「ひっ!」
唯は即座に、澪が何をしようとしているか気づく。やめて、それだけはやめて…!
唯は顔を引いて逃れようとするが、澪は頭をがっちりとつかんで離そうとしない。唯は完全にパニックに陥り、助けを求めて喚き、騒いだ。この家には他に誰もいないにも関わらず。
「ああああ出ちゃう出ちゃうよおおおおっ!!飲んで、全部受け止めてッ!!唯、唯唯ゆイイィィィッ!!!」
ぷしゃっ。 澪の股間から温かい液体が吹き出す。次の瞬間、澪は大量の尿を秘所からほとばしらせた。黄金色の汚水が、唯のサラサラの茶髪に、愛らしい端正な顔に降り注ぐ。

排尿と同時に達した澪は、ぐったりとその場に倒れこむ。その表情はもはや人間のそれではなかった。
唯はと言えば、尿で濡れた顔を真っ青にして、全身をガクガクと震えさせていた。それが限界だった。
口を大きく開いた次の瞬間、大量の吐瀉物が溢れ出てきた。紬のお菓子が、憂が作ってくれたお弁当がタイルの床に叩きつけられる。
そして唯は泣いた。これ以上泣いたことがないくらいに。いっそこのまま永遠に泣き続けて、体中の水分を目から流して死んでしまいたかった。
唯はしゃくりあげながら、湯船に張られたお湯で顔を洗う。汚物で汚れた口をゆすぎ、髪に何度も何度もお湯をかける。
澪はそんな唯を見つめながら、うわごとのように繰り返していた。
「唯が…唯が悪いんだ…唯が悪いんだからな…」


唯は憎悪に燃える目で澪を睨みつけ、呪いの言葉を叩きつけた。
「澪ちゃんなんか大ッ嫌い!死んじゃえばいいんだ!」
そして唯は立ち上がり、号泣しながら風呂場から飛び出していった。
「ゆ、唯っ!」
澪は立ち上がり、後を追おうとしたが、自らが流した尿で滑って転倒してしまう。目の前に星が飛び散った。
ふらふらと立ち上がった時には、唯はすでに玄関から飛び出した後だった。澪は汚れた床にペタリと座りこむ。

しばらくの後、澪は湯船に浸かって一人物思いにふけっていた。唯が吐いた汚物はシャワーで排水溝に流し、汚れたバスタオルは洗濯機に突っ込んでおいた。
「…唯、私のこと嫌いだって言ったよな?…どうしよう」
悪い想像が頭を駆け巡る。もしこのまま、ずうっと口をきいてくれなかったら…。
…でも唯のことだ、忘れてくれるよね。あの唯だもの。二、三日したらきっと忘れてくれるよ。考えてみれば、私も唯を気持ちよくさせてあげたんだ、むしろ感謝してほしいくらいだ。
澪は一人合意に達し、ゆっくりと一日分の苦悩や疲れをため息と共に吐き出した。



第二章:破
終劇



夜の闇と沈黙が、どこまでもまとわりつく。家路を急ぐサラリーマンも、夜道にたむろする若者も姿を消す時刻。制服姿でうろついているのを発見されたら、間違いなく補導されるであろう時刻。
唯は何も持たず、寒々とした気持ちであてもなくさ迷っていた。鞄も大切にしていたギターも、澪の家に置いたまま出てきてしまった。
財布や携帯すらないので、空腹を癒やすことも、誰かと連絡をとることもできない。
どうしても家に帰る気分にはなれなかった。憂は帰りが遅い理由を問いつめるだろうし、そうしたらいっぺんに嫌な現実に向かわなくてはならない。
軽音部は、もう退部することに決めた。自分を欲望のはけ口にしてくれた二人のいる部に義理立てするなんてごめんだ。
また、元に戻っちゃったな。唯は自嘲気味に呟く。軽音部に入部して、新しい友達ができて、何かが変わると思ったのに…。唯はそれ以上は考えないようにする。
もう何も考えたくない。このまま歩いて歩いて歩き続けて、錆びついて動けなくなってしまえばいい。
「…あれ、唯?」
唯の耳に、懐かしい声が聞こえた。最近二人ですごすことがめっきり減ってしまった、眼鏡の模範生の声。
「…の、和、ちゃん…?」


第三章:うちの子に限って

24時間営業のコンビニで和が買ってくれた肉まんや菓子パンを、唯は次々と胃に収めていく。和はそんな唯を、呆れたように見つめている。
深夜の人気のない公園。蛍光灯の周りを、汚い虫が飛び回っている。
和が唯を発見したのは、ただの偶然に過ぎなかった。レポート用紙とシャーペンの芯が足りなくなったので、買いにいった帰りにたまたま発見しただけのことだ。
「ゆっくり食べな、唯。コーヒーもあるんだから」
「…」
「考えてみれば、唯とこうして二人きりで話すの久しぶりだね。唯は部活で忙しかったし、私は私で生徒会の仕事に追われてたから」
「…」
「…さあ、教えて。どうしてこんな時間にそんな格好でうろついてたの?」
唯の中で、ガチガチに凍りついていた何かが溶けてゆく。胸のつかえがとれたと思ったら、一気に涙が溢れ出してきた。
唯は和の胸に顔をうずめ、泣きに泣いた。涙と鼻水で服が汚れてしまうが、和は怒らない。優しく唯の頭を撫でる。


そして唯は話した。梓や澪が自分にしたことを、自分が道具扱いされたことを、もう軽音部を退部しようと考えていることを、全て。
「そっか…つらかったね。唯」
唯は答えられない。ひいぃぃ、ひいぃぃと嗚咽を漏らすだけだ。
「あ…、あのさ、唯。ちょっと離れてくれるかな」
「…あ、ごめんね和ちゃん」
和は少し困ったように口元に笑みを浮かべる。夜の闇に浮かんだその笑みは、唯の心に強い明かりを灯す。
「唯がつらい思いをしてきたのは、よくわかったよ。…でもね。それは唯にも責任があるんだよ」

え?

「唯ってさ、けっこう無防備なとこあるじゃない。いきなり抱きついたりして。今みたいに」
「うん。…でもそれ、何か関係あるのかな?」
「大ありよ。唯には普通のスキンシップのつもりかもしれないけど、それが澪達には誘惑に感じたのよ。おそらくね」
そういえば、梓に犯される前も、誘惑ついて何か聞かされた。唯は幼いところがあるから、ついつい子供のような接し方をしてしまうのだ。
とはいえ、その代償がこれではあんまりだ。あまりにも自分の罪に釣り合わない。
唯は和を不満げに、上目づかいに見つめる。和も見つめ返す。…その目は、すでに清楚な模範生のそれではない。
「…私だって、誘惑されたら我慢できないよ」

和がいきなり、唯の腕をつかみ、引き寄せる。あまりにも急なその行動に、唯は抵抗する間もなかった。食べかけのチョココロネが、手から滑り落ちる。
そのまま、和の太ももに顔をうずめる姿勢になる。何か柔らかいものが、唯の捕らわれの手に触れる。それが和の胸であることに、唯はすぐに気がついた。
「わかる?唯…、私の胸、こんなに高鳴ってるのよ?唯のせいで。唯が抱きついたりするから、こうなるの…」
唯は否応なしに、和の胸を大きく撫でさせられる。薄い生地のシャツ越しに、和の硬く尖った先端を感じる。唯は不浄なものに触った気がして、大きく身震いする。
三度、胸が焼けつくような吐き気を感じる。だがもはや、かつてのようなパニックは湧き上がってこない。そこには諦めと達観があった。


「唯、寒かったでしょう?私が温めてあげるわね。だから、顔、上げて?」
唯は抵抗せず、言われた通りに和の脚から顔を上げる。その目には、もはや光はない。あらゆる輝きが消え失せた、死んだ魚の目であった。
和が唯の頬を両手でとらえる。いつの間にか、口に何か含んでいた。そのまま、ぐっと顔を近づける。
キスされるな、と思った瞬間、和の唇が唯のそれに被せられる。甘くほろ苦い液体が、唾液と共に唯の中に流れこんでくる。それはありふれた缶コーヒーだったが、唯には毒液のように思われた。
和は缶コーヒーと一緒に舌を侵入させた。舌は唯の甘い唾液をすくって、楽しげな音をたてて堪能する。 和は壊れた人形の頬をしっかりと両手ではさみ、しばらくキスを楽しみ続けた。


和と舌を絡めている間、唯はこの状況とは全く関係のないことを考えていた。好きなテレビ番組や憂の作ったお弁当のことなど。そうすることで、自分をかろうじて保っているように見えた。
やがて和は、唯から舌を引き抜くと、満足そうな笑みを口元に浮かべる。だが、その笑みはもはや唯の心になんの影響も与えない。
「唯、まるで人形みたいよ。いつもの騒がしい唯よりも、この方が可愛らしいわね」
そして、唯の制服に手をかける。ゆっくりと時間をかけて制服を剥いでゆく和の顔は、まさに人形遊びに夢中になっている幼い少女のそれであった。


唯は自分をゆっくりと剥いてゆく和を、死んだ目で見つめる。今の彼女にとって、目の前のこれはつけっぱなしのテレビ番組と同じなのだ。
そう、自分と全く関係のない、ただ淡々と進むだけの物事。唯はそう思う。いや、思いこもうとする。
ゆっくりと上半身の最後の一枚を脱がせ、和は幼い少女の目で唯の裸体を見つめる。街灯の薄暗い明かりの下でも、唯の胸に刻まれた傷跡はくっきりとわかる。
「手ひどくやられたものね。こんなにしたのは澪なの?」
唯は答えない。和の言葉を完全にシャットアウトして、心を守る。一輪の花も咲かない、荒野のような心を。


「まあいいわ」
沈黙したままの唯を見て、和は一人呟く。そして唯の傷だらけの胸を、ペンを持つのに適したすらっとした手には不似合いな乱暴さで揉む。
それは梓の破壊的な手つきや澪の欲望にまみれた手つきとも違う、人形を振り回す、いたいけな子供の手つきだった。
もっとも、唯に苦痛と快楽を与える点は他の二人と変わらない。無感情な唯の顔が、わずかに歪む。
「…ッ」
和はそのわずかな変化を見逃さない。唯をいじめる手を止め、弾んだ口調で声をかける。
「唯、感じてるんだ。ふふっ。じゃ、これはどう?」
和はかがみこむと、唯の淡い色の先端部に舌を這わせる。舌の先が触れた途端に、唯の全身に震えが走った。たとえどんなに壊れていても、敏感な部分は変わらないようだ。
和は唯の反応に満足すると、カエルのように舌を伸ばして先端部を絡めとる。


唯は責めくる快楽を必死に耐えていた。光のない目を細め、真っ白な歯を食いしばっている。
唯の胸の蕾を口に含むと、和はキャンデーを舐めるように舌を巻きつかせ、ジュッ、ジュッと行儀の悪い音をたてて吸いつく。唯の体が後ろに反り返る。
ときどき本当のキャンデーを楽しむように、歯を食い込ませてくる。そのたびに激痛が容赦なく襲いかかる。
唯のおっぱい、すごく柔らかくておいしいわよ。和がそう伝えようとした、その時…。
公園の中、そんなに離れていないどこからか、汚らしいドラ声が聞こえてきた。何か歌らしきものを大声で叫んでいる。

和はとっさに鋭い目つきになると、唯を近くの木陰に引きずり込んだ。それから唯の制服やコンビニ袋をひっつかみ、自らも唯の隠れる木陰に飛び込む。
やがて、一人の酔っ払いがふらふらと、二人がもといた場所に現れる。和は舌打ちしたくなった。こんな時に邪魔が入るなんて。
唯を見ると、全く感情のなかった目に怯えが宿っていた。裸の胸を両手でおおい、前かがみにしゃがみこんでいる。
そんな唯を見た和は、自分の中に残酷な感情がふつふつと湧き上がってくるのを感じた。

和はいきなり唯の肩をつかみ、背後の木に押しつける。仰向けになった唯の無防備な背中に、ざらざらした木の皮や下草があたって痛い。
「!?ちょっと、和ちゃん…」
和はかまわずに、胸を隠そうとする腕をどかせる。和に舐められ、夜の冷たい外気に触れた先端は痛々しいくらいに硬く尖っていた。
空っぽだった唯に羞恥と屈辱の感情がどっと押し寄せる。唯は煮え立つような恥ずかしさで体が火照る一方、万が一バレたら、という恐怖で頭の芯が凍りついていた。
唯達のほんの数メートル先で、酔っ払いが下品な声で喚く。


和は唯の胸の尖った先端を見つめ、冷たく鋭い刃のような残酷な感情を高ぶらせていた。
そして、仰向けの唯にかがみこむと、再び淡い蕾を口に含む。唯の背筋がピンと張り、髪を大きく振り乱す。
和ちゃん、止めて
唯が囁く。和は乳頭を舐める舌をとめると、唯に囁きかえす
大きな声出すと、バレるわよ
唯はこれ以上はできないくらいに歯を食いしばるが、胸を走る白くむずがゆい快感に何度も負けそうになる。涙が幾筋も、こぼれ落ちては地に飲まれる。


酔っ払いの下卑た声は、すぐ先からまだ聞こえてくる。唯はせめて、彼だけでもどこかに消えてくれと心から願った。
その間も、和は唯の胸を唾液で汚す作業を続けていたが、ふいに手を唯の脚に伸ばす。
「ッ!」
唯はすんでのところで悲鳴をこらえる。長くしなやかな和の指が、唯の脚の内側を撫でたのだ。
和ちゃん、お願いだからヘンなことしないで
唯はもう一度、口の動きだけで和を止めようとするが、お気に入りの人形を弄る幼い少女が聞き入れるはずもない。
何度も何度も、唯の脚に指を這わせる。

唯は全身を小刻みに震わせて、和のしつこい指に耐えていた。指が脚をこするたびに、千匹の虫に体中を這われているような感覚に襲われる。腕に鳥肌が立っているのは、決して寒さのせいだけではない。
しかも恐ろしいことに、和は指を徐々に唯の秘部に近づけている…。
唯は執拗な和の指を追い払おうと、彼女の腕に手を伸ばす。その瞬間、唯は胸に灼熱の針で突き刺されたような痛みを感じる。和が唯の蕾に、千切れんばかりに噛みついたのだ。
「ぁッ!」
唯は小さな悲鳴をもらした。幸いなことに酔っ払いは気づいていない。
和は唯の耳に顔を近づけると、小さな、だが威圧感をたっぷりと含んだ口調で言った。
「生意気やるんじゃないわよ。人形のくせに」

唯はビクッと体を震わせ、全身を萎縮させる。
「あそこのおじさんに、あんたを売りつけてもいいのよ。たぶん、5万くらいで買ってくれるんじゃないかしら」
面識もない下品な酔っ払いに鎖で繋がれ、ミルク皿で飼われることを想像する。その想像のあまりの恐ろしさに、唯の脚が震えはじめる。
和の指が、またも唯の脚を這いまわる。太ももをさすり、付け根の骨をなぞり、下着の中へ…。
「やぁあッ!」
ついに悲鳴をあげてしまった。酔っ払いの喚き声が止まる。二人は息を止め、危機の砂嵐が過ぎるのを待つ。一秒、二秒、三秒…。
どこかで野良猫のかすれた鳴き声がした。喧嘩相手でも見つけたのか、何かに向かってうなり声をあげている
「なんでぇ、猫か」
酔っ払いが一人ぼやく。二人はこれ以上はないくらいに安堵する。


安堵したのもつかの間、和は再び唯の下着の中に指を這わせてくる。唯は顎に両手の握り拳をあて、必死にこの生き地獄をこらえようとする。
和はそんな唯を見て、ますます嗜虐心をそそられる。唯の柔らかな下の毛をかき分け、壁の中を弄る。唯は一番敏感な芯に触れられる衝撃に備える。
だが、和はふいに弄る手を止め、秘部から指を引き抜いた。すでに濡れはじめている秘部が切なくなる。
「?」
次の瞬間、唯の尻から頭まで、鈍痛の槍が貫通した。和が唯のアナルに指を突っ込んだのだ。しわのよった小さな穴の入口を、和の指が犯す。


「あ、やっぱり澪もこっちは未開発だったのね。唯のアナルヴァージン、頂いちゃった」
「か…くは…ぎぃぃ」
唯はあまりの苦しみに、悲鳴も出ない。目をカッと見開き、口を酸欠の金魚のようにパクパクさせている。
この日だけで唯はありとあらゆる屈辱や痛みを味わったが、今度のは今までにないほどひどいものであった。まるで体内に和が侵入して、それが全身に毒のように広がるような感覚であった。
和は唯の直腸で、あの美しい指をくにくにと動かす。そこにためらいや嫌悪感といった感情は全くなかった。彼女にとって、これはあくまで人形遊びなのだ。


「の、のどか、ちゃん、ぬいて、おねがい、くるしい」
唯は涙目で懇願する。開かれた口から、舌が飛び出している。なぜか頭頂部が熱い。
だが和は、いたって冷静であった。もう片方の空いた手で、下着の上から唯の秘部をいじる。
「そう?唯のここ、もうぐっちょぐちょよ」
確かに、唯の大切な部分は、先ほどとは比べものにならないくらいに濡れそぼっている。どうしてそうなったのか、唯には理解できない。
すべての事が、唯の理解できないままに進んでゆく。唯はさしずめ、山の急流に飲まれた木の葉だ。
再び和の指が、唯の下着の中に侵入する。甘い快楽と鈍い痛みの両方に、唯は責められる。


和の指が、唯の秘部の奥にどんどん収まっていく。指が唯の壁に締め付けられる。溢れ出る蜜が、手首から伝い落ちて土に飲まれてゆく。
唯は腰をガクガクと揺らし、二つの穴を襲う手から逃れようとするのと同時に、快感を貪っていた。
…急速に限界が近づく。頭の中にまばゆい白い光が生まれ、どんどん大きくなってゆく。
「の…かちゃ…わた、も、ダメ…」
「いいわ。お尻とオマ×コ犯されて、イッちゃいなさい。可愛いお人形さん」
「…ッ!!!!!」
まばゆい光が、ついに唯を内側から支配し、そのまま全身を飲み込んでしまう。和の指が、唯の秘所とアナルにきゅっと締め付けられる。
唯はそのまま、ゆっくりと無意識の世界に降下していった…。


……唯の家。唯は憂と二人で、お茶を飲みながら談話していた。窓から夕暮れの眩い金色の光が差し込んでくる。
『お姉ちゃん、そのギターといつも一緒だよね?お洋服着せたり、添い寝したり』
テーブルの傍らに、唯のギターが置かれている。忠実な名犬のように、ご主人様を見守っている。
『名前はなんだったっけ?ギース?』
『ギー太だよ。…でももう捨てるんだ。嫌なこと、いっぱい思い出すからね』
憂は何も言わない。ただ唯を見守っているだけだ。
『ギー太と一緒なら、天下無敵だった。軽音部のみんなと一緒なら、一日一日がとても楽しかった。、毎日がビーズのネックレスみたいに輝いてた』


『…でもそれは、結局壊されちゃった。ビーズはバラバラになって、あちこちに飛び散っちゃった。落ちたビーズは、粉々に砕けちゃった』
テーブルの傍らに置かれていたギターは、いつの間にか消えている。
『私のネックレス壊しちゃったの、誰だと思う?澪ちゃんやあずにゃんなんだよ。笑っちゃうよね。くれた本人達が壊しちゃうなんて』
いつの間にか、憂もいなくなっている。それでも唯は話し続ける。日没の太陽が、真っ赤な光を放っている。断末魔の太陽。
『…壊すくらいなら、くれなきゃよかったのに。奪うくらいなら、夢なんか見せなきゃよかったのに。』
『…消えるくらいなら、最初からいなきゃよかったんだッ!!死ね死ね死ね、みんな死んじゃえッ!!!うわあああああああああ…

「…唯ー。ゆーいーッ!どこだーッ!」
「唯ちゃん、いるなら返事してーッ!唯ちゃーんッ!」
「お姉ちゃーんッ!」


…うるさい。頭が熱い。痛い。
唯は目を覚ました。背中に下草があたって痛い。だが体を動かそうとしても、指一本動かせない。目だけが正常に働いている。
もう一度、起き上がろうと試みる。指先から、少しずつ体が動かせるようになっていく。
ようやく唯は、ぎこちなく立ち上がった。頭がボーっとして熱い。すぐに和にされたことを思い出すが、何の感情も湧き上がってこない。
唯は上半身裸のままであった。すぐそばに、制服と下着が捨てられている。和も酔っ払いも消えていた。


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最終更新:2010年01月22日 02:49