~~~~~~~~~~~~
さわ子「今日、秋山さんは風邪でお休みです」
ざわつく教室
唯(澪ちゃん?)
紬(どうしたのかしら?)
律(澪……)
時間は流れ、放課後部室
梓「どうです? 律先輩」
律「だめだ。でねー」
あきらめて携帯をしまう律
唯「朝から連絡取ろうとしても全然出てくれない……」
紬「嫌われたのかしら」
律「まさか」
梓「昨日はあんなに念願のタレ目になれて幸せそうだったのに……」
唯「何かあったのかな?」
律「そんなことないと思うけどな。さわちゃんも風邪で休みって言ってたし」
律「きっと明日になったらひょっこり出てくるさ」
紬「そうだといいけど……」
それから3日後
唯「……」
梓「……来ませんね」
紬「……澪ちゃん」
律「あれから、毎日連絡してるのにな」
唯「インフルエンザかな……」
梓「でも安否くらい教えてくれてもいいはずですよね」
律「う~ん」
紬「何かきっと澪ちゃんの身に起こっているのよ!!」
律「かもな」
唯「だったら!!」
律「そうだな。これから皆で澪ん家行ってみるか」
律「澪がいないと練習にならないしな」
梓「学祭ももう、すぐそこですし早く戻ってこないと……」
唯「そうと決まったなら、急いで支度しよう」
~~~~~~~~~~~~
唯「ここが澪ちゃんの家かぁ」
律「入るぞ」
ピンポーン
澪母「はい、どちら様?」
律「こんにちは」
澪母「あら、りっちゃん!! それと……」
唯「愉快な仲間たちだよ」
梓「じゃなくて部員達です」
律「澪、元気ですか?」
澪母「心配して来てくれたの? ありがとう」
澪母「あのね私も澪に4日前から会ってないの」
律「えっ!?」
紬「どういうことですか?」
澪母「あの子、ずっと部屋にこもりっぱなしで私も部屋に入れてくれないの」
律「そんな……」
紬「そしたら風邪ではないということですか?」
澪母「おそらくね」
唯「ご、ご飯はどうするんですか!?」
澪母「ご飯の時間になったら私が部屋の前に持っていくの」
澪母「そしていなくなったら空の容器を部屋の前に置いておいて交換するのよ」
澪母「トイレやお風呂も私の目を盗んでしてるみたい」
澪母「とにかく人に会いたくないような素振りなの」
梓「ひどい話ですね」
律「おばさん。私たち、澪に会ってきていいですか?」
澪母「いいわ。多分嫌がると思うけどむしろ会ってあげて頂戴」
澪母「もう私の力ではどうにも……」
律「おばさん……」
澪の母からは涙があふれる――
律「大丈夫です。私たちが何とかしますから」
唯「それじゃあ、おじゃまします」
4人は家の中に入り、澪の部屋の前に立った
コンコン――
律「澪? 大丈夫かぁ」
紬「澪ちゃん。みんな心配して様子を見に来たの」
唯「みおちゃん~ 遊びに来たよ」
ドア越しにか弱い声で声が聞こえてくる
澪「みんな、いいから帰ってくれ」
律「……」
律「なんでだよ。せめて理由を話してくれよ」
澪「いいたくない。とにかく顔を合わせたくないんだ」
唯「どうしちゃったの? 澪ちゃん。4日前はタレ目になれてあんなに喜んでいたのに……」
澪「目の話はよせ!!!」
唯「」ビクッ
紬「この言動からすると澪ちゃんはタレ目に関して何か問題があるんじゃないかしら?」
紬が手を唇にあて、ポーズをしながら推理する
律「なるほど」
律「そうなのか? 澪」
澪「……」
律「否定しないということは多分そうだな」
律「何があったかは知らないけどせめて部屋のカギを開けてくれよ」
澪「それは無理!!」
梓「澪先輩が学校に来てくれないと練習にならないんですよ」
澪「もう学校なんか行かないからそんなこと知らない」
唯「澪ちゃん……」
紬「今日はいったん引き上げる?」
律「いや、引き上げたところで解決にならないよ」
律「なぁ、澪何があったか話してくれよ」
澪「いや!!」
律「今、こうして外に出れないということはこの現状じゃダメってことだろ?」
律「そのままずっと部屋にいて解決できることなのか?」
澪「……」
律「解決できるなら私たちはこれ以上干渉しない」
律「だけど何も変われないなら私たちに相談してみろよ」
律「4人もいるんだ。なんかいい案の一つや二つ……」
律「澪の力になれると思うんだ」
澪「……」
唯「そうだよ澪ちゃん」
紬「私たち澪ちゃんに元気なってもらいたいだけなの」
澪「……みんな」
澪「……笑わない?」
律「笑う? よくわからないけど笑わないさ」
梓「もちろんです」
澪「……」
カチャ――
ドアのカギが開く音がした
律「……ありがとう澪」
律「じゃあ入るからな」
4人はゆっくりと澪の部屋へと入る
そこには毛布に包まり、後ろ姿の澪がいた
律「だ、大丈夫か?」
律が後ろを向いている澪の顔を覗き込む
律「えっ!?」
律「ど、どうしたんだよ澪!? その顔!?」
唯「何なの?」
紬「りっちゃん!?」
澪「ほら、笑った!!」
梓「澪先輩落ち着いてください。誰も笑ってなんかいませんよ」
律「と、とりあえずみんなに見せろ。なっ?」
澪を振り向かせるとそこにはもはや愛されるとは言えない変貌をとげた
澪の顔があった
唯「み、みおちゃん……」
紬「垂れ落ちそう……」
梓「……うっ」
あのあと調子に乗ってオメメサガールを使いすぎた結果
澪の眼はタレ目というよりは目が今にも垂れ落ちてきそうな目となってしまった
もはやその姿は人前に出れるようなものではなくひどく醜い妖怪のような姿である
澪「ちょ、調子に乗り過ぎんたんだよぉ」
澪「あの後もっとタレ目になりたくてオメメサガールを使ったらこんなに下がっちゃって」
澪「うああぁぁ……」
律「もう泣くなよ。十分泣いただろ?」
律「涙の跡がくっきりだ。おまけに声まで枯れてるし」
紬「まさかこんなになるとはね……」
唯「可愛そう……」
梓「なんか残念な美人って言葉が似合いますね」
澪「うぅ……」
律「中野おぉぉぉ!!!!」
梓「ご、ごめんなさい。じょ、冗談です!!」
梓「は、早く皆で治す方法を考えましょう!!」
唯「でもどうやるの? あずにゃん」
梓「えーと… そうだ澪先輩『オメメサガール』の説明書に」
梓「治し方は書かれていませんでしたか?」
澪「見たけど何も書かれていなかった」
梓「そうですか……」
紬「前の逆みたいにセロハンテープで目をつり上げてみるのは?」
律「そんなんじゃ、無理だろ」
澪「一応やったけどダメだった……」
律「やったのかよ」
唯「タレ目の専門家なんて人がいればいいのにね」
律「!!」
律「そ、それだよ!! 唯」
唯「?」
そう言っておもむろに携帯を取り出す
梓「なにをするんですか?」
律「電話だ」
梓「誰に?」
律「『オメメサガール』の専門家。つまり製造した会社だよ」
律「澪、その商品のどこかにお問い合わせ番号ないか?」
紬「なるほど、製造した会社なら対処法が分かるかも」
澪「あった。この番号だよ」
律「よし、これでよしっと」
プルルル――
「お電話ありがとうございます。こちら『オメメサガール』のサービスコールです」
律「あ、あのこの商品を買った者なんですけど」
律「この商品って一度タレ目にしたら戻す方法はないんですか?」
「そうですね。ありません」
律「そんな、なんで治す方法がないんですか!!」
「飲むと風邪が治る薬はあっても、飲むと風邪をひく薬はありませんよね?」
「それと同じことです」
律「なるほど」
梓「律先輩何を納得しているんですか?」
律「じゃあ、ツリ目にする薬とかはないんですか?」
「はい。現段階ではそのような商品開発は行っていません」
律「うぅ、なんとか手はありませんか? タレ目過ぎて困っているんです」
「申し訳ありませんが私たちに出来ることはありません」
律「あっ、そうすっか。わかりました。失礼します」
ピッ――
紬「どう、りっちゃん? なにかいい解決法はわかった?」
律「これほど頼りにならないサービスコールは初めてだ」
梓「良い手がなかったんですか……」
澪「どうしよう… 私……」
唯「大丈夫皆で考えればいい案出るよ」
だが、それから2時間が経過――
梓「中々良い策が思いつきませんね」
唯「やっぱりそのままの澪ちゃんで生きていくしか……」
澪「その案だけは嫌だぁ~」
梓「確かにその顔で学祭には厳しいですね」
澪「!! そういえば学祭あるんだった!! ど、どうしよう……」
律「……」
最終更新:2011年08月07日 22:51