「出てきて、クロバット」

クロバット。イワヤマトンネルでも戦った、因縁のあるポケモンですね。

「クロバット、つばさでうつ攻撃よ」

クロバットは大きく翼を広げて、ゆい先輩に体当たりを仕掛けてきます。

「あずにゃんや。私もたくさんの戦いを通じて、だいぶ、パワーアップしたよ。その成果を今見せよう」

たしかに、初期よりもだいぶパワーアップしてます。当たり前ですけど。

「いくよ、トリャー」

ゆい先輩は華麗(?)にクロバットの攻撃をかわします。

「クロバット、旋回して、もう一度、攻撃よ」

クロバットはもう一度、大きく翼を広げて、ゆい先輩に体当たりを仕掛けてきます。

「フッ。何度でも来なさい、トリャー」

ゆい先輩は再び、華麗(?)にクロバットの攻撃をかわします。

「くっ。ならば、一旦離れて、連続してエアスラッシュよ」

クロバットはくうきのやいばをゆい先輩にむかって、何発も発射します。

「その程度じゃ、あたらないよ。トリャー、よっ、ほいさっと」

ゆい先輩はリズムよく、くうきのやいばをかわしていきます。

「ふー、どうだい、あずにゃん。だいぶ、パワーアップしたでしょ?」

「してますけど、よけてるだけじゃ、勝てませんよ、ゆい先輩。ここはパワーアップした成果を見せて、攻撃して下さい」

「さすがに、それは遠慮したいな~。というか、たまにはあずにゃんが戦いなよ」

「はい?私はトレーナーですよ」

「たまには立場を逆にしない?」

「何を言い出すんですか」

「ふう~、やれやれだね」

「なんで、私が我侭言ってるみたいにされなきゃいけないんです」

「と、まあ、冗談はこれくらいにして、早速、戦うかな」

「冗談だったんですか」

「私があずにゃんを危険な目にあわせるわけないじゃん」

ゆい先輩はそう言って、こちらを向く姿を見て、

ドキドキ

と私の胸が高鳴りました。私はいつもはのんきで可愛らしい先輩も大好きですけど、たまに見せる、かっこいい表情をする先輩も大好きなんです。このバトルが終わったら、たくさん、いちゃいちゃ……

「……したいんですけど……ボソボソ」

「さっきらから、何をボソボソ呟いてるんですか」

「んー、心のナレーション」

「変なこと言ってないで、サッサと倒してください」

「ほーい」

「さっきから、舐めないでもらいたいね。クロバット、もう一度、つばさでうつ攻撃!」

「ひょいっと」

おおきな翼をゆい先輩にぶつけるべく、体当たりを仕掛けてきますが、ゆい先輩はなんなくかわします。

「今回はあずにゃんに頑張ってもらおう。ゆいちゃん真拳丸秘㊙(マルヒ)奥義『アズニャン・ワールド』」

ゆい先輩が宣言すると、周りがどこかの野原みたいなところになりました。

「このフィールドは一体なんなんですか、ゆい先輩」

「まあ、見てれば分かるよ」

「これが数々のジムリーダーを倒してきた技……。だが、関係ない。クロバット、かみつく攻撃!」

クロバットが大きな口を開け、ゆい先輩に迫ってきます。

「ひゃー」

ゆい先輩は横にダイブして、かわします。

「くそ。ちょこまかと」

『……なです』

突然、遠くの方から、声みたいのが聞こえると、同時に、

ドドドドドドドドドドドドドドドドド

と、いう足音も聞こえてきました。その音を見ると、ゆい先輩と同じくらいの大きさをした、ツインテールのネコミミとネコのシッポをつけた女の子の集団がやってきました。……どこかで見た人だと思いますが、きっと、気のせいでしょう。むしろ、気のせいということにして下さい。その女の子(?)達は口々に

『ゆい先輩をいじめるなです!』

『生意気なこうもりです』

『やってやるです』

と言いながら、クロバットに攻撃を仕掛けています。

「ギャーーーー」

その女の子達はクロバットの翼に噛み付いたり、目にからしをつけたりと、やりたい放題です。

『はやく、ゆい先輩に謝るです』

「クロバット(ごめんなさい)」

『日本語でしゃべりやがれです』

バーン

と、クロバットにパンチをします。理不尽な理由で。

『誰か、あれ持ってくるです』

『分かりました』

そう言って、女の子達が持ってきたのはジュージューと厚くなった鉄板です。……ま、まさか、伝説の……。

『さあ、これに乗って、謝るです』

『土下座です。30秒で勘弁してやるです』

「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーー」

今、こんがりと焦げたにおいがしてきます。

「ふ~、助かったよ」

「ゆい先輩。あの方々は……」

「あれは野生のあずにゃん達だよ」

あずにゃん達ですか。私と同じあだ名のような気もしますが、きっと、別人でしょう。

『ゆい先輩、やりました』

「ご苦労さん。よくやったね」

ナデナデ

『えへ』

『あ、あいつ、抜け駆けしたです』

『次はあいつをフルボッコです』

『やってやるです』

「まあまあ、慌てないで。ちゃんと、皆もなでてあげるから、一列に並んで」

ゆい先輩の言葉で、一列に並ぶ、『あずにゃん』達。なんて、ゆい先輩に従順なんでしょう。

「ついでに、たい焼きもあげるね」

『わ~い』

皆、嬉しそうに喜んでいます。

『モグモグ、ゴックン。……にゃふ♪』

たい焼きを食べた、『あずにゃん』は眠たそうにし、お昼寝を始めました。

『zzz』

「クロバット、昼寝をしている今のうちに、攻撃です。クロスポイズン」

「クロバット」

焼き土下座を喰らって、弱りきってるクロバットはなんとか羽ばたいて、どくのきばでゆい先輩に噛み付くために、接近してきます。

「学習しないなー」

ゆい先輩は大げさに横にダイブして、こうげきをかわし、

「たーすーけーてー」

と、棒読みで叫びました。……一体、何の意味があるのかな、と思いましたが、周りの『あずにゃん』達の耳がピクピクっと、なっています。
まさか、さっきみたいに、『あずにゃん』達にフルボッコにしてもらうつもりなんじゃ……。

「私、このままじゃ、汚されちゃうよー」

ものすごく、棒読みで言う、ゆい先輩。でも、さすがに、そんな棒読みじゃ、引っ掛かりませんよね。

『ゆい先輩をいじめるなです!』

『また、あのこうもりですか』

『反省の色が見られませんね』

『もう一度、お仕置きです』

『やってやるです』

引っ掛かってるーーーーー。なんて、単純なんでしょうか。

「クローーーーーーー」

目にわさびを塗ったり、羽に小さい穴を開けたりと、やりたい放題です。

『サッサと、ゆい先輩に謝ってくるです』

ドン、と蹴られ、ゆい先輩の前に出される、クロバット。仕方がないので、前に行こうとする、クロバットに、

『ゆい先輩に近づくなです』

と、今度は違う、『あずにゃん』に殴られました。クロバットは仕方がないので、その場で謝ろうとしますが、

『そんな場所で謝らないで、ちゃんと、ゆい先輩の前で、謝るんです』

と、さっきの『あずにゃん』に蹴られます。以下、ループ。なんという、理不尽な攻撃。

「クロ……バット」

体力も残りわずかな状態で、なんとか、立ち上がるクロバット。

「はいはい、並んでー」

ゆい先輩は『あずにゃん』達を3列に整列させます。

「それじゃあ、頑張ってね。レッツ・ゴー」

ゆい先輩の号令で、クロバットに『あずにゃん』達が突っ込んでいきます。

「……クロ……バッ……ト」

クロバットは『あずにゃん』達に跳ね飛ばされました。クロバットは回転しながら、落下してきます。その落下地点に『あずにゃん』達が再び、突っ込んできます。

バーン

再び、クロバットは上に跳ね飛ばされます。クロバットはさっきよりも回転を強めて、落下してきます。また、その落下地点に『あずにゃん』達が、突っ込んできます。そして、上に跳ね飛ばされます。そんなやりとりが5回ほど、続き、最後はクロバットがものすごい勢いで回転して、地面に突き刺さりました。

「これぞ、『あずにゃん・ミキサー』だね」

そんな声とともに景色は最初に対戦していた、フィールドに戻りました。

「クロバット、戦闘不能。ゆいの勝ち。梓選手に1ポイント、2対1。よって、梓選手の勝利です」

「いやー、素晴らしかった」

パチパチと、拍手をしながら、キョウさんがこちらにやってきます。

「思えば、最初から、演技だったわけですか」

「悪かったな。最初に油断させれば、その嬢ちゃんも動揺して勝てるかと思ったんだが、そうもいかなかったな。だが、全てが演技なわけじゃ
ない。実際、アンズはいずれ、セキチクジムのリーダーをやってもらう」

同じくらいの年齢で、ジムリーダーなんて。

「それはすごいですね。でも、どうして、そんなことをしたんですか?」

「実はジムリーダーの間で、誰が君達に黒星をつけるか、賭けをしてたんだ。すまないね」

一体、何をやってるんでしょうね、ジムリーダーさん達。まあ、気持ちは分かりますが。

「さて、これがピンクバッチだ。受け取ってくれ」

「ありがとうございます」

これで、ようやく、5個目のバッチになりました。

「頑張ってね、梓ちゃん」

アンズさんが話しかけてきます

「ありがとうございます。出来れば、今度はちゃんと戦いたいですね」

「きっついね~。私はちゃんと戦ってたよ」

「ふふふ、では、ジムリーダーになるために頑張って下さい」

私はアンズさんと握手をかわします。

「さて、こんなものがあるのは知ってるかな?」

キョウさんがチラシを私に手渡します。そのチラシには『サファリゾーン限定企画・ひみつのコハクからよみがえったプテラをゲットせよ 先着1名のみ』と書かれていました。

「面白そうな企画ですね」

「よかったら、参加してみてはどうかな」

行われるのは明日みたいですし、ちょうど、明日には行こうと思ってたのでちょうどいいですね。

「ありがとうございます。ぜひ参加してみたいと思います」

「うむ。頑張ってな」

「はい」

私は2人に見送られ、セキチクジムを出ようとした時、

バーン、ドガシャーン

と、いう大きな音が外から聞こえました。私達はキョウさんと一緒に外に出ました。外では沢山の人達が走ってきています。

「どうしたんだ!」

キョウさんは走っている1人を捕まえて聞きました。

「サファリゾーンで、ポケモンが脱走したんだ。ここも逃げないとやばいぞ」

その人はそう言って、また、走り出しました。

「一体、何が起こってるんだ……」

「とにかく、行ってみましょう、父上」

「そうだな。中野さんはここから逃げた方がいい」

私はほんの少し考えて、

「いえ。私も行きます」

「だが、危険だぞ」

「かまいません。早く、行ってみましょう」

私はそう言って、走ってきている人とは逆の方、サファリゾーンの方に向かいました。


セキチクシティ編① 「VSアンズ」終了




梓達が、セキチクジムに挑戦し始めた頃

『……可愛そうなポケモン達』

AYUはサファリゾーンで仲よさそうな家族がポケモンをゲットしているのを見て、呟く。AYUがここに来たのは、『サファリゾーン限定企画・ひみつのコハクからよみがえったプテラをゲットせよ 先着1名のみ 』のチラシを見たからだ。この企画は、サファリゾーンのどこかに隠された宝を最初に見つけた人にプテラを渡すといったものだ。といっても、プテラがほしくて来たわけではない。

『……ここかな?』

AYUは羽を休めて寝ている恐竜みたいなポケモン、プテラの入ってる檻の前に辿り着いた。AYUがここに来たのは、このプテラを救うためだ。

『こんな狭い檻に入れられて、可愛そうに……』

AYUはこのサファリゾーンというところが嫌いだ。例えば、人間の女の人を裸にして、好きなの持っていっていいよって、なったら、きっと、いろいろなところから文句が来て、中止になるだろう。逆もまた然りだ。それと同じことを、ポケモンには平気でやっている。それがAYUは嫌だった。このプテラもそう。ずっと寝ていたのに、急に起こして、見世物のように使う。

『さあ、楽しいショーの始まりだよ』

AYUはプテラの檻に手をかざした。


セキチクシティ

今回の手持ちメンバー ゆい ハッサム ヘルガー  ポリゴン2 イーブイ  ニューラ

こんにちは、中野梓です。私はアンズさんとキョウさんと別れて、町の様子を探索してます。今、私は物陰に隠れていますが、そこから、通りを見てみると、ニドラン♂とニドラン♀の群れが闊歩しています。

「たくさんいますね。ざっと、数えても、それぞれ、20匹くらいはいますね」

「そうだね」

ニドラン♂と♀達は通りにある店の食べ物を食べたりしながら、歩き回っています。

「どうする、あずにゃん」

「まずはポケモンセンターに行きたいですよね」

私の手持ちの2匹(ゆい先輩は除いて)ニューラはまだ無事としても、ポリゴン2だけでも、回復させたいですからね。それだけじゃなくて、逃げ遅れた人達もいるかもしれません。


「でもでも、この群れを抜けるのは大変だよ」

「それは分かってます」

この通りを抜けた方がポケモンセンターに近いのですが、ここで、二ドラン達との勝負は避けておくべきでしょう。

「それにしても、何でこんなことになったんでしょう」

「さあ?でも、1つだけ分かることがあるよ」

「何ですか?」


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最終更新:2011年08月03日 03:59