「戻って、ハッサム」
「ふっふっふ。いよいよ、私の番だね」
「大丈夫ですか?」
「問題ないよ」
「君、君。ポケモン以外はフィールドに入っちゃ駄目だよ」
「む。失礼な、私はポケモンだよ」
「そうなんですか、中野さん」
「まあ、これでも、ポケモンなんです」
仕方がないので、いつもどおり、モンスターボールの出し入れを行い、証明する。
「なるほど。しかし、その容姿じゃ……」
「かまいませんよ。ただ、手は抜きませんが」
「タケシさんが言うなら……。ではバトル続行です」
「イワーク、あなをほれ」
「イワーク」
「ゆい先輩、気をつけて下さい。下から、来ますよ」
「下からって言われても……」
ビギ。ゆい先輩の後ろの地面にひびが……。
「後ろです、ゆい先輩」
「イワーク」
「わー」
後ろから、イワークが地面から出てきて、その衝撃、ゆい先輩がコロコロと転がってしまいました。
「イワーク、しめつける攻撃」
イワークは倒れてるゆい先輩をそのシッポで拾い上げて、しめつけ始めました。
「ゆい先輩!!」
「あ~う~、苦しいよ~」
……どうすべきか。ハッサムに交換する?でも、さっきの戦いで、だいぶ、ダメージが。でも、このままじゃ、ゆい先輩が。
「イワーク、トドメだ。そのまま、その子を地面に叩きつけろ」
え、そんなことしたら、ゆい先輩は……。イワークはそのまま、シッポを振り上げて、ゆい先輩を地面に叩きつけるために下に振り下ろしました。このままじゃ……。
「待って、このしょ……」
「まだ、大丈夫だよ。ゆいちゃん真拳奥義『ゆいちゃんクッション』」
突如として、イワークが叩きつける地面にはゆい先輩の顔の入った大きなクッションが出て、衝撃を和らげました。
「何!?」
「ふう~、危なかったよ~」
ゆい先輩はイワークが油断してるうちに脱出していたようです。もう、ゆい先輩の能力はわけが分かりません。
「さすが、ジムリーダーだよ。今までとは、全然違うよ。こうなったら、私の超奥義を見せるしかないよ」
「超奥義?」
あんなわけの分からない技のさらに上を行く技があるんですか。
「いっくよ~、ゆいちゃん真拳超奥義『アツアツ☆パラダイス』」
突如として、周りが今まで戦っていたフィールドから、喫茶店の中みたいな光景になりました。
「これは一体……」
「イワーク」
「何なんですか、これは」
「この奥義は、今から、カップルのいろんなアツアツな光景が見ることができるんだよ」
「それに一体どんな意味が」
「かまうな、イワーク。とっしんだ」
イワークはゆい先輩に向かって、とっしんするけど、それをひらりとゆい先輩はかわした。
「無粋だな~、まったく。少しは落ち着きなよ。あれを見てさ」
ゆい先輩が指を指したほうには喫茶店の二人連れで正面に座ればいいのに隣同士で座ってる人達というかあれは……
『あずにゃん、あ~ん』
『あ~ん』
パク。
『美味しい?』
『美味しいんですけど、どうして正面に座らないで、隣に座るんですか?』
『あずにゃんの近くに居たいからなんだけど、駄目かな?』
『駄目じゃありませんけど……』
『じゃあ、もう一回。今度は私にして』
『わ、分かりました。仕方ないですね、ゆい先輩は』
うわ~、なにあれ。片方の人は私にそっくりで、もう1人のほうはゆい先輩を大きくした感じですね。
冷静にいってるけど、この技ってなんか意味が……。というか、こんなの喫茶店にいたら、確実に因縁つけられそうですね。
「イワーーーク」
ジュジュー、ビキビキ。
イワークの体のところどころが火で炙ってるみたいに赤くなり、イワークの体にひびが入り始めています。
「この技はこのカップルのアツアツぶりについていけないと、体中が熱くなって、ダメージを受けるんだよ~。じゃあ、次の世界に行ってみよう」
その声とともに、世界が変わります。今度の世界は、雨の降ってる道ですね。雨が降ってるといっても立体映像みたいで、私は濡れませんが。ここでは、一体どんなことが。
「この技はやばい。イワーク、あなをほって、地面に逃げろ」
イワークは地面に逃げようとしますが、ゴツンと地面にぶつかってしまいました。
「無駄だよ。この世界からは逃げられないよ。ほら、始まるよ~」
『ほら、あずにゃん。もっと、近くに寄らなきゃ濡れちゃうよ』
『は、はい。それにしても、ついてませんね。いきなり、雨が降るなんて』
『まったくだよ。……と言いたいけど、私はあずにゃんと相合傘できるから、悪くないよ』
『変なこと言わないで下さい。それにしても、小さい傘ですね。2人だときついですね。コンビニがあれば傘を買いましょうか』
『もったいないし、いいよ。それに小さいほうがお互いにくっつけていいと思わない?』
『いつも、くっついてるじゃないですか』
『そうなんだけどね~。でも、雨の日はそういう機会もないし。……えいっ』
ぎゅっ。
『にゃっ』
『こうして歩いていけば、濡れずにすむよ』
『急に抱きつかないで下さい。歩きづらいですよ、まったく。……早く帰ってから、ゆっくりした方が……』
『なんて言ったの?ちょっと聞こえなかったんだけど』
『なんでもありません』
「イワーーーーーク」
イワークの体がさっきよりも多くの範囲で火で炙ってるみたいに赤くなり、イワークの体がその熱でたくさんひびが入り始めて、さっきよりもひどい状態に。そして、ガシャンと倒れました。
「次がラストだよ~」
のんきな声とともに、次の世界が。今度は木枯らしの吹公園みたいですね。やっぱり、あそこに、2人組みが……。
『今日は寒いですね』
『こんな日にはマフラーだよね』
『でも、長くありませんか』
『それはね、あずにゃんと一緒にするためだよ~』
あずにゃんの首にマフラーをかける。
『あったか、あったかだね。あずにゃん』
『それはいいんですけど、2人だと短くありません?』
『それはね』
ぎゅう~。
『あずにゃんと密着して、体全体を暖めるためだよ』
「イワーーーーーーーーーーーーーク」
イワークの体全体が火で炙ってるみたいに赤くなり、イワークの体がその熱でたくさんひびが入り始めて、さっきよりもひどい状態に。そして、ガシャンと倒れました。それでも、なんとか、起き上がろうとしています。
「もういいかな?いくよ~、ギー太」
ゆい先輩の持ってるギターが光り輝いています。
「この技のもう1つの意味はこの技によって出た、エネルギーは敵にダメージを与えるだけじゃなく、ギー太に蓄積されるんだ。そして、その
エネルギーを開放して、敵に大ダメージを与えるんだよ~」
「!? よけろ、イワーク」
「ゆいちゃん真拳超奥義『ゆいちゃん衝撃波スーパー』」
ゆい先輩のギターから、ビームがイワークに向かって、発射され、イワークはさっきまでの攻撃によるダメージの蓄積で、避けきれずに直撃し、壁まで、ふっ飛ばされてしまいました。
「ま、まさか、イワークをふっ飛ばすなんて、いったい、どれくらいの力なんだ」
「イワーク、戦闘不能。えーと……」
「ゆいだよ~」
「ゴホン。ゆいの勝ち。よって、中野選手の勝利です」
「……勝っちゃいました」
「わ~い。やったね、あずにゃん」
「まさか、負けるとは。おめでとう、君にはポケモンリーグ規定のグレーバッチを渡そう」
「あ、ありがとうございます」
ついにやりました。まだ1個目ですが、ようやく、ポケモンリーグへの道に1歩近づけた気がします。
「やったね、あずにゃん。おめでとう。……でも、もう駄目だよ~。あずにゃん分~」
「はいはい」
私は、ゆい先輩を抱っこします。
「ありがとうございました、タケシさん」
「いえいえ、こちらこそ、楽しいバトルでした
「では、私たちはおつきみやまに向かいますので」
「次のジムも頑張って下さい」
「はい、ありがとうございます。また、機会があれば、バトルしてください」
「ええ、喜んで」
―――
「お兄ちゃん、また、負けちゃったの?」
「またとは、失礼だな」
「だって、これで5連敗だもんな」
「そ、それを言われるとつらいな」
「で、今日の人はどうだったの?強かったの?」
「あの、ゆいっていうポケモンはそれなりのポケモンだったな。ただ……」
「ただ?」
「トレーナーがな」
「そうなの?それなりに頑張ってたと思うけど」
「頑張ってたとは思うけど、最初の4人と比べると甘いな」
「厳しいんだね」
「だけど、面白いコンビだとは思うぞ。一見、真面目で、しっかりしてるけど、心がまだ弱いトレーナーとのんきそうな感じだけど、大事なところでは心が強いポケモンだったからな。これからが楽しみなコンビだ」
―――
「あずにゃん。もう、おつきみやまに行くの?」
「ええ。ポケモンセンターで回復してから。といっても、純の話では宿泊施設があるらしいので、今日はそこで宿泊する予定ですけどね」
「そっか」
なんとなく、寂しそうな顔をするゆい先輩。
「……ゆい先輩、ポケモンセンターに行ったら、どこかで甘いものでも食べますか?」
まあ、今日はゆい先輩も頑張りましたからね。
「え、いいの?」
ゆい先輩はニコッと笑顔になりました。私としてはその顔が見た……ゴホン。
「今日はゆい先輩のおかげで勝てたんですから、特別です」
「わ~い。何を食べるの?」
「ゆい先輩が決めていいですよ」
「わ~、あずにゃん、太っ腹」
「ただし、高いものは駄目ですけどね」
「え~、ぶう~、ぶう~」
ニビシティ編②、終了。
最終更新:2011年08月01日 21:28