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「とりあえず、押してみようよ」

「そうだな」

ポチッ

律先輩がボタンを押すと、地面から振動が起き、地下へと続く階段が現れました。

「まさか、本当にあったとは……」

「よし、降りてみるか」

「だ、駄目ですよ。噂が本当なら、下にはロケット団がいるかもしれません」

「梓の言うとおりだ。遊び半分で行くべきじゃない」

「そうね、確かに慎重に考えるべきかもしれないわ」

「でも、ここまで来て、このままってのもな。ゆいはどう思う?」

「……私は行きたい」

いつもとは違う真面目な声で言いました。

「だって、噂が本当なら、この地下施設は実験場なんでしょ?もしかしたら、ブイ太みたいに苦しめられてるポケモンがいるかもしれないもん。そのポケモン達を助けたい」

「……ゆい先輩」

「ゆいの言うことも、もっともだが、警察に任せた方がいいだろ」

「でも、警察はすぐには動いてくれないよ。それになんて通報するの?ここが、まだ、ロケット団の施設とは限らないし、私達の憶測でしかないことに、警察が動くと思う?」

ゆい先輩が正論を言っています。ビックリです。

「そ、それは……」

「警察を頼るにしても、証拠がなくちゃ。証拠を得るためにはこの中に入らないとね」

「……そうですね、分かりました。私も中に入ります!」

「梓まで」

「ゆいちゃんの気持ちは分かったわ。私も行くわ」

「ムギもか。……仕方がない、私も行こう」

「全員の意見が一致した所で、しゅっぱ~つ」

「「「「オー」」」」


管理室

監視カメラには4人の同い年くらいの女性と幼稚園児くらいの女の子の計5人が映っている。

「和さん。例の5人組が実験場に入りました」

「そう。……いよいよ来たわね。……ミュウツープロトタイプの力を試す時が」


タマムシシティ編③ 「防衛×賭博×潜入」 終了



梓達が旅立つ1年前

『グハッ』

『ハア……ハア……』

『実験終了。試験体Mが生き残りました』

『分かったわ』

私はいつから、戦い続けているのだろう。自我を持ち始めた時にはすでに戦い続けていた。

私が生まれたのは2年前、特殊な環境なんだろう。私は、正規のポケモンではない。だから、名前はない。いや、試験体Mと呼ぶべきなんだろうか。私は、いろいろなポケモンの遺伝子を掛け合わせて生まれた。何のためにか?それはもちろん、戦うためなんだろう。強力なポケモンといっても、弱点はある。その弱点をなくなれば、おそらく、最強になれるだろう。そんな考えで私は作られたのだろう。

『調子はどうかしら』

培養液の入ったカプセル越しに私を作ったうちの一人、和という名前だったか、が聞いてくる。

『あなたはよく頑張ってるわ。後はあの遺伝子さえ手に入れば、あなたは最強になれるわ』

最強?私には興味のないことだ。生まれたばかりの私は私と似たような、境遇のポケモンがたくさんいるところに放り出された。そして、私達は殺し合いをさせられた。なんでも、最後に生き残っていた個体を実験材料として育てるためだとか。私はなんとか、生き残った。そして、私が育てられることになった。だが、それで終わりでなく、私に新しい遺伝子を掛け合わせたり、新しい個体との戦闘を強いられたりした。

ビューン

自動ドアの開く音がした。コツコツと歩く音が聞こえた。入ってきた人の姿はフードのついたローブを着ていて、顔が見えない。

『あら。あなたの教えてくれた、技術で実験は順調よ』

和はその人物に話しかけた。

『……』

その人物は和の質問には答えずに、私のカプセルの前に来た。

『……たしかに順調だね』

そして、和に振り向き言った。その声から、察するに、女の人だろう。

『それはそうよ』

『……でも、まだ、駄目だよ。あの遺伝子がないとね』

『分かってるわ』

『……できるだけ、早くね。1年後に間に合うように』

女はもう一度、私に振り向いた。

『本当にあなたはこのままでいいのかな?』

その女は私にだけ聞こえるようにそれだけ言い残し、去っていった。


1年後

『ようやく、ミュウの遺伝子をゲットできたわ』

目の前で、和が嬉しそうに言う。

『それに、グレン研究所の資料も手に入れたわ。これで、あなたは最強のポケモンになれるわ』

最強か。私にとってはどうでもいいことだ。強くなるのは生き残るためだけだ。こいつらのためにではない。いつからだろう。こいつら人間共に憎悪を抱いたのは。多分、あの、女の一言のせいだろう。私は外の世界を知らない。だから、知りたい。

『本当にあなたはこのままでいいのかな』

そう、私はこの地下でいつまでも、実験材料でいいはずがない。それに、私はたくさんのポケモンを殺してきたが、何故、私達は殺しあう必要があるのだろう。私は正規のポケモンではない。だが、ポケモンなのだ。どうして、こんなことをさせられるのだろう。1つのことを疑問に思うとたくさんのことを疑問に思ってしまう。

『さて、早速、ミュウの遺伝子を使うわ。準備して』

周りの研究員に指示を出す、和。その時、

ビューン

自動ドアの開く音がした。コツコツと歩く音が聞こえた。入ってきた人の姿は1年前と同じ。ローブを着ていて、顔が見えない。

『あなたは!? 1年も姿を見せずに何しに来たの』

『……』

その女はやはり、何も答えずに、私のところに来る。

『……いい眼になってるね。憎悪がたくさん詰まったいい眼だよ』

その女は私の眼を見て言う。

『無視するんじゃないわ。今まで、一体どこに……』

『……私だって、暇じゃないんだよ。それに、私がいなくてもよかったでしょ?』

和に振り返り、言う。

『さて、遺伝子を手に入れたんだね。……じゃあ、早速、始めようか』

『あなたに言われなくても、私達が……』

『あなた達の技術じゃ無理でしょ。資料があってもね』

『……』

図星をつかれたのか、顔を歪める。

『安心しなよ。ちゃんとやるからさ』

『これが例の……』

私の前にロングヘアーで眼鏡をかけた女が立っていた。

『ええ。幻のポケモンといわれるポケモンミュウから採取された遺伝子を元に、私達が作り出したポケモン。……ミュウツー・プロトタイプよ』

ミュウツー・プロトタイプ。それが私の名か。試験体Mと比べれば、100倍はマシだろう。

『まだ、入手して短いのに、早いわね』

『研究所に資料もありましたしね。……これで、伝説の3匹と最強のポケモン、プロトタイプであるけど、ミュウツー。この4匹がいれば、私達が世界を掌握するのも……』

和はそう言うが、実際はあの女がやったことだ。

『ええ』


ビューン

今は深夜。自動ドアの開く音がした。コツコツと歩く音が聞こえた。入ってきた人の姿はフードのついたローブを着ている、あの女だ。忘れ物でもしたのだろうか。

『……』

その女は私のカプセルの前で立つ。やはり、私に用事なのだろうか。

『ヤッホー、元気かい?』

『……』

『無視はよくないな。しゃべれるようになったんでしょ?』

『……何のようだ』

『親に対して、なんて口の利き方だね、この子は』

あっけらかんと言う、女。

『……親だと』

『そうだよ。あの人達に私の技術を教えてね、君の『器』はできたんだよ』

『何のためにだ』

『さ~ね~。君が知る必要のないことだよ。あの人達は君を利用して、お金儲けとかをしようとしてるみたいだけどね』

『……』

お金儲けで済めばいいがな。私は心の中で苦笑する。

『本当にあなたはこのままでいいのかな?』


突然、1年前と同じ事を聞いてくる。

『……前にも聞いたな。どういう意味だ?』

『別に深い意味はないよ。ただ、いつまでも、人間の支配下でいいのかなって?』

『……』

『人間なんかくだらないよ。……くだらない』

女はさっきまでのおちゃらけた声ではなく、激しい憎悪とそして……若干の悲しみが混じった声をしているように感じた。

『1年前のあなたは、まだ、厳しかったもしれないけど、今のあなたは力を持っているんだよ』

声のトーンを戻して、私に言う。

『……お前は私に何をさせたいんだ』

『さあね。あなたが何をするにしても、それを決めるのは私じゃないんだよ。あなたが決めるの』

『……』

『……これから近いうちに人間とポケモンは共存できると考えてる、幼稚園児みたいな見かけのあまっちょろいポケモンが来るよ』

『……』

『私があなたにしてほしいことといったら、そいつを倒してほしい』

『……何故だ?』

『それはあなたの知るべきところじゃないよ。……それじゃ、私は行くね』

『……待て』

『なんだい?』

『お前の名前は何だ?……お前も私と同じにおいがする』

『……そうだね~。名前だけでも教えてあげたいけどね。とりあえずはAYUとでも呼んでよ』

『……AYUか』

『ちなみに本名じゃないからね。あなたがここから、脱出できたら、教えてあげる』

『……』

『それじゃ、今度こそ、私は行くね』

『……』

『頑張ってね、ミュウツープロトタイプ』


実験場

『これから、あなたのテストをするわ』

出てきたのは、バンギラス、ボスゴトラ、10匹ずつ、計20匹ずつ。

『こいつら、全員を倒すのよ』

『……』

『では、スタート』

『まったく、鳴き声の一つでも出さないんですかね』

『不気味ですよ』

『別に不気味でも何でもいいわ。……強ければね』

何故、私は戦ってるのだろう。バンギラスはあくいのはどうを放ってくる。

『……』

私はそれをバリヤーをつかって防ぐ。そして、はどうだんを放つ。

『バンギラーーーーーース』

鋼鉄のような皮膚を砕き、倒れる。その様子を見て、周りのバンギラス達は怯む。何故、私達はお互いに殺し合うのか。

『ボスゴドーラ』

ボスゴドラが恐怖からなのか、突っ込んでくる。

『……』

私はひらりとかわし、からわわりを繰り出す。

『ボーース』

その衝撃で、簡単に吹き飛んでしまう。私達が戦うべきなのはポケモンではなく、人間だ。下等種族のくせにポケモンである、われわれを使おうとする人間だ。

『……』

残りの数を見る。まだまだ、たくさんいて、めんどくさい。ならば……。

『……』

私は念波を実体化させ、サイコブレイクをボスゴドラに放つ。ボスゴドラには効果が薄い技だが、それでも、粉砕した。残りは、バンギラス。

『……』

サッサとこんな不愉快なことは終わらせよう。そう思って、私はバンギラスへと向かって行った。


梓達がゲームコーナーに来る前日

『最終テスト(予定)はこいつらよ』

そこに映し出されたのは、ツインテールの女と小さい女の子だ。

『……』

『この女の子みたいなのはこんな見かけでも、ポケモンで、名前はゆいというらしいわ』

あの女、AYUが言ってたのはこの子供なのか。……たしかに、平和そうな顔をしている。同じポケモンでも、どうして、こうも違うのだろう。不公平ではないのか。……やはり、いつまでも、人間の下にいるべきではない。ならば、私がこの世界を支配すればいいのではないか。人間を皆殺しにし、ポケモンのための平等な国家を作ろうではないか。

『……早く来い、小さき、ポケモンよ』

『今、何か言わなかった?』

『私は聞こえませんでしたが、気のせいじゃないでしょうか』

『……そうよね』


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最終更新:2011年08月03日 03:36