「駄目だよ!!あずにゃんの恋人は私なんだよ!!」

ゆい先輩は私の前に仁王立ちして守るように立つ。

「あなたがこの人の恋人?まあ、梓さんは同性愛者のうえにロリコンなんですか」

「ち、違います。私はロリコンではありません!」

「そう言ってますけど……」

「あずにゃんは照れてるだけだよ!」

「それでは、あなたはロリコン……」

「だ、だから、私はロリコンじゃありません!!」

「ロリコンではない、と。ではその子とは何の関係もないと」

「あ、いえ、そういうわけでもありません。い、一応、恋人(仮)ですけど、私はロリコンではありません」

「分かったかい。これで、あずにゃんとお付き合いが出来ないってことが」

「……なにか、勘違いしてませんか?」

「はい?」

「私が付き合ってください、って言うのは交際ではなく、お茶会ですけど」

「……まぎらわしい言い方をしないで下さいよー」

「すいません。最近、ジム内で同性同士の恋愛が流行していまして、それに嫌悪感を抱かれないかと思いましてね。それにあまり、人を誘うには慣れてなくて」

「まあ、いいんですけどね」

私はエリカさんの入れてくれたハーブティを飲みます。

「美味しいかしら?」

「はい、美味しいですね」

「そう、それは良かったわ。実はここで採れたの」

「それはすごいですね。……でも、何でお茶に?」

「マサラタウンから来たということで、あなたからも話を聞きたいって思って」

「『も』ってことは、他にも誰かから、聞いたんですか?」

「そうですね、澪さん、律さん、紬さんという方々から、話を聞きました」

「そうですか」

やっぱり、もうこのジムのリーダー、つまり、この人にも勝ったってことですね。

「いいですよ。でも、何から、話しますか」

「時間もそんなにありませんし、聞きたい話があるんです」

「何ですか?」

「あなたとポケモンである、その子とどのような経緯でお付き合いをすることになったのかなって」

「……それはさすがに……」

「いいよ、私がお話をしてあげ……もが」

私は余計なことを言い出しそうな、ゆい先輩の口を塞ぎます。

「それより、ゆい先輩がポケモンって、よく分かりましたね」

「聞いたことがありませんか?ジムリーダーの間で噂になってるって」

「そういえば、マチスさんに聞いた気がしますね」

「なんでも、奇妙な技を使うとか」

「そうですね」

トレーナーの私ですら、把握できませんからね。

「さて、一息入れましたところで、早速、始めましょうか」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「それで、ルールは3対3。より、多く勝った方が勝ち。掛け金は1万円。以上でいいかしら?」

「はい」

「では、バトルフィールドに行きましょう」

エリカさんに案内されてフィールドに来ました。今回のフィールドは草原ですね。草が生い茂っています。

「それでは始めましょう」

ゾク。

エリカさんはバトルフィールドに立つと、雰囲気が急に変わりました。さっきまでの、優しい雰囲気ではなく、今までのジムリーダーと同じ、いや、それ以上の殺気を放っています。私はその殺気に怖気づきそうになりますが、それでも、しっかりと、エリカさんを見つめ、

「はい。勝負です」

と、答えました。

「それでは、両者、準備はいいですか」

審判が宣言します。

「ええ」

「はい」

「それでは……」

「「「バトルスタート!!」」」


「来なさい、ウツボット」

「来て下さい、ヘルガー」

エリカさんの初手はウツボットですか。タイプなら、こちらが有利ですね。

「ヘルガー、かえんほうしゃです」

ヘルガーはウツボットに口からだすほのおで、攻撃を仕掛けます。

「なるほど。いきなり、弱点を突いてきますか。……でも、それだけでは勝てませんよ」

「!?」

ヘルガーの攻撃はウツボットの葉っぱの壁みたいなもので防がれました。これはまもる攻撃!?

「かまいません、もう一度、かえんほうしゃ」

「無駄ですね」

「!?」

かえんほうしゃを繰り出すかと思った、ヘルガーは目をショボンとして、眠りだしました。

「ぐう~、ぐう~」

「そんな、一体何が……」

「ウツボット、やどりきのタネ」

ウツボットから発射されたタネがヘルガーに命中し、ヘルガーから、エネルギーを吸い出します。

「くっ、ヘルガー起きてください」

しかし、ヘルガーはぐう~ぐう~と寝るばかりで、やどりきのタネからエネルギーを吸い出されるだけです。

「ウツボット、ヘドロバクダン」

ウツボットから、出されるヘドロが寝ている、ヘルガーに命中し、ジュー、ジューと音を立てます。

「……へ、ヘルー」

ようやく、ヘルガーが目を覚ましますが、やどりきのタネのダメージと ヘドロバクダンのダメージが効いています。

「でも、弱点ではこちらが有利です。ヘルガー、ウツボットに接近しながら、かえんほうしゃ」

ヘルガーのかえんほうしゃがウツボットに向かいますが、ヘルガーの攻撃はウツボットの葉っぱの壁みたいなもので防がれました。また、まもる攻撃ですか。

「でも、それは計算のうちです。ヘルガー、ほのおのキバです」

ヘルガーはウツボットに接近しながら、かえんほうしゃで攻撃していたので、すぐに次の攻撃につなげることが出来ました。これだけ近ければ、もう一度、まもる攻撃は出来ません。

「なるほど、かえんほうしゃは囮ですか。……でも、甘いですよ」

「ヘ……ルガー」

ヘルガーの攻撃がウツボットを襲う前に、再び、ヘルガーは寝てしまいました。一体何が……。

「もう、お終いですね。ウツボット、リーフブレード」

ウツボットは素早く、自分の葉っぱでヘルガーを斬りつけ、ヘルガーはそのまま、気絶してしまいました。

「ヘルガー、戦闘不能。ウツボットの勝ち。エリカ、1ポイント、1対0」

「戻ってください、ヘルガー。それにしても、一体、どうして……」

「甘いですね、梓さん」

ウツボットをモンスターボールに戻しながら、エリカさんは言います。

「ウツボットがまもる攻撃をするのと同時に、ねむりごなを出してただけです」

なるほど。それで、急に寝だしたんですね。それにしても、エリカさんは今までの三人よりも強いですね。気が抜けません。

「それでは、2回戦です」

「来て下さい、ハッサム」

「次はモジャンボです」

もう、後がない、この戦い。まずは先制を取る必要がありますが、さっきのように、やられる可能性もあり、慎重にすべきですね。

「なるほど、さっきのようにやられたくないので、様子見ですか」

「!?」

「そっちが来ないなら、私が仕掛けます。モジャンボ、げんしのちからでハッサムに攻撃」

モジャンボが先手を打って、ハッサムに攻撃を仕掛けます。

「迎え撃ってください、アイアンヘッド」

モジャンボの攻撃とハッサムの攻撃がクロスします。どちらにも、ダメージがあったようです。しかし、さっきのように、こっちに攻撃させて防御して、反撃とは違いますね。さすがに私に教えた戦法は取ってこないでしょう。

「ハッサム、バレットパンチ!」

ハッサムはすぐに切り返し、モジャンボに向かいます。そして、ハッサムの鋭いはさみがモジャンボのツルごと、殴り飛ばします。

「失敗は繰り返すものね」

「……サム」

ハッサムがさっきのヘルガーのように、眠そうにしています。

「一度、相手に教えた戦術は来ないと思ったのかしら」

この人はバトル前の優しい雰囲気とは全然違います。とてつもなく、えげつないです。

「サム!」

眠そうにする、ハッサムは首を勢いよく振り、寝ないようにしています。しかし、その隙を突いて、モジャンボが自分のツルをハッサムに巻きつけて、そのまま、上に持ち上げます。

「モジャンボ、ハッサムをたたきつけなさい」

エリカさんの命令でモジャンボはそのまま、地面にハッサムを叩きつけます。

「でも、ハッサムははがねタイプ。この技はあまり効かないはず」

「そうね。一回だけじゃ無理ね」

モジャンボは再び、ハッサムを叩きつけるべく、上に持ち上げます。

「でも、何回もやってれば、そのうち、ギブアップするわよね?」

「くっ、ハッサム!」

モジャンボはハッサムを何度も、叩きつけます。一体、どうすれば……。

「サムちゃん、おんがえしだよ!!」

私が諦めかけた時、ゆい先輩が叫びました。その声に反応したのか、ハッサムの目に光が戻ってきました。

「サム!!」

ハッサムはモジャンボがハッサムを叩きつけるべく、上に持ち上げた時に自分をしめつけていた、ツルを強引に引きちぎりました。

「な!?」

「今です、ハッサム。つばめがえし!」

ハッサムの鋭いハサミが、モジャンボのツルごと体を引き裂きます。ハッサムはその攻撃を、モジャンボに何度も喰らわせます。

「梓さん。調子に乗りすぎるのはいけませんよ」

「!?」

突如として、ハッサムの動きが痺れているように鈍りました。あの劣勢の中でも、モジャンボはこなを、……しかも、今度は、しびれごな!?

「でも……」

「?」

「そんなの関係ありません。ハッサム、このまま、力押しです。シザークロス」

ハッサムは両手をクロスさせて、モジャンボに向かいます。

「モジャンボ、もう一度、ツルを絡めて!」

モジャンボはツルを、ハッサムに絡めようとしますが、ひざをガクッと地面についてしまいました。

「な!?」

「私のハッサムもダメージの蓄積もありますけど、エリカさんのモジャンボも、さっきの攻撃のダメージが蓄積させてるんですよ」

ハッサムは両手のハサミで、モジャンボを切り裂き、そのまま、モジャンボは倒れました。

「モジャンボ、戦闘不能。ハッサムの勝ち。梓、1ポイント、1対1」

「やりますね、梓さん。おんがえしという技は、トレーナーとのなつき具合で威力の変わる技。よほど、あのハッサムを大切に育ててるんですね」

「あ、ありがとうございます」

「でも、まだ、勝負はついてませんよ」

「ええ」

「それでは、最終戦です」

「最後ですよ、ラフレシア」

「こっちは……ゆい先輩。お願いします」

「うん、任せてよ~」

「いよいよ、噂のあなたの力が見れるんですか。さっきの指示といい、あなた達はいいコンビですね」

「それは当然だよ。恋人だもん」

「恋人(仮)です」

「さて、始めますか。……ラフレシア、メガドレイン」

ラフレシアがゆい先輩に迫ってきます。

「今日の私は一味違うよ。出てきて、ゆいぐるみ!」

ポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン

ゆい先輩の合図でゆい先輩のぬいぐるみが次々と出てきました。久しぶりの奥義ですね。

「では、ミュージックスタート(ふわふわ時間を想像して下さい)」

たくさんのゆいぐるみが次々とラフレシアに攻撃してきます。

「これがこの子の奥義……!?」

エリカさんが驚愕してる間にも、次々攻撃をラフレシアに仕掛けていきます。

「すごい攻撃ですね。でも、この程度ではありませんよ。ラフレシア、はなびらのまい」

ラフレシアははなびらを散らせながら、ゆいぐるみに舞うように攻撃していきます。みるみるうちに、ゆいぐるみを粉砕しました。

「くっ!さすがだね、エリカさん」

「そ、そんな。ゆい先輩の奥義の一つが破られるなんて……」

「これで、終わりですか。ラフレシア、はなびらのまいでゆいちゃんを攻撃!」

ラフレシアは今度はゆい先輩に標準にして、こっちに向かってきます。

「まだ、私の奥義は破られてないよ。ゆいちゃん真拳超奥義『ゆいちゃん☆ルーレット』」

ゆい先輩の頭上に1~12、計12マスのルーレットが出てきました。

「この奥義は当たった番号によって、いろいろな技を出せるんだよ。さて、早速、ルーレットスタート」

ルーレットが回り始めます。

「う~ん、ストップ!」

ゆい先輩の合図で、ルーレットが止まりました。数字は1。

「1か。では、スタート」


『お正月』

『あけましておめでとうございます、あずにゃん』

『あけましておめでとうございます、ゆい先輩』

『挨拶も済ませたし、では早速……』

『初詣でですか?』

『ゴロゴロしよう』

『……はい?そんなのいつでも、出来るじゃないですか』

『だって、あずにゃん着物着てくれないんだも~ん』

『なにを拗ねてるんですか』

『つ~ん』

『せっかく、ゆい先輩との初詣を楽しみで来たのに』

シュン。

『あずにゃん、何してるの。早く行くよ』

『はやっ』

そして、神社に。

パンパン。

『何をお願いしたの、あずにゃん?』

『けいおん部に新入部員が入ってくれますようにって』

『そっか』

『唯先輩は?』

『私はこれからも、あずにゃんと仲良く出来ますようにって』

『なっ……。もっと、他にお願い事があると思うんですけど』

『そうかもしれないけど、私はあずにゃんとずっと一緒にいたいし』
『……唯先輩』

『……あずにゃん』


「ラフーーー」

いつもの寸劇が終わると、鏡餅がラフレシアに降って来て、つぶされました。

「あの、ゆい先輩。今の劇は?」

「ただのお正月の光景だよ?」

「……百歩譲って、それはいいんですけど、今の劇と鏡餅の関係は?

「どっちも、お正月に関係あるじゃない」

「そんな理由ですか」

「さて、次のルーレットスタート。……次は10か。さて、スタート!」


『さつまいも』

『今日は、さつまいもをもらってきたんだ。あずにゃん、一緒に食べよう』

『それはいいんですけど、生ですよ』

『知ってるよ。だから、今から、焼き芋をするんだよ』

『それはいいですね。じゃあ、まずは落ち葉を集めましょう』

『うん』


「ラフレシア」

さっき、鏡餅に潰された、ラフレシアが立ち上がろうとしています。

「ラフレシア、のんびりとしている、今がチャ……」

『あ、いい葉っぱ、みっけ』

必死に落ち葉を集めてた、劇中の唯先輩(大)がラフレシアを掴み、引きずっていきます。


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最終更新:2011年08月03日 03:24