「ここは私がやっている施設で、捨てられたポケモンを見つけては預かって、世話をしてるんじゃ」
「ペルシアン」
施設に入ると、ペルシアンが出迎えてくれました。他にも、二ドリーノやコダック、ポッポなどいろいろいます。
「これが捨てられてたポケモンなんですか」
「ああ。悲しいことにな」
フジさんは悲しそうに言う。それはそうですよね。ここにいるのは悲しい思いをしたポケモン達なんですから。
「おじいちゃん、お帰りなさい。……あれ?その人達は?」
奥から、小学生2年生くらいの男の子が出てきました。
「わしが困ってたのを助けてくれたんだよ」
「そっか。ありがとうございます。あ、荷物、持ってくね」
「あ、ありがとうございます」
私はその子に荷物を渡します。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、これくらい」
その子は荷物を持って、奥に引っ込んでいきました。
「いい子ですね」
「ええ。あの子の両親はあの子が赤ん坊のロケット団に殺されましてね。身寄りが居なかったので、私が引き取ったんじゃ」
「……ロケット団ですか」
一体、どれだけ、ひどいことをする奴らなんでしょうか。
「……あの子は強い子じゃよ。両親はポケモンブリーダーだったんじゃが、自分は、両親よりも優秀なポケモンブリーダーになるんだって、頑張ってるんじゃよ」
「……そうなんですか」
小さい子なのに立派な子ですね。
「ねえ、ねえ、あずにゃん。ホテル、大丈夫?」
「あ、そうでした。すいません、私達は、ホテルを探さないといけないので」
「お前さん達、泊まる所がないのか?」
「はい。着いたのが夜で、ポケモンセンターの宿泊所も満員だったんです」
「では、家で泊まっていかないかね」
「いいの!あずにゃん、よかったね」
「な、なにを言ってるんですか。迷惑じゃないですか」
「な~に。あの子と2人だけじゃし、人は多い方がいいじゃろ。お礼もあるしの」
「おじいちゃんもこう言ってるんだし、泊まろうよ。ホテルを取れるのかもわからないしさ」
「……仕方がありませんしね。フジさん、申し訳ないんですけど……」
「遠慮することはない。ゆっくりしていきなさい」
私達は今日、ポケモンハウスで泊まる事にしました。
部屋に案内されて、夕食後、リビングでゆっくりとすることに。
「お姉ちゃん、お話聞かせて~」
「うん、私に任せなさい」
あっちで、ゆい先輩とモブ太君がお話をしています。微笑ましい光景ですね。リビングを見回していると、しゃしんがありました。その写真には、あの子とその両親みたいな人とヘルガーが写っています。
「その写真ですか」
「あ、フジさん。この大人の人はあの子の両親ってことは分かるんですけど、このヘルガーは?」
「このヘルガーも、ロケット団の手によってな。この子の両親は、ロケット団のポケモンを育てるのに協力しろという要求を断ったんじゃ。それでな……」
フジさんは言いよどむ。
「このヘルガーは捨てられてたのをあの子の両親に拾われてな。ヘルガーは赤ん坊のあの子を自分の命が尽きるまで、守り通したんじゃ」
「そうなんですか……」
きっと、拾ってくれた、両親への恩返しということでしょうね。なんだか、可愛そうですね。
「まあ、それも昔のことじゃ」
フジさんは懐かしむように言う。これ以上は私が触れるべきではありませんね。
「お前さんも、いろんなポケモンを捕まえてきたんじゃろ?大切にするんじゃよ」
真剣な顔で言う、フジさん。きっと、強い思いがあるんでしょう。
「はい」
だから、私も真剣に答えました。
「ねえねえ、梓お姉ちゃん」
ゆい先輩と話していたはずのモブ太君が声をかけてきました。
「なんですか?」
「梓お姉ちゃんはヘルガーを持ってるんだよね。見せて~」
一瞬、ドキッとしました。さっきのフジさんの話を聞いたからでしょうけど。
「いいですよ」
私は、ヘルガーを出してあげます。
「わ~、これがヘルガーなんだね」
「そうだよ~」
2人、特に、モブ太君はヘルガーと楽しそうに遊んでいます。
「お前さんもヘルガーを持っておったのか」
「……ええ。トキワの森で、デルビルが捨てられていたのを拾って、育てて、進化したんです」
「……そうか。この子も苦労したのか」
フジさんはヘルガーを懐かしそうに、撫でます。私はそれを見て、ヘルガーにはひどいことをしなければいけないかなって、思いました。
モブ太君はヘルガーと一緒に寝た後で、私達はお風呂に入ることに。
「今日は疲れたね、あずにゃん」
私はゆい先輩の髪を洗ってあげます。
「あう~、あずにゃんに髪を洗ってもらうのは気持ちいいよ~」
「なにを言ってるんですか」
「今度は、私が、背中を洗ってあげるね」
ゆい先輩は素早く、後ろにまわり、背中を洗ってくれます。私はさっき、考えてたことをゆい先輩に聞いてみます。
「ねえ、ゆい先輩」
「な~に?」
「……私がヘルガーとお別れするって、言ったら、どうしますか」
「……え?」
ゆい先輩はびっくりしたような声を出します。まあ、ゆい先輩なら、『そんなのやだ~』って言うんでしょうね。そう思って、ゆい先輩の返事を待っていると、
「……いいよ」
「はい?」
後ろから、ギュッと小さい体で、抱きついてきます。
「本当は嫌だけどね、あずにゃんが一生懸命考えて、あずにゃんがそうしたいなら、私はとめないよ」
……まったく、この人は、おちゃらけてるかと思えば、急に今みたいに格好よくなったりする。そこがいいんだけ……ゴホン。お風呂に入りす
ぎて、ちょっと、頭がのぼせてるようです。
「……ありがとうございます。まだ、はっきり、決めたわけじゃないんですけどね」
「……うん。じっくり、考えてね。……えいっ!」
モミモミ。
「にゃっ。どこ触ってるんですか!」
「どこって、私の口から、言わせるの?もう、あずにゃんったら」
「何を言ってるんですか!」
次の日
ザー、ザー
「雨がひどいね、あずにゃん」
「そうですね。……ふぁあ」
「可愛い、欠伸だね」
「うるさいです」
昨日はずっと、考えてたけど、答えは出ませんでした。
「……もう、行くの、梓お姉ちゃん」
ヘルガーを撫でながら、モブ太君は言います。口ではそう言うものの、私よりも、ヘルガーとの別れを惜しんでる様子のモブ太君。それはそうですよね。両親も好きでしたし、命を救ってもらってますし。
「達者でな」
「はい」
私がここを出て行こうとした時。
「おい、糞ジジイ」
いきなり、ドアが勢いよく、開いたかと思うと、何度も私達と戦った相手……ロケット団が4人現れました。
「おい、糞ジジイ。ここを出ていく準備は出来たか?」
「何度いえば、分かる。お前らにこの土地はやれん!!出て行け!!」
「そうは行かないぜ。おい、見てみろよ」
ロケット団の1人が呼ぶと、エレブー達やニョロゾ達がいます。
「こいつらが、ここら辺を暴れたら、どうなるかな?」
なんていうことを言うんですか。私が口を開こうとすると、
「ふざけないでよ!!」
私が振り返ると、モブ太君が顔を真っ赤にして、怒っています。
「お前達は僕から、どれだけ、大切なものを奪っていくんだ!!」
今までの思いもあったんでしょう。モブ太君は叫びました。
「はあ?なんだ、このガキは」
「気でも狂ってるのか?」
「……お前達!!」
モブ太君はロケット団の1人に掴みかかりました。しかし、悲しいことに、子供と大人の体格の差からですか、簡単にふっ飛ばされてしまいました。
「……ぐはっ!」
「な、なにをするんじゃ、子供に!」
「先に仕掛けたのは、そのガキだぜ」
「もう、怒った。……おい、お前達」
外にいた、エレブー達やニョロゾ達がやっと出番か、とばかりにこちらを向きます。
「この家を壊せ」
「!?」
非常なる命令を遂行すべく、エレブー達やニョロゾ達がこっちに向かおうとしてきます。
「ヘルガー」
ヘルガーがロケット団を押しのけ、エレブー達に向かっていきます。
「なんだ、あいつは!!」
ロケット団はヘルガーの方に視線を集中させています。
「あずにゃん、今だよ」
「分かってますよ」
私は素早く、ハッサムを出します。
「ハッサム、あのロケット団を外に出してください」
「サム」
「!?」
ハッサムはバレットパンチで、ロケット団4人を雨の降る外に追い出しました。
「このガキが。邪魔するのか」
「邪魔なのはあなた達です!!」
私はロケット団に宣言します。
「私はあなた達を倒します。行きますよ、ハッサム、ヘルガー」
「サム」
「ヘル」
「すごいね~、あずにゃん。まるで、主人公みたいだよ~。かっこいい~。ますます、惚れちゃうよ~」
「……緊張感が抜けるので、やめてもらえませんか」
「ふざけやがって。……だが、終わりだな」
「!?」
「スピア」
横から、私に向かって、毒針を私に突き刺そうと迫ってきます。
「危ない、お姉ちゃん!」
モブ太君がとっさに私を庇ってくれましたが、モブ太君の背中にスピアーの毒針がかすってしまいました。
「大丈夫ですか」
「だ、大丈夫です。…そ、それよりも、……あいつらを……イタッ」
傷自体はたいしたことなさそうです。でも……。
「駄目じゃ、スピアーの毒を抜かなければ、まずい。早く、病院に連れて行かなきゃいかん!!」
フジさんは傷口を見て、言いました。
「……ヘルガー、この子を背中に乗せて、病院に連れて行ってください」
「ヘルガ」
戦う気満々のヘルガーでしたが、私の命令に不満な声を出しましたが、モブ太君を見て、
「ヘル」
頷いてくれました。
「わしも行くぞ」
フジさんは言いました。
「でも、ヘルガーには、モブ太君しか……」
「案ずるでない。ペルシアン」
「ペル」
ペルシアンがフジさんを上に乗せます。少し、辛そうですけど、この子の思いも分かります。
「梓さんや、旅人に頼むべきでもないかもしれんが、このポケモンハウスを頼む」
「任せてください。出てきて、皆」
私は手持ちのポケモンを全て出します。
「どうした?諦める覚悟は出来たか?」
「そんな覚悟は出来ませんね。ニューラはヘルガーの上に乗って、モブ太君を守ってください」
「ニュラ」
「イーブイ、かみなりのいしです」
サンダースに進化させます。
「後のメンバーは、ヘルガー達の道を開けてください」
その声を合図に、バトルが始まりました。
「ヘルガ」
ヘルガ達は、エレブー、ニョロゾ達の大群を突き抜けます。
「簡単に行かせるな、お前ら」
エレブーがカミナリパンチを、ニョロゾがきあいパンチを、ヘルガーに浴びせようとします。
「ハッサム、エレブーをアイアンヘッドで攻撃してください。サンダースは10万ボルトをニョロゾに浴びせてください」
ハッサムのアイアンヘッドで、ヘルガー達を攻撃しようとするエレブーを中心になぎ払います。三ダースは雨+弱点でより、電気が通りやすく
なっています。
「甘いな、スピアー」
スピアーが空中から、モブ太君、フジさんを攻撃しようと迫りますが、
「ガルラ」
ガルーラの拳によって、阻まれます。そして、3匹の連携で、何とか、この包囲網を突破しました。
「やりました」
「チッ、いけ、ラッタ」
「!?」
「奴らを追って、殺せ」
ロケット団の1人とラッタ6匹がヘルガー達を追いかけます。
「まだ、隠してたんですね、手持ちを」
「あんまり、使いたくなかったがな」
緊迫感のある雰囲気ですね。
「あずにゃん、あずにゃん」
「なんですか、ゆい先輩」
「あずにゃんのブラが雨で透けて見えるね。キャッ」
「……」
「……ごめんなさい」
「分かればいいんです。それで、なんですか?」
「そろそろ、私の出番だね」
「はあ」
「なんだい、そのやる気のない返事は」
「急になんですか、一体」
「この流れはね、非常によくないよ。私達が空気だよ」
「なにを言ってるのか、よく分かりませんけど……」
「分からなくていいよ。とにかく、私は戦うよ」
フンスとやる気を出している、ゆい先輩。このやる気は無駄にしてはいけませんね。
「では任せました」
「うん」
ゆい先輩は胸を張って、戦闘に向かいました
ヘルガー・ニューラ
「待ちやがれ、てめーら」
後ろから、ラッタ達が迫ってきます。こっちは子供や老人を背負っているので、スピードもあっちが上なのは当然でしょう。
「ニューラ、ニューラ(私があいつらをひきつける。お前はその子を病院に)」
「ヘルガ(大丈夫か?)」
「ニューラ(私は猫だぞ。ネズミに負けるわけにはいかんな)」
「ヘル(そうか)」
「ニューラ、ニューラ(お前もしくじるなよ。マスターのために)」
「ヘルガ(……愚問だな)」
「ニューラ(ふん、また、会おうぜ)」
「ヘル(ああ)」
ニューラはヘルガーの上から、飛び降り、ラッタの1匹を切り裂きます。
「ラッ……タ」
苦痛の声を上げ、倒れます。
「なんだ、こいつは」
「ニューラ(ここを通りたければ、私を倒してみろ、ネズミ共)」
「ラッタ」
怒りの眼で、ニューラを見る、ラッタ達。
「糞が。サッサと倒せ、ラッタ共」
その声を合図に戦闘が始まりました。
最終更新:2011年08月03日 03:20