抜けた所で、5人のロケット団員とアーボック6匹とベトベトン6匹、ここまでは変わりませんが、スピアー6匹とゴルバット6匹も加わっていて、合計24匹もいます。
「くっ。いくです、ハッサム、デルビル」
私は残りの2匹を出しますが、ゆい先輩を含めても、3匹。多勢に無勢です。しかも、あっちのリーダーぽい1人はまだ、モンスターを出していません。まさしく、絶体絶命……?!
「どうした、顔が青ざめてるぞ」
「くっくっくっ。足も震えてるぞ」
「……うるさいです。いくですよ、ハッサム、デルビル」
「無駄だ。やれ、お前ら」
ハッサムははがねタイプなのでまだ、いいですけど、デルビルはちょっと辛そうです。
「頑張ってください、皆」
「ハッサム」
「デルビル」
ハッサムはメタルクローでなんとか、スピアーやゴルバットををなぎ払いますが、連戦の疲れと数の多さで、苦戦しています。デルビルはなんとか、アーボックのシッポにかみつく攻撃で対抗していますが、数が多すぎます。
「安心しろ。イーブイを渡せばやめてやるよ」
「そんなことできません!!」
「じゃあ、お前のポケモンを苦しめるだけさ。果たして、2匹でどこまで持つかな?」
「カプッ」
「イテッ」
イーブイは私の手をかみ、イーブイは私が痛がってる隙に手の中から抜け出し、私の方を見て、
「ブイ」
と言って、ロケット団員のリーダーに向かって歩き出しました。
「ゆい先輩。イーブイは今なんて……」
「もう迷惑をかけられないので、私は投降します。皆さんごめんなさい、だって」
「そんな……」
「よ~し、いい子だ」
私はこのまま、イーブイを行かせていいのでしょうか。今、私のポケモンは私のために頑張ってくれています。ならば、私もポケモンのために。
「ゆい先輩はここにいて下さい」
私はゆい先輩を地面に置き、イーブイに向かって走り出しました。
「待って、あずにゃん」
「くっくっくっ。これで、俺の出世も……、うわ」
私はイーブイを手に入れようと油断してるリーダーに体当たりをして、イーブイを抱きしめました。
「何しやがる!」
「イーブイはあなた達には渡しません!」
「チッ。いい気になるなよ、クソガキが」
「あ~う~、助けて~、あずにゃ~ん」
「!?」
私は振り返ると、ロケット団員に人質(?)にされたゆい先輩が。
「こいつの命がほしかったら、無駄な抵抗はやめな」
「くっ」
「よくやったぞ。さて、貴様には最大の屈辱をやろう。来い、アーボック」
また、アーボックかと思いきや、さっきまでとはレベルが違います?!
「あのガキを無事に返してほしかったら、今から、ここで、全裸になって、アーボックに犯して下さいて言いな」
「なっ……?!」
この男、どこまで愚劣なんですか。
「あずにゃん。そんな奴の言う事聞いちゃだめだ」
「うっせーぞ。クソガキ」
「あう~」
「ゆい先輩!」
「さあ、どうする?あのガキの運命はお前が握ってんだぜ」
どうしますか。ゆい先輩のためにも私が犠牲に?でも、こいつらが素直に約束を守るとも……。
「別にあのガキのことなんか気にしないで、嫌だって言えばいいじゃないか。あのガキの命はないが、お前が屈辱を受けることもないんだぜ」
下劣な声で、笑い出すこの男は本当に人間なんでしょうか。
「さあ、答えは?」
「答えは……」
「NOに決まってるだろ」
そんな声とともに、アーボックとリーダーが濁流のような水に吹き飛ばされました。この技は……。
「大丈夫か、梓」
「澪先輩」
「なんだ、あいつは」
「今だ。カプ」
「あ、いて」
「あずにゃ~ん」
ゆい先輩は今の混乱を利用し、うまく脱出し、私に抱きついて来ました。
「ヒック。怖かったよ~」
「すいません。私が不甲斐なくて」
「そんなことないよ。私だって、不甲斐ないよ」
「じゃあ、おあいこで。……今はそんなことを言ってる場合じゃありません」
「うん」
「梓が抱いてるのは……イーブイか。すごい怪我じゃないか」
「こいつらに襲われて……」
「今はいいきずくすりしかないから、簡単にしか治療できないけど、勘弁してくれ」
「ブイ~」
「なめんなよ、クソガキ共」
澪先輩に吹っ飛ばされた、リーダーが再びこちらに向かってきます。
「澪先輩、あいつを頼みます」
「それはいいが、梓は?」
「私はあっちで戦ってる仲間達を助けに」
私達がこうしてる間にも、向こうで、ハッサムとデルビルは戦っています。
「……そうか。こっちは任せろ」
「はい。行きますよ、ゆい先輩」
「待って、あずにゃん。イーブイが」
「ブイ」
イーブイは多少元気になった体で、私に向かって何かを訴えかけます。この言葉だけはゆい先輩に訳されなくても、分かりました。
「……君も一緒に戦ってくれる?」
「ブイ」
「じゃあ…」
私はモンスターボールをイーブイに投げ、ゲットに成功しました。
「やったね、あずにゃん」
「喜ぶのは、後です」
私は再びイーブイを出します。
「ブイ」
「石を使ってくださいだって。使っても無くならないから、心配は要らないって」
「便利ですね。じゃあ、ほのおのいしで」
私がイーブイに石をあてると、ブースターになりました。
「わ~、すごいね~」
「感心してる場合じゃ……」
バーン。
そんな音ともに、私達のところに、ハッサムとデルビルが叩きつけられてきました。
「大丈夫?サムちゃん、ルビ太」
「シャーボック」
私達の元にアーボックとベトベトンの群れが。空には、ゴルバットとスピアーの群れが。
「こうなったら…」
ゆい先輩はいつものギターではなく、カスタネットを取り出しました。
「皆、今、助けるよ。ゆいちゃん真拳奥義『うんたん♪うんたん♪』」
わー、とっても、かわいいですねー。癒されます~。……はっ。こんなのんきになごんでる場合じゃ。
「ゆい先輩、こんな技じゃ……」
「あずにゃん。皆を見なさい」
「え?」
私は周りを見ると、ハッサムやデルビル、ブースターが癒されて元気に。
「また、奇怪な技を」
「早く、あの厄介なガキを仕留めろ」
「シャーボック」
「ゆい先輩!」
「ハッサム」
元気になった、ハッサムは襲い掛かる、アーボックたちに向かって、はかいこうせんを繰り出しました。
「ぐわーーーーーーー」
「ギャーーーーーーー」
ロケット団二人を巻き込み、アーボック、ベトベトンの群れは倒れました。
「ビル太、ブイ太。君達の炎を私に貸して」
「デル」
「ブスタ」
ゆい先輩は今度はギターを構えます。
「行くよ、ゆいちゃん真拳協力奥義『ゆいちゃん熱風波』」
ギターからの衝撃波に加え、炎も加わり、ゴルバットやスピアーは全匹、落ちてしまいました。
「熱いーーーーー」
「誰か水をーーーー」
当然のように、ロケット団員も巻き込まれました。自業自得ですね。
「馬鹿な。全滅だと!?」
「どうした、まだ戦うのか?」
「糞が。来い、オニドリル」
リーダーはオニドリルの足につかまり、逃げ出しました。
「終わりましたか」
「うん」
「大丈夫か」
「澪先輩!」
私は、駆け寄ってくる澪先輩に向かって抱きつきました。
「わわ、梓」
「すいません。グス。怖かったので」
「……そっか」
今、あずにゃんは澪ちゃんの胸で泣いています。とっても、安心しきった感じで。そりゃそうだよね。私とあずにゃんが出会って、まだ、そんなにたってないもん。それに比べて、澪ちゃんは1年間も一緒だったんだもんね。そりゃ、信頼するよね、私よりも。それは分かってるんだけど……。
ズキ。
でも、よく分からないけど、澪ちゃんに対してあずにゃんが安心しきっているのを見ると胸がズキズキ痛む。私も同じように見てもらいたい、安心してもらいたい、なんて考えてる。何でだろ?そして、この光景を見ていると悔しさもこみ上げてくる。だって、たまたま、澪ちゃんが来たから、助かったけど、もし、来なかったら?私はあずにゃんを守らなきゃいけないのに足を引っ張るだけじゃなく、ピンチに追い込んでしまった。これは抗いようのない事実だ。
「強くならなきゃ」
私は今までちゃらんぽらんに生きてきたけど、初めて、本気で強くなりたいと思った。
――――
私はひとしきり、澪先輩の胸で泣いた後、ポケモンセンターで皆を回復させ、澪先輩と夕食を取ることに。時間がたつのは、早いもので、あの戦いのおかげで、お昼もとれませんでした。だから、おなかぺこぺこです。
「それにしても、さすが、澪先輩ですね。もう、バッチ3個だなんて」
「たいしたことないよ。律達だって、もうゲットしてるだろ」
「どっちにしても、すごいですよ。私なんて、まだ、1個ですし」
「それは梓が遅いだけなんじゃ……」
「もぐもぐ。もぐもぐ」
「ほら、ゆい先輩。口、汚れてますよ」
ふきふき。
「むう」
どうしたんだろう?ゆい先輩は澪先輩と合流してから、なんとなく、不機嫌になってる気がするんだけど、気のせいかな?
「……随分、仲良くなったんだな」
「ええ、まあ。あ、また、汚れてますよ」
「あずにゃん、拭いて~」
「仕方がないですね」
ふきふき。
「……」
「ん?どうしたんですか、澪先輩?」
「い、いや、いつもこんな調子なのかな、って」
「まあ、そうですね。ですよね、ゆい先輩?」
「……いつもはもっといちゃついてるよ。今日は抑えてるくらい」
「ちょ、何を言ってるんですか。澪先輩が本気にするじゃないですか」
「むう。照れることないと思うけど」
「あんまり変なこと言ってると、デザートをあげませんよ」
「ごめんなさい」
「……やっぱり、仲良いんだな」
それから、澪先輩は少し悲しそうにしてたんだけど、どうしてでしょう
夕食後、お風呂に入り、しばらく、お話して、もう寝ることに。
「すいません、澪先輩。一緒に泊まることになってしまって」
「気にすることないよ。ごめんな、ダブルルームになってしまって」
「いえ、いいですよ。それにしても、ダブルベットですか」
利用したことがないので、ちょっとドキドキするな~。ま、普通のベットと変わりませんけど。
「べ、別に変な事するわけじゃないぞ」
「はい?変な事?」
「あ。ゴホン。なんでもない」
どうしたんでしょうか?なんか、様子が変ですが。まあ、いいや。今日はもう眠いです。
「すいません、澪先輩。もう寝かせて下さいね」
「ああ、問題ないよ。私も寝るし」
「さあ、ゆい先輩」
私達はゆい先輩を中心にして、その横に私と澪先輩がつきました。
「こうしてると、どこかの家族みたいですね」
女同士ですけど、子供(ゆい先輩は私よりも年上だけどね)を真ん中に川の字になってますし。
「か、か、家族は早いんじゃないか。もっと、順を追って……」
なんか、澪先輩が顔を真っ赤にしてますけど、どうしたんでしょうか。
「むう。私、子供じゃないよ。あずにゃんには子供にしか見えないかもしれないけどさ」
「すいません」
なでなで。
……ハッ。拗ねてるゆい先輩が可愛いな~って思ってたら、つい、手が出てしまいました。
「……ねえ、あずにゃん」
「すいません。つい、なでてしまって……」
「もっと、近づいていい?」
「え、別にいいですけど」
ゆい先輩は私の方にちょっと近づきました。
「おやすみ、あずにゃん」
「え、ええ。おやすみなさい」
なんか、ちょっと、様子が変だったけど、まあ、いいや。もう眠い。私はまどろみの中に落ちていきました。
――――
私は、あずにゃんと澪ちゃんが寝たのを確認して、目を開けました。
「……すぅ……すぅ」
可愛い寝顔で可愛らしい寝息をたてて、寝てるあずにゃんを見る。
なでなで。
私は、あずにゃんの頭を起こさないように、優しくなでる。……おっと、いつまでも、なでていたいけど、こんなことをするために、起きたんじゃない。私は慎重にベットから抜け出し、あずにゃんのバックから、モンスターボールを取り出して部屋を抜け出した。
「ここら辺でいいかな?」
私はハナダシティの外れ、さっきまで激闘を繰り広げてた、場所にやってきた。
「皆、出てきて~」
私はボールを投げ、サムちゃん、ルビ太、ブイ太を出した。
「皆、ごめんね。ちょっと、話を聞いてくれるかな?」
皆は頷いてくれた。
「今回の戦いでね、私は思ったんだ。まだまだ、力が足りないって。もっと、私に力があれば、あずにゃんをちゃんと守れたって。だから、よければ、皆にも協力してほしいんだけどいいかな?」
皆は『もちろん』と頷いてくれた。皆、良い子だね。
「ありがとう、皆。早速、レベル上げのために野生のポケモンに挑戦するから、フォローしてね」
待っててね、あずにゃん。次にあんな奴らが現れたら、私が今度こそちゃんと守ってあげるからね。私はそんな決意を掲げて、野性のポケモン
を探しに皆と駆けていった。
おつきみやま編 「ロケット団との死闘・後編」終了
最終更新:2011年08月02日 01:10