「ふう~。まったく、受付だけで疲れました」
「あ。あそこに何かあるよ。早くいこっ、あずにゃん」
「ゆい先輩はいつも元気でうらやましいです」
「えへへ~。私はあずにゃんと一緒だといつでも元気になれるよ」
いつも思うけど、言ってて、恥かしくないのかな。
「わ~、いろんな化石があるね」
「そうですね」
ここにはカブトプスやオムスターなどの化石が並んでいます。う~ん、古代からポケモンがいるだなんてすごいですね。
「この大きな鳥さんは何かな?」
「これは、プテラですね」
「ふーん。いっぱい化石があって面白いね。2階には何があるのかな」
私たちは2階に来ました。
「ここには、スペースシャトルがあるね。あ、後、ただの石が飾ってある」
「それはつきのいしっていうんですよ。なんでも、おつきみやまに、昔落ちてきたとか」
「ということは、おつきみやまに行けば、見つけられるのかな?」
「そうですね~。できれば見つけたいですね」
まあ、現実問題、厳しい気もしますけど。
「さてと。ある程度、展示物も回りましたから、もう行きましょうか」
「もうちょっと待ってよ~。まだ、全部飲み終わってないよ。待ってて、すぐに飲むから」
私たちは展示物の見学を終えて、休憩スペースでジュースを飲んでます。
「すいませんです。ゆっくり飲んでいいですよ」
まだ、時間もありますからね。まったく、タイミングが悪いですね。ニビジムが休みだなんて。用事なら仕方がないんですけどね。
「そういえば、聞いたか?」
私がそんなことを考えてると近くに、男の人、2人がやってきました。
「何を?」
「ニビジムのことだよ。まさか、マサラから来た、3人のトレーナーにぼろ負けするんだからな」
澪先輩達のことでしょうか?うぅ、やっぱり私が一番遅いんですね。まあ、速さは競ってませんけど。
「ああ、聞いたよ。しかも、その後に、トキワから来たトレーナーにも負けたんだろ。そのうえ、全員女の子だってよ。まったく、うちのジムリーダーは弱いね」
へえ~、トキワシティ出身の子も来てるんですね。しかも、女の子らしいですし、一度、会ってみたいものです。
「あずにゃ~ん、全部飲めないよ~」
「別に残しても、いいですよ」
「もったいないよ」
私は、ゆい先輩から缶を受け取りました。後、4分の1くらい残ってますね。まあ、これくらいなら、飲めるかな。たしかに残すのはもったいないですし。
「ねえねえ、あずにゃん。これって、間接キス?」
「ブー」
「あずにゃん汚いよ。急に噴き出すなんて」
「ゴホゴホ。……急に変なこと言わないで下さい」
「照れてるの?あずにゃ~ん可愛い~」
「うるさいです。もう、行きますよ」
――――
「あそこで休憩にしようよ、うい」
「そうしよっか、純ちゃん」
「それにしても、ポケモンなのにこんなところに興味があるなんて不思議ね」
私の名前は、
鈴木純。トキワシティ出身で、一応、ポケモンリーグに出るために、旅をしている。で、こっちの幼稚園児くらいの女の子はういっていうんだ。こんな容姿でも、ポケモンで17歳らしい。トキワシティで、迷ってたところを私が声をかけた。そしたら、お姉ちゃんとはぐれたらしいから、私が一緒に探してあげたんだけど、見つからなかった。だから、警察にでも、保護してもらおうかと思ったんだけどね。その時に私はポケモンだなんて言い出すからね。初めは何を言い出すんだと思ったけどね。それで、私にモンスターボールをあててみてくださいって言ったんだ。さすがにびっくりしてね、『もし、あなた、ういって名前だっけ。ういがポケモンだったら、私がトレーナーになるんけどいいの?』って聞いたら、『鈴木さんはいい人そうだから、問題ないよ』って言うもんだからね。とりあえず、モンスターボールを投げたら、本当にゲットできちゃったんだから、びっくりしたよ。
「せっかく、ニビに来たんだからね。こういうところにも行きたいと思ったんだけど、だめだった?」
「まあ、いいんだけどね」
それにしても、この子にも、お姉ちゃんがいるってことはこんな女の子みたいなポケモンがまだいるってんだから、不思議だよ、ポケモンは。果たして、そんなポケモンを誰がゲットしたのだろう。願わくば、特殊な趣味の方がゲットしてないことを祈るばかりだね。
「うるさいです。もう、行きますよ」
「まってよ~、あずにゃ~ん」
「まったく、ゆい先輩は……」
ドン。
「あ、イテッ」
「あ、すいません」
休憩スペースを出たところで人とぶつかってしまいました。
「すいません。大丈夫ですか」
「気をつけてよね。まったく、ちゃんと前見て歩きなさいよ」
「すいません」
「純ちゃん、そんな言い方しちゃ駄目だよ」
そんな声が聞こえたけど、この人の周りには、誰もいない。ふと、下を見ると、ちっちゃいポニーテールの女の子がいました。どこかで、見たことある容姿なんだけど、どこでしたっけ。
「待ってよ~、あずにゃ~ん。先に行くなんてひどいよ~」
のんきな声が聞こえました。やっと追いついてきたようです。
「あ、お姉ちゃん」
「ん?あ、ういだ~」
なるほど、この小さい女の子がどこかで見たことあると思ったら、妹だったんですね。なるほど。……って。
「「この子が妹(お姉ちゃん)!?」」
とりあえず、私たちは博物館を出て、喫茶店に。
「ねえ、あずにゃん。ケーキ食べていい?」
「駄目です」
「え~、あずにゃんのケチ、ケチ。ぶう~ぶう~」
「分かりましたよ。でも、あんまり高いのは頼まないで下さい」
「わ~い」
「それで、あなたたちは一体」
「私の名前は鈴木純。こっちは、こんな容姿でもポケモンで…って、あなたには分かるよね。なまえはういっていうんだ」
「ういです。よろしくお願いします」
随分、丁寧な子ですね。こっちで、のんきに「ケーキ、まだかな~」って待ってる子とは大違いです。
「私はゆいだよ~。よろしくね、純ちゃん」
「よろしく。ところで、君はどこから来たの?私はトキワシティから、来たんだ」
「あ、私はマサラタウンから来ました」
「ふ~ん、中野さんは、マサラタウンから来たんだ。ということは、あの人たちとも知り合いなの?」
「あの人たち?」
「ニビジムのリーダーに勝った人たちだよ。聞いたことない?」
「さっき、ちょっと、話してるのは聞きましたけど、よくは……」
「圧勝だったらしいよ。ほとんど、タケシにバトルさせなかったって話だし。ちょっとした、騒ぎだよ、今年のマサラは違うって。しかも、全員女の子だし」
やっぱり、澪先輩達ですね。
「ところでさ、あなたも強いの?」
「はい?」
「だってさ、マサラタウンの出身者の3人がこんなに強いんだから、あなたも強いのかなって」
「そ、それはどうでしょう。私はあの人達とは違いますからね」
「やっぱり、知り合いなんだ。あの人達の名前ってなんていうの」
「なるほどね」
「それにしても、ういでしたっけ。まさか、ゆい先輩の妹だなんて。びっくりしましたよ。妹がいるなんて聞いたことがなかったので」
「もぐもぐ、言ってなかったけ?」
「言ってません」
「お姉ちゃんとの旅はどうですか、中野さん」
「あ、梓でいいですよ。そうですね……」
「ラブラブで楽しいよ。ね、あずにゃん」
「さあ。それはどうでしょう。それよりも、口にケーキついてますよ」
「ん?…あずにゃん、拭いて~」
「まったく、しっかりしてくださいね」
ふきふき。
「ものすごく仲よさそうだね、純ちゃん」
「そうね。……ところで、その、ゆいちゃんだっけ。どれくらい強いの?」
「え、えーとですね。それなりに強いというか」
「なんか、歯切れが悪いわね。……ねえ、今から、私のういとあなたのゆいちゃんで勝負しない?」
「今からですか」
「私達はこの後、おつきみやまにいくからね」
「でも、バトルをやってから行くと夕方になるから、危ないんじゃ……」
「おつきみやまの入り口に宿泊施設があるから、そこで休んで、明日の朝に山を抜けるのよ。それに、ゆいちゃんの強さもみたいし」
なるほど。私も、明日はジムリーダーと戦うわけだし、良い経験になっていいかもしれません。でも……。
「それじゃ、他のポケモンにしませんか。さすがに姉妹で戦わせるのは……」
「私は大丈夫だよ、梓ちゃん」
「そうですか。ゆい先輩は」
「もぐもぐ、もぐもぐ。ん?私は大丈夫だよ」
「まだ、食べてたんですか。まあ、2人がいいっていうなら、いいんですけどね。じゃあ、早く始めましょうか、鈴木さん」
「……」
「どうしたんですか、鈴木さん」
なんか、急にこの子何を言ってるんだろうって顔してるんだけど。
「鈴木さん?」
「……あ、ああ、うん。そうだね。ところで、見たとこ、同い年だよね。何歳?」
「17歳ですけど」
「やっぱり。もっと、フランクにいこうよ。鈴木さんじゃなくて純でいいよ」
「それじゃ、純。早く行きましょう」
私達は、ニビの外れに来ました。
「勝負は1対1。掛け金はなしでいいね」
「はい。それじゃ、頑張って下さい、ゆい先輩」
「任せてよ~」
「それじゃ、うい。適当にね」
「そんな、いい加減な」
「問題ないでしょ。ういなら」
「そんなに過信されても困っちゃうよ」
「う~い。あの時の約束覚えてるよね。手を抜いちゃだめだよ」
「……分かってるよ、お姉ちゃん」
「「バトル開始!!」」
「いけっ、うい。まずはおたまで遠距離攻撃よ」
おたま!?
「うん」
ういは両手に持ったおたまをゆい先輩に向かって投げてきました。
「よけて下さい、ゆい先輩」
「うん」
「うい」
「分かってるよ、純ちゃん」
ゆい先輩は最初の攻撃を何とかかわしました。
「わ~い。よけたられたよ~」
「!?油断しないで下さい」
「え」
ういはすでに、次のおたまを投げてきました。
「また、よけるから、大丈夫だよ、あずにゃん」
また、ゆい先輩はまっすぐ投げてきたおたまをかわしました。いつも、こんな風にしてくれればいいんですが。
「さすが、お姉ちゃん。……でも、アウトだよ」
「え。・・・・・・あ、イテッ」
ゆい先輩がよけた先でにはさっきのおたまよりもスピードの速いおたまがゆい先輩のおでこに命中しました。さっきのは囮!?
「次は、フライパンで叩きつけて、うい」
「分かったよ」
今度はおたまじゃなくて、フライパンを持って、突っ込んできます。
「ゆい先輩。来ますよ」
「あうう~」
ゆい先輩はさっきの攻撃でちょっとクラクラしています。ま、まずいです。
「ごめんね、お姉ちゃん」
ういちゃんはフライパンを振り上げ、ゆい先輩の頭に、叩きつけます。
バーン。
見事にヒットしてしまいました。
「ゆい先輩!!」
「大丈夫~、まだ戦えるよ~」
そんな、目を回してる状態で言われても説得力がないです。
「うい。最後はバットでトドメよ」
「……うん、分かったよ」
ういちゃんはバットをゆい先輩に野球選手のようにスイングし、ゆい先輩は吹っ飛ばされてしまいました。
「わ~」
「ゆい先輩。大丈夫ですか!!」
「うう~、大丈夫だよ」
ゆい先輩はいつもよりもゆっくりと、足を引きずりながら、こっちに歩いてきます。
「うい。成長したね、前よりも強いよ」
「ありがと、お姉ちゃん」
「でも、私だって、強くなったんだからね。いくよ、ゆいちゃん真拳奥義『分身の術』」
ポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン
ゆい先輩の掛け声と煙とともに、また、ゆい先輩のヌイグルミが。でも、今度はういちゃんの周りを取り囲むように、並んでいます。
「慌てることないわ。所詮はヌイグルミ。分身っていっても、本体は正面よ」
「分かったよ、純ちゃん」
ういは正面に向かって、バットを振り回してきます。……正直、ちょっと怖いです。
「
今だ! ゆいちゃん真拳奥義『ゆいちゃん衝撃波』」
その声とともに横から、ゆい先輩はギターで、衝撃波を出して、正面に突撃しようとするういちゃんに攻撃を仕掛けます。
「何!?よけて、うい」
「……くっ。さすがにこれは」
ういはよけきれずに、吹っ飛ばされそうになりながらも、何とか耐えました。
「今のは効いたけど、でも、次は効かないよ」
「まだまだ、行くよ~。ミュージックスタート(GO!GO!MANIACを想像して下さい)」
またどこからか、音楽が鳴り始めました。前とは違う音楽のようですが。この歌とともに、周りのゆい先輩のヌイグルミが音楽に乗って、ういに襲い掛かります。
「な、何よ、この技は……うい、対処できる?!」
「ごめん、ちょっと厳しいよ」
確かにういも頑張ってるけど、数が多いので、全てを処理できずに、かなりのダメージを受けています。
「さあ、フィナーレだよ。みんな~」
ゆい先輩の掛け声でヌイグルミの皆が3列に並びました。
「行くよ、うい。ゆいちゃん真拳奥義『ゆいちゃんパレード』」
3列に並んだ、ゆい先輩のヌイグルミがういに向かって突っ込んでいきます。
「かわして、うい!!かわせば、勝機が……」
「ごめんね、さすがに無理だよ」
バーンと、ゆい先輩のヌイグルミたちがういに突っ込み、ういは上に飛ばされました。
「さすがはお姉ちゃん。とっても、強いよ」
ガシャンとういが地面に落ちました。
「……やれやれ。私の負けね。うい戦闘不能。よって、梓の勝利ね」
「大丈夫、うい」
ゆい先輩はういに駆け寄ります。
「私は大丈夫だよ、お姉ちゃん。それにしても、まだ、別れて、1ヵ月もたってないのに随分強くなったね」
「えへへ~。ういも強かったよ。それに約束を守ってくれてありがと」
「うん。でも、次は負けないよ」
「私だって。……うぅ、エネルギーが……」
バタン。
「わ。お姉ちゃん、大丈夫?」
「うぅ、あずにゃ~ん。抱っこして~」
「やれやれです」
私はゆい先輩に駆け寄り、抱っこします。
「あずにゃん分補給~」
「まさか、そんなに強いなんてね、その子」
「そうだね。私自身もゆい先輩の強さはよく分かってないから」
「なるほどね。じゃあ、ポケモンセンターにでも行って回復させましょうか。もうそろそろ出なきゃだし」
「そうですね」
私は梓とポケモンセンターで回復させた後、別れて、おつきみやまに向かうべく、出発していた。
「まったく、ういが負けちゃうなんてね」
「だから、言ったじゃない。お姉ちゃんは強いって」
「でも、そんなに注意する必要もないかな。次、戦えば勝てるでしょ?」
「そんなに自信満々に言われても……。それにしても、梓ちゃんはすごかったね。お姉ちゃんの力をあんなに引き出すなんて」
「梓ね。真面目そうな感じだけど、まだまだあまいわね」
「うわっ。言い切ったよ」
「いいでしょ、別に」
「優しそうでいい子だと思うけど」
「優しいだけじゃだめなのよ。まあ、いずれ、分かるでしょ。あの子も」
最終更新:2011年08月01日 03:19