「……ねえ、お姉ちゃん、梓ちゃん」
「な~に、うい」
「私、今、すごい罪悪感でいっぱいなんだけど……」
「私もだよ、うい」
「私なんか、何もしてないのに、ゲンガーに謝りたい気持ちでいっぱいです」
「もう、やめてあげようよ、お姉ちゃん」
「そうだね、うい、あずにゃん。……あずにゃん達、集ご~う」
あずにゃん達はゲンガーへの攻撃……いや、リンチをやめて、ゆい先輩の元に集まります。
「ゲンガゲンゲンガ(くそ。何なんだ、お前らは。……悪魔しかいないのか)」
ゲンガーは満身創痍といったかんじですが、まだ、生きています。しぶとい。
「さて、トドメだよ。あずにゃん達」
あずにゃん達は光の玉になり、ゆい先輩のところに集まって、ギターの形になった。
「ムッタン、頑張ろうね」
いつものギー太ではなく、ムッタンというギターを持ったゆい先輩はムッタンに言います。そして、ゲンガーに対峙します。
「長かった、この戦いもこれで終わりだよ」
「ゲンガ(……1つだけ、聞きたい)」
「いいよ、何が聞きたいの?」
「ゲンガ、ゲンガ(どうして、お前達はトレーナーのために頑張れるんだ。ポケモンなんて、所詮人間の戦うためだけの道具だろ)」
「……好きだからだよ」
「ゲンガ(は?)」
「私は……私達はあずにゃんが好きだからだよ。それだけ。あ、もちろん一番好きなのは私だけどね。他の理由なんかいらないよ」
「……」
「たしかに、ポケモンは戦うための道具だって、そう思ってる人もいるかもしれないね。でも、私が会ってきた、もちろん、全員じゃないけ
ど、皆、ポケモンを大切にしてたよ」
「……」
「人間さんだって、悪いものじゃないよ。ポケモンにだって、悪いポケモンもいれば、いいポケモンもいる。人間さんも同じだよ」
「……」
「私は戦うのは好きじゃないけど、私が頑張ってたら、抱きついてくれるし、頭を撫でてくれるしね~。もうね、『よく、頑張りましたね』って笑ってくれたら、最高だよ~」
「ゲンガ(……下らないな)」
「そうかもね。……ねえ、私達の仲間にならない?君とはうまくやっていける気がするよ」
「ゲンガゲンガ(ごめんだね。俺はやりたいことができちまった)」
「なんだい?」
「ゲンガ(お前を倒してやることだよ)」
「それは勘弁願いたいけどね」
「ゲンガ(さあ、無駄話も終わりだ)」
「そうだね」
ゆい先輩はムッタンをかまえる。
「ゲンガゲンガ(最後に1つ。お前のトレーナーを馬鹿にして悪かった)」
「……その言葉を聞けただけでも、よかったよ。 ゆいちゃん真拳究極奥義『あずさ☆転生』」
ゆい先輩はギターのむったんで、ゲンガーを切ります。すると、ゲンガーの胸に傷ができ、そこから、黒い煙のようなものが出てきました。
「ゆい先輩……あれは?」
「あれはゲンガーの負の感情だよ。この技を受けた、敵の負の感情を外に出すんだよ」
その黒い煙は少しずつ、白くなっていきます。
「そして、このアズニャン・ワールドで、その負の感情が浄化されていく。そして、完全に浄化された時……」
その白い煙がポン、と出ると幼い感じのツインテールの女の子が出てきました。
「……にゃっ」
「……あずにゃんが出てくるんだよ」
「へえー、それはすご……って、えー!」
「むったん、あずにゃんに戻って!」
ゆい先輩の掛け声で、100匹のあずにゃんが出てきます。
「皆、あたらしいあずにゃんだよ。ちゃんと育ててね」
『はい!!』
『任せてください』
『1人前のあずにゃんに育ててみせます』
「うん、頼んだよ。それじゃ、私は帰るね」
『また、来てくださいね!』×100
その声で、周りのフィールドが元の状態に戻りました。
「私達の勝ちですよ、マコトさん!」
「馬鹿な、全滅だと!?」
マコトさんは驚愕の顔をして、倒れこむ。
「……殺せよ」
「はい?」
「負けたんだ。殺せよ」
「嫌ですよ。女の子に何させようとするんですか」
「……馬鹿だな。逆上した俺が襲うかもしれないぞ」
「そうなったら、そうなった時になんとかしますよ」
「……まったく、たいした強さだよ、お前らは」
「あなた達の目的は何なんですか?」
「さあな。表向きにはカントーの征服らしいぞ」
「カントーの!? 表向きというのは?」
「それぞれの思惑があるみたいだからな。……1つだけ、忠告しておいてやるよ」
「何ですか?」
「俺達の仲間のフー……」
「梓ちゃん、気をつけて!」
バーン、ガシャーン
天井に衝撃が走り、ポケモンタワーに物凄く、揺れ出した。
「なんですか、これは!?」
周りは天井が崩された衝撃で、煙が巻き起こる。
「一旦、逃げよう、梓ちゃん」
「でも、マコトさんが」
「あの人なら、大丈夫だよ」
「……そうですね。じゃあ、純とと合流して……」
「危ない!」
ういは叫ぶ。私が上を見ると、天井の瓦礫が落ちてきています。このままじゃ……。
「カビゴン!」
「カビ」
その瓦礫が、カビゴンのパンチで破壊される。あの、カビゴンは。
「純!」
「まったく、本当に主人公してるのね、梓は」
「無事だったの?」
「当然でしょ。……今はのんびり、話してる場合じゃないわね」
「そうだね。……プテラ、頼むね」
私は全部のポケモンをボールに戻して、プテラに乗る。
「行きますよ!プテラ、はかいこうせん!」
プテラのはかいこうせんで、天井にさらに穴を開け、そこから、脱出して、シオンタウンの上空を飛びます。ポケモンタワーを見ると、私達以外の何かの大きな衝撃を受けて、壊されているようです。それにしても、さっきの攻撃は相当の威力ですね。一体、誰が……。
「梓。下もだいぶ安定してるみたいね」
「え?」
私はシオンタウンを見る。たしかに、警察達が乱入し、ロケット団は追い詰められています。
「これから、どうするの、あずにゃん?」
「とりあえず、フジさんのところに戻りましょう」
「そうだね、ヘル太達も心配だしね」
私達はフジさんのところに戻りました。
「よく、無事で帰ってきた!」
「すごいよ、お姉ちゃん達!」
2人に出迎えられる。
「何か、ありましたか?」
「僕達は全然大丈夫だったよ。ヘルガー達もいたしね」
「皆さん、よくやりましたね」
私はそれぞれのポケモン達の頭を撫でます。
「あ、そうだ。パソコンはまだありますか?」
「ああ、大丈夫じゃ」
私はパソコンを使って、オーキド博士に連絡し、イーブイの治療のためにイーブイを転送する。オーキド博士に任せれば、大丈夫でしょう。
「これから、どうしましょうか?」
「とりあえず、今日はここで泊めてもらいましょう。もう、疲れた」
「そうじゃな。そうしておくれ」
「お姉ちゃん達、お話、聞かせて~」
「それじゃ、まずは私がお話してあげるか」
純の話を遠くに聞きながら、私は眠りについた。
「やれやれ、2人とも、仲良く、寄り添って寝ちゃって、まあ」
「お姉ちゃん達、気持ちよさそうだね~」
「2人とも、頑張ってたからね~」
「このまま、寝かせてやろうかのう」
「そうですね」
「……よし、あの2人の分まで、お話してあげよう。……ういが」
「私!?」
「だって、途中、私いなかったし。私だって、上での話知りたいし」」
「そうだったね。分かったよ。まずね……」
マコト
『また、お前かよ』
梓達が脱出した後、崩れゆく、ポケモンタワーの中で、マコトはフードの女……AYUに語りかける。
『ひどいな~、その言い方は。プンプンだよ』
可愛らしく言うが、この場では不釣合いだ。
『なんだ、助けにでもきたのか?』
『それはないわね。3度も失敗したんだから』
AYUの隣にいた曽我部が言う。
『まったく、殲滅班の部長まで来るのかよ』
『私はファイヤーの回収に来たのよ。後の始末は……』
『私がやるよ~』
『それはご苦労なことだ。……AYU、お前は何者だ?』
『私? そうだね~、一応、殲滅班の班員だよ~。私、1人だけだけど』
『……』
『さて、遺言はあるかな?そろそろ、ここもやばいしね』
『……聞きたいことがある』
『いいよ、答えてあげる』
『……お前は何者だ』
『さっきも言ったよ』
『本当のことが知りたいもんだ。冥土の土産にな』
『……残念だけど、お土産はなしだよ。冥土で皆に謝ってね』
AYUは手にエネルギーを溜める。それを見て、マコトは言う。
『お前は人間なのか、それとも、ポケモンなのか?』
AYUは手をマコトに向ける。
『私は人間でもあるし、ポケモンでもあるんだよ。それじゃ、バイバイ』
その言葉を最後にマコトの意識は途絶えた。
次の日
私達はロケット団の占拠から逃れたので、フジさん達をポケモンハウスへと送り届けます
「落ち着いたら、もう一度、ここに来ます」
「来れたらでいいぞ。……達者でな」
「ええ」
「またね~」
「お世話になりました」
「さようなら」
私達はシオンタウン郊外に来ました。
「それじゃ、私達はここで」
「え、もう?」
「な~に、梓は私がいなくて寂しいの?」
「別にそういうわけじゃ……もう少し、おしゃべりとか」
「なにを言ってるの。あんたにはあんたのやることが。私には私のやることがあるのよ」
「……そうだね。じゃ、また会おうね、純、うい」
「また会おうね、うい、純ちゃん。今度会う時は私ももっと強くなってるよ」
「私ももっと、強くなるよ、お姉ちゃん。梓ちゃんもまた会おうね」
「それじゃ、またね」
私達は純たちと別れました。
「これから、どうするの、あずにゃん」
私の頭の上で聞いてくる、ゆい先輩。
「そうですね、とりあえずは、ヤマブキシティを目指します」
「……まさか、着いたら、ジム戦とか?」
「さすがに昨日の今日で、そんなことしませんよ」
「そうだよね。それじゃ、着いたら、遊びに……」
「昨日の戦いで、自分のレベルの足りなさを感じたので、特訓です!」
「ええ~、それはないよ~、あずにゃ~ん」
「冗談ですよ。とりあえず、ホテルで、寝たいですね。次の日はお休みにしましょう」
「わ~い、さすがはあずにゃんだね~」
私の頭を撫でてくる、ゆい先輩。本当は特訓もしなきゃいけないんですが……。
「えへへ~、久しぶりの休みだよ~」
まあ、ゆい先輩も喜んでいるからいいかな、と思い、ヤマブキシティへと向かいました。
「……ついてきてるんでしょ?」
私は足を止めて、振り返る。
「どうしたの、純ちゃん」
ういは不思議そうに聞いてくる。
「さっきから、ずっとつけられてるわね」
「え、嘘!?」
「そこに隠れてるのは分かってるから、出てきなさい」
木の中から、ポケモン……ゲンガーが出てくる。
「あなたは!?」
ういは驚いている。おそらく、このゲンガーは昨日、話していたポケモンなんだろうな。
「何で、ついてきたの?」
私はゲンガーに聞く。
「ゲンガ(仲間にしてくれ)」
「うい、なんて言ってるの?」
「な、仲間にしてくれって」
「……なんで?」
「ゲンガ(もう、1度だけ、あの、ツインテール達と戦いたいんだ。……それに)」
ゲンガーは一息いれて、何かを言う。
「ゲンガ(……いいトレーナーの元で戦ってみたいんだ)」
「えっとね、純ちゃん。ゲンガーは……」
私はういが言い切る前に、モンスターボールをゲンガーに当てる。そして、ゲットした。
「純ちゃん! どうして、ゲンガーをゲットしたの?」
「私達はそもそも、ゴースをゲットしにシオンタウンにきたからね。……それに」
「?」
「寂しそうな眼をしてたからね。さて、最後のバッチをゲットしに、トキワに行くかな」
「……純ちゃん、私、純ちゃんのポケモンになれてよかったよ」
「気持ち悪いこと言わないでよ、まったく」
シオンタウン編⑤ 「VSファイヤー③」 終了
最終更新:2011年08月03日 04:17