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唯「――今更私の家なんて来ても、何もないのに…」

澪「いいんだ。唯の家、唯の部屋ってだけで意味があるんだから」

唯「そういうものなのかな……」

澪「………」

……私は今、10何年と生きてきた中で最も汚く、狡賢い思考をしている。
唯を縛り付ける。そうは言ったものの、唯の決意は固く、成功するかはわからない。
でもこのやり方なら、成功しても失敗しても、私は得をする。
だって、だって私は……唯が好きなんだから。世界中の誰よりも、唯を愛しているから。だからこれくらいの事は、きっと許されていいはず。

澪「唯」

唯「うん?」

澪「キスしていい?」

唯「ほえっ!?」

いつぞやのように床に腰を下ろしている私達。唯の隣まで行くのは容易だった。

澪「いい?」

唯「だ、だめ…」

澪「どうして?」

唯「だって…憂の身体だし…」

澪「バレないよ、キスくらい」

唯「で、でも……」

澪「…嫌なら嫌って、ちゃんと言ってくれ。ダメじゃなくて、イヤ、って」

唯「イヤってほどじゃ……」

澪「じゃあ、いいよね?」

唯「う、うぅ……」

……我ながら卑怯な質問だが、心は痛まない。
いや、痛む余地すらないほどに心が冷え切っていた、というのが適切か。
唯を騙し、無理矢理迫る。そんなこと、正常な心で出来る筈がない。痛むことのない、凍てついた心でないと。
そしてそんな凍てついた心は、愛する人の温もりを求め、暴れ回る。

澪「目、閉じて」

唯「……うん」

観念したように目を閉じる唯。私としては『諦めた』より『誘惑に屈した』のほうが嬉しいんだけど。
しかしそんな考えが頭をよぎったのも一瞬。唯の唇を見た瞬間、吸い寄せられるように私は自らの唇を押し付けていた。

澪「んっ……」

温かい。言葉にするとただそれだけのものが、信じられないほどの幸福感を伴いながら、唯の唇から私の全身へと流れていく。

私のファーストキスは、ずっと想い続けて来た、愛する人とのキスだった。それだけで充分すぎるほど満たされるものだけど、それでも私は聞かずにはいられなかった。
私はどうやら、自分が思っているよりずっと貪欲な女らしい。

澪「んっ……ふぅ、唯…」

唯「はぁっ……な、なに?」

澪「唯は…キス、何回目?」

唯「えっ!? そ、その……」

澪「私は、初めてだったよ」

唯「……わ、私も。こんなにあったかいものだったなんて、知らなかった…」

『初めて』の共有。同じ感覚、想い、感想の共有。それらによって溢れ出した多幸感が、私の脳を麻痺させていく。
……あぁ、どうやら私は、自分が思っているよりずっとずっと貪欲らしい。
……もっと、もっと欲しい。唯が、幸せが、私と唯だけの時間が欲しい。

頬を赤く染める唯に再度キスをしながら、床に押し倒す。キスの延長上に見せかけ、後頭部だけは手で守ってあげながら。

唯「みお…ちゃん?」

澪「……何をしたいか、わかる?」

唯「わ、わかるような、わからないような……」

どっちだ、と問い詰める代わりにもう一度キスをする。言葉なんていらないと思ったのも事実だし、私が唯とのキスに酔っていたのもまた事実。
唇を離す際に、何気なく示唆する意味を含め、唯の上唇を舌で舐めてあげた。

唯「ひゃんっ…! や、やっぱり、そういうこと…?」

澪「うん。そういうこと、したい。初めてだから上手く出来るかは自信ないけど…」

唯「わ、私、そういうのぜんぜん知らないから…どうすればいいのか…」

澪「何もしなくていいよ。私が唯にしてあげたいんだ」

そう、それが私の作戦。唯を縛り付けるための、汚いやり方。
ちゃんとできる保証もないし、唯が満足してくれるかはわからない。でも、上手く気持ちよくさせることが出来れば、唯が満たされてくれれば、私と一緒にいてくれるかもしれない。
上手くいかなくても、唯と寝たこの時間は、永遠の一瞬は、私の宝物になるだろう。もっとも、それだけで私が満たされるかは怪しいけれど…

澪「……服、脱がしていい?」

今日は私と出かけるということで唯はそれなりにおしゃれしてきていたのだが、自分の部屋に戻ってきたことで今はTシャツとローライズ気味のジーンズという唯らしい格好になっている。
唯は何を着ても可愛いのだが、さすがにそういう行為をする以上、Tシャツはともかくとしてジーンズは脱いでくれないと困る。
そして、どうせならそのまま上下の下着も取り去りたい。私が慣れていないのもあるし、何より今の私は唯の一糸纏わぬ姿を見たくてたまらない。

唯「…じ、自分で脱ぐから…」

澪「いいよ、脱がしてあげる」

唯「だ、大丈夫だから! その代わり…みおちゃんも、脱いで? 私だけ裸なのは…はずかしいし」

澪「…ん、わかった」

いつもと逆だな、と思いつつ、てきぱきと服を脱ぐ。
本当に自分でもびっくりするくらい恥ずかしくない。相手が唯だから、というのが一番大きいのだろう。唯なら見られても恥ずかしくないし、むしろ私の全てを見て、知って欲しい。
それに、私が脱げばそれは唯を急かすことにもなるわけで。

唯「ん、しょっ…」

澪「っ……」

……そして今気づいたのだが、脱ぐ姿を眺めるのはかなり興奮する。特に身体のラインが現れてからの動きに。安直に言ってしまえば下着を脱ぐ行為にすごく興奮させられる。
唯が自分のブラの後ろのホックを外す。徐々に唯の胸が露わになる、その瞬間。
外周、膨らみ、そして中央の突起へと、さらけ出される順序そのままに、私の視線も移ろう。大きくもなく小さくもない唯の美乳は、衣類から解き放たれた瞬間に私を虜にしてしまった。
その視線を察知したのか、唯は片手で胸を隠してしまったが。

唯「あ、あんまり見ないで…」

澪「…パンツ、片手で脱げるか? やっぱり脱がしてあげようか?」

唯「ううっ……みおちゃんのいじわる…」

澪「どうせ隅々まで見ちゃうから隠してもしょうがないのに。言っただろ? 一生の思い出にするって」

唯「ううぅぅぅぅ~……」

真っ赤になってモジモジする唯を見ていると、再び押し倒したくなってくるから困る。
コスプレとかには抵抗ない唯が、裸を見られることで羞恥心を感じている様は、こう、安直に言えばすごくソソる。
そもそも裸だってお互い合宿で見てるはずなのにな。とはいえ、それは私にも言えるか。
合宿の時は何とも思わなかった唯の裸。今はそれを見るだけで動悸は上がり、息は荒くなり、触れたい衝動を抑えるだけで必死なのだから。

唯「っ……!」

……私が脳内で葛藤している間に、唯は覚悟を決めたらしい。
勢いよくパンツを脱ぎ、ベッドに投げ捨てる。その動きからは恥じらいは感じられず、ついでにいやらしさも感じられなかったが、それでも私の眼前にあるのは唯の裸。

唯「ど、どうだっ!」

澪「うん、可愛いよ」

恥ずかしい台詞も自然と口から滑り出る。私らしくないな、と思い留まるような理性は既に私の中にはなくて。
頭の中にあるのは、唯に触れたい、唯を感じたい、唯が欲しい、そんな自分勝手な想い。
自制のじの字も、もう私の中には残っていない。全裸で仁王立ちして胸を張る唯に再度キスをし、そのままベッドに押し倒した。

唯「んむっ…ちゅ……ひあっ!?」

鼻で呼吸しながら、決して離さないと言わんばかりに唯の唇を貪りながら、まずは唯の肩を撫ぜる。そこから背中、時にはお腹、腰のあたりまで滑らせるように一周してみる。
私の手が動く度にピクリと反応し、鼻の呼吸が少し荒くなる唯が愛しくてたまらない。
でも、そろそろ離してあげようか。唇同士のキスもいいけれど、もっと他のところにもキスしてあげたい。

唯「っ……ふぁ、みおちゃん…んうっ!?」

唇で首筋をなぞり、鎖骨のあたりでキスをする。
反応がいちいち可愛くて、もっと見たいと焦る私は、キスしたまま利き腕の左手を唯の乳房に伸ばす。
包み込むように、揉みこむように周囲から押さえ、軽く握る。

唯「ひうっ!?」

澪「ああっ…可愛い、可愛いよ、ゆい…もっとしてあげる」

……唯に「大きい手」といわれたこの手、当時はショックを受けたものの、こういう時には便利だと思う。
より大きく愛撫してあげられるし、より広い範囲で唯の体温を感じられる。唯の反応を見る限り、私のその考えは間違いではないようで。
それが嬉しくて、今度は右手で逆の乳房を揉みながら、先程まで愛撫していた方の胸に唇を這わせる。
唇を通して伝わる、唯の胸の熱。唇で、ときには舌で味わいながら、それでも決してふくらみの中心には触れないように。

唯「み、みおちゃん、なんか、なんか…あつい…はぁっ」

澪「…唯、もしかして自分でもしたことないの?」

唯「な、ないよぉ……はぁっ、みおちゃん、やめないで…!」

澪「あ、ご、ごめん…」

初めての快感に身悶える唯は、とても扇情的で、魅惑的で。
そしてその始めての快感を与えているのが私だと思うと、どうしようもなく昂ぶってしまい、止まらなくなる。
征服欲。処女地を踏み荒らす快感。聞こえは悪いが、唯の身体に初めての快感を刻めるのは、全世界中で今この時、私だけなのだ。

……欲望に突き動かされる私の頭の片隅で、辛うじて何かが違和感を告げる。
私はそれから目を、耳を背けるように、唯への愛撫に没頭していった。

手と唇で続ける、唯の胸への愛撫。手でしていたほうの胸にも水気が現れ始め、唯が充分すぎるほど胸で感じてくれていることを教えてくれる。
興奮の証の汗で右手がすべり、中心の突起へと触れる。瞬間、唯の身体が大袈裟なほどに跳ね上がり、唯の身体も私の乳首と擦れ合う。
その瞬間、私は自分の秘部が熱を持ったことを実感した。思わず空いている左手で触れてみると、外からでもかつてない快感が身体を突き抜けていく。

澪「んっ…くぁ、あっ…」

唯「…みおちゃん?」

澪「あ、ご、ごめん……私も…感じてきちゃったみたい…」

……唯にしてあげると言ったのに、私が感じていちゃダメじゃないか。
再び唯の胸に手と唇を這わせ、愛撫を再開する。今度は乳首にも触れながら。
でも、どうしても空いている左手が自分のトコロへ向かってしまう。どうやら私の脳はついに性欲一色で染まってしまったらしい。
唯は最初こそそんな私を気にかけていたようだが、乳首からもたらされる強烈な快感の波に抗うことは出来なかったようだ。今やただひたすらに嬌声を上げ、身を震わせ、悦んでいる。
……どうしよう、そろそろ唯の下の方に手を伸ばしたいんだけど。

澪「……唯、胸、片方で我慢できる?」

唯「はぁっ、はぁ……や、やだぁ、もっと、もっとしてよぉ、みおちゃん…!」

澪「大丈夫…ここが本番なんだから……ちょっとだけ我慢して」

胸には唇を、自分には右手を振り分け、唯の中心のトコロに左手を這わせる。
見えないけれど、ほとんどぴったりと閉じているのだろう。自分でしたこともないと言っていた、誰も触れたことのないであろうそのラインに、中指を沿わせ、軽く擦る。

唯「あっ…あっ、あああっ…!!」

今までとは少し違う唯の反応。でも感じていないわけではないことは指のぬめりを見ても明らかだ。
未知なる快感に困惑しているのだろう。胸とは違い、こちらは意図的にしないと感じる機会なんてそうそうないから。
……少しずつ、少しずつ指に力を込めていき、擦りながら花びらを開いていく。慎重に、優しく、大切に扱わないと。

唯「みおちゃん……みおちゃんっ!」

澪「ゆい…大丈夫? 痛くない?」

唯「気持ちいい…気持ちいいよぉっ!!」

唯が私の頭に腕を回し、抱きしめてくる。瞬間、私の五感全てに唯が満ちてゆく。すごく…すごく、いい気分。
そして……やっぱり、もっともっと唯が欲しいと思ってしまう。
唯の熱も、香りも、私にこの世のモノとは思えないような多幸感をもたらすが故に、唯の全てを、奪いたいと思ってしまう。

奪う、という事に思い至った私は、いつの間にか唯の線を擦る中指に、力を込めていて。

奪ってしまえばいい。
一生消えない傷を刻んでやればいい。
そうすれば、私は唯の、唯一無二の、最初の人になれる。
唯の処女を、私が――


澪「んぁあっ!? ゆ、ゆい…?」

唯「わ、私も…してあげる。こうやって…擦ればいいの?」

唯の拙い愛撫が、私の思考を全て吹き飛ばしてしまった。
おずおずと、怯えているように私の秘所を撫でる唯の指は、何故だか自分でした時以上の快感を私にもたらして。
いや、何故だかなんて問うのも野暮だ。唯だから、他ならぬ唯だから、私はこんなに…感じちゃってるんだ。

澪「ひぁぅっ!! あぅっ、ゆい、ゆいっ!!」

唯「わぁっ、すっごい……何かが溢れてて…みおちゃんのあそこ、とろとろだぁ…」

澪「ひあっ! ゆ、ゆいのあそこだって…!」

何となく悔しくて、唯の表面を擦るスピードを上げる。すると、それに呼応するかのように唯が私のを擦るスピードも上がって。
でもきっと本当は、何も知らない唯が私のマネをしているだけで。でも、それでも私は、二人の感覚がシンクロしていると思い込みたくて。

二人重なり合ったまま、お互いの秘所にひたすら指を這わせる。空いた方の手はいつしか互いの背中に回され、より密着させられて。密着した乳首同士が擦れ、つつき合い、快感を増幅させていく。
次第に、愛液の音ばかりが部屋に大きく響いてくる。それが嬉しくて仕方なくて、より指の速度を上げて。過剰すぎるほどに分泌された潤滑油は、それ自体の温度さえもが快感を増幅させてくれて。
唯と私の体温は、きっと今は寸分の狂いも無く同じだ。同じだけの快感を受け、与え、やがては全く同じ存在となって混ざり合う。それはなんと素敵なことだろう。
そして、その瞬間はもう目の前。私自身が、私の中から、そう感じている。

唯「あっ、ああっ、みおちゃん、何か、なにかくるっ!?」

澪「うあぁっ! 私も、私もイキそう!! ゆ、ゆいっ! キスしてぇっ!!」

唯「みおちゃ……んっ!!」

首だけで頭を起こすように、唯が勢いよくぶつけてきたその口唇は、燃えるほどに熱く。
その口唇に焼かれた、凍てついていたはずの私の心は。


 「んちゅ、んくっ――んあぁぁぁああああーっ!!!」


――唯と共に達したその瞬間に、一筋の涙を流した。



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最終更新:2011年07月25日 22:25