純「でね、その時のカッコよさっていったら……」
憂「へぇ~ それはすごいね」
純「またツリ目がよりギラギラ感を醸し出していてそれがまたカッコいいんだ」
梓「二人ともおはよ~」
憂「梓ちゃん、おはよう」
純「梓、やっと来た!! ちょっと話聞いてよ」
梓「何? もしかして深夜にやっているアニメのツリ目主人公の話?」
純「そう、そう!! 彼のカッコよさっていったら!!」
梓「パス」
純「ひ、ひどい」
梓「その話聞き飽きたよ」
純「おもしろいのに……」
梓「なんかさ、もっと違う話ないの?」
憂「そういえば、駅の方に焼き芋屋さんが出来たみたいだよ」
梓「そうなんだ!! この季節柄それはいいね!!」
憂「食欲の秋だもんね~」
梓(軽音部のみんなと行ってみたいなぁ……)
純「放課後誘ってみたら?」
梓「それも悪くないね……」
梓「って、人の心勝手に読まないでよ!!」
純「だってそういう顔してたんだもん」
梓「もう、やめてよ」
梓を冷やかしながら、ちょっかいをかける
純「事前練習しておこうよ、事前練習」
梓「なんでわざわざ」
純「お誘いもスムーズに出来た方がいいでしょ?」
梓「からかいたいだけでしょ」
純「ほらほら、先輩達のあの… 私と一緒に焼き芋… 食べに行きませんか?って」
純「恥ずかしながら、モジモジさせたらよりgoodだよ」
梓「そんなことわざわざする必要ないでしょ」
純「純なとこ見せてあげなよ」
梓「はぁ……」
~~~~~~~~~~~~~~
梓「先輩達のあの… この後私と一緒に焼き芋… 食べに行きませんか?」モジモジ
律「いいなぁ、行こうか!!」
澪「でもこの辺に焼き芋屋さんなんてあったっけ?」
梓「新しくオープンしたみたいなんです」
紬「へぇ~」
唯「モジモジしながら話すあずにゃんもかわいいよ~」
そう言って梓に頬をすり寄せる
梓「ちょっと、苦しいです。唯先輩!! わかりましたから早く行きましょう」
5人は駅の方へと歩く――
木々は少しずつ色付きはじめ、街の景色をより綺麗に飾っている
澪「だいぶ紅葉し始めたな」
律「そうだな」
澪「こういう綺麗なものに触れたら、良い詩が浮かびやすいかも」
律「そりゃいいや、どんどん浮かべてくれ。学祭も近いしな」
唯「あれ、なんか良い匂いしてきたよ」
紬「ホント甘くて良い香り。きっと焼き芋ね」
梓「みなさん着きましたよ。ここです!!」
店内に入る5人
店の中は暖かく、食欲のそそる甘い匂いがお店の隅々まで漂わせていた。
店員「いらっしゃいませ」
律「一本144円か」
唯「でも大きくて、中身が綺麗な黄色だよ」
梓「香りが良すぎて、買う気がなくても買っちゃいそうですね」
店内はさほど大きくないので
5人は一列になり、一人ずつ店員にお金を支払い、購入していく
そして最後に澪が支払う際にある出来事が起きる
店員「144円になります」
澪「えっと……」
財布から小銭を探す――
澪「うんと……」
店員を待たせては悪いと慌て始める
澪「あ、ちょうどあった」
澪が店員に支払おうとした時――
律「みおー、店員待たせるなよ」ドン
肘で澪の腰あたりをつき、冷やかしを入れる
澪「うわっ」
そのせいで体のバランスを崩し、小銭を床一面に散ばしてしまった
澪「律っ!!」
律「悪い、悪い。拾うの手伝うからさ」
二人はしゃがみ込み、小銭を拾う
一通り拾い集め、店員の方を見ながら澪が立ちあがろうとすると――
店員「ひっ!!」
澪「えっ?」
店員「ごめんなさい、ごめんなさい」
澪(なんか怖がられている……)
律「どうしたんですか店員さん?」
店員「ごめんなさい、あなたがこっちを見ながら立ちあがる顔が怖くて……」
店員「その、あなたってツリ目だから余計見上げる表情が怖かったんです」
律(あちゃー……)
澪「……」
店員「ツリ目自体怖い印象なのにこのグワッて来られるような感じだったので」
店員「さらにその早くお金を渡そうという必死さが怖さに拍車を……」
律「あ~、すいません。じゃあ焼き芋貰ったので私たちはこれで」
5人は店を後にする
唯「色づく木々を見ながら焼き芋はおいしいねぇ」
紬「本当、甘いし、ホクホクね」
梓「来てみて正解でしたね」
澪「……」
一人会話に入らず、トボトボと下を見ながら歩く澪
唯「澪ちゃん、食べないの?」
紬「せっかくの焼き芋が冷めちゃうわ」
律「澪、まだ気にしてるのか?」
澪「だって……」
唯「そんな、たまたまだよ~ 怖いとか気にする必要ないよ」
澪「たまたまじゃないんだ」
梓「? どういうことですか?」
律「澪は昔、何回かツリ目のせいで怖いって言われたことがあるんだ」
唯「そうだったんだ」
紬「でも私たちは普段一緒にいるけど怖いなんて思わないわ」
澪「でも、初対面の人からは結構言われるんだよ……」
澪「はぁ……」
澪「ごめん、私先に帰るね。私の分の焼き芋食べていいから」
唯に焼き芋を手渡し、逃げるように走って帰宅していった
唯「今にも泣きそうな顔してたね……」
律「澪……」
~~~~~~~~~~~~
澪「ただいま」
澪母「おかえりなさい。もうすぐ夕御飯よ」
澪「なんで……」
澪母「ん? どうしたの?」
澪「なんで私はママに似なかったんだ!!」
澪母「えぇ!? 急にそんなこと言われても……」
澪「私がツリ目のせいでどんなに苦しんでいるか……」
澪母「み、澪ちゃん!?」
澪「もういいよ!!」
母親を押しのけて自分の部屋へと戻る
澪「うっ、うっ、ぐずっ……」
部屋にはすすり泣く音が響く
澪「あぁ、皆から愛されやすいタレ目になりたいよぉ」
澪「どうやったらツリ目じゃなく出来るだろうか」
澪「……あの方法を使ってみようかな」
次の日!
唯「澪ちゃん、おはよ~」
澪「唯、おはよう」
唯「朝はやっぱり寒いね……ってあれ!?」
唯「澪ちゃんがタレ目になっている!?」
澪「どうだ唯? タレ目の私は?」
唯「なんでタレ目になれたのさ?」
律「よく見てみろよ唯」
唯「あっ、りっちゃん」
澪の顔にグッと近づく唯
澪「近い、近いって」
唯「あっ、セロテープ!!」
律「そういうこと」
唯「セロテープで目を下に引っ張ってタレ目にしていたんだね」
律「ったく、よくやるよ」
澪「いいじゃないか、タレ目になりたいんだよ」
律「顔にセロテープなんか貼っていたら恥ずかしいだろ」
澪「タレ目のためなら我慢するよ」
律「澪は我慢できても、私たちが恥ずかしいわ」
律「なぁ、唯?」
唯「見て見て、ツリ目!!」
律「ってお前もかい!!」
セロテープで目をつり上げる唯
紬「私もツリ目~♪」
律「ムギ、いつの間に!?」
紬「今、来たところよ」
澪「二人のツリ目って新鮮だな」
紬「澪ちゃんのタレ目もね」
律「あのなぁ、みんなもうやめようぜ」
澪「何言ってるんだよ、少なくても今日一日はこの姿でいる」
唯「私たちもそうしようか?」
紬「そうね~」
律「……マジかよ。もう知らないからな」
ガラッ――
さわ子「みんな、おはよう。出席を取るから、席についてね」
澪「はい」
さわ子「……」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい?」
さわ子「なにその顔は?」
澪「タレ目になりたくて」
さわ子「どういう経緯かは知らないけどあなたずっとセロテープ貼ったままのつもり?」
澪「……ダメですか?」
さわ子「ちょっといただけないわ。授業受ける姿勢として感じられないし」
澪「……」シュン
さわ子「剥がしなさいね。三人とも」
唯・紬「ばれてるっ!?」
~~~~~~~~~~~~~
律「だからやめとけっていったろ?」
澪「だってもうツリ目はいやなんだよ~」
梓「でも、そんなことがあったんですか」
梓「澪先輩のタレ目ちょっと見たかったな」
唯「新鮮だったよ!!」
律「まぁ、確かにそうだけどさ」
澪「何か別な方法は……」
唯「じゃあ、今日のテーマは澪ちゃんのツリ目をタレ目にする方法だね」
律「お茶飲みながら作戦会議ってことか」
唯「そういうこと」
紬「お茶入ったわよ~」
5人が席に着く
今日のお菓子は梨のようで真ん中にたくさんの梨が入ったお皿が置かれた
唯「なんか良い方法はないかな」シャクシャク
澪「できればすぐタレ目になれる方法で」
梓「よくあるのはメイクでタレ目に出来るっていいますよね」
澪「なるほど。でもうちの学校化粧禁止だからな」
梓「そうでしたね」
紬「だったら整形っていう手もあるけど……」
澪「いやぁあ!!!!」
澪が耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込む
澪「痛い話はやめてくれ!!」
唯「う~ん、中々良い方法ないね」シャクシャク
律「実際そんな簡単に自分の顔を変えられたら苦労しないよな」
梓「唯先輩、梨ばっかり食べていますけど何か案は無いのですか?」
唯「何も無し!!」フンス
梓(もしかして梨だけにとか……)
唯「とにかく、今は思いつかないから明日まで考えておくよ」
唯「澪ちゃん、頑張って成し遂げようね!!」フンス
梓(あっ、また……)
澪「そ、そうだな」
律「じゃあ、そろそろ練習するか!!」
~~~~~~~~~~
唯「ただいま~ あぁ寒かった」
憂「お姉ちゃん、お帰り。ご飯出来てるから一緒に食べよう」
唯「やったぁ、お腹ぺこぺこだよ」
憂「ちゃんと手洗いうがい済ましてからね」
唯「了解しました」ビシッ
敬礼した後、洗面所へと向かう
唯「ガラガラッ ペッ」
唯「これで良しと」
唯「さてご飯、ご飯!!」
リビングに向かうと美味しそうなご飯がテーブルを彩っていた
また平沢姉妹はテレビを見ながらご飯を食べる習慣があることから
テレビがついており、そこでは
ニュースが流れていた
「こんばんは7時のニュースをお伝えします。今日の午前2時ごろ
桜が丘神社の賽銭箱のお金が盗まれるという事件が発生し、警察は――」
唯「憂~ ニュースつまんないからチャンネル変えていい?」
憂「いいよ」
箸を咥えながら、リモコンのチャンネルを変える
「みなさんこんばんは!! テレビショッピング『買っちゃおうタイム』のお時間です。今日紹介する商品はこちら!!
商品番号一番『オメメサガール』です!! ツリ目で印象が悪く、困っているという人がいたら是非使ってみてください。この塗り薬『オメメサガール』を使うとあら不思議、ツリ目がみるみるタレ目になる品物です。今、欲しいと思ったあなた!! いまから受け付け開始します。もちろん電話、インターネットどちらも24時間受け付けております。ではさらに商品の魅力をお伝えするためにビフォー、アフターの比較写真を見ていきましょう……」
憂「こんな時間にテレビショッピングって珍しいね」
唯「こ、これだ!!!」
憂「?」
最終更新:2011年08月07日 22:42