その夜、ポケモンセンターにある宿泊施設にて。

「あずにゃん。もう寝ようよ~」

「もう少し、待って下さい。これを読み終わってから寝ますから。ゆい先輩は早く寝てください」

「何を読んでるの?」


「博士のところで助手をしていた時にまとめてたノートです。明日はジム戦だから、ちゃんとしておきたくて」

「早く、寝ないと力出ないよ。だから、一緒に寝よう」

「どさくさにまぎれてなにを言ってるんですか。早く、自分の布団に戻ってください」

「ぶう~、ぶう~」

でも、たしかに、いい時間ですね。そろそろ寝ますか。

「ゆい先輩」

「なに。今、私は一人寂しく寝るんだけど」

「そんなにすねないで下さいよ。……たまには、こっちに来ていいですよ」

「え、いいの?!」

「今日は頑張りましたからね。特別です」

「わあ、ありがとね、あずにゃん」

ゆい先輩は枕を持って、嬉しそうに私の布団にやってきます。

「おやすみなさい、ゆい先輩」

「おやすみ、あずにゃん。……明日も楽しい日になるといいね」

「そうですね」


以上、ニビシティ編①終了




それは、私が助手をし始めた時のお話。

『ポケモンバトルで大事な能力や大事なことは何じゃと思う』

『攻撃力だろ。やっぱり、力で押さないとな』

『あら、りっちゃん。力だけじゃ勝てないわ。特殊や補助技を駆使しないと勝てないわよ』

『ふむ。梓君はどう思う』

『は、はい。えーと、ポケモンとトレーナーとの絆だと思います』

『ぷっ。梓、何を言ってんだよ。絆だなんて』

『む。笑わないで下さいよ、律先輩』

『でも、さすがに、絆じゃ勝てないんじゃないかしら』

『ムギ先輩まで。澪先輩はどう思います?』

『私か。私は絆でもいいんじゃないか。ようは勝てばいいんだよ。梓がそれを正しいと思うなら、それで勝てばいい。そうすれば、律達だって認めるさ』

『さすが、澪。言う事が違うな』

『うるさい』

『で、博士。正解は何です?』

『正解はないともいえるし、あるともいえるのう。つまりは、結局、その人しだいということじゃな』

『何だよ、博士。そんな問題だすなよ』

『うむ。じゃが、大切なことじゃからのう。それらを意識して、今度の冒険でも活かしていってほしいからのう』

「……ううん、もう朝か」

「ムニャムニャ。……あず…にゃん。ケーキ美味しいね……ムニャムニャ」

「そっか、昨日は一緒に寝てたんだっけ。今、何時だろ」

時計を見ると、まだ、5時半か。どうしようかな。起きるのには早いし。でも、今日はジム戦だし、起きて散歩でもしよう。私は、簡単に準備をして、散歩に行くことにしました。

「……んん。…もう朝?ムニャムニャ、あずにゃんどこ行くの?」

「すいません、起こしてしまいましたね。散歩に行くだけですから、まだ、寝てて下さい」

「散歩?……私も行くー。……ぐー」

寝ちゃった。また起こすのも悪いから、さっさと、行きましょう。

「ふう~、今日も良い天気になりそうですね」

まだ、朝日も出たばかりだけど、気持ちの良い日にはなりそうだ。

「さすがにこんな時間だから、人通りも少ないか」

それにしても、1人で、歩くのも久しぶりだなー。最近はゆい先輩といつも一緒でしたからね。それが別に嫌だって言うわけじゃありませんが、たまには、1人もいいものです。ただ、いつも、明るく話しかけてくれる人(というべきかは謎だけど)がいないと寂しいなって何考えてんだろう、私は。

「もしもし、そこのお嬢さん」

そんなことより、今日のジム戦をどう戦いますか。たしか、岩タイプを使うタケシにはデルビルは辛いですね。そうだ、まったく関係ないけど、デルビルにお手入れをしてあげよう。

「もしもし、そこのお嬢さん」

それにしても、手持ち少なすぎです。もう少し、増やさないとこの先、苦労することになるでしょうし。

「もしもし、そこのお嬢さん!!」

「え?私のことですか」

「ええ、もちろんです。他には誰もいないでしょう」

周りを見ると、女の人はいても、お嬢さんと呼べる年齢じゃありませんし。1番、お嬢さんと呼ばれるのは私でしょうね。

「すいません。ぼーっとしてたもので。で、用事は何ですか?」

「いえ、美しいお嬢さんがいたから声をかけただけです。どうですか、一緒に朝食でも」

「結構です」

朝から、ナンパってやつですか。朝からついてないですね。

「そんなに冷たくなさらなくてもいいじゃないですか。自分の作る朝食は美味しいと思いますよ」

「あ、いえ、本当に結構ですから」

「……そうですか」

うわ。露骨に落ち込んでます。こっちは悪くないのに、何故か、罪悪感でいっぱいです。

「……では、せっかく会ったんですし、ポケモンバトルでも」

「まあ、それくらいなら。でも、その前にあなたの名前は何です?」

「ああ、申し遅れました。自分は……」

「あずにゃ~ん」

ん?あの声は……。


~~

梓が散歩に出て、すぐの事に遡る。

「……う~ん。おトイレ~」

おトイレを済ませ、部屋に戻る途中に時間を見ると、まだ、5時50分くらいだ。まだ、起きるのには早いよ。ねむねむだよ~。

「うぅ~、あずにゃん分~」

私は半分寝ている状態で、あずにゃんを抱き枕みたいにして、寝ようと、あずにゃんを探します。

「あれ?あずにゃんがいない」

どこに行ったんだろう?トイレかな?でも、さっき行った時はいなかったし、行き違いになったのかな。

「まあ、いいや。眠いから寝よ。……ん?」

ふと、見ると、あずにゃんのパジャマが綺麗にたたんである。それに、昨日、置いてあった場所にモンスターボールがない。まさか、私を置いて、もう旅に。でも、こんな時間じゃ、まだ、ジムは開いてないはず。う~ん、駄目だ。眠くて、頭が回らないよ。仕方がない、お着替えして、探しに行こう。

「まったく、私の嫁さんは苦労をかけるよ」

あずにゃんがいれば、何を言ってるんですか、みたいなことを言ってくれるんだけど、それがないのが寂しい。私は着替えて、外に出た。あん
まり、朝早く出たことはないけど、気持ちのいい空気だ。

「あずにゃんはどこかな?」

ちょうど、その時、お散歩していたおじいちゃんがいたので、聞いてみた。

「ねえ、ねえ、おばあちゃん。あずにゃん知らない?」

「あずにゃん?だれじゃのう、聞いたことがないのう。お嬢ちゃんの親御さんかな?」

「違うよ。えーと、じゃあ、ツインテールの女の子を見なかった」

「それなら、あっちの方で、男の人と会ってたよ」

「そっか、ありがと。……男の人?ねえ、おじいちゃん。その子、男の人と一緒だったの?」

「おお、そうじゃ」

「……そっか。ありがと、おじいちゃん」

「まったく、タケシにも、困ったもの……あれ?お嬢ちゃんはもう行ってしまったのかのう。最近の若者はせっかちじゃのう」


~~

現在に戻る

「あずにゃ~ん」

ん?あの声は……。

「ゆい先輩。もう、起きたんですか」

「もう、起きたんですか、じゃないよ。ひどいよ、私という者がいながら、男の人と会うなんて」

「開口一番意味わからないこと言わないでください。私が散歩してたら、この人が声をかけてきたんです」

「あ、妹さんですか。可愛いですね」

なでなで。

「えへへ~。……はっ。違うよ、私は妹じゃないよ。失礼だね」

「妹じゃない?とすると、従姉妹さんかな?」

「それも、違うよ。私とあずにゃんはこ……もがっ」

「そうなんですよ。ちょっと、散歩してたら、この子が起きて、心配だから、私を探しに来たんだと思います。えっ、もう朝食の準備ができたから、呼びに来たって?すいませんけど、私はそろそろ……」

「なるほど。自分も兄弟の朝食の準備があるので失礼します。また、ご縁があれば」

「ええ。では機会があれば」

「ふう~、やっと行きましたね」

「モガモガ」

「あ、すいません、ゆい先輩」

「はあはあ、ひどいよ、あずにゃん」

「すいません、あの場はああするしかないなって……。苦しくなかったですか?」

「それは大丈夫だけど、私を従姉妹扱いするなんて。しかも、さっきの男の人は何?」

「知りませんよ。歩いてたら、声をかけられたんですから。それよりも、どうして、ゆい先輩はどうしてここに」

「そうだ、大事なことを忘れてたよ。あ~ずにゃ~ん」

「にゃっ。どうして急に抱きつくんですか」

「あずにゃん分の補給~。そして、おやすみなさい。ぐう~」

「寝ちゃった。くす、まあいいや、私も戻ろうっと」


その後、私はゆい先輩を連れて、宿泊施設に戻って、朝食を取り、いよいよ、ジムリーダーに挑戦するために、ニビジムにやってきました。

「いよいよですね」

「うん、そうだね。私も頑張るよ、応援を」

「頑張ってください」

私はニビジムのドアを開けます。ジムの中には岩がところどころに置いてあるフィールドがあり、周りにはそれを見るためのスペースがあります。でも、ジムリーダーらしき人はもとより、誰もいません。

「すいません、どなたかいませんかー」

「はいはい、どちら様でしょうか。……あ、あなたは今朝会った……」

「え?!あなたがタケシさんですか」

たしか、我慢強い男って聞きましたが、どこがなんだろう?

「では、あらためて。自分はニビジムリーダーのタケシです」

「あ、私はマサラタウン出身の中野梓です」

「マサラ?とすると、澪さん達と知り合いですか」

「まあ、そうですね」

きっと、澪先輩達にも声をかけたんだろうな。

「それにしても、こんな小さな従姉妹さんと旅とは大変でしょ。自分も、小さい弟や妹がいるもので」

「む~、違うよ。さっきは言えなかったけど、私はあずにゃんの恋……もが」

「ゆい先輩。前から、気になってたんですけど、恋人って意味分かって言ってます?」

「失礼な。……えーと、ポケモンとトレーナーがすごい信頼関係で繋がれているてことでしょ?」

「全然違います」

「え、そうなの?」

「一体、誰に聞いたんですか」

「えーと、村長さんがね、恋人さんみたいにトレーナーのことを好きになりなさいって、教わったんだ」

一体、何を教えてるんだろうな、その人。ってことは今まで、私のことを好きって言うのはこの人の教えだからなのかな。なんでだろう、あんまり面白くない。

「じゃあ、恋人ってな~に?」

「恋人というのはですね……ゴホン。いいですか、ゆい先輩。恋人は恋愛関係で結ばれたものなんです」

「そうなの?」

「そうなんです。ゆい先輩の言ってる好きっていうのは、恋人としてなのか、友達としてなのか、トレーナーとしてなのか、どれです?」

「う~ん、よく分かんない」

「あのー、バトルの方は……」

「あ、すいません。……とにかく、あんまり恋人とか言わないで下さい」

容姿が容姿なだけに、変態さん扱いをされてしまうかもしれません。それにちゃんと、恋人を選びたいし。でも、ゆい先輩も私の恋人としてはありだとはおも……ゴホン。

「分かったよ。じゃあさ、あずにゃん」

「なんですか?」

「私がその好きって意味に気づいて、本気であずにゃんの恋人になりたいって言ったら、受け入れてくれる?」

「そ、それは……現時点ではなんとも」

「そっか」

「そ、そんなことよりバトルです。さあ、勝負です、タケシさん」

「え、ええ。いつでもかまいません」

「使用ポケモンは2体。掛け金は1万円。先に全滅させた方が勝ちとする」

「あのー、1万円というのは……」

「最近は不景気でして。まあ、勝てば問題ありません」

「そ、そうですね」

勝たなきゃ、財布が大ピンチです。

「ねえねえ、あずにゃん」

「なんですか?」

「今回、私も戦いたい」

「珍しいですね。でも、今日は応援するって……」

「あずにゃんにいいとこ見せたいから」

「そ、そうですか」


「では」

「「バトル開始!!」」

「よし、頑張るよ」

「下がっていてください、ゆい先輩。いけ、ハッサム」

「え、私じゃないの?」

「ゆい先輩は後です」

「いけ、ゴローン!!」

タケシさんはゴローンですか。まあ、さっきの雰囲気からそんなに強くは……!?

「どうしたの、あずにゃん?手震えてるよ」

「……え、あ、ああ、大丈夫です」

さっきまでの優しそうな雰囲気から、バトルになったら、急に変わりました。例えるなら、囲碁とかの名人とかと対峙した時の威圧感みたいな
感じです。し、正直、怖いです。

「どうした。来ないなら、こっちから行くぞ。ゴローン、ころがる攻撃」

「ゴロン」

ゴローンは転がりながら、ハッサムに向かって突っ込んできます。

「よけて、ハッサム」

「ゴローン」

ハッサムは何とか、攻撃をかわしますが、ゴローンは方向を急に変え、ハッサムに突っ込んできます。だ、駄目、よけきれない。

「ハッサム」

ゴローンの攻撃はハッサムに命中し、上に飛ばされました。

「ゴローン、落ちてくるところを追撃しろ、ばくれつパンチだ」

ま、まずい。このままでは……?!え、えーと。

「ハッサム」

私が、判断を迷っていると、ゴローンの追撃を受け、ハッサムは飛ばされてしまいました。

「なんだ、この程度か。ゴローン、トドメだ。きあいパンチ」

「ハッサム、よけて」

でも、ハッサムは目をぐるぐる回してます。

「知らないのか。ばくれつパンチをくらうと必ず混乱するってことを」

あ、しまった。ハッサムはそのまま、ゴローンの攻撃を受け、ガシャーンっと、壁に激突してしまいました。

「終わったか。審判、判定を」

「ハッサム、戦闘ふ……」

「待って。サムちゃんはまだ戦えるよ」

「えっ」

「何?!」

ハッサムはほこりの中からもなんとか、立ち上がっています。

「あずにゃん、落ち着いてよ。あずにゃんは毎日、毎日、頑張って、サムちゃんの技とか戦術とかを頑張って、夜遅くまで、考えたりしてたじゃん。きっとうまくできるよ」

「ゆい先輩」

そうだね、私が慌てふためいては駄目だ。しっかりしないと。

「ハッサム、まだ、戦える?」

「ハッサム」

ハッサムは頷いてくれた。

「ありがと。そして、ごめんなさい。私が不甲斐なくて」

「だが、体力も残り少ない。ゴローン、ころがる攻撃」

「ハッサム、かわして、メタルクロー」

ゴローンのころがるをなんとかかわして、ゴローンの横にメタルクローを命中させて、ゴローンをふっ飛ばしました。

「追撃です、アイアンヘッド」

「避けろ、ゴローン」

ゴローンは避けきれず、ハッサムの攻撃を受け、さっきのハッサムのようにふっ飛ばされてしまいました。よし。これで、私の勝ち……。

「油断しちゃ駄目だよ、あずにゃん。さっき、サムちゃんも戻ってきたんだから」

「そうでした。ハッサム、トドメです。バレットパンチ!!」

ハッサムは立ち上がろうとするゴローンに追撃をいれ、ゴローンは動かなくなりました。

「ゴローン、戦闘不能。ハッサムの勝利」

「やるな。では、次だ。いけ、イワーク」


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最終更新:2011年08月01日 03:21