…
《リュウラセンのとう》
唯「どうしてなの…、どうして人とポケモンを引きはがすようなことをするの!?」
N「前にも言ったよね。人はポケモンをこき使ってるって。
ポケモンは人といてはいけないんだよ。人の下にいてはいけないんだよ。
この世界はポケモンにとって有害だ」
唯「……じゃあ、なんで…」
唯「なんで…Nくんはポケモンを使ってるの……?」
N「……」
唯「やっぱりポケモンといると楽しいんだよ! だから一緒にいるんだよ!!
ポケモンも同じ気持ちだよ!!」
唯「だから、ポケモン解放なんてダメなんだよ!!」
N「……あくまで作戦遂行のためさ。僕はトレーナーではない」
N「それに、それなりの明確な理由だってある」
N「大切な人のためだよ」
唯「大切な人…?」
N「彼…、」
N「シルバーだよ」
唯「シルバーくん…!」
N「彼は僕の“真実”の姿なのさ」
唯「…どういうこと……?」
N「…ひとつ、昔話をしようか。
…むかしむかしあるところに、」
――それはそれは大きなお城がありました。そこには一人の少年が住んでいました。
彼の他にも、彼のお父さんや彼に優しいおじさんたちがそこに住んでいました。
彼は物心つく前から、多くのポケモンたちと触れ合いました。彼はポケモンが大好きでした。
ある日、いつものように彼がポケモンと遊んでいると、そこへお父さんがやって来ました。
―――お父さんの顔はとてもとても恐く、怒っているようでした。
お父さんは言いました。
――『来なさい』
彼は連れていかれました。ポケモンを置いて。
それ以来、彼がポケモンと遊んでいると、度々お父さんは彼をポケモンから離しました。
そして、連れていって言うのです。
――『いけませんよ、……』
彼は何度も言われました。でもなにがいけないのか、全く分かりませんでした。
しかし、そんなことが何度も繰り返され、ようやく彼は考えました。
―――『ぼくはポケモンといちゃいけないのかな……』
彼はポケモンがキライになりました。
次第にポケモンと遊ぶ回数も減っていき、お父さんもなにも言わなくなりました。
彼がもうポケモンと触れ合うことをしなくなった時、お父さんはまた言いました。
――『来なさい』
連れてこられたのは、真っ白な部屋。
なにもありませんでした――――ただ真ん中にぽつんと立っている人形を除いて。
彼はその人形に触ってみました。すると…
なんと、その人形が動き出したのです!
彼は驚き、手を離しました。しかし人形は動きをやめず、人形は口を動かし、彼に言います。
――『ぼくは、ポケモンすき。ポケモンとあそぶ』
人形はそのままどこかへ行ってしまいました。
お父さんは言います―――『また、遊ぶのか』
彼はお父さんがまた、あの時のように怒っているのかな? と思いました。
―――お父さんは笑っていました。
N「…どうだったかい?」
N「まあ実際にあった話なんだけどね」
N「『彼』とは、シルバーのことさ」
唯「シルバーくんが…?」
N「『お父さん』とはゲーチスのこと」
唯「! ま、待って! シルバーくんのお父さんは、通りすがりのトレーナーさんじゃあ…!」
N「…いや、サカキはゲーチスにシルバーを育てるように命じられていただけだよ。まだ幼かったシルバーは、サカキを父親と勘違いしたんだ。
シルバーの父親は正真正銘、プラズマ団のゲーチスだよ」
唯「!!」
N「そして、『人形』とは…」
N「僕、Nだ」
唯「え…!?」
唯「に、人形って……どういう…。
Nくんはこうして……」
N「そうだね、僕はこうやって生きている。人間のように」
N「でもね、それでも僕が人形という事実は変わらない」
唯「…人形って、なに?」
N「…シルバーは僕の“真実”の姿だと言ったよね。
その通りなんだ、彼は僕の“真実”……そして僕は彼の“理想”の姿……」
唯「……、?」
N「つまり、僕は彼の“理想”から作られた人形……“理想”の人形なんだ」
唯「シルバーくんの理想から…?」
N「さっきの話…、シルバーはポケモンを拒絶した。自分がポケモンといると『いけない』と思ったから」
唯「でもおかしいよ! シルバーくんはポケモンが好きな子だよ? 顔を見ればわかるもん!」
N「まだ物心もついていない頃だよ。忘れることもあるさ。
…まあ、記憶じゃなく心の傷として残っているかもしれないけど」
N「ゲーチスはね、それを狙っていたのさ」
唯「…狙っていた?」
N「シルバーがポケモンを嫌いになるようにすること。トラウマになるほどにね」
唯「……ひどい」
N「……」
N「でもゲーチスにもそんなことをする理由があったのさ。
ゲーチスの目的は人形……僕を作ること。それには“理想”が必要なんだ、シルバーの“理想”がね」
N「でも赤子同然のシルバーに“理想”なんて欲はない。
だから無理矢理“理想”を持つようにトラウマを刻み付けた……」
N「そうして、シルバーはある“理想”を持った……持たされた」
『何故、僕はポケモンと居てはならないんだ。こんなにポケモンが好きなのに。……違う、僕だけじゃないんだ。
人がポケモンといることが悪いことなんだ』
N「……そう、シルバーが持たされた“理想”は『人とポケモンが一緒にいることが悪いことだという世界』、そんな世界を“理想”としたんだ」
唯「……!!」
唯「そ、そんな世界なんて…」
N「……」
唯「で、でも待って…!
その“理想”は……」
N「うん、その“理想”で僕は作られたんだ」
唯「…!」
N「僕はシルバーの“理想”で作られ、この世に生まれたと同時に僕が生まれた意味を理解した」
N「僕はシルバーの“理想”を達成するために生まれたんだよ」
…………
………
……
…
《こだいのしろ》
律(ゲーチスが…シルバーの父親…!!)
律(Nが、シルバーの“理想”から作られた……!?)
シルバー「すべて“ウバメのもり”でゲーチスに会った時に、伝えられたことだ」
シルバー「俺の“理想”があいつなんだ。あいつと俺は一心同体だ」
律「け…結局、ゲーチスが全部悪いんじゃねえか…!!」
シルバー「…だが、俺があいつを作ったんだ。俺の“理想”があいつを……!
俺のせいなんだ……!!」
シルバー「…だからこそ、あいつの“理想”を! 叶えさせてやらなきゃいけないんだ!!
そのためなら、俺は……、俺はッ!!」バッ
律「…!」
シルバー「“ライトストーン”…。対となる“ダークストーン”はNが持っている。
…これを手に入れるためにプラズマ団総出で探した、そして見付けたんだ。この“こだいのしろ”でな」
シルバー「二つのストーンとも、元はここにあったらしいな」
ピカアアッ!!!!
律「! ストーンが光って…!?」
シルバー「石に姿を変えていた伝説のドラゴンポケモンは、今、元の姿に戻る!
“ライトストーン”より、姿を化えし…伝説のポケモン! レシラム!!」
ゴゴゴ………
律「ス、ストーンが……ポケモンに…!!」
カッ!!!!
レシラム「ンバーニンガガッ!」
律「こ、こいつがレシラム…!」
シルバー「はくようポケモン、レシラム。
俺はこいつに選ばれ、英雄になる!!
そして叶えてみせる。Nの“理想”を……!
“真実”の名の下に!!」
レシラム「ンバーニンガガッ!!!」バッ
律「!」
シルバー「“クロスフレイム”!!!」
レシラム「モエルーワ!!」ボウッ!
ボオオオオオ!!!!!!!
律「やばっ…!」
ダッ!
アデク「ウルガモス! “ねっぷう”!!」
ウルガモス「モスー!!!」ゴアアッ!
シルバー「…!」
ドオオオオオン!!!!!!!!!!!!
アデク「!?」
ボアアッ!!!!!
アデク「ぬおおっ!?」
ウルガモス「モ、モスー!?」
ドシャアン!!!
律「ア、アデクさん!!」
シルバー「……」
シルバー「今度会う時は“ポケモンリーグ”で、だ」
レシラム「ンバーニンガガッ!!」バサッ!
シュッ!
ギュウウン!!!!!!
………
……
…
《リュウラセンのとう》
ピカアアッ!!!!
N「“ライトストーン”と対をなす“ダークストーン”より現れるは…ゼクロム!!」
カッ!!!!
ゼクロム「ババリバリッシュ!」
唯「ゼクロム…!
これが伝説のドラゴンポケモン?」
N「そう。こくいんポケモン、ゼクロムさ」
N「このゼクロムと、シルバーの“ライトストーン”より蘇る、レシラム。二匹に選ばれ、僕たちは英雄になるんだ! そして、シルバーの“理想”を“真実”にしてみせる……!
“理想”の名の下に!!」
ゼクロム「ババリバリッシュ!!」バッ
唯「!!」
N「“クロスサンダー”!!」
ゼクロム「バリバリダー!!」ビリビリッ
ピシャアアアン!!!!!!
唯「ああっ…!」
ボム!!!
チー太「チラチー!!」
ムー太「ムウウ!!」
ラー太「ラー!!」
唯「み、みんな…!?」
ドシャアアアアン!!!!!!!!!!!!
チー太「チー…」ドサッ
ムー太「ムウ、ウ…」バタッ
ラー太「ラ…」ガクッ
唯「チー太っ! ムー太っ! ラー太っ!」
N「…僕の考え、理解できるかい?」
唯「……」
N「……それじゃあ、“ポケモンリーグ”で会おう」
ゼクロム「ババリバリッシュ!!」ダッ!
ビュウウン!!!!!!
唯「……」
タッタッタ…
アララギパパ「唯ーっ!!」
唯「…! アララギ博士! ハチクさん!」
ハチク「Nは…もう行ったか?」
唯「はい…」
アララギパパ「やはりな。プラズマ団の連中が急に退いたから、もしやと思って来てみたが」
ハチク「……」
チー太「チー……」 ムー太「ムウ…」 ラー太「ラー…」
ハチク(この傷…)
ハチク「…Nは伝説のドラゴンポケモンとやらを?」
唯「はい…ゼクロムって言ったかな。もう飛んでいっちゃったけど」
ハチク「……とりあえず、連絡をしてみよう」
唯「ふぇ? 誰にですか?」
ハチク「アデクさんだ」
唯「アデクさんに?」
ハチク「ああ、実はあの後……“ネジやま”からジムに戻った時に、アデクさんから電話があってな。
『“こだいのしろ”へ向かう。“リュウラセンのとう”は頼んだぞ』とアデクさんはおっしゃったのだ」
唯「アデクさんが…」
ハチク「アデクさんはあの後すぐに、プラズマ団を阻止しようと発ったわけだ」
ハチク(それを知った上で、彼女をジム戦に挑戦させたのだがな)
ハチク「ふ…君にも心配をかけさせたな」
唯「ううん。アデクさんを信じてたから! りっちゃんもそうだと思います!」
ハチク「…ふ、そうか」
アララギパパ「なんかよく分からんが、アデクは今“こだいのしろ”にいるということだな?」
ハチク「はい。恐らく、律とも会えたことでしょうし。
今電話してみますね」ピッ
アデク『アデクだ』
ハチク「ハチクです。
アデクさん、今は“こだいのしろ”に?」
アデク『ああ、律も一緒だ。
レシラムはプラズマ団のもとへ渡ってしまったようだぞ』
ハチク「そうですか…、こちらもゼクロムは…。
それで…、今後の話で色々と……」
アデク『うむ、そうだな。おぬしの考えは大体分かるぞ。
“ソウリュウシティ”…だろう?』
ハチク「ええ、その通りです。律にも伝えてください。セッカではなく、ソウリュウと」
アデク『そうか。よし、分かった!
ワシもこれから“ソウリュウシティ”へ向かおう!!』
ハチク「はい。では…」
ピッ
ハチク「……」
唯「?」
ハチク「…唯よ。先程、ゼクロムとやらと戦ったな?」
唯「あ…はい。でも、戦いっていうより一方的に…」
ハチク「…。なるほどな、君は“ポケモンリーグ”でNたちと決着する気なのだな」
唯「ど、どうしてそれを!?」
ハチク「私の心眼をなめてもらっては困る。
…さて、今の君ではゼクロムには敵わない。そうだな?」
唯「は、はい…」
ハチク「君は強くならなければならない。
そのために修業を…」
アララギパパ「ふむう、待ってくれ。
修業…といっても、プラズマ団はすでに伝説のドラゴンポケモンを所有している。奴らが動くのも時間の問題じゃないか?」
ハチク「はい、時間がないのです」
唯「でもでも、私とりっちゃんはジムバッジを集めなきゃだし…」
ハチク「そう、それこそ時間がない。
だが、その解決策はある」
唯「なんですか?」
ハチク「すでに律は私とジム戦をして、勝ってバッジを受けとった」
唯「いつの間にっ!」
ハチク「だから、残るバッジはひとつだ」
唯「ええと…?」
ハチク「“ソウリュウシティ”のジムリーダーに君たちを鍛えてもらえばいい。そうして、認めてもらえばバッジも手に入り、実力も高まり万々歳だ」
唯「なるほど!」
アララギパパ「安直すぎる気がしないでもないな」
ハチク「というわけで、君にはすぐに“ソウリュウシティ”へ向かってほしい」
唯「あれ? でもりっちゃんは?」
ハチク「彼女ならアデクさんと向かっている。それを待つよりも君は先に行ったほうが早いだろう」
唯「そっかあ…。
頑張ります!」フンスッ
アララギパパ「よし、では私たちも同行しようか!」
ハチク「いえ、申し訳ない。私は少し用がありまして」
アララギパパ「ふむう? まあ仕方ないか…。
では、私が同行しよう」
唯「お願いします!」
アララギパパ「目指せ、“ソウリュウシティ”だー!!」
唯「おー!!」
唯(なんか新鮮な感じ!)フンスッ
Episode.35 fin
最終更新:2011年08月07日 20:27