ひょんな事からドラクエの魔法が使えるようになった梓。
合宿で魔法を使ったいたずらをして以来、軽音部のメンバーにも周知の事実となった。
そんな梓達のある日のお話。


澪の部屋

澪(…眠れない)



部室

紬「どうしたの?澪ちゃん。ここのところ元気なさそうな気がするんだけど」

澪「実はここ最近ほとんど眠れなくて」

律「そういえば、澪最近ぼーっとしてること多いよな」

澪「そうなんだよなー。授業もあまり耳に入らないし」

梓「今も眠いですか」

澪「うん、かなり」

梓「私、人を眠らせる魔法も使えますよ。良かったらかかってみませんか?」

澪「本当か!うーん害とかないかな?」

梓「大丈夫です」

澪「じゃあ、お願いしようかな」

梓「はい、じゃあ澪先輩以外の皆さんは少し離れててください」

唯「おっけー」

唯達は部屋の隅の方に移動する。

梓「それではいきますよー。ラリホー!」

澪のまわりを紫色の霧が渦巻く。
こてっ

澪「…」

澪は静かな寝息を立てて眠り始めた。
すーすー

唯「おおー」

梓「うまくいったみたいですね」

紬「気持ちよさそうに眠ってるわ」

唯「ほんとだねー」


梓「澪先輩、私の顔は実はパンでできてるんです」

澪「なんだってー」

梓「ほっぺのところ、少しだけなら食べてもいいですよ」

澪「えっ、いいの?」

梓「特別ですよ」

澪「じゃ、じゃあ、一口だけ。いただきます」

かぷっ

梓「きゃっ、くすぐったい」

もぐもぐ

澪「おいしい。梓はクリームパンだったんだ」

梓「喜んでもらえてなによりです」

唯「あずぱんまん、新しい顔だよー」

律「おーい澪、起きろー」

律「澪、そろそろ起きないと学校閉まっちゃうぞ」

澪「うーん、あずぱんまん」

律「澪ー」

澪「はっ、えーっと、律?」

律「そうだよ。目は覚めたか?」

澪「うん、はーっ、すっきりした」

澪「ありがとう梓。久しぶりに良く眠れたよ」

梓「どういたしまして、それは良かったです」



三日後

先生「では、この問題を秋山さん」

澪(ぼーっ)

先生「秋山さん!」

澪「はっ、はい。えっとどこでしたっけ?」

先生「…もういいです。では、中島さん」

澪(しょぼーん)



放課後

律「でさ、澪があてられたんだけど、澪のやつぼーっとしててさ、答えられなかったんだよ。私もやばいと思ったんだけどさ」

澪「もう!律っ!」

梓「へぇ、そんなことがあったんですか」

紬「そうなのよ。澪ちゃんが答えられないなんて珍しいわ」

澪「私としたことが、授業中にぼーっとしてしまうなんて…」

唯「大丈夫だよ、澪ちゃん。私なんか授業中に当てられて答えられない事なんてしょっちゅうだよ」

律「私もたまに答えられないぞー」

澪「うー、補修組と同レベルかぁ」

律「補修組とはなんだー!」

唯「なんだー!」

梓「それじゃあ、澪先輩が眠れないのってまだ続いてるんですか?」

澪「うん、そうなんだ」

澪「梓が魔法をかけてくれた次の日は結構楽だったんだけどな」

澪「でもやっぱり眠れないから、しばらくすると元に戻っちゃって」

律「私から見ても、最近の澪は元気ないんだよな。」

唯「私の大福半分あげるから、澪ちゃん元気出して」

澪「あ、ありがとう、唯」

梓「唯先輩が自分から大福を半分差し出すとは…。これはよっぽどのことですね」

紬「そうだ!」

律「どうした、むぎ?」

紬「いい事を思いついたわ。澪ちゃんと梓ちゃんが一夜を共にすればいいのよ!」

澪「ななな何を言いだすんだ、むぎ///」

梓「そうですよ!むぎ先輩」

紬「もとい、梓ちゃんが夜寝る前に魔法をかけてあげればいいのよ」

澪「なんだぁ」

梓「そういうことですか」

ほっ

紬「それに、私は澪あずもアリだと思うわー」

うふふっ

律「あー、でもそれはいい案かもな」

澪「うーん、でも帰ったら勉強しないといけないし」

律「たまには気分転換って事でいいんじゃないか?」

澪「うーん…、確かに私もぐっすり眠りたいし…。一日だけならまぁいいかな」

梓「本当にいいんですか?迷惑じゃないですか?」

澪「うん、受験勉強の事がなければこっちから頼みたいくらいだし、構わないよ」

梓「あっ、でも今日は家に来るのはちょっとまずいんだった」

澪「今日はパパはいないから、家に来ていいよ」

梓「では、澪先輩の家にお邪魔します」

唯「せっかくだから、みんなで澪ちゃん家行こうよう」

梓「唯先輩は本気で勉強しなきゃヤバいじゃないですか」

紬「それに、二人の仲を邪魔したら悪いわよ、唯ちゃん」

澪、梓「えっ」

紬「うふふっ、なんでもないわー」



放課後、帰り道

澪と梓がいっしょに歩いている。
てくてく

梓「澪先輩の家に行くなんてなんだかドキドキします」

澪「そうかな?唯の家に行くときもそんなにドキドキするのか?」

梓「唯先輩の家に行くときは全然ドキドキしないです」

澪「そうなの?」

梓「はい、なんというか唯先輩の家は割とオープンな感じで…憂もいるし」

澪「そっか」

梓「はい」

澪「…」

梓「…」

澪「…」

梓「…」

梓(なんだか、気まずい。何か話さないと)

梓「そういえば、バクマンどんどん新巻出てますよね。読んでますか?」

澪「ごめん、バクマンは読んでないんだ」

梓「そうですか、すいません」

澪「…」

梓「…」

梓(うわぁ、よけい気まずくなっちゃったよ)

梓「…」

澪「ところでさ」

梓「はい?」

澪「梓は…悩みとか、ある?」

梓「悩み、ですか?そうですねぇ、最近ギターの上達が伸び悩んでるというか」

梓「ちょっとスランプなんです」

澪「そっか、梓は熱心なんだな」

梓「そんな事ないですよ。そんな事言ったら、澪先輩だって熱心じゃないですか」

澪「私は…梓程じゃないよ」

梓「でも、唯先輩や律先輩と違って、部室でも真面目に練習してる事多いし…」

澪「でも、放課後ティータイムの中で梓が一番音楽に対してひたむきだと思うな」

梓「そうですかね?」

澪「うん」

梓「澪先輩だって頑張ってるじゃないですか」

澪「それはそうだけど、やっぱり梓には敵わないよ」

梓「そんな事ないですって!私、澪先輩が一生懸命なの知ってます」

澪「いや、私は…」

梓「澪先輩は頑張ってます!」

澪「…梓は一度言い出すと引かないよな」

梓「だって…」

澪「いや、いいんだ…ありがとう」

少し微笑む澪。

梓「お礼を言われるような事は言ってません」

澪「うん…、そうだな」

梓「そうです」


澪「着いた。ここが私の家だ」

梓「はい」

澪の家は二階建ての、割と普通な感じの木造住宅だ。

梓(ここが澪先輩の家かぁ)


澪「ただいまー」

梓「おじゃましますー」

澪達は二階にある澪の部屋に上がって行った。

澪「ここが私の部屋だ」

梓「わぁ」

澪の部屋は物が全く散らかってなく、整然と整頓されている。
掃除もきちんとされているようだ。
家具はシンプルな物が多く、それらが壁に据えられている。
一辺の壁の中程にはテレビが置いてある。

梓「素敵な部屋です」

澪「うーん、ちょっと汚いかな?」

梓「全然汚くないです。これが汚いなら唯先輩の部屋はゴミ置き場です」

澪「前から思っていたけど、梓は唯にはホント手厳しいよな」

梓「澪先輩だって律先輩には厳しいじゃないですか」

澪「私が律に厳しいのとはちょっと違うんじゃないかな?」

梓「そんな事ないです」

澪「うーん、そっか」

梓「でも、全然汚くないですよ。なんだかいい匂いもする気がしますし」

澪「おととい、消臭剤を撒いたからその匂いかな?」

梓「そうだと思います。澪先輩の部屋は憂の部屋と同じくらい綺麗です」

澪「あー、確かに憂ちゃんの部屋は清潔そうだな」

梓「そうなんです。平沢家は憂の部屋と唯先輩の部屋が隣同士とは思えません」

澪「唯の部屋ってそんなに汚かったっけ?」

梓「それは憂が唯先輩の部屋を頻繁に掃除してるからです」

澪「あー、なるほど。憂ちゃんのおかげなのか」

梓「憂のおかげです。以前、憂が『お姉ちゃんの部屋はすぐに散らかって掃除しないといけなくなるから、お姉ちゃんの部屋に入る理由ができて嬉しいな』って言ってました。」

澪「う、憂ちゃんらしい…」


澪「ところで、梓、夕飯までもう少しかかるらしいから、先にシャワーを浴びてきたらどうだ?」

梓「はい。ではお言葉に甘えて、そうさせてもらいます」

澪「着替えは私の服を着るといい。流石に下着までは貸してあげられないけど」

梓「はい、ありがとうございます」

澪「風呂場まで案内するよ」

梓「はい」

階段を下りる二人。

澪「じゃ、私は部屋にいるから」

梓「はい」


ざー
ぷしゅぷしゅ
ごしごし
ざー
ぷしゅぷしゅ
ごしごし
ざー
ぷしゅぷしゅ
ごしごし
ごしごし
ざー
すりすり

梓(あー、すっきりした)

梓(予想はしてたけど、澪先輩の服ぶっかぶかだなぁ)


梓「澪先輩、上がりましたよー」

澪「うん、じゃあ、私も入ってくる」

梓「はい」



夕食後

梓「って、何澪先輩の入浴シーンカットしてるんですか!」

澪「恥ずかしいじゃないか///」

梓「何恥ずかしがってるんですか、せっかくのサービスシーンでしょう!」

澪「それに同じ描写を二回繰り返しても退屈じゃないか」

梓「繰り返すのが嫌なら澪先輩の方を描写しましょうよ!少しは読者の需要も考えてください」

澪「そんな事ないよ。梓にも需要はあるさ」

梓「どんな需要ですか!」

澪「ろ、ロリ好きとか、ひ貧乳好きとかー///」

梓「恥ずかしがりながらひどい事言わないでください!それに、貧乳じゃないです!」

澪「ごめん///」

梓「もう」

梓「ところで、ホントに勉強しなくても大丈夫なんですか?何だったら、私、マンガでも読んでますよ」

澪「流石に、来てもらっておいてそれは悪いよ」

梓「私に遠慮しなくてもいいんですよ」

澪「いや、遠慮とかじゃなくて…、礼儀かな」

梓「礼儀ですか…。わかりました、じゃあ遠慮なく居させてもらいます」

澪「うん、それに一日勉強しなかったくらいじゃ、そんなに成績は下がらないからな。また、明日からちゃんと勉強するさ」

梓「まぁ、澪先輩なら大丈夫ですね。唯先輩がそんな事を言ったら、全力でツッコミますけど」

澪「うん、でも『明日からちゃんと勉強するよ』って、いかにも唯が言いそうなセリフだな」

梓「実際、似たような事言ってましたね」

澪「やっぱりか」

梓「はい」


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最終更新:2011年08月24日 00:32