カントー地方のある施設にて

『申し訳ありません!』

和達、研究班はボスである、サカキに対して、土下座をしている。理由は当然、タマムシシティでのミュウツープロトタイプの事件のことである。あの事件のおかけで、タマムシの実験場が警察にばれたうえに、多くの時間を費やしてきた、ミュウツープロトタイプも逃亡し、多くの損害が出た。謝ってすむ問題ではないが、何もしないよりましなのだろう。

『……』

サカキは必死に謝る研究員達を尻目にワインを飲む。そして、一息入れて、

『……もう、いい。過ぎたことだ』

そう言った。曽我部恵は和達に近付いて言った。

『サカキ様もああ言ってるわ。顔を上げて、席に着きなさい。今日は、その失敗についての集まりじゃないのよ』

『……はい』

曽我部恵の言うとおり、捕獲班の部長さわ子はもちろん、マコトも含めた幹部達も集まっている。失敗についてなら、そこまでの人数は要らないだろう。

『ククク、面白いな~。この漫画~』

この緊張感のある中で、場違いな声で笑っている、フードの着いたローブを着ている女が漫画を見て笑っている。

『……で、今日、集まったのはどうしてですか?』

ローブの女を無視して、さわ子は聞いた。

『……いよいよ、あの計画『カントー征服計画』を実行する時だ』

サカキの発言にさらに場に緊張感が走る。

『私達はミュウツープロトタイプは失ってしまったけど、伝説の3匹は我々の手の中にあるわ』

曽我部はそれに続く。これはロケット団において、前から計画されていたことだが、なかなか実行に移されることはなかった。それがようやく
実行に移されるわけだから、場に緊張感が走る。

『ねえ、恵ちゃん。お茶、頂戴~』

その中で、またしても、空気の読めないような声で、ローブの女が曽我部に言う。

『……』

曽我部は無言でローブの女にお茶を汲む。さすがにさわ子も不快に思ったのか、口を開く。

『……その女は何なんです?』

曽我部に問いかける。

『何なんです、と言われても……』

『そういえば、まだ、言ってなかったね。私のことはAYUって、呼んでね。後、私のことは気にしないでいいよ』

曽我部が答えずらそうにすると、ローブの女、……AYUが答えた。そして、お茶を飲みながら、漫画を読み始めた。

『さて、その計画にあたって、まずは……』

曽我部はAYUを気にしないで、話を進めようとした。しかし、

『……ちょっと、待てよ』

それをマコトが遮った。

『なにかしら?』

『そいつは邪魔だろ。何で追い出さない』

『そうですよ!』

『そいつの言うとおりだ!』

研究班の面々もその後に続く。前回の時に何もしなかったうえに、お咎めもなしのAYUへの恨みというか、不満もあるのだろう。

『別に邪魔はしないから、ほっといてくれてもいいのに…』

『存在が邪魔なんだよ。だいたい、何がAYUだ、変な名……』

前しやがって、と言おうとしたが、その言葉は最後まで言えなかった。マコトの喉にはAYUの手があった。

『……』

マコトの背中には冷や汗が流れる。マコトはたくさんの戦いをしてきて、修羅場を潜り抜けてきたが、今ほど命の危険を感じることはなかった。

『よかったね~。君は強いから生かしてあげたけど、普通だったら殺してたよ。あ、でも、今度、この名前を馬鹿にしたら、殺すからね♪』

『……』

『返事は?』

『は、はい』

『よろしい』

AYUは再び、席について漫画を読み始めた。この女に、この場にいるサカキと曽我部以外は戦慄を覚えていた。そんな中で、曽我部は続けた。

『その計画にあたって、まずはシオンタウンを攻め落としたいと思います』


会議終了後

『少しは遠慮して下さい』

『ごめん、ごめん。あ、ケーキはあるかな?』

『ちょっと、待って下さい。……はい、どうぞ』

『ありがとう。……モグモグ、ゴクン。美味しいケーキだね』

『ありがとうございます』

『……君の計画もそろそろだね』

『……はい。これもAYU様のおかげです』

『様付けはよしてよ。私は君の計画が面白いと思ったから、協力しているだけだしね。おかわりある?』

『はい。待っていて下さい』

―――

今回の手持ちメンバー ゆい ハッサム ヘルガー  ポリゴン2 イーブイ  ニューラ

セキチクシティ

私達はサファリゾーンで有名な、セキチクシティに到着います。サファリゾーンというのは、お金を払って、あらかじめ指定されたボールだけで、ポケモンを捕まえることの出来る施設です。サファリゾーンは有名ですし、全国からもここに観光に来るそうです。私も行ってみたいとは思いますが……。

「まずはジムリーダーに挑戦です!!」

今、私はセキチクジムの前にいます。久々のジム戦です。気合いも入ります。

「ペロペロ。……アイス、おいしい~」

私が気合いを入れている横で、のんきにアイスを食べているゆい先輩。う~ん、じつにかわい……いけない、いけない。最近の私はゆい先輩のちょっとした動作に見とれている気がします。

「早く、アイスを食べて下さい」

「慌てない、慌てない。損気は短気だよ」

「それを言うなら、短気は損気です」

まあ、ゆい先輩は出番があっても、最後ですから、なんとかなるでしょう。私はドアに手をかける。

「失礼しまーす」

私はジムに足を踏み入れる。そこは昔の屋敷みたいな雰囲気のあるところで、例えるなら、テレビの時代劇であるようなところですね。

「どなたですか?」

中から、着物を着た女の人が出てきました。

「あのー、ジム戦に挑戦したいんですけど……」

「あー、分かりました。ではこちらでお待ち下さい」

私達は畳のある部屋に案内されました。

「なんか、雰囲気が違うね」

「そうですね」

しばらくすると、さっきの女の人と忍者みたいな格好をした、男の人がやってきました。

「お待たせして申し訳ない。私の名前はキョウ。こっちは娘のアンズだ」

「よろしくお願いします」

ペコリ、と頭を下げてきます。

「私の名前は中野梓です。こちらこそよろしくお願いします」

私もペコリ、と頭を下げます。

「私はゆいだよ~」

ゆい先輩もペコリ、と頭を下げます。

「ふむ、中野君とゆい君か。君達の噂は聞いているよ」

「噂ですか」

「うむ。幼女のような奇抜な技を使用するポケモンを使い、ジムリーダー達を倒してきたツインテールの髪型をした、トレーナーがいるとな」

まさしく、私達のことでしょう。

「では、早速、戦おう……と言いたいが、少しいいかな?」

「なんでしょう」

「本来なら、私が戦うのだが、今回は娘のアンズと戦ってもらいたんだ。もちろん、勝てば、バッチを渡すが」

「はあ。どうしてですか?」

「うむ。いずれは娘がここのジムリーダーになるから、経験を積ませておきたいので、よければ、協力していただきたい。もちろん嫌なら、や
めにするが」

「あ、いえ。問題ありません。頑張りましょうね、アンズさん」

「はい」

私達はバトルフィールドに案内されました。バトルフィールドは変哲もない普通のものです。

「それで、ルールは3対3。より、多く勝った方が勝ち。掛け金は1万円。以上だが問題は?」

「問題ありません」

「それでは、両者、準備はいいですか」

審判が宣言します。

「ええ」

「はい」

「それでは……」

「「バトルスタート!!」」

「出てきて、モルフォン」

「出てきて下さい、ニューラ」

「モルフォン、まずはぎんいろのかぜで攻撃!!」

モルフォンは自分の羽をはばたかせて、風にリンプンを乗せて、攻撃してきます。

「ニューラ!」

ニューラはその攻撃を喰らい、倒れてしまいました。

「え、嘘。これで終わりですか」

アンズさんは拍子抜けしたように言います。しかし、審判は何も宣言しません。

「ねえ、審判さん。もう、ノックアウトですよね。私の勝ちですよね」

アンズさんが審判に嬉しそうに言います。

「まだです」

審判はアンズさんの意見を却下します。

「えー。仕方がないですね。ではもう少し痛めつけましょう」

「……アンズさん」

「はい?」

「戦いには集中していた方がいいですよ。ニューラ、だましうち」

アンズさんの気の緩みが通じているのか、モルフォンもゆったりと飛んでいたところに、今まで、気絶していたニューラの突然の反撃をよけきれず、まともに喰らいます。

「なっ!卑怯ですよ」

「戦いに集中してなかったのが悪いんです」

「コラー、アンズ。相手の息の根を止めるまで、油断するなと教えただろ」

「そうでした。でも、タイプでは、私の方が有利。モルフォン、ぎんいろのかぜで攻撃!!」

「今度はさせません。先手を取って、こおりのつぶてで先制攻撃です」

ニューラは再び、羽をはばたかせようとするモルフォンに氷のかたまりをぶつけます。

「ニューラ」

ニューラはかたまりをぶつけてひるんだ、一瞬の隙をついて、鋭いツメを使って、モルフォンの羽をきりさく攻撃で切り裂きます。

「モルフォ……」

その攻撃で弱って、モルフォンは落ちてきます。そこに向かって、ニューラは接近して、その鋭いツメを硬くして、モルフォンに迫ります。

「ニューラ、トドメです。メタルクロー!!」

ニューラのツメがモルフォンの羽ごと、切り裂き、そのまま、ノックアウトとなりました。

「モルフォン、戦闘不能。ニューラの勝ち。梓選手に1ポイント、1対0」

711 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga] 投稿日:2011/07/01(金) 07:48:24.55 ID:qgNS86Si0 [12/28]
「そんな~、勝ったと思ったのに……」

「それにしても、あずにゃんや。今の技はいつの間に覚えたんだい」

「前に、エリカさんと戦った時に、こな攻撃で苦しめられたので、私もそういった相手を罠にかけるような攻撃も出来るようにと思って。本当はあそこで、油断して、追撃をしてきたところを反撃するための技なんですけどね」

「なるほど、なるほど」

「……意味分かってないですよね」

「うん」

「正直で結構です」

「それにしても、あの人、今までよりも弱くない?」

「ちょっと、ゆい先輩」

本人の前で、そんなこと言わなくても。

「いいんですよ、本当のことですし」

やっぱり、聞こえてましたか。

「今日、初めて戦うんですから慣れてませんし」

なるほど、それなら、仕方がありません。それにしても、そんな人をぶつけてくるなんて、甘く見られたものです。そう思って、アンズさんを見ると、

「……くすっ」

一瞬、笑った気がしました。その笑いはしてやったり、という感じがしました。なんとなく、不気味な気がします。

「では、2回戦です」

「出てきて下さい、ポリゴン2」

「出てきて、アリアドス」

「ポリゴン2、先制をとって、サイケこうせんです」

ポリゴン2は不思議な光をアリアドスに発射します。

「アリアドス、こうそくいどうで避けて」

アリアドスは素早い移動で、サイケこうせんをかわす。

「いいですね、アリアドス。そのまま、こうそくいどうで逃げ続けてください」

アリアドスはバトルフィールド中を縦横無尽に移動し始めます。ポリゴン2はサイケこうせんをアリアドスにむかって、発射し続けますが、縦横無尽に動き回る、アリアドスにはまったく、命中しません。

「でも、動き回ってるだけじゃ、勝てませんよ」

「そうですよねー」

軽く言う、アンズさん。この人はなんだか、ハルカさんと同じような、えげつなさを感じるのは気のせいでしょうか。

「ポリゴン2、トライアタックです」

ポリゴン2は電気、炎、氷の三つの光線を、アリアドスに繰り出します。

「ひゃー、こわいです」

アリアドスはさっきの移動よりうスピードをあげ、その攻撃をかわす。

「今度はこっちの番です、どくづき!」

アリアドスはその速度を保ったまま、毒の手で、ポリゴン2に迫ります。

「ポリゴン2、まもるです」

ポリゴン2はバリアみたいなものを張り、アリアドスの攻撃を防ぎます。しかし、アリアドスはさらに向きをかえて、ポリゴン2にもう一度迫ります。

「ポリゴン2、かげぶんしんです」

アリアドスの攻撃はポリゴン2の残像を通過します。

「ポリゴン2、反撃です。サイケこうせん」

ポリゴン2は再び、不思議な光をアリアドスに発射します。しかし、勢いよく、縦横無尽にまわりを走り回る、アリアドスには命中しません。

「……そろそろかな」

「?」

「アリアドス、くものすよ」

その声とともに、ポリゴン2はくもの糸に絡め捕らえられました。アリアドスは糸を発射していないのに。そして、周りは、くもの糸だらけとなりました。

「さっきまで、縦横無尽に走り回ってたのは、くもの糸を張り巡らせるためですか」

「そうよ、面白いでしょ」

「やっぱり、前回の戦いのは演技ですか、油断させるための」

「そうよ。もっとも、あなたは油断しなかったけどね。アリアドス、どくどく!」

アリアドスは動けないポリゴン2に噛み付き、毒を注入します。

「ポリゴン2、アリアドスと糸を振り払って下さい」

ポリゴン2は絡みつく糸と、アリアドスを体を回転させ、振り払います。振り払われた、アリアドスは再び、こうそくいどうで、縦横無尽にフィールドを駆け巡ります。

「二度と、同じ戦術は通じませんよ」

「二度も、同じ戦術はしないよ」

ポリゴン2はサイケこうせんを当てようとしますが、アリアドスは逃げるばかりで、当たりません。そして、突然、

ガクッ

と、ポリゴン2がよろめいて倒れました。

「どくどくという技はだんだん、毒が体に回り、ダメージが増えていくのよ」

「ということは、さっきのは……」

「そうよ、ただの時間つぶし。トドメよ、アリアドス。どくづき!」

アリアドスはその腕を、ポリゴン2に突き刺し、ポリゴン2は動けなくなりました。

「ポリゴン2、戦闘不能。アリアドスの勝ち。アンズに1ポイント、1対1」

「やりますね」

「いえいえ、あなたも強いですよ」

「褒められてる気がしませんけどね、緒戦を見ると」

「そんなことありませんよ。……それよりも、最終戦はあの子でしょ?」

アンズさんはゆい先輩を指差します。

「ほえ、私!?」

「ぜひ、数々のジムリーダーを倒してきたその力を見せてくださいな」

「うえー。私にそんな力なんてないよ」

「またまた、謙遜を」

「では、最終戦です」

「さあ、頑張って下さい、ゆい先輩」

「やっぱり、戦うんだね」

「一応、相手も指名してますし、私のメンバーで一番の戦力じゃないですか」

「あずにゃんに信頼されてるなら、私は頑張るしかないね!」


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最終更新:2011年08月03日 03:58