ヤマブキ・ホテル

皆さん、おはようございます。ゆいです。今は早朝。普段の私なら、まだ、ぐう~ぐう~寝ていて、あずにゃんに起こされるまで、寝ていることでしょう。でも、今日は違います!!何故なら……。

「昨日が『月刊あずにゃん』の発売日だったからだよ~」

いや~、昨日、買ったはいいけど、見る時間がなくてね~。楽しみで楽しみで。

「さてっと。ふむふむ」

今月のカプは誰得って感じだったから、飛ばして……来月は……『澪梓』か。

「また、唯梓じゃないのかよ!!」

「にゃっ!!」

おっと、いけない。また、大きな声を出しちゃったよ。あずにゃんはまだ、寝てるようなので、よかったけど、気をつけないとね。

1時間後

「さて、雑誌も読み終わったし、また、寝ようっと」

早く、起きると駄目だね。もう一眠りしようっと。私がベットに入ると、

「……もう、朝ですか。ほら、ゆい先輩も起きてください!」

「ええっ!!」

そんな感じで、今日も始まります。

「今日はどこに行きましょうか」

「そうだね~、とりあえず、ぶらぶらしようか」

「それもいいですね」

初めて来る場所とかって、ワクワクするからね。というよりも、あずにゃんといれれば、どこでもいいけどね。

「ヤマブキシティで有名なところは……シルフカンパニーですかね」

「何それ?」

「まあ、ただの会社の本社ですけど」

「つまんな~い」

「ですよね」

さてさて、どうしたものかな。正直、眠いんだけどね。

「それにしても……」

「どうしたの?」

「今まで、旅をしてきたんですけど、どこもマサラタウンと大分、雰囲気が違いますよね」

「そうだね」

マサラタウンに私は長くいたわけではないけど、むこうはまだ自然に溢れていたね。

「マサラタウンは民家もまばらで、自然に溢れていたのに、ヤマブキシティやタマムシシティとかはもう、ビルばっかりだし、都会って気になりますよね」

「そうだよね~。でも、私はマサラは好きだよ」

「私もです」

「マサラに帰りたい?」

「まあ、多少は……。でも、旅も悪くないですよ。いろいろな人やポケモンにも会えますし」

「私も、旅をしたから、あずにゃんに出会えたわけだしね」

「でも、行き倒れですよね」

「むぅ~。それは言いっこなしだよ」

私達はそんな話をしながら、町並みを歩いていました。もっとも、私はあずにゃんの頭の上だけどね。

「梓じゃないか?」

そんな時、私達の正面から澪ちゃんが歩いてきて、私達に声をかけます。

「あ、澪先輩!」

あずにゃんの声が私に発するそれと違う気がする。それに、澪ちゃんを見る眼も。これは嫉妬かもしれないけどさ。なんか、面白くない。

「どうしたんですか、こんなところで」

「まあ、いろいろとさ。えーと、バッチも全部持ってるから、適当にいろいろな所を巡ってるだけだよ」

これは私の勘だけど、きっと、あずにゃんに会いにきたんだろうな。

「へえ~、偶然ってあるんですね」

「そ、そうだな。えーと、喫茶店でも行かないか?」

「いいですよ。ゆい先輩もいいですよね?」

「……」

「ゆい先輩?」

「え、うん、な~に、あずにゃん」

「だから、喫茶店に行きませんか?」

「うん、いいよ~」

私は嫌な予感をビンビンに感じながら、喫茶店に向かった。


喫茶店

「それにしても、どうして、ヤマブキシティに来たんですか?」

さっきはいろいろな所を巡ってるとは言ってましたけど、ヤマブキシティって、面白いところって、なかったと思いますけど。……って、ヤマブキシティに住んでる人に失礼ですよね。

「さ、さっきも言ったけど、適当にいろいろな所を巡ってるだけだよ」

「でも、ヤマブキシティには特に何もない気がしますけど」

「ま、まあ、バッチを集めるのに集中したから、町を巡るってことをあんまりしなかったからな、時間のある今のうちにやっておこうって、思ってな」

「なるほど」

私だったら、レベル上げに勤しむのに、さすがは澪先輩です。

「それで……あ」

私は会話を続けようとした時、オーキド博士から、電話がありました。

「すいません、ちょっと、電話で……」

「いいよ、私は気にしないででていいよ」

「すいません」

私は一旦、喫茶店を出て、電話に出ました。

『やあ、梓君』

「どうしたんですか、博士」

『お前さんが預けたイーブイの治療が終わったから、連絡を、と思ってな』

「そうなんですか!!ありがとうございます!」

『それで、梓君も様子を見たいじゃろうと思ってな。今から、転送するかのう?』

「お願いします!」

『ほっほ。それじゃ、ポケモンセンターに着いたら、電話してくれんかのう』

「分かりました」

私は電話を切ると、喫茶店に戻りました。

「すいません、澪先輩。私、ちょっと、ポケモンセンターに用事ができまして……」

「じゃあ、私も一緒に……」

「私はゆいと一緒に待ってるよ。前に会った時はそんなに話せなかったしな」

「すいません。すぐに戻ってきますから、ゆい先輩をお願いしますね」

「ああ」

「……」

私はゆい先輩を澪先輩に預け、ポケモンセンターに向かいました。


「パクパク」

「……」

あずにゃんが行った後、私と澪ちゃんの間に、沈黙が流れる。というより、澪ちゃんは私に何かを言いたいけど、なかなか、切り出せないって
感じだけどね。

「ここのケーキ、美味しいよね」

「……あ、ああ。そうだな」

澪ちゃんは答えるけど、まだ、一口も食べてないんだけどね。

「……なあ、ゆい」

「な~に、澪ちゃん」

「……頼みたいことがあるんだ」

「いいよ。私でよければ、力になるよ」

「梓にさ、旅をやめるように言ってほしいんだ」

澪ちゃんは覚悟を決めたかのように言った。やれやれ、なんか、こういうのなんていうんだっけ?シリアル?まあ、なんでもいいや。そんな展
開になりそうだね。もっとさ、けいおんっていうアニメだか漫画みたいにのんびりというか、ほのぼのとすればいいのにさ。まったく

「……どうして?」

「……これ、梓達だろ?」

澪ちゃんが見せたのは、昨日の新聞だった。その新聞にはセキチクシティのサファリゾーンのポケモン脱走とシオンタウンのロケット団占領について書かれたものだった。その中には、未確認だがツインテールの少女と幼稚園児の子供が活躍したと書かれていた。

「そうかもね」

「ゆい!私は真面目に聞いてるんだ!」

「声、大きいよ」

周りの人達も見てるし。

「あ、ごめん」

「……その新聞のだけどね、多分、そうだと思う」

「やっぱりか」

澪ちゃんは嘆息する。

「どうして、こんなことをしたんだ?」

「なんか、悪いことをしたみたいに言うね。私達のおかげで、セキチクシティやシオンタウンの平和は守られたんだよ! フンス」

「……そうだな。それはいいよ。でもな、ここまでのことをしたら、ロケット団にも、マークされることになるぞ。ただでさえ、タマムシの事件で、目をつけられてるのに」

「……」

「そうなったら、梓の命も狙われることになるぞ」

「大丈夫だよ~。あずにゃんは私が守るもん」

「ゆい、ふざけてる場合じゃないんだ」

別にふざけてるつもりはないんだけどね。

「つまり、あずにゃんの命が危ないから、私に説得してくれというわけだね」
大げさだと思うけどね、さすがに。

「そうだ」

「でも、どうして、私に?澪ちゃんが言えばいいじゃん」

「たしかにそうだけど、ゆいは梓のポケモンだろ?ポケモンを大事にする、梓なら、ゆいの言うことを聞いてくれるはずだ」

「そうかもしれないね」

ちょっと、卑怯な言い方な気もするけどね。

「それに……認めたくないが、ゆいが1番、梓に信頼されているからな」

「そう見える~?いや~照れるな~」

「……それで、どうする?」

「……」

「ここで、旅を終われば、ゆいは梓とマサラで一緒にほのぼのと暮らせるんだぞ。ただ、この状況だから、他の地方に引っ越すことになるかもしれないが」

「……それはいいね」

「だろ?だから、頼むよ、ゆい」

「分かったよ、澪ちゃん。私、あずにゃんを説得するよ」

「分かってくれて嬉しいよ、ゆい」

「そのかわり、必ず、ポケモンリーグで優勝してね」

「任せろ」

その時、あずにゃんがタイミングよく戻ってきた。

「お待たせしてすいません」

「ちょうどいいところにきたよ、あずにゃん」

「何ですか?」

「もう、旅をやめてさ、マサラに戻ろうよ」

「……え、どうして、突然そんなことを……」

「旅もいいけどさ、2人で早くのんびりとしたいからね。そうすれば、ほのぼのと出来るしね」

「……でも」

「大丈夫、他の仲間も一緒だからね」

「……分かりました、マサラに戻りましょう」

「本当に!?」

「はい!ちょっと、今までの雰囲気は私に合わないと思ってたので」

「あずにゃん」

ダキッ。

「ゆい先輩」

ダキッ。

こうして、私達はマサラタウンで幸せになりました。

ヤマブキシティ編① 「敗 北!」 終了


~~~

となれば、いいんだろうけどね。でも、私は……。

「いやだ」

と、答えた。

「……どうして?」

「だって、あずにゃんは頑張ってるもん」

あずにゃんはポケモンリーグに出るために毎日、頑張ってる。そんなあずにゃんに諦めて、帰ろうなんて言えないよ。というか、言いたくないよ。

「……ゆい、分かってるのか。こうは言いたくないけど、梓は人間なんだ。ゆいなら、多少の深い傷でも、すぐに治るだろうが、梓はそうじゃないんだ。ミュウツーの戦いでも分かってるだろ」

「……」

澪ちゃんの言ってることは……まあ、間違ってない。私はポケモンだから、多少の傷なら治るし、痛みもないけどさ。

「ゆいだって、戦うのは好きじゃないだろ」

「……そりゃあね」

「一緒にマサラに戻れば、美味しいお菓子とかだって、ムギに頼んで用意してあげられる。始めのうちはロケット団から匿うために不自由があるかもしれないけど、2人なら大丈夫だろう」

「楽しそうだね!」

「だろっ!」

「でも、いやだ」

私は約束したからね。一緒にポケモンリーグで優勝するって。

「……」

「ごめんね」

「いや、ゆいの気持ちも分かる」

澪ちゃんは一息入れて、お茶を飲む。でも、ちょっと、まずそうにする。それはね、冷めてるからね。

「私だって、梓が頑張ってたことは知ってるんだ。やっぱり、私が言うことにするよ」

「大丈夫?体、震えてるよ」

「だ、大丈…夫だ…よ。……たぶん」

全然大丈夫そうに見えないけどね。はあ。またシリアルな展開になりそうだね。何事もないことを祈るよ。

「ごめんね、イーブイ」

「ブイ~♪」

私は治療してもらった、イーブイを撫でながら、ゆい先輩たちの待つ喫茶店に向かいます。

「なんか、雨降りそうだね」

「ブイ」

上を見ると、どんよりとした雲になってる。天気予報では午後から、雨って言ってましたしね。天気予報っていうのは嫌な予報の時には当たるんだから、困ったものです。

「ゆい先輩達、待ってるかな」

私はなるべく急いで、喫茶店に到着しました。

「すいません、遅くなりました!」

「おかえり~、あずにゃ~ん」

「……」

明るく迎えてくれるゆい先輩とどことなく、暗い雰囲気の澪先輩。私がいない間に何かあったのでしょうか?そのわりにはゆい先輩の雰囲気は明るいんですが……。

「あずにゃんがいなくて寂しかったよ~」

私が席に着くと、ゆい先輩が抱きついてきます。私はそんなゆい先輩の頭を撫でながら、澪先輩に話しかけます。

「あの、澪先輩」

「……」

「澪先輩!」


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最終更新:2011年08月03日 04:18