「では行くよ。ゆいちゃん真拳コスプレ奥義『R☆R』」

ボン

と、煙がゆい先輩を包み込みます。

「ついに発動するわね、ゆいちゃんの技が……」

ナツメさんがそう呟きます。そして、煙が消えて、ゆい先輩の姿が現れましたが……。

「ゆ、ゆい先輩、その姿は……」

ゆい先輩は白い帽子を被り、白いワンピースを着ています。か、可愛いです。

「ふふん、どうだい、あずにゃん。私の格好は」

「ま、まあまあですね」

「……本当に?」

「ほ、本当ですよ」

「くすくす、あずにゃん、かわいいよ~。お持ちかえり~」

ゆい先輩は私に抱き着いてこようとします。

「待って下さい、ゆい先輩。これ以上近づいたら、失格になってしまいます」

「おっと、危ない、危ない」

ゆい先輩はフーディンに向き直ります。

「フーディン、先制を取るのよ、サイコカッター」

「フー……」

フーディンは技を出そうとしますが、何かに技を受けたかのように、壁際まで飛ばされてしまいました。

「い、今のは……」

「今のは、ゆいちゃん真拳奥義『ゆいちゃん☆パンチ』略して、ゆいパンだよ」

「す、すごいですよ!拳が見えませんでした!」

「ふふん、どんなもんだい!」

「フーディン、怯まずに、サイコキネシスよ」

フーディンはゆい先輩に念力を送ろうとします。

「甘いよ!」

ゆい先輩は鉈を振り、フーディンの技を無効にします。……鉈?

「しっくりくるね、ギー太」

ゆい先輩は鉈っぽいものを撫でます。

「今度はこっちの番だよ。いっくよ~」

という言葉とともに、いつもの劇が始まります。

『ねえ、ゆい先輩』

ゆい先輩との下校の途中、私はゆい先輩に話しかけました。

『な~に、あずにゃん』

『……皆さんはなにか、私に隠し事とか嘘とかついていませんか』

『何を言ってるの、あずにゃん。あずにゃんにそんなことするわけないよ』

『嘘ですよね』

『どういう意味かな?』

『してますよね、私に隠し事』

『……じゃあ、あずにゃんは私達に隠し事や嘘をしてないのかな、かな?』

『し、してませんよ』

『嘘だよね』

『う、嘘じゃありませんよ』

『嘘だっ!!』


というゆい先輩の言葉とともに、『嘘だっ!!』という文字の大群がフーディンに突っ込み、ダメージを受けます。

「これぞ、ゆいちゃん真拳奥義『弾幕☆アタック』」

ゆい先輩はギー太(鉈)を構えます。

「これで、終わりだよ。行くよ、ギー太」

「くっ、フーディン、しっかりしなさい」

「ディン」

「さあ、行くよ」

ゆい先輩はギー太(鉈)を持って、フーディンに向かっていきます。

「フーディン、テレポート!」

フーディンは姿を消し、向かってくる、ゆい先輩の背後に現れました。

「ディン(終わりだ)」

フーディンはゆい先輩に向かって、サイケこうせんを出そうとしますが、ゆい先輩の姿が消え、フーディンの背後にまわります。

「フーディン君、みーつけた」

ゆい先輩はギー太(鉈)を振り上げます。なにか、雰囲気が違う気もしますが、気のせいでしょう。

「いくよ、サムちゃんに教えてもらった、技を見せてあげよう。喰らえ、れんぞくぎり!」

ゆい先輩はフーディンの背中を切りつけます。技はあれですけど、れんぞくぎりはむしタイプの技。フーディンはエスパータイプなので、弱点
になります。しかも、切りつけるごとに威力が増す技、これはいい攻撃です。

「このまま、決めてください、ゆい先輩!」

「フーディン、避けるのよ!」

フーディンはギー太(鉈)で切りつける、ゆい先輩から、テレポートで距離をとります。

「ふう~、疲れちゃった。コスプレ解除」

ゆい先輩はボンッという煙とともに元の格好に戻りました。

「ゆ、ゆい先輩、コスプレ解除しちゃって、大丈夫なんですか」

「大丈夫だよ~。それとも、私のコスプレ、もっと、見たかった?それならそうと、言ってくれればいいのに~」

「ち、違いますよ。このまま、力押しで勝てたかもしれなかったじゃないですか」

「ち、ち、ち。さっきもナツメさんが言ってたでしょ。力が全てじゃないって」

「場合によりけりだと思いますけど」

「まあ、とにかく、行くよ。来て、ゆいぐるみ!」

ゆい先輩は手をパンッ、と鳴らすと、ゆいぐるみがたくさん落ちてきます。今までと違うのはゆいぐるみ、1体1体にギー太も着いていることです。

「さてっと、行くよ、ギー太、ゆいぐるみ」

ゆい先輩の掛け声で、ゆいぐるみはフーディンを、いや、フィールドを取り囲むように、していきます。

「では、ミュージックスタート!(ギー太に首ったけを想像して下さい)」

ゆい先輩がギターを弾き始めると、ゆいぐるみもギターを弾き始めます。その音楽は衝撃波となり、フーディンに襲い掛かります。

「ディーン!」

フーディンは四方から、来る衝撃波を避けきれずに苦しんでいます。なるほど、フィールドの外、ぎりぎりに囲むようにすることで、テレポートを封じてるわけですね。

「さあ、クライマックスだよ!」

ゆい先輩やゆいぐるみのギターにエネルギーが溜まっていきます。

「ゆいちゃん真拳超奥義『ゆいちゃんエネルギー弾withゆいぐるみ』」

全てのエネルギー破がフーディンに直撃し、フーディンは気絶しました。

「フーディン、戦闘不能。ゆいの勝利。梓、1ポイント。2対1。よって、梓の勝利です」

「やりましたね、ゆい先輩!」

「うん!」

「やれやれ、完敗よ。それじゃ、バッチを渡すわ」

ナツメさんはゴールドバッチを私に手渡します。

「ありがとうございます!」

「ふう~、まさか、ここまで強いとはね、驚きよ」

「えへへ~」

「じゃ、次も頑張ってね」

「あ、もう少し、お話しませんか」

「くす、こう見えてもショックなのよね、負けるの。だから、1人になりたいの」

「す、すいません」

「ごめんなさいね、また、戦いましょう」

「はい!」


――――

「ねえ、あずにゃん」

ヤマブキジムを出て、しばらく歩いていると、私に抱っこされてるゆい先輩が話しかけてきます。

「なんですか?」

「そろそろ、私達もキスをすべきだと思うんだよ」

「そうですねー、たしかに、キスを……って、キス!?」

「そう、キス」

「な、な、な、何を言ってるんですか」

まだ、ルージュラの時のことを振ってくるんですか。

「そんなに動揺しなくても……。あずにゃんは嫌?」

「嫌とかじゃなくて、その……。もっと、こういうのはムードとかですね。そういうのがですねえ。……だいたい、私達は恋人(仮)なんですから」

「その(仮)はいつ取れるの?」

「え、えーと、そのー、ですね」

「あずにゃん。私ね、あずにゃんのこと好きだよ」

ゆい先輩は私の目を見て、真剣に言ってくる。これには、真剣に答えないといけないですよね。

「わ、私は……ゆい先輩のことが……!!」

「……くす、冗談だよ」

「ゆい先輩のことが……はい?」

「冗談だよ」

「……」

「こういうのは、答えを無理強いしちゃいけないよね。あずにゃんの気が向いた時でいいよ、答えは」

「……」

そういうゆい先輩の手は震えている。能天気そうにみえるけど、きっと、怖いんでしょう。

「ゆい先輩」

「ん?」

「今はまだ、ポケモンリーグに専念していきたいから……答えは……ポケモンリーグが終わってからでいいですか?」

「…私は言ったよ、あずにゃんの気が向いた時でいいって」

「そうでしたね」

私達に一瞬の沈黙が流れる。

「さて!シリアルな雰囲気はおしまいっ!ケーキを食べに行こう」

「シリアル?それをいうなら、シリアスですよ」

「おおっ。そうだったの?まあ、いいや。ケーキを食べよう」

「……そうですね」

私達はケーキ屋さんに向かいます。

(……ゆい先輩。待ってくださいね。ポケモンリーグが終わったら、……答えを出しますから)

「では、行きましょう!ゆい先輩」

「おお!」

私は新たな誓いを胸に一歩を踏み出しました。


ヤマブキシティ編② 「VSナツメ」終了



今回のメンバー  ゆい ハッサム プテラ イーブイ ハクリュウ ガルーラ 

私達はグレンタウンに行くべく、セキチクシティにやってきました。

「とはいっても、どうやっていくべきでしょうか」

「船で行けばいいんじゃないの?」

「それはそうなんですけどね。ポケモンでいけたら、安上がりだなあって」

「なら、テラ太は?」

「まあ、そこが一番、無難ですけどね。でも、なるべくなら、なみのりをさせていきたいと思ったんですよ」

「でも、私達のメンバーに私達を乗せて、海を渡れるのはいないね」

「ですよねー」

仕方がないですね。ここは船で……。

「梓ちゃん!」

突然に誰かに声をかけられ、振り返ると、そこにはアンズさんがいました。

「あ、アンズさん」

アンズさんは私が気がつくと、こっちに走り寄ってきました。

「お久しぶり……といっても、まだ、そんなでもないですけど、とにかく、お久しぶりです、梓さん」

「こ、こちらこそ」

「やっほー」

「ゆいさんもお久しぶりです」

「それで、アンズさんはどうしたんですか?」

「どうしたはこっちの台詞ですよ。サファリゾーンでの一件が終わったら、すぐにどこかに行っちゃいますし」

「ハハハ」

あの時は大変でしたからね。

「でも、それも仕方がないことですよね」

「はい?」

「これ、梓ちゃんですよね」

アンズさんが見せてきたのは澪先輩に見せてもらった新聞です。

「……」

「サファリゾーンでの一件を解決させて、すぐにシオンの事件も解決させちゃうんですもん。まるで、お2人は正義の味方みたいです。というか、正義の味方です」

「えへへ~。そうかな?」

「そうですよ。お二人なら、人間とポケモンをつなぐ、救世主になれますよ」

「なんですか、それ」

「最近ではポケモンを道具のように利用する人が増えてますからね」

「ロケット団みたいにですか」

「最近ではロケット団だけでなく、一般の人でも、強くない奴はいらないって、捨てる人もおおいですからね」

「それはひどいですね」

「ここはぜひ、2人の仲の良さを見習ってもらいたいですよ」

「な、何を言ってるんですか」

「えへへ、私達ってそんなに仲良さそうに見える?」

「ええ。もう、ただのポケモンとトレーナーに見えないくらい」

「そうかな、そう見える?えへへ」

嬉しそうににやにやする、ゆい先輩。

「ところで、梓さん達はここにいるんですか?」

「実はかくかくしかじか」

「まるまるうまうまというわけですか、なるほど」

アンズさんは少し、考えるような仕草をし、こう言いました。

「やはり、ポケモントレーナーとして、バッチを集めるならば、船などではなく、ポケモンに乗って行くべきですね」

「でも、私の手持ちでは厳しいんですよね」

「実はこんなものがあるんですよ」

アンズさんが見せてきたのは、『サファリゾーン・復興企画 3人抜きで、ラプラスゲット』と書かれたチラシでした。

「へー、こんなものがあるんですか」

ラプラスですか、なるほど。

「それにしても、よくこれだけ企画がありますね」

「まあ、ここだけの話。サファリゾーンの園長さん、結構お金にがめついので」

「なるほど」

「世知辛い世の中だね」

「アンズさんも出るんですか?」

「残念だけど、ジム関係者は出れないの」

「それは残念です」

「出るなら、早く行きましょう。期限が今日なので」

「今日!?」

私はもう一度、チラシを見るが確かに今日って書いてあります。

「それじゃ、いきましょう」

アンズさんは私の手を握って駆け出そうとします。

「待って!!」

ゆい先輩はアンズさんを止めます。

「どうしたんですか?」

「その手、よくない」

ゆい先輩はアンズさんが握ってる私の手を指差します。

「おっと、これは失礼しました」

アンズさんは私の手を離します。

「これはゆいちゃんのでしたね」

「なっ!?」

「分かってくれて、嬉しいよ」

「な、何を言ってるんですか!サッサといきますよ」

私はゆい先輩を抱き上げ、アンズさんを急かします。

「照れてるんですか?」

「……アンズさん」

「……すぐに案内しますよ」

「ここが会場ですか」

ラプラスが賞品なので、たくさんの人で溢れています。


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最終更新:2011年08月03日 04:23