「ゆい先輩は大丈夫ですか?」

「うん。私は、あずにゃんの背中におんぶしてもらうから」

「あ、すいません。私は荷物があるので、無理です」

「……え。……今なんて?」

「だから、荷物があるので無理です」

「そ、そんな。恋人である私よりも荷物を……」

「荷物がなかったら、大変ですし。後、恋人でなく、恋人(仮)です」

「うぅ、あずにゃん、冷たいよ~」

「いいから、サンダースの上に乗って下さい」

私はサンダースの上にゆい先輩を乗せる。……うん、サンダースの上に乗るゆい先輩もかわい……ゴホン、ゴホン。私は何を考えてるんでしょうか。少し、落ち着きましょう。

「あずにゃんの背中には敵わないけど、ブイ太の背中も気持ちいいね~。グテー」

たれぱんだみたいにグニャ~ってなってるゆい先輩。それもまた、可愛いですね~。……ハッ。違います、違います。ちゃんと、しっかりしないと。

「では、サンダース。ゆい先輩を頼みますよ」

私はゆい先輩を乗せたサンダースを先に下に行かせます。

「……あっ」

「どうしたんですか、ゆい先輩」

「どうして、あずにゃんはズボンなんだい?」

「……いきなり、何ですか?」

「だって、私は今、あずにゃんの下にいるわけだしさ、こうなるのがいいんじゃない?」


『大丈夫、あずにゃ……』

私は上を見る。そこには、スカートの中から見える縞々のパンツが……。

『どうしたんですか、ゆい先輩』

『……縞々』

『縞々?……ハッ、どこ見てるんですか!』

慌てて、スカートを押さえる照れるあずにゃん。

『いいじゃん、女の子同士なんだし~』

『だからって、そんなにマジマジと見ないでください』

『もう。恋人同士なんだし、恥ずかしがらなくてもいいよ』

『そういう問題でもありません。あっち、向いてくださいよ~』

照れながら言うあずにゃん。可愛いな~。


「っていう、やり取りがあっても、いいんじゃない?」

「……なにを言ってるんですか。こんなところで、スカートなんか穿いたら、足に怪我とかしちゃうじゃないですか」

「それは困るね。あずにゃんの綺麗な肌が傷つくのは天然記念物を傷つけるのに匹敵するからね」

「なに言ってるんですか」

とりあえず、梯子を降り終えました。

「さて、奥に行きますか」

再び、デルビルを出し、ゆい先輩を上に乗せる。

「ビル太、出す意味あるの?」

「サンダースがすばやく移動できるようにするためです」

あまり、サンダースに負担をかけたくありませんしね。

「デルビル」

「ダース」

「どうしたんですか?」

私が視線を先に向けると、野生のズバットが出てきました。

「よし、ゆいせんぱ……」

「よし。行くんだ、ビル太、先制攻撃でかえんほうしゃだよ」

「ちょ、何勝手に指示してるんですか」

「まあまあ、いいじゃん。ちゃんと、倒してるし」

たしかに、デルビルのかえんほうしゃによって、ズバットが黒焦げになって、倒れましたけどね。でも、一応トレーナーである私を差し置いて、ポケモンが指示を出して、勝つって、いうのはどうなんでしょうか。

「それにしても、なかなか進化しないね。まあ、可愛いからいいけど」

デルビルをナデナデするゆい先輩。……いいな、うらやま、ゴホン。

「そうですね、うん。進化しないと苦しいかもしれませんね」

私はごまかすように言う。まったく、最近の私は少し、変ですね。まあ、でも、実際、そのとおりですけどね。前回の山中さんとの戦いを見ても、ギリギリでしたし、仲間のレベルアップも重要です。

「よし、デルビル。イワヤマトンネルを抜ける前に進化できるように頑張りましょう」

「デルビル」

デルビルは元気よく、頷いてくれました。

「よし。2人とも、頑張って。私も頑張って、応援するよ」

「ゆい先輩もですよ。ちゃんと、鍛えないから、途中で倒れてしまうんです。2度と、あんなことがないように鍛えておかないと」

「あう~。えーと、その、……そうだ!私よりも、リュウ太を鍛えようよ。まだ、もらったばかりだし」

「……そんなに戦いたくないんですか。まあ、ゆい先輩の言ってることも間違ってないので、今回は、デルビルの進化とミニリュウを育てるこ
とに重点をおきましょう!」

「デルビル」

「頑張れ~」

そして、私達は再び出発しました。


「ツブテ」

「よし。戻って下さい、ミニリュウ」

ふう、これで、何匹目でしょうかね。結構な数を倒してきたと思うんですが。

「なかなか、進化しないね」

「ビル」

デルビルは落ち込んでいるようです。

「そんなにがっかりしなくていいんだよ。デルビルは頑張ってるんだし」

ナデナデ。

私はデルビルの頭を優しく撫でます。

「あずにゃん、私も、私も」

ゆい先輩も頭を撫でてほしいのか、デルビルの隣に座って、頭を私に向けます。

「ゆい先輩は駄目です」

「え~。あう~、恋人に冷たいよ、あずにゃん」

シュンとなる、ゆい先輩。思わず、ごめんなさいと謝って、撫でようと思いましたが、ここは心を鬼にしておきましょう。甘やかしすぎはよくないですし。

「恋人(仮)です。それに、デルビルは頑張ってるんです。ゆい先輩も頑張って下さい」

「……うん、分かった」

ゆい先輩はやる気になったように言います。うん、動機は不純ですけど、やる気が出てきたのはいいことです。

「明日から、頑張るから、今、撫でていいよ」

「……行きましょうか」

「あう~、冗談だよ~。待って~」

しばらく、歩き続けると、看板がありました。

「なんか、書いてあるね」

「そうですね」

看板には『野生の凶暴ながルーラが出ます。注意して下さい』って書いてあります。ガルーラですか。ガルーラはノーマルタイプの技でも、ゴーストタイプに命中できる特殊な特性を持ってるポケモンらしいですね。

「気をつけて進まないといけませんね」

「平気だよ、私がいるもん」

自信満々に胸を張って、言うゆい先輩。相変わらず、どこから、その自信が来るかわかりませんが。

「ちなみに、大きさだけなら、サイドンよりも大きいですよ」

「……頑張ってね、ビル太」

「……はあ」

まあ、ゆい先輩には期待していませんが。戦闘能力なら、おそらく、私のメンバーでも№1ですけど、ムラがありますからね。それに、私のそ
ばに居てくれれば、それで……ゴホン。

「それじゃ、先に進みますか」

「うん」

私達が先に進んだら、洞窟にしては広い広場みたいな空間に出ました。

「ここは何なんでしょうか」

辺りをとりあえず、歩き始めます。そして、ある壁沿いに差し掛かった、その時、

「デルビル」

デルビルが突然止まって、吠え出しました。

「どうしたんですか」

私はそう言って、周りを見ると、前の壁がだんだんひび割れて、そこから鋭いツメとともに壁が砕け散りました。

「ガルーラ」

なんていう不運なんですかね。ガルーラが現れました。それも、3匹も。ある意味、運がいいんですかね。まあ、そんなことを考えてる場合じゃありません。私もポケモンを出さないと。今回、サンダースは使えませんね。だとすると、デルビルと……。

「出てきて、ニューラ。そして、ゆい先輩……あれ?」

デルビルの上にいたはずのゆい先輩に目を向けますが、いません。どこにいったんでしょうか。

「頑張って、ビル太、ニュー太」

私の後ろに隠れて、応援している、ゆい先輩。

「……あの、ゆい先輩」

「……戦わなきゃ駄目?」

「なるべくなら、戦ってほしいんですけどね。嫌ですか?」

ハッサムを出してもいいんですけど、なるべくなら、温存しておきたいですし。

「嫌って言ったら?」

「それなら、仕方がないですね。代わりのポケモンを出しますから」

「勝ったら、ナデナデとかしてくれる?」

「久しぶりの要求ですけど、勝ってくれるなら」

「よし、頑張るよ。いくよ、ビル太、ニュー太」

「ビル」

「ニューラ」

さっきから、臨戦態勢のガルーラ。今、バトルが始まろうとしています。

「ガルーラ」

ガルーラの一匹(これから、仮にAとします。以下、B,C)が私達に向かって、メガトンパンチを繰り出してきました。

「ヒャー」

デルビルの上に跨る、ゆい先輩がそんな声を上げつつ、技をかわします。……まあ、かわしたのは、デルビルですけど。

「あずにゃん、ビル太は私が指示するから、ニュー太は任せた」

私に的確な指示を出すゆい先輩。普段から、こうなら、いいんですけど。まあ、でも、たまに見せるそんなかっこいい表情もなんともいえ
な……今はバトルに集中しないと。

「分かりました。行きますよ、ニューラ」

私達はそれぞれ、ガルーラをひきつけ、バトルを始めました。


梓・ニューラ

私達の相手はガルーラC、1匹。向こうも、心配なので、サッサと倒したいところですね。

「ガルーラ」

ガルーラがメガトンパンチを繰り出します。

「ニューラ、かげぶんしんでよけてください」

ガルーラの拳は空を切ります。なにせ、ガルーラの攻撃力じゃ、命中されると辛いですし。

「今です、こおりのつぶて!!」

ニューラは素早く、氷の塊を作り出し、ガルーラに放つ。

「ガルーラ」

ガルーラはその攻撃で、ちょっと、怯みますが、大して効いてる様子はありません。ガルーラはニューラに対して、拳を振り下ろしてきます。ニューラはそれをかわしますが、ニューラがいた所にあった岩がガルーラのパンチで、砕けました。すごい威力ですね。あれを喰らったら、ニ
ューラは苦しいですね。ハッサムに交替させるべきでしょうか。そう考えて、ニューラに視線を向けると、

「ニューラ」

と、おれに任せろ、みたいな視線を返してきました。よし、ここはニューラに任せましょう。

「ニューラ、接近して、きりさく攻撃!」

ニューラは素早く、ガルーラに接近し、ガルーラの胸を切り裂きました。

「ガルーラ」

さすがにこの攻撃は効きましたが、ガルーラはこの攻撃で怒ってるようですね。顔を真っ赤にして、ニューラを睨みつけます。おそらく、いかり攻撃ですね。ガルーラはいかりのままに、メガトンパンチをニューラに繰り出してきます。

「ニューラ」

ニューラは素早く、回避していきますが、あの、パンチは相当な威力で、岩を粉砕して、地面はめり込んでいます。早く、決着をつけないと、
ゆい先輩達も心配ですし。

「ニューラ、こおりのつぶてで、ガルーラの目を狙ってください」

ニューラはガルーラの猛攻をかわしながら、氷の塊をガルーラの目に投げつけ、命中します。

「ガルー」

ガルーラは目を押さえて怯んでいます。今がチャンスです。

「ニューラ、さっき、切り裂いたところにメタルクローです!」

ニューラの鋼鉄となったツメがガルーラの傷口を再び切り裂きます。

「ガ……ルーラ」

ガルーラは呻きながら、倒れました。

「よくやりましたね、ニューラ」

ナデナデ。

「ニューラ」

嬉しそうに鳴くニューラ。

「じゃあ、ゆい先輩のところに行きましょう」

「ニューラ」

私ニューラをボールに戻し、ゆい先輩達の方に向かいました。



ゆい・デルビル

私達の相手はガルーラA、Bの2匹。相手にとっては不足なし……なんだけど。

「ガルーラ」

ガルーラAの鋭いパンチが私達に迫ります。

「ヒャー、ビル太、右だよ」

「デルビル」

私はビル太の上でうまく指示を出し、その攻撃をかわす。

「ガルーラ」

今度はガルーラBの方が私達にとっしん攻撃を仕掛けてきました。

「また、来たよ~。ビル太、もう一回、右」

「デル」

またもや、ビル太がかわしてくれる。うん、実にいいポケモンだね。

「かわしてばかりじゃ駄目だね。ビル太、かえんほうしゃ」

今、攻撃をかわした、Bにかえんほうしゃを浴びせる。よし、いい調子だね。

「ガルーラ」

Bに攻撃をしていると、Aが横から、メガトンパンチを繰り出してきました。

「ビル太、よけ……」

私が言い切る前に、その攻撃は命中し、ビル太もろとも、飛ばされちゃった。

「…うぅ、いてて。大丈夫、ビル太」

「……ビル」

ビル太はあのパンチをまともに喰らっていたけど、なんとか、立ち上がります。

「ガルーラ」

Aとさっきまで、かえんほうしゃを喰らっていた、Bもこちらを睨んでいる。

「あ、あの、さっきの攻撃とかで、怒ってるのかな?」

「ガル」

「は、は、話しあわないかな。穏便に」

「ガル」

ガルーラBが問答無用とばかりに私に拳を振り下ろしてきます。

「ひゃー」

私が恐怖に目をつぶると、

「デルビル」

ビル太の鳴き声とともに、ガルーラの悲鳴も聞こえてきました。私が目を開けると、ガルーラの手に必死に噛み付く、ビル太の姿が。

「ビル太!!」

痛さに苦痛の表情を浮かべる、B。手を必死に噛み砕こうとする、ビル太。

「ビル太、頑張れ~」

私の応援が効いたのか、Bがあまりの苦痛で膝をつく。Bはビル太を離すために、ビル太に片方の拳を叩きつける。その攻撃にビル太も苦痛の表情を浮かべる。これは我慢比べだね。しばらく、攻防は続きますが、先に、ギブアップしたのはビル太でした。

「ビル」

Bはビル太を叩きつけ、私を睨みます。さっきから、様子を見ていたAも出番とばかりに私を見ます。

「……うぅ、あずにゃ~ん」

私はここで負けちゃうのかな。せっかく、私とあずにゃんの関係も一歩進んだのに、残念だね。

「……ビル」

その時、ビル太が傷つきながらも、Bに抵抗すべく、立ち上がります。

「ビル太!」

その時、ビル太の体が輝きます。こ、これは……!?

「ゆい先輩!」

「あ、あずにゃん」

私は急いで、ゆい先輩のところに来ましたが、なにやら、様子が変です。

「あ、あずにゃん。ビル太の様子が……」

「……これは、し、進化ですか」


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最終更新:2011年08月03日 03:12