(私も咄嗟にでてこなかったバンドの曲じゃん!!)

紬「実はね?梓ちゃんが持っているギターって他にもあるの」

紬「そして、梓ちゃんのお気に入りのギターは、部活で使っているギター以外にもあるのよ」

紬「このバンドのギタリストはそのギターを使って有名になったのよ」

紬「バンド自体は古くさい音だけど、この曲は今での通用するような気がしたの...」

紬「この曲だと唯ちゃんはボーカルに専念してもらうことになるから結構難しいかもしれないけど」

紬「ボーカリストの唯ちゃんも新鮮だと思わない?」

ムギ先輩はあらゆる面で想像を軽く越えていきます。

そんなムギ先輩が私のためにアイデアをだしてくれる。

とてつもなく心強いです。

と、ここで疑問が...

梓「あ、あの~ムギ先輩?」

紬「なぁに?」

梓「ユニット編成して演奏するのはいいのですが、どこで演奏するんですか?」

一同「そうそう!!」

紬「??????」

紬「どこでって...どこでも演奏できるじゃない」

紬「ライブハウスでも路上ライブでも...」

紬「あっ!!でも路上ライブは準備が結構大変だから、ライブハウスに出演したらいいんじゃない?」

紬「外バンだと思えばいいじゃない!!」

ムギ先輩は視野が広いです。

お嬢様なムギ先輩ではなく、「お嬢様」はムギ先輩の属性の単なる一つなんですね。

いろいろな面で感動しました。


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最終更新:2011年07月24日 23:17