「ゆい、これを見てみな」
「? それはな~に?」
「これは、梓の入浴シーンの写真だ」
「なっ!!」
「何だと!そいつをこっちによこすんだ、りっちゃん」
「ゆいが負けてくれたら、あげるぞ」
「そ、それは出来ない相談だよ」
「じゃあ、無理だな」
「う、うわあああああああ」
「はっははははは」
「りっちゃーーーーーーーん」
「リザード。かえんほうしゃで攻撃だ」
「無駄だよ。あずにゃんの効果で……」
「かえんほうしゃは特殊攻撃だぜ」
「!?」
リザードの攻撃で、『私』を攻撃し、破壊します。その影響で、ゆい先輩にもダメージが。
「くそ、私のターン。私は手札抹殺を発動。手札を全て捨て、カードをその枚数分ドロー。つまり、デッキから5枚カードをドローする」
「どうした、いいカードでも引いたか?リザード、サッサとトドメを……」
「覚悟しろよ、このデコ野郎!」
「何だと!」
「私は魔道戦士ゆいちゃんを召喚。攻撃だよ」
戦士のコスチュームをして、剣を持っているゆい先輩がリザードに斬りかかります。
「リザーーーーード」
リザードは斬られるもまだまだ、元気です。
「その程度か。今度は……」
「何勘違いしてるんだ」
「ひょ?」
「まだ、私のバトルフェイズは終了してないよ」
「なにを言ってやがる。もう攻撃は終わってるじゃないか」
「そもそも、バトルフェイズ自体がおかしいんですけど」
「シッ。ここは静かにしてるところだよ」
「速攻魔法発動だよ。『狂戦士の魂(バーサーカーソウル)』」
「狂戦士の魂(バーサーカーソウル)?」
「手札を全て捨て、効果を発動。このカードはデッキから、モンスターカード以外をドローするまで、何枚もドローし、その枚数分追加攻撃が出来る」
「何!」
「あのカードは……」
「また、何か知ってるんですか」
「ああ。あれは伝説のデュエリストが所有する伝説のカード……。こんなところで、目にするとは」
この人は、一体、何者なんでしょうか。
「さあ、行くよ。まず、1枚目、モンスターカード「中学生のあずにゃん」」
「なっ!」
「魔道戦士ゆいちゃん、リザードに攻撃」
戦士のコスチュームをして、剣を持っているゆい先輩がリザードに斬りかかります。
「グハッ」
「2枚目、ドロー。モンスターカード「黒く肌の焼けたあずにゃん」」
「ギャー」
「3枚目、ドロー。モンスターカード「ロングヘアーあずにゃん」」
「アアアア」
「4枚目、ドロー。モンスターカード「寝袋あず……」」
「もうやめるんだ!」
その時、マサキさんがゆい先輩に駆け寄りました。
「離してよ」
「リザードのライフはゼロだ。もうとっくに勝負はついてるんだよ」
「はあ、はあ」
「梓、判定」
「え、私ですか。えーと、リザード、戦闘不能。よって、ゆい先輩の勝ち。ゆい先輩に1ポイント。計、2対1で、ゆい先輩の勝ちです」
「わーい、やったね」
「おめでとう。ニューラは君の物だよ」
マサキさんは私にニューラの入ってるボールを渡します。
「あ、ありがとうございます」
「……」
律先輩のほうを見ると、黙って、こっちに歩いてきます。や、やっぱり、今のふざけた戦いに腹を立ててるんでしょうか。律先輩はゆい先輩のところに歩み寄りました。
「な~に、りっちゃん」
「いい戦いだったな」
と、ゆい先輩に手を差し出します。
「うん。今回は私の勝ちだけど、りっちゃんも強かったよ」
ゆい先輩はその手をがっちりと握ります。ほほえましい光景なんでしょうが、私にはまったくそんな感じがしません。
「最後の戦いはよかったよね。観客がいればスタンディングオペレーションだね」
スタンディングオベーションです。それに観客がいれば、怒るか訳の分からないって感じでポカーンとするだけでしょうね。
「ああ。また、こんな戦いがしたいな」
2度としたくありません。
「すばらしい戦いだったね、2人とも。特に最後の戦いはポケモンリーグでやってたら、歴代のバトルでも、名バトルとして記録に残るだろうね」
記録より記憶に残るでしょうね。珍バトルとして。
「そう思わないかい、中野さん」
「まったく、思いません」
私が正直に答えると、皆が冷たい目で見てきます。
「おいおい、梓。このバトルの良さが分からないと一流にはなれないぞ」
「一生、なれなくていいと思います」
「まったく、人が感動してるのに、少しは空気読みなよ、あずにゃん」
「そんな空気読みたくありません」
「あまり、我侭言ってゆいちゃんを困らせるのはいけないと思うよ」
「困らせるのはゆい先輩達ですし、あなたのキャラがよく分かりません」
「「「やれやれ」」」
「皆であきれないで下さい」
それから、私達は少しお話して、出発することに。
「もう、行くのかい」
「ああ。私はイワヤマトンネルの近くの宿泊施設に行かなきゃいけないから」
「それでは、さようなら」
「ばいば~い」
「頑張ってくれよ。ポケモンリーグを楽しみにしてるよ」
私達はマサキさんと別れ、ハナダシティの近くに戻ってきました。
「さて、私も行くかな」
「もう少し、ゆっくりしてもいいと思うんですけど……」
「梓だって、早くジムに挑戦したいだろ」
「律先輩……」
さすがですね。私に気を使ってくれるなんて。
「じゃあな」
「あ、待って下さい」
「なんだ、梓。私と別れるのが寂しいのか?」
「写真を返してください♪」
「……シャシン?ナンノコトダイ?」
「いいから、返してください♪」
「ダカラ」
「か・え・し・て・く・だ・さ・い」
「………はい」
「まったく。油断も隙もありません」
「ねえねえ、りっちゃん」
「なんだよ」
「あれ、1枚じゃないでしょ。私に1枚頂戴」
「………やだって言ったら?」
「今、あずにゃんに言う」
「分かった。やるから、黙ってろよ」
「もちろん」
「何を話してるんですか」
「なんでもないよ。ね、りっちゃん」
「ああ。ちょっと、別れを惜しんでただけだよ」
「いつの間にそんなに仲良しに……」
「「嫉妬かい、あずにゃん(梓)」」
「同時に同じこと言わないで下さい」
「さて、今度こそ、行くかな」
「それじゃ、また会いましょうね」
「ああ」
「バイバイ、りっちゃん」
「ゆいもまたな」
私達は律先輩と別れ、ポケモンセンターに。
「とりあえず、1度回復させてから、ジムに挑戦しましょう」
「そうだね(澪ちゃんもりっちゃんもそうだったから、きっと、もう1人の子も……。駄目だよ、あずにゃんは私のものだもん。しっかり頑張らないと)」
ゆい先輩はなにか、決意してるようです。きっと、律先輩に会って、なにか刺激があったんでしょうか。これはいい傾向ですね。
「頑張ろうね、あずにゃん」
「はい!」
私達は、ジムに挑戦すべく、ハナダジムに向かいました。
ハナダ編② 「梓争奪戦①・ゆいVS律」終了
前回までの状況(トレーナとポケモン)
梓 ゆい ハッサム デルビル イーブイ ニューラ
澪 ゼニガメ
律 リザード サワムラー ニョロゾ
ムギ フシギダネ
純 うい
注 実際の団体とは関係ありません
ハナダ編③ 「VSカスミ」 以下投下
トキワシティのある施設にある捕獲班部長の部屋
『さて、皆に集まってもらったのは、明後日、行われる、サントアンヌ号の船上パーティの襲撃とその際に琴吹会長の孫、
琴吹紬を誘拐するための詳細を説明するためよ』
山中さわ子は辺りを見回す。この部屋には、マコトと、とり、じめん、みず、かくとうタイプの班長が揃っている。
『どうして、私たちなんですか』
みずタイプの班長は言う。
『あそこのジムはでんきタイプですよね。みずととりじゃ、きついと思いますが』
マコトは溜息をつく。この程度のことも分からないのか、と。
『そうね。でも、戦うのは船の上よ。船は水の上にあるのよ。タイプのうえでは不利でも、十分に有用なのよ』
船の上で戦う以上、海からの奇襲や空からの奇襲というのは、重要になる。地上ではないので、タイプの弱点だけが重要ではないのだ。
『今回の作戦も、マコト、あなたに指揮をとってもらうわ』
『意義ありです』
『どうして?とりタイプの班長さん』
『彼は前回の任務で失敗してます。そんな人を信用できません』
『間違ってはないわね』
『だから、私に指揮を執らせて下さい』
なるほど。この任務を成功させて、出世したいのね。人間とは強欲なものだと山中さわ子は考える。
『あなたはマコトよりも強いの?』
『もちろんです』
自信満々に答える。この自信は良いわね。私だって、強いっていえないのに、とさわ子は考える。まあ、過信じゃなければいいんだけど、ととも。
『じゃあ、1つ聞くけど、この任務でやるべき目標って何だと思う?』
『もちろん、迅速に琴吹紬を誘拐することです』
『……マコトは?』
『1人でも多くの人間を殺して、琴吹紬を誘拐する』
『理由は?』
『琴吹紬を誘拐するだけなら、襲撃する必要がない。それに、孫の誘拐だけなら、取引に応じない可能性もある。だが、1人でも犠牲者が多ければ、考えも変わってくる』
『どんな風に?』
『ただ、誘拐するだけなら、自宅でもかまわない。だが、これは報復という意味もある。なるべくなら、ロケット団に逆らったら、こうなると印象付けたいからな』
『なるほど』
『それだけじゃない。ここまで、残忍な奴だと印象付ければ、こいつらは援助しなければ、人質にも容赦しないだろうとさらに強く思うだろう。そうするとさすがに無視できない』
『だ、だがそれでは、警察も動くだろう』
『それはおれの知ったことじゃないな』
『それは大丈夫よ。すでに手はうってあるわ』
某所
『なるほど。今回の襲撃を見逃せば、援助金のうちの1割をくれると』
警察庁長官は言う。
『ええ』
『しかし、たった1割かね』
『不満ですか?』
『不満はないよ。曽我部君』
『すいませんね。政党への援助金のうちの3割の寄付もありますので』
ロケット団は主要といわれる三つの政党への寄付も行っている。どこが政権ををとっても、組織を壊滅させないためだ。
『分かってるよ。先日にも圧力があったからね』
それでも、長官にお金を渡すのは敵を増やさないためだ。世の中、敵を作ってばかりではだめなのだ。
『それでは』
『ああ』
曽我部恵はその場所を去った。
――
トキワシティのある施設にある捕獲班部長の部屋
『だとしても、この男が指揮官なのは納得できません』
『それじゃあ、こいつよりもあなたは強いと』
『もちろんです』
『それじゃ、勝負しなさい』
『望むところです』
『本気でいいのか?』
『もちろん』
『ではさっそく、勝負……ぐっ』
突如として、とりタイプの班長さんの首にアーボックの尻尾が巻きつかれる。
『や…め…ろ』
『どうした?俺より強いんだろ?』
『ふ…い…うちは……卑怯』
『卑怯?おかしなことを言うな、お前』
くっくっくっと楽しそうに笑う。さわ子がマコトを強いと思うのはこの残忍性だ。実際の話、正規の戦いをしたら、マコトは弱い。何故なら、トレーナーへ攻撃を行うなどの反則負けになるからだ。というのも、勝つためには全力を注ぐからだ。勝つためには、たとえ、仲間でも容赦しない。さらに、冷静な部分もある。これで、異常な性欲がなければ、十分に出世できただけの実績を上げられるだろう。
『どっちが上か分かったわね。実行日は明後日よ。絶対、成功させてね。それから、始末が大変だから、その辺でやめておきなさいね』
さわ子の冷たい声が室内に響いた。
最終更新:2011年08月02日 01:22