地下施設・B1

「うす暗いね、ここ」

「そうですね」

私達は、律先輩、ムギ先輩、澪先輩、私(頭の上にゆい先輩)の順に歩いています。

「どれくらい、深いんだ、ここ」

「やっぱり、何かあるからかしら」

「噂は本当だったんかもな。……着いたな」

階段も終わり、非常口のドアがありました。そのドアを開け、私達はどこかの廊下に出ました。

「何なんでしょうか、ここ」

「やっぱり、何かの施設なのかな?」

「とりあえずは探索だな」

「2手に別れるか?」

「それは危険ですよ。効率は悪いかもしれないですけど、全員で行くべきです」

「梓の言うとおりだな」

「……さっきから、澪は梓の意見に合わせてないか?」

「べ、別にそういうわけじゃ」

「そうやって、ポイント稼いでるのね。澪ちゃん、ずるい子!」

「だから、違う!!」

「ゆい先輩。澪先輩達は何を言ってるんですか?」

「あずにゃんには早い話だよ」

ナデナデ

「ニャ……やめてくださいよ」

テレテレ

「嫌なのかい?じゃあ、やめるね」

「……」

シュン

「……」

ナデナデ

「……えへへ」

「「「……」」」

ジー

「……ハッ。さ、さあ、気を取り直して、散策を開始しましょう」

私達は出発しました。


管理室

『いいんですか?自由に歩かせて』

『どうせ、生きては帰れないだろうから、いいわ。危ないところにはロックもかけてるし。それに、ミュウツープロトタイプのテストの実験台にふさわしいかのテストも必要だしね』

『ではもう少し、様子見ということで』

『ええ』

『それにしても、こんな簡単にこの施設に入ってくれるとは……』

『情けない連中よね』

ビューン

自動ドアの開く音がした。入ってきた人の姿はフードのついたローブを着ていて、顔が分からない女だ。

『何しに来たの?』

『別に。ただ見学に来ただけだよ』

『余計なことをしないでよね』

『分かってるよ。で、どんな、ルールなんだい?』

『……地下3階にいるあの子のところまで、行けるかどうかよ』

『分かった。まあ、頑張んなさい』

その女は偉そうに言って、画面を食い入るように見始めた。


地下施設・B1

「ここにも何もないな」

さっきから、手当たり次第に部屋に入ってみますが、特に目立った収穫がありません。

「それにしても、おかしくないか」

「何がですか、澪先輩」

「だって、そうだろ。私達は結構な部屋を調べてみたんだ。その間に人が1人もいないんだぞ」

「それもそうですね」

さすがは澪先輩。

「そういえば、りっちゃんの会った白衣の人もおかしくないかしら?」

「どうしてだ?」

「だって、こんな施設の入り方を知ってるなんでおかしくない?噂だったにしては的確すぎるわ」

「たしかに」

「……もしかして、これは……罠かもしれません」

そうだとすると、……これはやばいです。

「皆さん、いったん戻りましょう」

私は入り口まで駆け出した。

「おい、梓。どうしたんだ」

皆さんも私に続きます。そして、私達が入ってきた、ドアに到着しました。

ガチャガチャ

私はドアを開けようとしますが、鍵がかかっています。

「……ハア……ハア、どうしたんだよ、梓。急に走り出して」

「そうだよ、……ハア……ハア……」

「皆さん、大変です。鍵がかかって、戻れません」

「な、本当かよ」

ガチャガチャ

「本当だ」

「おい、どうするんだよ。律がこんなところに来たいっていうから、こうなったんだぞ」

「澪だって、賛成しただろ。人のせいにするなよ」

「落ち着いて、2人とも。今は争ってる場合じゃないわ」

「ムギ先輩の言うとおりです。今はどうするかを考えるべきです」

「でも、どうするの、あずにゃん。出口は鍵がかかってるし」

「そうですねー。……そうだ!皆さん離れてください。出てきて、ガルーラ」

「ガルーラ」

「ドアを破壊してください」

「なるほど」

「さすがは梓だな」

20分後

「ガル……ハア……ハア……」

「駄目です。全然、びくともしません。戻ってください、ガルーラ」

「これはきついな」

「どうしましょう」

「……そうだわ、他にも出入り口があるかもしれないわ。探してみましょう」

「……それしかなさそうだな」

私達は散策を続けると、広い闘技場みたいな所に来ました。周りを見ると、壁には傷がたくさんあり、なにかが戦っていた形跡がありました。そして、鉄格子のようなものもあります。

「すごい戦闘の後ですね」

「ええ」

私達が驚愕していると、闘技場の観客席にある、スクリーンに白衣を着て、眼鏡をしている女の人が映りました。

「あ、あいつだよ。私にこの場所の入り口を教えてくれたんだよ」

「何だと?!」

『こんにちは、皆さん。まさか、こんな簡単にこの場所に入ってくれるなんてね。もっとも、必要だったのは、ツインテールのお嬢さんと幼稚園児の子供だけどね』

「なんだか、もてるね、私達」

「まったく、嬉しくありませんけどね」

『今から、あるテストをしてもらうわ』

「テストだと!?」

『ええ。B1~3までにあるテストをクリアしたら、ここから、出してあげるわ』

「テストって何やるのかな?勉強だったら、どうしよう、あずにゃん」

「むしろ、勉強の方が平和でいいですけどね」

「それで、テストの内容はなんだ?」

『簡単よ。ただ、各階のモンスターを倒せばいいのよ』

「それだけか。楽勝だな」

「油断するなよ、律。まだ、相手の手の内を見せてないからな」

『では、早速、B1のテストを始めましょうか』

鉄格子が開き、中から、

ズシンズシン

という足元とともに出てきたのは、バンギラス、ボスゴトラ、10匹ずつ、計20匹ずつです。

『これを全滅させるのが課題。それでは、バトルスタート!!』


そんな掛け声とともに、一斉にバンギラス達がこちらに向かってきました。

「戦うしかないか。……いけっ、サワムラー」

「来てくれ、エビワラー」

「出てきて、カポエラー」

皆さんがかくとうタイプのポケモンを出してきます。たしかに、相手の共通の弱点はかくとうですものね。

「あずにゃん、私が行こうか?」

ゆい先輩が聞いてきます。

「まだ、序盤ですから、待機です」

「分かった」

「では、来てください、イーブイ。……みずのいしで進化してください」

私はイーブイをシャワーズに進化させます。

「まだ、序盤だから、この4匹で済ませたいな」

「そうね」

「でも、油断するなよ。奴らも強いぞ」

「分かってるよ。……サワムラー、相手の懐に入って、攻撃、インファイト!」

サワムラーはバンギラスの懐に入り、バンギラスを吹き飛ばします。

「バ・・・・ン・・ギ・・・」

バタ

「よし!!」

サワムラーは一撃でバンギラスを粉砕しました。

「バンギラス」

「ボスコドラ」

敵を倒して、浮かれ気分のサワムラーの横を挟むように攻撃を仕掛けようとします。

「カポ」

「エビ」

サワムラーに襲いかかろうとする、バンキラスをカポエラーが、マッハパンチで、ボスコドラをエビワラーのスカイアッパーで、それぞれ粉砕します。

「おい、律。油断するなよ」

「悪い、悪い。サンキュー、澪、ムギ」

す、すごいです。あの、バンギラス達を弱点とはいえ、一撃とは。さすがは先輩達です。私も負けてられません。

「シャワーズ、ハイドロポンプ!」

シャワーズの繰り出す、鉄砲水のような圧力の水がバンギラス達に襲い掛かります。そして、何匹かはその水に壁まで、吹き飛ばされて、ダメージを受けました。でも、倒したわけではなく、怒って、こちらに向かってきそうになりますが、

「エビ」

そのバンギラス達にエビワラーのマッハパンチが炸裂し、バンギラス達は力尽きます。

「澪先輩!」

「いいぞ、梓。どんどん、多くのポケモンにダメージを与えてくんだ。トドメは私達がやる。そうすれば、こっちがだいぶ有利になるからな」

「はいです」

さすがは澪先輩、的確な指示です。

「……チッ、また、ポイント稼ぎかよ」

「……こんな時でも、さすがね」

「……ちょっと、胸がでかいからって調子に乗ってるよね」

「そ、そんなつもりじゃない」

「???」

「ボス……ゴ・・・ドラ」

バタッ

サワムラーのとびひざげりを受け、最後のボスゴドラは倒れました。

「これで、全匹だな」

「ええ」

「おい、全匹倒したぞー!」

律先輩が叫ぶと、スクリーンに再び、白衣を着て、眼鏡をしている女の人が出てきました。

『おめでとう。では次の階に来て。階段はスクリーンの下にあるから』

私達が目をやると、たしかに、階段がありました。

『では、次の階でね』

スクリーンの映像が消えました。

「……行くか」

私達はB2に向かいました。


管理室

『まあ、これくらいは当然よね』

和は呟いている。

『そうですね』

『むしろ、これに負けたら、ミュウツープロトタイプの足元にも及ばないでしょう』

『たしかにね』

『……』

そんな会話の中でも、ローブの女は画面の映像を食い入るように見つめていた。


地下施設・B2

「ここがB2か」

「雰囲気は変わらないわね」

『では、次のテストよ』

「待って下さい!あなた達は何者なんですか」

『答える必要もないけど、教えてあげるわ。私は真鍋和、ロケット団の研究班の部長をやってるわ』

「やはり、あなた達はロケット団だったんですか!こんな施設を作った目的は何ですか!」

『最強のポケモン兵器を作るためよ』

「ポケモン兵器?」

『例えば、あなたの持ってるイーブイのようなのとか、体に機械を埋め込んだりとか、遺伝子を改造していくとかね。そうやって、ポケモンを兵器として、売ったり、使ったりするのよ』

「なっ……!?」

なんてことをするんですか、この人達は……。最低な奴らです。腐っています。周りの先輩方も同じことを思ったのか、顔を苦痛に歪めてます。

『ポケモンなんて、所詮道具でしょ?』

「ち、違います。ポケモンは私達の仲間であり、友達です」

『ぷっくははははは。体型も子供っぽければ、考えてることも子供ね』

「た、体型は関係ありません!!」

「そうだよ、あずにゃんはこの体型だから、可愛いんだよ」

「……ゆい先輩」

ギュッと、頬をつねる。

「い、い、いふぁいよ、あずにゃん」

『まあ、いいわ。次のテストね』

鉄格子が開き、中から、バンギラス、ボスゴトラ、10匹ずつ、計20匹に加え、ドンファンなどのポケモンも含め、相当な数のポケモンがいます。

『計100匹のサバイバルマッチよ。……頑張ってね、あ・ず・さ・ちゃ・ん』

プツリと、映像が切れ、それと同時に、ポケモン達が私達に向かってきました。

「この数、どうする?」

「どうするって、やるしかないだろ。……来い、サワムラー ニョロボン」

「そうよね。来て、カポエラー、ギャラドス」

「来てください、ハッサム、ニューラ」

「来い、デンリュウ、エビワラー」

私達はそれぞれ、ポケモンを出して、戦闘を開始しました。


管理室

『……ポケモン兵器、か』

今まで黙って画面の映像を食い入るように見つめていた、ローブの女は初めて口を開いた。

『なにか、文句でもあるの?』

『……別に』

その声はある種の憎悪が混じった声に聞こえた。

『言いたいことがあるなら、言いなさいよ!』

『だから、何もないよ。……ただ、私の考えに間違いはないって思っただけ』

『意味が分からないわ。だいたい、あなた何者なの?殲滅班部長の曽我部さんの紹介だけれど』

『私が誰かなんてどうでもいいことだよ。……それよりも、ミュウツープロトタイプの用意をしたほうがいいよ』

『は?』

『もう、終わるよ』


33
最終更新:2011年08月03日 03:41