ときは、性癖200X年。

 異性のひとしか愛せないヘテロセクシャルはWHOによって病気とされ、

 かねてより自分の性傾向に悩む方むけのカウンセリングを行っていた私たちは、

 このたび治療院を開くことになりました。

 ここには毎日、悩める同性愛者や、ガチヘテロの方がいらっしゃいます。

 ほら、また一人。

梓「すいませーん……」カランカラン

憂「おはようございます」ニコッ

梓「あの、ここって基本レズの人が来てもいいんですよね?」

憂「はい、女性の方ならどなたでも、治療からご相談まで受け付けております」

梓「よかった……えっと、ちょっと最近ヘテロぎみかなって思って、診察を受けにきたんですが」

憂「ご予約の電話は?」

梓「あ、いえ、していません。だめでしたか……?」

憂「いえ、大丈夫ですよ。それでは待合室でお待ちください」

憂「おねえちゃ……先生の準備ができましたらお呼びしますので、ここに名前を」

梓「はい、なーかーの、あずさ、と」

……

憂『おねえちゃーん! 患者さんだよー!』

唯「ん、んんぅ……」

唯「ふぁ。もう朝か……」

唯「よしっと」スタッ

 モゾモゾ

唯「今日も世のため、頑張りますかあ!」

憂『おねえちゃんってばー!』

唯「今いくよー!」


唯「ほっ、ほっ、ほっ」

憂「おはよう、お姉ちゃん。……うわっ、また入院の患者さんと寝たの!?」

唯「わかるー? 澪ちゃんったら昨日すごかったからねー」

憂「うぅっ……とにかく顔くらい洗ってよ、よだれとか愛液とかガビガビだよ……」

唯「もー、憂はうるさいなあ……しょーがない」

 サー バシャバシャ

唯「よしっ!」

憂「はい、顔拭くよ」

唯「んむぐむぐ……」

憂「さて、これでいいかな」

唯「あ、憂ちょっと」

憂「ん?」

 チュッ

憂「……もうっ」

唯「えへへ。それで、患者さんは?」

憂「ええと、ヘテロぎみのレズの方だって。とりあえず診察してあげてくれる?」

唯「オーケー、カモン!」

憂「中野さん、どうぞ!」ガチャ

……

梓「よ、よろしくおねがいします」

梓(うわぁ、受付の人もだけど、すっごく綺麗な先生だ!)

唯「そんなに緊張しなくていいよー。はい、ここ掛けて」

梓「あはい、失礼します」

唯「うふん。なかなか君かわいいね」サワッ

梓「ひえっ!」

憂「お姉ちゃん、患者さんからかわないの」

唯「ほんとだよう。ねぇ? でもそんな怖い顔してたら台無しだなー」

梓「あ、あのっ、えっと、私、ヘテロ治療院って初めてで……なにされるのか」

唯「んー、うちの院ではもともとセラピー的なカウンセリングが主だからね」

唯「怖いことはしないよ。安心して」

梓「は、はぁ……」

憂「ものは言いようだねぇ」

梓「!?」ビクッ

唯「憂っ! ……こほん。怖いことしないのは本当だよ?」

梓「あ、あはは……それならいいんですが」

唯「んー……えーっと、中野梓さん、だね。とりあえずちゅーするよ?」

梓「えっ」

唯「ん……ちゅううぅ」

梓「んううぅぅ!?」


唯「ぷは。うん、なかなか」

梓「は……うあぅ……」

唯「んでー、ヘテロぎみだって話だけど、またなんで?」

梓「あ、え……あ?」

憂「ごめんなさいね、うちの先生、タイプの子がくるとこうやってちゅーしちゃうの」

憂「でも、先生のお気に入りってことだから、がんばってヘテロ治してくださいね?」

梓「あ……は、はいっ」

唯「梓ちゃん、もう一度きくけど、自覚症状はどんなの?」

梓「ええとその……実は昨日、つい、キュウリでオナニーをしてしまって」

梓「そんなつもりじゃなかったんですけど、まさかって怖くなって、診察してもらおうかと」

唯「あー、多いタイプのヘテロの初期症状だね」カキカキ

憂「えっ」

梓「そ、そうなんですか!?」

唯「そんなわけで梓ちゃんは即刻入院、1日24時間わたしとのえっちを処方しよう!」

憂「落ち着け!」バコン

唯「あたたつ……」

梓(いたそー……)

憂「フン」

唯「うぇ……まあ、それは冗談として。さっき私にちゅーされて、どうだった?」

梓「それはその、ドキドキしました……」

唯「もっとしたいって思った?」

梓「……はい」

唯「その先も?」

梓「……はい、先生に抱かれたくなりました」

唯「なら、ふつうに欲求不満がたたっただけだね」

唯「ちゃんとしたくなったとき、女の子を思ってオナニーすること!」

梓「あ……え? はぁ、はい」

梓(正直に答えたのにえっちさせてくれないんだ……)

唯「ただ念のため、軽く治療のほう……いい、憂?」

憂「んーまあ、性欲もたまってるみたいだし抜いてあげようか」

梓「あれ? 結局健康なのか病気なのかどっち?」

憂「中野さん、こちらの治療室へどうぞ」

梓「なんか変な煙があふれでてるんですけど……」

憂「ちょっとえっちな気分になるだけで無害だから大丈夫ですよ」ニコニコ

梓(絶対「ちょっと」じゃないな、あの笑顔……)

唯「ねぇー、憂も一緒にやろうよー。梓ちゃんの最高にかわいいとこ見たいなー♪」

憂「仕事があるからダーメ」

唯「ぶー。まあいいや、たくさんしようね、あずにゃん!」

梓「あずにゃんって誰です!?」

 バタンッ

……

憂「おだいじにー」

梓「ど、どうも……」

 カランカラン

梓「すっごいお金とられた……行きつけのレズソープより3000円も高い……」

梓(でも……)

梓「唯先生……」

梓「……バナナでも買って帰るかな」

憂『お姉ちゃん! どこが「軽く治療」なの! フラッフラだったじゃん!』

梓「」ビクッ

唯『あうぅ、だってあずにゃん可愛すぎてぇ……』

梓「……たしかにヘテロ治療院、怖いところであった……」

……

唯「あー。メガネっ子こないかなー」プニプニ

憂「……患者さんの診察中に無駄口叩かないの」

唯「ねぇきみ、メガネかけたら可愛くなるんじゃないかな?」

菖「えぇ、そうかなあ?」

唯「ちょっとここにあるから、どれかかけてみてよ。可愛かったらちゅーしたげるから」ガラッ

菖「じゃあこれを……」

憂「やれやれ……」

 カランカラン

憂「あっ、患者さんかな」

和「すいません、予約していた真鍋ですけど」

憂(メガネっ子来たよ、お姉ちゃん!)

唯「かわいいー! んーちゅー!」

菖「んっ、せんせぇ……」

憂「真鍋さんですね。ええと……弟がいらっしゃるので、不安だと」

和「ええ、だから薬をと……」

憂「お話しましたけど、規則なので診察をしないと薬はお渡しできないんですが、大丈夫ですか?」

和「わかってるわよ。よろしく頼むわね」

憂「ではそちらに掛けてお待ちください。順番来ましたらお呼びします」

憂(さてと……)

唯「わっ、わたしもう辛抱たまんないよ菖ちゃん! えっちしよう!」

菖「んー、どうしよう? 今日バイトあるんだよねー」

唯「診察料割り引いとくから! あと菖ちゃんの好きなようにしていいよ!」

菖「よっし、じゃあサボっちゃおっと!」

憂「ゴルァー!!」

唯「ひゃうっ!」ビクッ

憂「治療の必要もないのにえっちしようとしないの! 予約の患者さんが待ってるんだよ!」

唯「で、でも……見て憂、菖ちゃんかわいいでしょ!」

憂「お姉ちゃんの仕事はなあにかな?」

唯「あう……」

菖「……なんか、しけちゃったね。また来るね、唯先生!」

唯「あっ、うん……」

 カランカラン

唯「……ああっ、メガネと診察料もらってない!」

憂「お姉ちゃんが勝手にキスしただけでしょ。なにが診察なの」

唯「太もも見せて心音とか聴いたもん! あ、健康だったよ!」

憂「それは良かったね。で、次の真鍋さん。年の離れた弟がかわいいらしいから、お薬出すために診察してあげて」

唯「ほーい」

憂「それじゃ……真鍋和さーん、どうぞー!」ガチャ

和「失礼します……!」

唯「お、メガネっ子だ! しかもかわいいっ!」

 タタタッ

憂(患者に抱きつく医師ってなあ……)

 ガバッ

和「……なにこの子ちょう可愛い!」ギュウッ

唯「うぎゅ!」

憂「!?」

和「名札見せて……唯! 唯ちゃんっていうの!? きゃー!」

 チュッチュッチュッ

唯「んっ、ちょっ、和ちゃ」

唯「ぷぁ、いきなりディープはっ……」

和「ねぇあなた、この子持って帰っていいわよね!」

憂「すいません、それでも院長なので持ち帰りは……」

憂「かわりに、治療として料金をいただくことになりますが、そちらの治療室でえっちならどうぞなさってください」

和「恩に着るわ!」

唯「ちょっと、憂! あんた仮にも私の恋人でしょ! なんとも思わないの!」

憂「いちいちなんとか思ってたら仕事にならないし」

唯「そっか♪」

 バタンッ

唯『いつもごめんなさああああうああああ!!』

憂(たまにいるんだよなあ、ああやってお姉ちゃんの魅力で豹変しちゃう人)

憂(それだけで治療になるし、しょっちゅう来てくれるからいい商売相手なんだけどね)


 ピピピ…

憂「おっと。お昼を作らないといけない時間だ」

憂「休憩中、と」カシャ

……

憂「んふふーんふふーふふんーふふー♪」オリョウリオリョウリ

憂「さてと。患者さんたちに持っていかないと」

憂(って、3人だけなんだけどね)

憂「よっと……秋山さん、昼食です」ガララ

澪「ああ……ありがとう」

澪「……なあ憂ちゃん、私はまだここから出られないんだろうか」

憂(……秋山さん、お姉ちゃんのお気に入りだからなあ)

澪「私は絶対に律が好きだよ。あんな迷いはもう起こさない」

憂「いや、もうぶっちゃけ退院してもいいとは思うんですけど」

澪「……そうなんだよな。今はまだ、律に顔を合わせる勇気がないんだ」

憂「ここにいればいるだけその勇気はすり減ると思うんですけど」

澪「でも私は、律が迎えに来てくれるんじゃないかって思うから……まだ、ここにいるよ」

憂(もう帰ってよぉ……)

……

憂「和田さん、お昼です」ガララ

晶「……おう」

憂「お昼寝でしたか」

晶「まーな……ここに来てから、すっかり夜型だよ。静かな朝が好きなんだけどな」

憂「だったら、早く出れるように努力しましょうよ」

晶「……んー、そうだな」

憂「……まだあの人好きなんですか?」

晶「意地になってるだけだと思うけどな。でもそれって、完治じゃねーんだろ」

憂「はい。全ての気持ちがなくなるまで、ここにいてもらいます」

晶「もうあのボケ先生に抱かれるのも飽きたよ……」

晶「私はどっちかといったら……憂、お前を抱きたいんだけどな」

憂「……なら、先生がいいって言ったら、今夜伺います」

晶「へっ。一途なもんだ」

憂「和田さんもですけどね」

晶「うるせぇ。ほら、残りの飯、冷めるぞ」

憂「はい、それでは」ガララ

憂(……お姉ちゃん、だめって言ってくれるかな)

憂(言うだろうな……晶ちゃんは私のものなの! って)


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最終更新:2011年08月15日 20:45