873. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/12(火) 07:22:09.85 ID:PTVCnvIF0
マコト

『また、お前かよ』

梓達が脱出した後、崩れゆく、ポケモンタワーの中で、マコトはフードの女……AYUに語りかける。

『ひどいな〜、その言い方は。プンプンだよ』

可愛らしく言うが、この場では不釣合いだ。

『なんだ、助けにでもきたのか?』

『それはないわね。3度も失敗したんだから』

AYUの隣にいた曽我部が言う。

『まったく、殲滅班の部長まで来るのかよ』

『私はファイヤーの回収に来たのよ。後の始末は……』

『私がやるよ〜』

『それはご苦労なことだ。……AYU、お前は何者だ?』

『私?  そうだね〜、一応、殲滅班の班員だよ〜。私、1人だけだけど』

『……』

『さて、遺言はあるかな?そろそろ、ここもやばいしね』

『……聞きたいことがある』

『いいよ、答えてあげる』

『……お前は何者だ』

『さっきも言ったよ』

『本当のことが知りたいもんだ。冥土の土産にな』

『……残念だけど、お土産はなしだよ。冥土で皆に謝ってね』

AYUは手にエネルギーを溜める。それを見て、マコトは言う。

『お前は人間なのか、それとも、ポケモンなのか?』

AYUは手をマコトに向ける。

『私は人間でもあるし、ポケモンでもあるんだよ。それじゃ、バイバイ』

その言葉を最後にマコトの意識は途絶えた。

874. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/12(火) 07:23:40.92 ID:PTVCnvIF0
次の日

私達はロケット団の占拠から逃れたので、フジさん達をポケモンハウスへと送り届けます

「落ち着いたら、もう一度、ここに来ます」

「来れたらでいいぞ。……達者でな」

「ええ」

「またね〜」

「お世話になりました」

「さようなら」

875. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/12(火) 07:24:29.05 ID:PTVCnvIF0
私達はシオンタウン郊外に来ました。

「それじゃ、私達はここで」

「え、もう?」

「な〜に、梓は私がいなくて寂しいの?」

「別にそういうわけじゃ……もう少し、おしゃべりとか」

「なにを言ってるの。あんたにはあんたのやることが。私には私のやることがあるのよ」

「……そうだね。じゃ、また会おうね、純、うい」

「また会おうね、うい、純ちゃん。今度会う時は私ももっと強くなってるよ」

「私ももっと、強くなるよ、お姉ちゃん。梓ちゃんもまた会おうね」

「それじゃ、またね」

私達は純たちと別れました。

「これから、どうするの、あずにゃん」

私の頭の上で聞いてくる、ゆい先輩。

「そうですね、とりあえずは、ヤマブキシティを目指します」

「……まさか、着いたら、ジム戦とか?」

「さすがに昨日の今日で、そんなことしませんよ」

「そうだよね。それじゃ、着いたら、遊びに……」

「昨日の戦いで、自分のレベルの足りなさを感じたので、特訓です!」

「ええ〜、それはないよ〜、あずにゃ〜ん」

「冗談ですよ。とりあえず、ホテルで、寝たいですね。次の日はお休みにしましょう」

「わ〜い、さすがはあずにゃんだね〜」

私の頭を撫でてくる、ゆい先輩。本当は特訓もしなきゃいけないんですが……。

「えへへ〜、久しぶりの休みだよ〜」

まあ、ゆい先輩も喜んでいるからいいかな、と思い、ヤマブキシティへと向かいました。

876. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/12(火) 07:25:35.90 ID:PTVCnvIF0
「……ついてきてるんでしょ?」

私は足を止めて、振り返る。

「どうしたの、純ちゃん」

ういは不思議そうに聞いてくる。

「さっきから、ずっとつけられてるわね」

「え、嘘!?」

「そこに隠れてるのは分かってるから、出てきなさい」

木の中から、ポケモン……ゲンガーが出てくる。

「あなたは!?」

ういは驚いている。おそらく、このゲンガーは昨日、話していたポケモンなんだろうな。

「何で、ついてきたの?」

私はゲンガーに聞く。

「ゲンガ(仲間にしてくれ)」

「うい、なんて言ってるの?」

「な、仲間にしてくれって」

「……なんで?」

「ゲンガ(もう、1度だけ、あの、ツインテール達と戦いたいんだ。……それに)」

ゲンガーは一息いれて、何かを言う。

「ゲンガ(……いいトレーナーの元で戦ってみたいんだ)」

「えっとね、純ちゃん。ゲンガーは……」

私はういが言い切る前に、モンスターボールをゲンガーに当てる。そして、ゲットした。

「純ちゃん!  どうして、ゲンガーをゲットしたの?」

「私達はそもそも、ゴースをゲットしにシオンタウンにきたからね。……それに」

「?」

「寂しそうな眼をしてたからね。さて、最後のバッチをゲットしに、トキワに行くかな」

「……純ちゃん、私、純ちゃんのポケモンになれてよかったよ」

「気持ち悪いこと言わないでよ、まったく」
877. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/12(火) 07:26:41.92 ID:PTVCnvIF0
シオンタウン編?  「VSファイヤー?」  終了
879. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:04:02.95 ID:JFqXJu2f0
前回までの状況(トレーナとポケモン)                                            
梓          ゆい  ハッサム  ヘルガー  イーブイ   ニューラ ガルーラ  ミニリュウ  ポリゴン2  プテラ

澪          ゼニガメ   エビワラー  デンリュウ

律          リザードン  サワムラー  ニョロボン  レアコイル

ムギ        フシギバナ  カポエラー  ギャラドス

純          うい   カビゴン  ゲンガー

ヤマブキシティ編?  「敗  北!」  以下、投下

880. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:04:50.06 ID:JFqXJu2f0
ヤマブキ・ホテル

皆さん、おはようございます。ゆいです。今は早朝。普段の私なら、まだ、ぐう〜ぐう〜寝ていて、あずにゃんに起こされるまで、寝ていることでしょう。でも、今日は違います!!何故なら……。

「昨日が『月刊あずにゃん』の発売日だったからだよ〜」

いや〜、昨日、買ったはいいけど、見る時間がなくてね〜。楽しみで楽しみで。

「さてっと。ふむふむ」

今月のカプは誰得って感じだったから、飛ばして……来月は……『澪梓』か。

「また、唯梓じゃないのかよ!!」

「にゃっ!!」

おっと、いけない。また、大きな声を出しちゃったよ。あずにゃんはまだ、寝てるようなので、よかったけど、気をつけないとね。

1時間後

「さて、雑誌も読み終わったし、また、寝ようっと」

早く、起きると駄目だね。もう一眠りしようっと。私がベットに入ると、

「……もう、朝ですか。ほら、ゆい先輩も起きてください!」

「ええっ!!」

そんな感じで、今日も始まります。

881. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:06:26.72 ID:JFqXJu2f0
「今日はどこに行きましょうか」

「そうだね〜、とりあえず、ぶらぶらしようか」

「それもいいですね」

初めて来る場所とかって、ワクワクするからね。というよりも、あずにゃんといれれば、どこでもいいけどね。

「ヤマブキシティで有名なところは……シルフカンパニーですかね」

「何それ?」

「まあ、ただの会社の本社ですけど」

「つまんな〜い」

「ですよね」

さてさて、どうしたものかな。正直、眠いんだけどね。

「それにしても……」

「どうしたの?」

「今まで、旅をしてきたんですけど、どこもマサラタウンと大分、雰囲気が違いますよね」

「そうだね」

マサラタウンに私は長くいたわけではないけど、むこうはまだ自然に溢れていたね。

「マサラタウンは民家もまばらで、自然に溢れていたのに、ヤマブキシティやタマムシシティとかはもう、ビルばっかりだし、都会って気になりますよね」

「そうだよね〜。でも、私はマサラは好きだよ」

「私もです」

「マサラに帰りたい?」

「まあ、多少は……。でも、旅も悪くないですよ。いろいろな人やポケモンにも会えますし」

「私も、旅をしたから、あずにゃんに出会えたわけだしね」

「でも、行き倒れですよね」

「むぅ〜。それは言いっこなしだよ」

私達はそんな話をしながら、町並みを歩いていました。もっとも、私はあずにゃんの頭の上だけどね。
882. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:07:06.95 ID:JFqXJu2f0
「梓じゃないか?」

そんな時、私達の正面から澪ちゃんが歩いてきて、私達に声をかけます。

「あ、澪先輩!」

あずにゃんの声が私に発するそれと違う気がする。それに、澪ちゃんを見る眼も。これは嫉妬かもしれないけどさ。なんか、面白くない。

「どうしたんですか、こんなところで」

「まあ、いろいろとさ。えーと、バッチも全部持ってるから、適当にいろいろな所を巡ってるだけだよ」

これは私の勘だけど、きっと、あずにゃんに会いにきたんだろうな。

「へえ〜、偶然ってあるんですね」

「そ、そうだな。えーと、喫茶店でも行かないか?」

「いいですよ。ゆい先輩もいいですよね?」

「……」

「ゆい先輩?」

「え、うん、な〜に、あずにゃん」

「だから、喫茶店に行きませんか?」

「うん、いいよ〜」

私は嫌な予感をビンビンに感じながら、喫茶店に向かった。

883. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:08:23.57 ID:JFqXJu2f0
喫茶店

「それにしても、どうして、ヤマブキシティに来たんですか?」

さっきはいろいろな所を巡ってるとは言ってましたけど、ヤマブキシティって、面白いところって、なかったと思いますけど。……って、ヤマブキシティに住んでる人に失礼ですよね。

「さ、さっきも言ったけど、適当にいろいろな所を巡ってるだけだよ」

「でも、ヤマブキシティには特に何もない気がしますけど」

「ま、まあ、バッチを集めるのに集中したから、町を巡るってことをあんまりしなかったからな、時間のある今のうちにやっておこうって、思ってな」

「なるほど」

私だったら、レベル上げに勤しむのに、さすがは澪先輩です。

「それで……あ」

私は会話を続けようとした時、オーキド博士から、電話がありました。

「すいません、ちょっと、電話で……」

「いいよ、私は気にしないででていいよ」

「すいません」

私は一旦、喫茶店を出て、電話に出ました。

『やあ、梓君』

「どうしたんですか、博士」

『お前さんが預けたイーブイの治療が終わったから、連絡を、と思ってな』

「そうなんですか!!ありがとうございます!」

『それで、梓君も様子を見たいじゃろうと思ってな。今から、転送するかのう?』

「お願いします!」

『ほっほ。それじゃ、ポケモンセンターに着いたら、電話してくれんかのう』

「分かりました」

私は電話を切ると、喫茶店に戻りました。

「すいません、澪先輩。私、ちょっと、ポケモンセンターに用事ができまして……」

「じゃあ、私も一緒に……」

「私はゆいと一緒に待ってるよ。前に会った時はそんなに話せなかったしな」

「すいません。すぐに戻ってきますから、ゆい先輩をお願いしますね」

「ああ」

「……」

私はゆい先輩を澪先輩に預け、ポケモンセンターに向かいました。

884. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:09:48.94 ID:JFqXJu2f0
「パクパク」

「……」

あずにゃんが行った後、私と澪ちゃんの間に、沈黙が流れる。というより、澪ちゃんは私に何かを言いたいけど、なかなか、切り出せないって
感じだけどね。

「ここのケーキ、美味しいよね」

「……あ、ああ。そうだな」

澪ちゃんは答えるけど、まだ、一口も食べてないんだけどね。

「……なあ、ゆい」

「な〜に、澪ちゃん」

「……頼みたいことがあるんだ」

「いいよ。私でよければ、力になるよ」

「梓にさ、旅をやめるように言ってほしいんだ」

澪ちゃんは覚悟を決めたかのように言った。やれやれ、なんか、こういうのなんていうんだっけ?シリアル?まあ、なんでもいいや。そんな展
開になりそうだね。もっとさ、けいおんっていうアニメだか漫画みたいにのんびりというか、ほのぼのとすればいいのにさ。まったく

「……どうして?」

「……これ、梓達だろ?」

澪ちゃんが見せたのは、昨日の新聞だった。その新聞にはセキチクシティのサファリゾーンのポケモン脱走とシオンタウンのロケット団占領について書かれたものだった。その中には、未確認だがツインテールの少女と幼稚園児の子供が活躍したと書かれていた。

「そうかもね」

「ゆい!私は真面目に聞いてるんだ!」

「声、大きいよ」

周りの人達も見てるし。

「あ、ごめん」

「……その新聞のだけどね、多分、そうだと思う」

「やっぱりか」

澪ちゃんは嘆息する。
885. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:11:22.01 ID:JFqXJu2f0
「どうして、こんなことをしたんだ?」

「なんか、悪いことをしたみたいに言うね。私達のおかげで、セキチクシティやシオンタウンの平和は守られたんだよ!  フンス」

「……そうだな。それはいいよ。でもな、ここまでのことをしたら、ロケット団にも、マークされることになるぞ。ただでさえ、タマムシの事件で、目をつけられてるのに」

「……」

「そうなったら、梓の命も狙われることになるぞ」

「大丈夫だよ〜。あずにゃんは私が守るもん」

「ゆい、ふざけてる場合じゃないんだ」

別にふざけてるつもりはないんだけどね。

「つまり、あずにゃんの命が危ないから、私に説得してくれというわけだね」
大げさだと思うけどね、さすがに。

「そうだ」

「でも、どうして、私に?澪ちゃんが言えばいいじゃん」

「たしかにそうだけど、ゆいは梓のポケモンだろ?ポケモンを大事にする、梓なら、ゆいの言うことを聞いてくれるはずだ」

「そうかもしれないね」

ちょっと、卑怯な言い方な気もするけどね。

「それに……認めたくないが、ゆいが1番、梓に信頼されているからな」

「そう見える〜?いや〜照れるな〜」

「……それで、どうする?」

「……」

「ここで、旅を終われば、ゆいは梓とマサラで一緒にほのぼのと暮らせるんだぞ。ただ、この状況だから、他の地方に引っ越すことになるかもしれないが」

「……それはいいね」

「だろ?だから、頼むよ、ゆい」
886. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:12:24.09 ID:JFqXJu2f0
「分かったよ、澪ちゃん。私、あずにゃんを説得するよ」

「分かってくれて嬉しいよ、ゆい」

「そのかわり、必ず、ポケモンリーグで優勝してね」

「任せろ」

その時、あずにゃんがタイミングよく戻ってきた。

「お待たせしてすいません」

「ちょうどいいところにきたよ、あずにゃん」

「何ですか?」

「もう、旅をやめてさ、マサラに戻ろうよ」

「……え、どうして、突然そんなことを……」

「旅もいいけどさ、2人で早くのんびりとしたいからね。そうすれば、ほのぼのと出来るしね」

「……でも」

「大丈夫、他の仲間も一緒だからね」

「……分かりました、マサラに戻りましょう」

「本当に!?」

「はい!ちょっと、今までの雰囲気は私に合わないと思ってたので」

「あずにゃん」

ダキッ。

「ゆい先輩」

ダキッ。

こうして、私達はマサラタウンで幸せになりました。

ヤマブキシティ編?  「敗  北!」  終了

ポケットモンスターゆい  終了
887. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:13:47.89 ID:JFqXJu2f0
となれば、いいんだろうけどね。でも、私は……。

「いやだ」

と、答えた。

「……どうして?」

「だって、あずにゃんは頑張ってるもん」

あずにゃんはポケモンリーグに出るために毎日、頑張ってる。そんなあずにゃんに諦めて、帰ろうなんて言えないよ。というか、言いたくないよ。

「……ゆい、分かってるのか。こうは言いたくないけど、梓は人間なんだ。ゆいなら、多少の深い傷でも、すぐに治るだろうが、梓はそうじゃないんだ。ミュウツーの戦いでも分かってるだろ」

「……」

澪ちゃんの言ってることは……まあ、間違ってない。私はポケモンだから、多少の傷なら治るし、痛みもないけどさ。

「ゆいだって、戦うのは好きじゃないだろ」

「……そりゃあね」

「一緒にマサラに戻れば、美味しいお菓子とかだって、ムギに頼んで用意してあげられる。始めのうちはロケット団から匿うために不自由があるかもしれないけど、2人なら大丈夫だろう」

「楽しそうだね!」

「だろっ!」

「でも、いやだ」

私は約束したからね。一緒にポケモンリーグで優勝するって。

「……」

「ごめんね」

「いや、ゆいの気持ちも分かる」

澪ちゃんは一息入れて、お茶を飲む。でも、ちょっと、まずそうにする。それはね、冷めてるからね。

「私だって、梓が頑張ってたことは知ってるんだ。やっぱり、私が言うことにするよ」

「大丈夫?体、震えてるよ」

「だ、大丈…夫だ…よ。……たぶん」

全然大丈夫そうに見えないけどね。はあ。またシリアルな展開になりそうだね。何事もないことを祈るよ。
888. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:14:59.83 ID:JFqXJu2f0
「ごめんね、イーブイ」

「ブイ〜♪」

私は治療してもらった、イーブイを撫でながら、ゆい先輩たちの待つ喫茶店に向かいます。

「なんか、雨降りそうだね」

「ブイ」

上を見ると、どんよりとした雲になってる。天気予報では午後から、雨って言ってましたしね。天気予報っていうのは嫌な予報の時には当たるんだから、困ったものです。

「ゆい先輩達、待ってるかな」

私はなるべく急いで、喫茶店に到着しました。

「すいません、遅くなりました!」

「おかえり〜、あずにゃ〜ん」

「……」

明るく迎えてくれるゆい先輩とどことなく、暗い雰囲気の澪先輩。私がいない間に何かあったのでしょうか?そのわりにはゆい先輩の雰囲気は明るいんですが……。

「あずにゃんがいなくて寂しかったよ〜」

私が席に着くと、ゆい先輩が抱きついてきます。私はそんなゆい先輩の頭を撫でながら、澪先輩に話しかけます。

「あの、澪先輩」

「……」

「澪先輩!」

「え、梓!?いつの間にいたんだ」

「いや、今さっきですけど……。どうしたんですか?悩みがあるなら、相談に乗りますけど」
889. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:16:36.31 ID:JFqXJu2f0
「えーと、だな。少し、言いづらいんだが……」

澪先輩は一息入れて、意を決したようにこう言った。

「なあ、梓。もう、やめないか」

「何をですか?」

「旅を……ポケモンリーグを目指すのを諦めないか」

「……えっと、今なんて」

「ポケモンリーグを目指すのを諦めてくれないか」

いきなり、こんなことを言われて、私の頭はちょっと、混乱している。皆で約束したじゃないですか、一緒にポケモンリーグに出るって、と
か、言いたいことはいろいろあったけど、

「……どうしてですか?」

月並みな言葉でしか返せなかった。

「……さっき、ゆいにも見せたけど、これ、梓達だろ」

澪先輩が見せたのは、昨日の新聞だった。その新聞にはセキチクシティのサファリゾーンのポケモン脱走とシオンタウンのロケット団占領について書かれたものだった。その中には、未確認だがツインテールの少女と幼稚園児の子供が活躍したと書かれていた。

「分かるだろ?ロケット団もこれだけのことを邪魔されたんだ。ロケット団に眼をつけられているだろう。これ以上、旅を続けるのは危ない」

「……」

「ムギの知り合いが梓達を匿ってくれる。だから、ゆいやポケモン達も一緒にそこで暮らすんだ」

澪先輩の言ってることも分かる。私を心配して言ってくれてるんだから。……でも。

「……嫌です」

「……え?」

「嫌です!!澪先輩達が私を心配してくれるのはありがたいことだと思いますが、ここまで、一生懸命旅をしてきましたし、なにより、ポケモンリーグで、澪先輩達と戦いたいんです!」

私はそう言うと、澪先輩は驚いたような顔をした。

「あずにゃん、声大きいよ」

「あ、すいません」

私は周りの人に頭を下げて、いすに座る。

「とにかく、私は旅を続けます」

「……死ぬかもしれないんだぞ」

「大げさですよ。それに、私にはゆい先輩やポケモン達がいますし」

「えへへ〜、あずにゃんは私が守るよ〜」

「……分かった。じゃあ、勝負しよう」

「はい?」

「勝負をしよう。私が勝ったら、諦めてもらう」

「それはいいですけど、私が従うとは限りませんよ」

「従ってもらう」

「そんな無茶な」

「分かった。従わなくてもいい。とにかく、梓には現実を見せてあげるよ。勝負は2対2だ。先に相手のパーティを全滅させたほうが勝ちだ」

「まあ、いいですけど」
890. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:17:10.68 ID:JFqXJu2f0
私達は、ヤマブキシティ郊外に来ました。

「ルールはさっき言ったとおりだ」

「分かりました」

私は内心ワクワクしていました。状況はあれですけど、憧れの澪先輩と初めて、自分のポケモンで戦うんですから。

「雨も降りそうだから、サッサと始めよう」

「はい」

「では……」

「「バトルスタート」」
891. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:18:31.89 ID:JFqXJu2f0
「来てください、ハッサム!!」

「来い、エビワラー」

さあ、いよいよ、戦いが……!?

「……」

「大丈夫、あずにゃん。手が震えてるよ」

「あ、はい。大丈夫です」
さすがは澪先輩です。戦いが始まったら、なんていうオーラですか。今まで、戦ってきたどのトレーナー達よりもすごいです。


「いきますよ、まずは先制をとって、バレットパンチです」

ハッサムは素早く、エビワラーに接近し、パンチを繰り出す。

「受け止めろ、エビワラー」

2匹のパンチが激突する。その衝撃で私達に風が吹く。

「やるじゃないか」

「澪先輩こそ」

2匹のモンスターはお互いにパンチを打ち合う。力はほぼ互角。このままいけば、澪先輩にも……。

「ところで、梓」

「何ですか?」

「何時になったら、本気になるんだ?」

「え?」

その声とともに、ハッサムはふっ飛ばされそうになるも、なんとか、こらえてました。

「今の攻撃は……」

「エビワラー、こうそくいどう!」

私が状況を理解する前に、エビワラーはハッサムに一瞬で、接近します。

「エビワラー、トドメだ。ほのおのパンチ!!」

エビワラーの鋭いパンチがハッサムに命中し、体が炎にまみれて、吹っ飛ばされて、そのまま、気絶してしまいました。
892. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:19:44.81 ID:JFqXJu2f0
「そ、そんな、ハッサムが……」

「どうした、梓。もう、ハッサムは終わりだよ。次のポケモン……どうせ、ゆいだろうけど、出しなよ。もっとも、私はゆいの攻略法は分かってるけどな」

「むむ、すごい自信だね。こうみえても、私はあずにゃんがトレーナーになってから、私はまだ、負けてないもんね。強がったって、無駄だよ」

「……」

「どうしたの、あずにゃん」

「……」

「あずにゃん!!」

「は、はい、なんですか」

「ボーっとしてちゃ駄目だよ。ほら、早く、次に出すポケモンを決めなきゃ。もっとも、次は私だよね」

私には嫌な予感をビンビンと感じていましたが、実際問題として、ハッサムより強いポケモンはゆい先輩しかいませんし。

「では、頼みますよ、ゆい先輩」

「うん!!」

「きたか、ゆい」

「澪ちゃんはポケモンを交替させないの?」

「必要ないだろ」

「ふん!その自信が命取りになるんだよ。いくよ、 ゆいちゃん真拳……」

「見せてあげるよ、ゆいの攻略法を」

エビワラーは素早くゆい先輩に接近し、その小さい体に、最初にハッサムに与えた技、おそらく、マッハパンチを繰り出してきます。

「わーーーーー」

ゆい先輩は小さい体にその攻撃を受け、コロコロと転がっていきます。

「大丈夫ですか、ゆい先輩」

「うー、大丈夫、大丈夫。まだまだ、余裕だよ」
893. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:21:06.06 ID:JFqXJu2f0
ゆい先輩は立ち上がろうとします。追撃があるかもしれないと攻撃をしたエビワラーのほうを見ると、エビワラーはいません。

「あれー?エビワラーは?」

「ゆい先輩、上です!」

エビワラーはゆい先輩の上空に飛び上がり、ゆい先輩にその拳を振り下ろします。

「あでっ!!」

立ち上がろうするゆい先輩の背中にエビワラーの拳がめり込みます。

「ゆい先輩!!」

「へ、平気、平気。まだまだ、大丈夫だよ」

「……降参しないのか?」

「ま、まだまだ、戦えるよ。これから、私の大逆転劇だよ」

「……」

「どうして、そんなに悲しそうなんだい、澪ちゃん」

「……いや、なんでもない。エビワラー、続けるんだ」

エビワラーはゆい先輩の背中に拳を打ち付けるべく、上に手を上げます。

「そう何度も、同じことはさせないよ。ゆいちゃん……」

「させるな!!れんぞくパンチだ!」

エビワラーはゆい先輩の背中に何度も何度も、打ち付けます。……私はその光景を見たくなくて、眼をそらします。そんな時、空から、ポツポ
ツと雨が降り始めました。

「………めて下さい」

「どうした、梓」

「止めてく……」

「待って、あずにゃん。まだ、私は戦えるよ!」

私が降参をしようとすると、ゆい先輩に止められました。

「で、でも……」

「ポケモンなんだから、多少のダメージは平気だよ。それに、ここから、逆転だよ」

ゆい先輩は仰向けになり、リズムよく、パンチを繰り出すエビワラーの目に砂……(といっても、雨も強くなり、泥といった方がいいかもしれませんが)を投げます。

「エビ!」

エビワラーは目を押さえて、よろめきます。

「よし、ここから、逆て……あれ?」

ゆい先輩の足がガクッと崩れ落ちます。

「あれれ、どうしたんだろ。まだ、戦えるのに、体が言うことをきかないよ」

多分、さっきのダメージがきいているのでしょう。立ってるだけで、やっとといった感じです。

「……ゆい。立ってるってことがどういうことか、分かるか?」

澪先輩は顔を歪めて、ゆい先輩に問いかけます。雨もだんだんと強くなってきます。

「分かってるよ。でも、私は倒れないよ」

「……どうしてだ?」

「あずにゃんとポケモンリーグで優勝するんだ。だから、倒れない」

「……そうか。じゃあ、トドメだ」

エビワラーは拳を構えて、ゆい先輩に叩き込もうとします。

「ゆい先輩!」

私の体は自然に動き出しました。
894. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:23:21.86 ID:JFqXJu2f0
エビワラーの拳が私に迫ってくる。ああ。多分、この一撃で、私は負けるだろうな。

「ゆい先輩!」

突然、あずにゃんが私とエビワラーの間に割り込んできた。

「あずにゃん、危ないよ!!」

バン

エビワラーはあずにゃんの顔スレスレで、拳を止める。でも、びっくりしたのか、あずにゃんは尻餅をついてしまいました。雨が強くなってき
ているので、あずにゃんの服はビショビショのドロドロだね。澪ちゃんの体は震えている。それはきっと、雨のせいではないだろう。まったく、そんなに辛いなら、こんなことやらなきゃいいのに。でも、きっと、それだけ、あずにゃんのことが大切なんだろうね。

「分かっただろ、梓」

澪ちゃんはあずにゃんに近づいてくる。

「これが敵なら、梓は死んでたんだ」

「……」

「たしかに、今まではロケット団を倒してきたかもしれない。でも、次はこうなるかもしれないんだ」

「……」

「私だって、ポケモンリーグで梓と戦いたいさ。それはそうだろう、梓は私、いや、私達にとって大切な仲間なんだから。でも、それ以上に、
命が危ないかもしれないんだ。命にはかえられない」

澪ちゃんは目に涙を浮かべて、あずにゃんに訴えかける。

「……」

あずにゃんはうつむいて、黙っている。

「……私はもう行くよ」

「……」

「いきなり、こんなこと言われても、判断できないよな。明日まで、ヤマブキシティにいるから、梓の答えを聞かせてほしい」

「……」

「……じゃあな」

澪ちゃんは去っていった。。

「……あずにゃん、帰ろうよ、雨も強くなってきてるし」


895. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:24:03.64 ID:JFqXJu2f0
「……ゆい先輩」

「なんだい、あずにゃん」

「澪先輩の言うことも、分かるんです。もし、今のがロケット団だったら、負けてましたもんね」

「うん」

「今までの戦いで、私は大分強くなったって感じて。これなら、澪先輩にも勝てるって」

「……」

「でも、澪先輩に簡単に負けました」

「そうだね」

私としては情けないけどね。

「……ゆい先輩、私はどうしたら、いいんでしょうね」

「それはあずにゃんが決めることだよ」

「ですよね」

「でもね、あずにゃんがどんな答えでも、私はあずにゃんについていくよ」

「ありがとうございます。……雨も強くなってきましたから、帰りましょうか」

「うん」

「あ、ポケモンセンターにも寄らなくちゃ。でも、服も濡れてるから、後でもいいかな。すいません、ゆい先輩、それでもいいですか?」

「……うん」

私には分かる。あずにゃんは一生懸命誤魔化しているけど、本当はとっても悔しいんだってことを。だって、私を抱く手はこんなにも震えているから。
896. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:24:57.01 ID:JFqXJu2f0
「……」

「おい、澪」

私は声をかけられ、振り向くと、傘を持った律とムギがいた。

「ほら、傘だ。……といっても、もう無駄だろうけどな」

ずぶ濡れの私を見て、律は笑う。

「余計なお世話だ」

「そうかい、そうかい」

「何しに来たんだ、お前は」

「まあまあ。……梓ちゃんはどうするのかしら?」

「戻ってくれるといいけどな」

「ごめんなさい。オーキド博士に頼まれたことを澪ちゃんに押し付けるみたいになってしまって」

「……いいよ、別に」

「まあ、これで、澪は梓に嫌われるわけだな」

「……」

「りっちゃん!大丈夫よ、澪ちゃん。梓ちゃんも分かってくれるわ」

「……だといいけどな」

「さてと、じゃあ、私達も戻るか」

「……さっきから、楽しそうだな」

「そうか?」

「りっちゃんは梓ちゃんはどうすると思うの?」

「さあ。私には分かんないさ。梓が決めることだしな。……ただ」

「ただ?」
「……いや、なんでもない」
897. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:26:10.94 ID:JFqXJu2f0
「……はあ」

私はゆい先輩の髪を洗いながら、考える。これから、どうすべきか。

「悩みごとかい、あずにゃん」

「ええ、まあ。……というか、ゆい先輩も知ってますよね」

「まあね。どれ、私が話を聞いてあげよう。話してみんしゃい」

「でも……」

「話してるうちに考えがまとまるかもしれないじゃん」

「……そうですね」

「まあ、私じゃ、頼りにならないかもしれないけどさ」

「いいえ、そんなことありませんよ」

「ははは。褒めても、何もでないよ」

「……澪先輩が私を心配してくれてることも分かります」

「うん」

「現に純がいなかったら、前回もあぶなかったですしね」

「そうだね」

「でも、澪先輩と戦って怖かったですけど、楽しかったんです」

「ほうほう。どんな風にだい」

「ワクワクしたんです。ポケモンリーグにはもっと強い人がいるのかなって」

「なるほど、なるほど」

「だから、もっと、旅を続けたいんです」

「なら、続ける?」

「でも、澪先輩が私のことを心配してるのは分かるんです。それを無視するのはどうかと」

「結局どうしたいのさ」

「どうしましょうね」

「それはあずにゃんが決めるんだよ!」

「分かってますよ。まあ、とりあえず、お風呂を出て、ご飯にしましょうか」

「そうだね」
898. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:27:00.35 ID:JFqXJu2f0
「気にすることないわよ。梓ちゃんなら、分かってくれるわよ」

「だといいがな」

私はムギたちとホテルの食堂で食事をしている。正直、気が重い。

「あ、あれ、梓じゃないか。おーい、あずさー」

「ブー」

「おい、汚いぞ、澪」

「誰のせいだ!」

「あ、律先輩にムギ先輩、それに……澪先輩」

「や、やあ」

「……どうも」

(おい、どうするんだ、律)

(どうするんだって、一緒に飯を食うだけだよ)

(おい)

「一緒に食事でもしない?」

(ムギー)

899. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:27:46.13 ID:JFqXJu2f0
「え、……まあ、いいですけど」

梓は席に着く。さて、どうしたものだろうか。

「ところで、梓」

「何ですか?」

「澪にぼろ負けしたんだってな」

「ブー」

「汚いわよ、澪ちゃん」

「ごめん」

「……ええ」

「で、どうするんだ?」

「……私は」

さっきの今で、答えられるはずないだろ、と思ったが、

「あずにゃんは旅を続けるよ」

言いよどむ、梓のかわりにゆいが答えた。

900. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:28:56.56 ID:JFqXJu2f0
「あずにゃんは旅を続けるよ」
私が答えあぐねていると、ゆい先輩がかわりに答えていました。

「ちょ、ゆい先輩」

「あずにゃんはポケモンリーグで澪ちゃんを倒すよ」

「……それでいいのか、梓は」

律先輩が私に聞いてきます。

「私は……」

私はゆい先輩がそう答えたのは自分のやりたいようにやりなさいといってるように感じました。だから……。

「私は澪先輩には悪いですけど、旅を続けます!」

「…そうか」

律先輩はニコッと笑いました。まるで、その答えを待っていたかのように。

「だってさ、澪。どうする?」

「どうするもなにも……。どうして、梓はそう判断したんだ?」

「……さっきの戦いで澪先輩ともっともっと、戦いたくなったんですよ」

「え?」

「ポケモンリーグで、皆の見てる前で、最高の戦いをしてみたいって」

「……」

「こりゃ、澪が戦わないほうがよかったな」

「そうね」

「ロケット団に狙われるかもしれないぞ」

「勝てばいいんですよ!」

「そうだよ。あずにゃんには私がついてるもん」

「ぷっ、ゆいに大分、毒されたな」

「あ〜、りっちゃん、ひどいよ〜」

「……手は抜かないぞ」

「望むところです。やってやるです!」
901. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/15(金) 17:29:56.31 ID:JFqXJu2f0
ヤマブキシティ編?  「敗  北!」  終了


最終更新:2011年08月03日 17:17