前回までの状況(トレーナとポケモン)
梓 ゆい ハッサム デルビル イーブイ
澪 ゼニガメ
律 ヒトカゲ
ムギ フシギダネ
純 うい
ハナダ編① 「VS残党」
トキワシティのある建物にて
『嫌になるわね~』
山中さわ子は呟く。今回の集まりは実験体の脱走に対するものだ。本来なら、研究班が全責任を負うべきはずだが、自分の部隊、すなわち、捕獲班が実験体の捕獲に失敗したからだ。ロケット団は大まかに分けて、3つのグループで構成されている。研究班というのは、ポケモンに関して研究していくところだ。もっとも、オーキドとかのようにポケモンの生態について研究するのではなく、軍事などに利用できないかといった研究だ。あの、実験体もその1つだ。1匹で、3種の進化を自由にするというのは、有用ではある。捕獲班というのはもっとも、業務の範囲が広い。野生のポケモンや珍しいポケモンの捕獲をメインとしているが、その後のポケモンの売却や戦闘員の訓練、ロケット団にとって邪魔な人物の誘拐等も含まれる。この班はタイプごとに班分けされており、梓達を襲ったのは、どくタイプの班だ。たかだか、1匹の捕獲だし、毒を喰らわせれば、問題ないだろうと判断したが、失敗した。最後に殲滅班。この班は組織でも、トップシークレットの情報であり、全様を知るものは殲滅班班長とボスのサカキのみである。主な業務はロケット団の運営や警察、政治家への根回しである。それだけでは、殲滅班とは言われないかもしれない。けど、この運営が問題で、裏切り者の抹殺も含まれる。また、組織にとって不要な者、邪魔な者を消す業務も行っている。そして、強い者しか、この班には入れないのである。
『まったく、あなたのせいよ』
『申し訳ありません。ですが、たかだか、1匹捕獲できない捕獲班にも問題あるんじゃないでしょうか』
『それを言われると辛いわね』
『もう、いいですか』
1人の女、曽我部恵は落ち着いて言う。
『どちらにしても、研究班の責任は免れません。捕獲班についても、部隊レベルの向上に取り組んで下さい。それでは、今日の議題について……』
ハナダシティのあるレストラン
「眠いよ~」
「もう!しっかりして下さい」
私達はファミレスで朝食を取っています。
「昨日はよく眠れたか?」
「はい、おかげさまでぐっすり寝ることができました」
「そうか」
澪先輩はにっこりと笑います。
「……コク……コク」
「あ、ゆい先輩寝ないで下さい」
「……あう。寝てないよ~……ぐう」
「説得力がありません。昨日は寝てないんですか?」
「……ぐっすり寝たよ~」
「まだ、寝足りたいんですか。ほら、料理も着ましたよ。早く食べないと冷めちゃいます」
「あずにゃん、食べさせて~」
「なんで、私が」
「……ぐう~」
「もう。仕方がありませんね。……ほら、アーンしてください」
「アーン」
パク。もぐもぐ、もぐもぐ。ぐう~。
「だから、寝ないで下さい」
「まあまあ、昨日が昨日だから疲れたんだろう。そっとしておきなよ」
「そういえば、澪先輩はこの後どうするんですか?」
「朝食が終わったら、イワヤマトンネルに行くよ」
「なら、その前に勝負してみませんか?どれくらい、強くなったのか、試してみたいので」
「……ごめんな。今回はやめとくよ。梓とはポケモンリーグで戦いたいんだ」
「……そうですか」
「それに今日くらいはゆっくりしてやれよ。……ゆいもこんな状態だし」
「ぐう」
「……そうですね」
「それじゃ、私は行くな」
「頑張ってください。それにしても、申し訳ないです。今日泊まるホテル代まで出してもらって」
「いいんだよ、気にしなくて……………一緒に寝ることができたしな」
「はい?すいません、最後の方がよく聞こえなかったんですけど」
「なんでもないよ。じゃあ、また会おうな」
「はいです」
私達は澪先輩を見送りました。
「これから、どうしましょうか、ゆい先輩」
「う~、寝たいよ~」
「もう!!どうしたんですか、今日は」
「あう~。別になんでもないよ~。ただ、眠いだけだよ~。……………昨日は調子に乗って、今日の5時まで、戦っちゃったんだもん」
「はい?いまなんて……」
「ねえ、今日は一緒に寝て過ごそうよ~、あずにゃ~ん」
「さすがに寝て過ごすわけにもいきませんよ」
それもいいかもしれませんが、ちょっともったいない気がしますし。
「仕方がありません。じゃあ、ゆい先輩は寝ていて下さい」
「あずにゃんは?」
「私はみんなのレベル上げをしてきます」
「え、や、やめた方がいいよ(昨日もあんなに付き合ってもらったのに)」
「何を言ってるんですか。ハナダジムにも挑戦していくんですからね。万全にしておかないと。じゃあ、いったん、ホテルに戻りましょう」
「ぐうぐう、ぐうぐう」
ゆい先輩はベットで気持ちよさそうに寝ています。一体、昨日、何をしてたんでしょうかね。テレビでも見てたんでしょうか?
「それにしても、幸せそうな寝顔ですね」
どんな夢を見てるんでしょうね。ゆい先輩のことだから、ケーキとかを食べてる夢でしょうか?起こすのも悪いので、サッサと行くとしましょう。一応、メモを残しておきましょう。
『ハナダの外れ、私達が戦った場所に行ってきます。 梓より』
これでよし。さて、行きますか。
「……あずにゃ~ん」
ビクッ。
「ムニャムニャ、そんなことしちゃ駄目だよ。……あん。変なとこ触んないでよ。……ムニャムニャ」
いきなり、名前を呼ばれてびっくりしましたけど、寝言ですか。というか、どんな夢を見てるんでしょうか。まあ、知りたくありませんけど。というより、知ってはいけない気もしますが。このまま、行ってもいいんですけど、なんとなくしゃくなんで、ちょっといたずらしてみましょう。
ツンツン。
私は柔らかそうなゆい先輩のほっぺをツンツンとつついてみる。プニプニしていて実に気持ちいい。癖になりそうです。
ツンツン、ツンツン。
「あう~」
ゆい先輩は少しうっとうしそうに寝返りを打ってしまいました。少しやりすぎたかもですね。私は今度こそ、黙って、部屋を出ました。
――――
「よし、ここでいいかな」
私はデルビルとイーブイを出す。
「前回、デルビルは頑張ってくれたんだけど、もう少し、レベルを上げたほうがいいから、今日も頑張ろうね、デルビル」
私はデルビルの背中をなでる。
「イーブイはまだ、使いこなせない部分もあるから、レベル上げとともに、そこらへんもやるけど良いかな?」
「ブイ」
「そっか。ありがとね」
ナデナデと頭をなでる。
「じゃあ、皆、今日も頑張ろうね!」
12時ごろ
「う~ん、よく寝た~」
私はちょうど、おなかも減ってきて目が覚めた。やっぱり、夜に特訓しても、こんなに眠くなったら意味ないね。今度からは気をつけなきゃ。
そういえば、あずにゃんはどこだろ?私は辺りを見回すとテーブルの上にメモがあります。うーんと、何々。
『ハナダの外れ、私達が戦った場所に行ってきます。 梓より』
なるほど、きっと、皆のレベル上げでもしてるんだろう。あずにゃんには内緒だけど、昨日の夜もやったし、皆には悪いことをしたかもしれない。
「う~ん、どうしよう?」
時間もお昼だし、迎えに行こうかな。私は準備をして、あずにゃんを迎えに行くことにした。
―――
「ふう~、ちょっと休憩しましょうか」
私は連携を確かめたり、イーブイの進化の使い方の確認を行ったりしました。なので、ちょっと、疲れました。
「イーブイ、こっちにおいで。ブラッシングしてあげますから」
こういうちょっとしたコミュニケーションも大事ですよね。トレーナーとして。
「ブ~イ」
「デルビル」
「デルビルもやってほしいの?ちょっと、待っててね」
私はイーブイのブラッシングをしつつ、デルビルの頭をなでる。嬉しそうにするイーブイやデルビルを見ると気分が良いですね。
「そういえば、もう、お昼ご飯ですね。唯先輩のところに戻りますか」
「残念だけど、それはできないな」
声のした方を見ると、見覚えのある服を着た3人の男がいました。周りには5匹のアーボックとマタドガス達がいます。
「昨日はよくもやってくれたな」
「あなた達は昨日捕まったはずじゃ」
「洞窟内部でやられたからな」
「逃げるのも楽だったわけよ」
なるほど、納得です。
「てめーのポケモンを奪って、ロケット団に戻ってやる」
どこまでも下種な人たちですね。でも、こちらはきついですね。デルビルとイーブイは疲れてますし、万全なのはハッサムだけですか。まあ、でも、問題ないですね。ハッサムは強いですし。
「出てきて、ハッサム」
私はハッサムを繰り出しました。
「マタドガス、アーボック」
「行きなさい、ハッサム。バレットパンチ」
ハッサムは先制攻撃を仕掛けます。そのおかげで、マタドガスをまずは倒しました。
「次もやるです、メタルクロー」
続いて、アーボックにも攻撃を加えます。
「シャーボック」
アーボックもふっ飛ばして、倒しました。これで、後、3匹です。
「どんなもんですか」
「くっくっくっ。まあ、これくらいは計算どおりだな」
「強がりですか。情けない連中ですね」
「まあ、こいつを食らってから言いな」
そう言って、ロケット団はハッサムにビンの入り口に紙を入れて、火をつけて、投げてきました。あれはなんていうんでしたっけ、そうだ。
「火炎瓶!?」
「そのとおり」
ハッサムははがねタイプでほのおタイプ、すなわち、火の技が弱点です。つまり……
「ハッサーーム」
ハッサムに大ダメージということです。
「大丈夫ですか、ハッサム。戻ってください」
「これで、切り札は消えたわけだ」
「私には、まだ、2匹います」
「そんなに弱ってる奴が2匹いてもな~」
たしかに、今までの特訓のせいで疲れきってますからね。
「こっちは残り、3匹。そっちは2匹。おまけに妙な奴もいない。終わりだな」
「くっ」
どうすればいいんでしょうか。
「お~い、あずにゃ~ん」
「あ、ゆい先輩」
「チッ、また、あのガキか」
「むむ、これはあずにゃんのピンチだね」
「かまわねえ、やっちまいな」
「それじゃ、早速いくよ~(格好よく倒して、あずにゃんになでなでしてもらおう)ゆいちゃん真拳奥義『ゆいあず☆ちょっと残念な昔話』」
あれ?今回はいつもと違いますね。人形が出る様子もありませんし、名前も無茶苦茶だし。
「まず、初めのタイトルは『アズサの恩返し』」
「誰かー。助けてください」
「むむ。あれはあずにゃんじゃないか。しかも、罠に掛かってる」
「助けてください」
「もちろんだよ」
罠を外す。
「ありがとうございます。このご恩はいずれ返します」
「いいよー、別に」
「いいえ、絶対返します。それではまた」
その日の夜
コンコン。
「はーい。どなた?」
「私は今日助けてもらったアズサです。約束どおり、恩返しに来ました」
「そんな~。悪いね~」
「では、恩返しの品です」
10円ガム。
「………」
「………」
「意味わかんないよー」
アーボックにパンチ。
「別に恩返しのために助けたんじゃないけどさー」
キック、キック、パーンチ。
「シャーボック」
「でもさー、恩返しなんて言われたら、期待しちゃうじゃない」
ワンツー、ワンツー。
「物なんて要求しないけど、せめて、ネコミミをつけたあずにゃんを一日抱きつける券をあげるとかさ、やることあるんじゃないかなー」
「なにを言ってるんですか、ゆい先輩!!」
エネルギーを右手に溜まってます。
「ゆいちゃんパーンチ」
アーボックはふっ飛ばされてしまいました。
「なんだ、今の技は」
「くそ、マタドガス、ベトベトン」
2匹はゆい先輩に襲い掛かろうとします。
「次のタイトルはね、『ゆい太郎』」
「さあ、さっそく、鬼ヶ島に出発しよう」
「はいです。皆、頑張ろうね」
「ニャー」
「……」
「あの、あずにゃん。この2匹は……」
「あずにゃん2号とスッポンモドキのトンちゃんです」
「………」
「これじゃ、戦えないよー。ゆいちゃん昇竜拳」
マタドガスを上にふっ飛ばします。
「あずにゃんはいいとしても、あと2匹はなんなのさー。ゆいちゃんキック」
ベトベトンすらもふっ飛んでいきます。何なんですかね、この技。
「さて、残りは君たちだね。最後に一番残念な話をしよう」
「くそ。なんなんだ、こいつの強さは」
「いったん退くか」
「そうするか」
勝てないと分かったら、逃げるんですか。相変わらず、卑怯な連中です。
「一番残念な話……それは」
ゆい先輩は逃げ出す、ロケット団を先回りします。
「この話だよーーーーーー」
と、叫んで、まず1人をキックで、ふっ飛ばしました。なにを言ってるのかはよく分かりませんが。
「もっと、書き手が良ければ、もっと、あずにゃんとイチャイチャして、それこそ、18歳未満お断りな展開もあったかもしれないのにさー」
まったく、言ってる意味がわかりません。
「くらえー、ゆいちゃん百烈拳」
ロケット団に百烈拳を叩き込みます。
「何事かね、この騒ぎは」
この騒ぎを聞きつけたのか、おまわりさんがやって来ました。
「ロケット団が襲ってきたんです」
「何!?」
その後、私達を襲ってきたロケット団の人達は見事に捕まりました。
「事情聴取などで、結局一日が潰れちゃいましたね」
「そうだね。でも危なかったね、あずにゃん。私が来なかったら、どうなってたことか」
「そうですね。今回は本当に助かりました」
「ねえねえ、あずにゃん。私のこともっとほめても良いんだよ~。例えば、ナデナデしたり、ほっぺたにチュ~、とかさ」
「調子に乗らないで下さい」
でも、そうですね。卑怯ですけど、気になってたことを聞きますか。
「撫でるくらいならしてあげますけど、1つ条件があります」
「条件?」
「昨日の夜なんで遅くまで起きてたんです?」
「それは………してたんだよ」
「はい?」
「特訓してたんだよ~」
「特訓?」
「うん。皆に付き合ってもらって、今日の5時まで」
「ぷっ、くくくくく」
「笑わないでよ~、こっちも真剣なんだから」
「すいません」
ナデナデ。
「あう~」
気持ちよさそうにする、ゆい先輩。
「どうして、急に、こんなことを?」
「澪ちゃんに負けたくなかったんだ」
「はい?」
「あずにゃんは澪ちゃんを見る目がとても、尊敬してるというかある種の安心感みたいな感じだったから、私が強くなれば、そんな眼で私を見てくれるかなって」
「……ゆい先輩」
いつも、ちゃらんぽらんに見えてもやるときはやるんですね。
「今度からは、そういう時は私に言ってくださいね」
「どうして?」
「どうしてって、私は……」
「私は?」
「ゆい先輩のパ……トレーナーですから。……さ、夕食でも取りましょうか」
「うん!」
ハナダ編① 「VS残党」終了
最終更新:2011年08月02日 01:11