~~~~~~~~~~
紬「お茶入ったわよ~」
律「待ってました!!」
唯「ティータイム、ティータイム♪」
梓「ちょっと先輩方、いつものごとく練習はしないんですか?」
律「お茶の後にするから心配するなって」
梓「約束ですよ」
今日も皆、定位置に座り
お菓子とお茶を囲む
唯「はぁ~ やっぱりムギちゃんのお茶は最高だね」
紬「ありがと。おかわりもあるわよ」
澪「……」
律「どうした澪? 元気ないな」
澪「えっ、いや、そんなことはないぞ」
律「そうかぁ?」
梓「そういえば」
澪「……ビクッ」
梓「今朝の新聞見ました?」
唯「なんかあったの? あずにゃん」
梓「なんでも学校の近くの桜が丘神社の賽銭泥棒の犯人が捕まったそうですよ」
唯「へー、そんな事件あったんだ」
梓「犯人は男の二人組で約9万8000円分のお賽銭を盗んだそうです」
澪「……!!」
梓「だけど面白いことに彼らはお金を茶封筒に入れておいて
それを喫茶店に置いてきたと供述してるらしいです」
律「苦しい言い訳だな」
梓「そうですよね」
梓「実際に警察が置いてきた喫茶店を調べても、茶封筒は出てきてないらしいんですよ」
梓「おそらく、本当の隠し場所をはぐらかしているという狙いだと思います」
唯「なるほど」
紬「澪ちゃん? やけに大人しいけど大丈夫?」
澪「まっ、まあな。だ、大丈夫だ」
澪(……間違いない。あのお金はその二人が盗んできたお金だ)
澪(もしかして私、とんでもないことしちゃってる!?)
唯「そういえば澪ちゃん、昨日茶封筒拾ったよね?」
澪「……!! そう、そうだったな」
唯「もしかしたらその泥棒さんの封筒だったりして」
澪(や、やばいっ……)
梓「それはないですよ唯先輩。澪先輩が拾った茶封筒は9000円しかなかったんですから」
唯「そっかー」
紬「そういえば澪ちゃん、あの封筒交番に届けてくれた?」
澪「えっ!?」
澪「……」チラッ
律「……!」
澪「も、もちろんだよ。朝一で届けたよ!!」
澪「いやー、交番の人が面白い人でね。
『俺だったらこっそり使っちゃうな』なんて冗談を言っててさっ!!」
律「それは冗談のわかるおまわりだな」
澪「だろ!? めずらしいよなぁ~」
そう言って紅茶を口に運ぶ澪
澪「お、美味しい紅茶だな。ムギおかわり欲しいな」
紬「えっ、ええ、いいわよ。今持ってくるわ」
~~~~~~~~~~~
お茶会と練習が終わり、家に帰る澪
澪(まさか盗まれたお金だったなんて……)
澪(あのお金はもう振り込んでしまったし、取り返しがつかないよう)
澪(家に着いたら、警察が来ているなんてことないね……)
ガチャ――
澪「ただいま」
澪母「おかえり、来ているわよ」
澪「えっ!?」ドキッ
澪母「荷物。はいこれ」
澪「あっ、ありがとう」
澪「わ、私部屋に戻るね」
澪母「もうすぐ、夕飯だから少ししたら降りてくるのよ」
澪「わかった」
階段を急いでかけ上り、自分の部屋に戻る
澪「びっくりしたぁ、警察が来たのかと思ったよ」
澪「でももう届いたのか。早いな」
封を開けるとそこにはチューブ型の塗り薬が入っていた。
澪「写真でも見たけど本当に軟膏みたいだな」
澪「でもこの『オメメサガール』でタレ目になれるんだよね」
澪「さっそく、寝る前に使ってみようかな……」
夕飯も終わり、お風呂にも入り、明日の宿題も終えた頃
澪「さて、そろそろ寝ようかな」
オメメサガールを手に持ち、蓋を開けようとする
澪「でも、盗んだお金。本当に使っていいのかな……」
澪「使ったら最後…… もう戻れない」
澪「でも、やっぱりタレ目になりたいし……」
薬を持ちながら、部屋の中をうろうろする
澪「いや、決めたんだ!! これは運命なんだ!!」
澪「使う!! もう怖がれないみんなから愛されるタレ目になるんだ!!」
そう言ってチューブを押し出す
澪「初めてだから、どれくらいつければいいのかよくわからないな」
澪「これくらいかな?」
少量を取り出し、鏡を見ながら目のクマが出来る部分に擦り込む
澪「これで明日になれば」
澪「よし、早く寝よう」
澪(……どきどきして眠れないな)
澪(明日が楽しみだ)
次の日!!!
朝、顔も洗わず真っ先に鏡に飛びつく
澪「や、やった!! 下がっている!! 下がっているよ!!」
澪「早く学校に行って皆に新しい私を早く見せたい!!」
学校!!!
澪「ムギ、おはよう」
紬「おはよう澪ちゃん。ってえぇ!?」
紬「澪ちゃんの目が下がっている……」
澪「そうなんだよ」
律「二人とも、おーす!!」
紬「りっちゃんおはよう」
澪「おはよう」
律「!?」
律「どうしたんだよ? その目」
澪「良くなっただろ?」
律「ツリ目じゃない……」
紬「でもどうやったの?」
澪「これさ」
オメメサガールを二人に見せる
律「あっ」
紬「これってお金が足りなくて買えなかったんじゃないの?」
澪「いやー、それがさ」チラッ
律「……」
澪「昨日、おばあちゃんが遊びに来ててさ、お小遣いをたくさんくれたんだ」
澪「それと、貯金を崩したら何とか買えたってわけ」
紬「へぇ~ よかったわね」
澪「いやー、まさに神様が私にこれを授けてくれたかのようだよ」
唯「何なに? 何の話?」ヒョコ
澪「唯、おはよう。実はね……」
~~~~~~~~~
梓「それはラッキーでしたね」
唯「本当だよね~」
紬「新しい澪ちゃんも素敵ね」
澪「ありがとう、ムギ」
澪「これでもう怖がられずにすむよ」
唯「でもさ、まだタレ目とは言えなくない?」
梓「確かにそうですね。ツリ目ではありませんが、タレ目ともいいづらいですね」
梓「いうなれば普通の目って所でしょうか」
澪「確かにそうかもな」
澪「下がったことに嬉しすぎて麻痺していたけど」
澪「もう少し下げてもいいかも」
律「ツリ目じゃなければもう良いんじゃないのか?」
澪「いや、私の目標は愛されるタレ目だから」
澪「今晩、もう少し『オメメサガール』を塗ってみるよ」
梓「明日会うのが楽しみですね」
律「じゃあ、練習するか」
梓「律先輩からその言葉が出るとは」
律「いやー、本当はずっとお茶がいいけど学祭も近いからさ」
澪「そうだな。学祭で恥はかきたくないよな」
唯「澪ちゃんが言うと説得力あるね」
律「澪と唯はボーカルだからな。より頑張ってもらわないと」
唯「はーい」
澪「そうだな」
夜、今宵も虫たちの演奏を聴きながら彼女は鏡に向かう
澪「よし、これくらいでいいかな」
澪「ふふ、明日が楽しみだ!!」
次の日!!!!
律「ついに」
唯「念願の」
紬「タレ目ね。澪ちゃん」
澪「……///」
唯「タレ目の澪ちゃんもかわいいね」
澪「あ、ありがとう」
紬「より優しそうな顔になったわね」
澪「そうかな」
律「よかったな、澪」
澪「うん、もう言うことなし。幸せだよ」
さわ子「みんなおはよう。席について出席をとるわよ」
澪「はい」
さわ子「秋山さん。またセロテープなんか貼って……」
澪「ないです」
さわ子「あら、ホントね」
さわ子「どんな手品を使ったのかしら?」
澪「えへへ」
さわ子「まぁ、いいわ。良く似合っていて可愛いしね」
さわ子「じゃあ次……」
~~~~~~~~~~
唯「澪ちゃん大人気だったね」
澪「なんか恥ずかしいな」
紬「クラスのみんなも可愛いって持ちきりだったしね」
梓「そういえばファンクラブの人たちも大ニュースで大騒ぎしてましたよ」
律「また、会員が増えるかもな」
澪「やめてくれよ」
律「本心じゃないくせに。顔がにやけてるよ」
澪「もう、律はからかいすぎだ!! さっさと練習するぞ!!」
律「はいはい」
律「どうせなら性格も突っ張った感じから下げてくれればいいのに」
ガンッ!!
澪「なんか言ったか?」
律「しっかりきこえてるじゃん」ヒリヒリ
澪の家
澪「やっぱりタレ目にしてよかったよ」
澪「みんな可愛いって言ってくれたし」
澪「ママも驚いていたけど、今日の事を話したら良かったねって言ってくれたし」
澪「ホントに買ってよかった~」
鏡の前でニヤニヤする澪
澪「そうだ!! もっとタレ目にすればさらに愛される人になれるかも」
澪「そうすれば怖がられるどころか何もしなくても人が寄ってきてくれるような」
澪「そんな温かみのある人間に……!!」
澪「まだいっぱい残ってるし、もう少し使ってみよ」
クリームを取り出し、鼻歌を歌いながら擦り込ませていく
澪「これでよしっと」
澪「きっとみんなびっくりするよ」
澪「そうだまた焼き芋屋さんに皆で行きたいな」
澪「私、焼き芋食べそこなったし」
澪「次は絶対に怖がられることなんてないからな」
澪「みんなに明日誘ってみようと」
次の日!!!!!
澪「さて、どんな風になったかな?」
鏡をのぞく澪
「きゃああぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!」
澪母「どうしたの? 澪ちゃん!?」
澪母「ちょっと澪ちゃん、澪!? 開けなさい!!」ドンドン
部屋のドアを壊れるかのような勢いでノックする
澪「ダメ!! 来ないで!!」
澪母「何があったの? 大丈夫!?」
澪「今日は私学校休む!!」
澪母「えっ!? いったい何が起こったの? 澪ちゃん!?」
澪「いいから!! 風邪で休むってことにしておいて!!」
最終更新:2011年08月07日 22:46