………
唯「(…という訳で和ちゃんの推薦でとんとん拍子に学園祭実行委員となった私)」
唯「(記念すべき初仕事となる放課後を迎えた訳です!)」
唯「(転校してきて間もない、つかさちゃんに色々教えてあげなくちゃ!)」
唯「(…と勝手に意気込んでいたんだけど………)」
絢辻「じゃあ平沢さん、早速各クラスから集めたアンケート用紙を
まとめるところから始めよっか?」
絢辻「あ、ここは…こう…ね?」
唯「あ、なるほど…」
絢辻「それにここは…こうやると要領が良いわよ」
唯「あ、本当だ!すごい!」
唯「(逆にどんどん教えてもらっちゃってます!)」
唯「つかさちゃん、パソコン詳しいんだね!」
絢辻「人並みだと思うけど…けっこう家でも使ったりしてるから」
唯「ねぇ、つかさちゃんは…なんで実行委員に立候補したの?」
絢辻「んー…、早くみんなの役に立つ事がしたかったからかな?
こうやって先頭に立って学園祭のお手伝いができるなんて素敵な事じゃない?」
唯「り、立派な理由だね」
絢辻「平沢さんは?」
唯「あ、唯って呼んでくれていいよ」
絢辻「えっ、…でも」
唯「私初日からつかさちゃんって呼んじゃってるし…」
絢辻「えっと、じゃあ……お言葉に甘えて…
唯ちゃんは何で立候補したのかな?」
唯「私も良い学園祭にしたいなって気持ちは勿論あるんだけど…」
絢辻「違うの?」
唯「一番はつかさちゃんを助けてあげたい!って思ったからかな」
絢辻「えっ、私を?助けたい…?」
唯「うん…なんか最近迷惑掛けてばっかりだし…
少しでもお役に立てればと思って…」
絢辻「そんなの気にしなくていいのに…
でも唯ちゃんの気持ちはとっても嬉しいわ
ありがとう♪」
唯「えへへ…一緒に頑張ろう!」
絢辻「うん、頼りにしてます♪」
………
唯「(つかさちゃんは凄いなぁ…
あれだけのアンケート用紙すぐに終わらせちゃうんだもん)」
唯「(それに物知りで、優しくて、美人さんで、運動もできて…
まさに優等生だよね!将来結婚する人は幸せなんだろーなー)」
唯「(それにしても実行委員のお仕事って大変なんだなぁ…和ちゃんすごいよ…)」
唯「(つかさちゃんがいなかったら今日のアンケート絶対終わらなかったよ…)」
唯「(ん?そういえば私、つかさちゃんにお返しする為に立候補した筈なのに…)」
唯「(なんか逆にどんどん借りを作ってる様な…)」
唯「(……)」
唯「(ま、これからだよね!)」フンス
………
絢辻「(不思議な人ね、些細な事なのに私に恩を返そうと必死になってる)」
絢辻「(要領が悪いのに軽音部と掛け持ちしてまでしちゃって…
自分がこなせる範囲内でそれなりに頑張ってれば良いのにね)」
絢辻「(自分で自分の首を絞めてるようにしか私には見えないけれど…)」
絢辻「(あ、いけないいけない…
どうも最近、この時間はあの人の事ばっかり考えちゃうなぁ)」
絢辻「(気になってる…?って事なのかな?)」
絢辻「(ってそんなワケないでしょ!女の子同士で!)」
絢辻「(とにかく勉強!集中してやるんだから!)」
………
和「唯、絢辻さん、お疲れ様」
唯「あ、和ちゃん!どうしたの?」
絢辻「真鍋さん、お疲れ様」
和「学園祭準備の方はどうかと思って様子を見に来たのよ」
唯「そうなんだ!」
和「絢辻さんどう?唯、ちゃんとやれてるかしら?」
絢辻「ふふ、ええ
唯ちゃんのおかげで大分捗ってるわ」
和「そう、良かったわ、迷惑かけてないか心配だったのよ」
唯「和ちゃん…保護者じゃないんだから…」
和「そう、何か手伝う事があったら言ってね?
生徒会も力になるから」
絢辻「今のところは大丈夫です
ありがとう、真鍋さん」
唯「和ちゃん、ありがとー」
和「もう日が暮れてきてるけど、あんまり遅くならない様にね?」
唯「はーい」
絢辻「ええ」
唯「(なんだか私…既につかさちゃんの補佐的な役割になっちゃってるよ…)」
唯「(………)」
唯「(ま、しょうがないよね!)」
唯「(私は私のやるべき事をやろう!)」
絢辻「唯ちゃん、ちょっとトイレ行ってくるわね」
唯「うん、いってらっしゃい」
唯「(ふぃ~…あともう少しだよ…えーと去年の発注データってこれだっけ…)」
唯「(大変だけど…けっこう慣れてきたかも!
つかさちゃんのおかげでようやくパソコンにも慣れてきたよ!
りっちゃんが見たらきっと驚くだろうなぁ、私のこのキーボード捌き)」タターン
唯「(唯!私にパソコン教えてくれ!…なーんて言ってきちゃったりして……ん?)」
唯「この手帳…誰のだろう?」
唯「床に落ちてるし…落し物かな?」
唯「っていうかさっきは落ちていなかったような…?」
唯「ひょっとしてつかさちゃんが落として行っちゃったのかな…?」ヒョイ
唯「名前、書いてないや…」
唯「うーん」パラパラ
唯「中にも書いてないなぁ」
唯「きれいな字だなー……って、うわっ」
唯「なんか別人…?の人の字も混ざってる…なんだろこれ」
唯「とりあえずさわちゃんに届けよ」
絢辻「唯ちゃん」
唯「あ、つかさちゃん!おかえり」
絢辻「それ…私の手帳なの」
唯「あ、そうだったんd」
絢辻「中…見てたよね?」
唯「えっ?…あ、えっ…(なに?近い!顔が近いよつかさちゃん?!)」
絢辻「 見 て た よ ね ? 」
唯「(えっ…なに…?!なんなの?!…この威圧感!)」
絢辻「答えなさい!」
唯「ひっ!」
絢辻「……」
唯「はいっ!…あっ…あの…見ました…けど…まずかったかな?」
絢辻「だよねー……ふーん…」
唯「ご、ごめん…悪い事しちゃったよね…?」
絢辻「はぁ…やっぱ鍵つけとくんだったわ
よりにもよってあんたみたいなどん臭い人間に見られるなんて」
唯「つ…つかさちゃん?」
絢辻「残念ね、平沢さん……私の手帳を覗くなんて…余計な詮索するからこうなるのよ?
あなたこれから…とても気の毒な事になるわ」
唯「ど…どういう事?(なんだかつかさちゃんが怖いよ…)」
絢辻「…で、どこまで見たの?」
唯「どこまでって…?」
絢辻「手帳の事よっ!いちいち確認しないで!」
唯「あっ、えーと、綺麗な字のところと…(怒鳴らないでよぉ…)」
絢辻「……」
唯「ちょっと汚い字のところ…かな?」
絢辻「…完全にアウトね……」
唯「えっ、アウトって…?」
絢辻「あーあ…クラスメイトが一人減ってしまうのは…」ジリジリ…
唯「…え……え?(手が…近づいて…なに?やだ!怖いよ……!)」
絢辻「とても残念な事ね!」ヒュッ…
唯「つ…つかさちゃん!待って!」
絢辻「……?」ピタ
唯「た…確かに手帳見ちゃったけど…中身は全然読んでないよ?!」
絢辻「証拠は?」
唯「えっと…ぴらぴらってめくっただけだし…!内容とか全然解らなくて!」
絢辻「証拠になってない、あたしはその現場を目撃していないし信用もできない」
唯「だ、だったら…!これで…どうかな?!」スッ
絢辻「…なにこれ?」
唯「ケロンだよっ!私の大切なケロンのお人形!」
絢辻「 は ? 」
唯「ケロンは私の大切なお人形だから…これをつかさちゃんに預けるよ!」
絢辻「意味が解らないんだけど、説明してくれる?」
唯「つまり…ケロンに誓ってあの手帳の中身は見てませんって事だよっ!」
絢辻「あたしは証拠を求めているんだけど?
論点がずれすぎていて、お話にならないわ」
唯「これで…納得してもらえなければ…つかさちゃんの思うようにすればいいよ!」
絢辻「………」
唯「私は本当にざっとしか見ていないんだよっ!信じて…つかさちゃん…」
絢辻「(本気で言ってるのか、ふざけているのか……)」
唯「…つかさちゃん……?」
絢辻「はぁ…」
唯「…?」
絢辻「なんだか、あなたと問答する気も失せてしまったわ」
唯「えっ…それは……?」
絢辻「平沢さんって本当に掴みどころのない人ね
何を考えているのかあたしにはまったく理解できないわ」
唯「そ、そうかな……?」
絢辻「自覚が無いのも大問題ね…もう…いいわ
今回の事は平沢さんの提案通りその人形で見逃してあげる」
唯「ほ、本当に!?ありがとう!つかさちゃん!」
絢辻「その変わり…今回の事…誰にも言わないって約束できる?」
唯「も、勿論だよっ!神様に誓って誰にも言いません!」
絢辻「神様じゃなくてあたしに誓いなさい、いいわね?」
唯「はい、つかさちゃんに誓って誰にも言いません!」
絢辻「………」
絢辻「絢辻さんは裏表の無い素敵な人です、はい復唱」
唯「えっ?」
絢辻「復唱してって言ったの!」
唯「あ、えっと…」
絢辻「絢辻さんは裏表の無い素敵な人です」
唯「あ、絢辻さんは裏表の無い素敵な人です」
絢辻「よくできました」ニコッ
唯「(うぅ…まさかつかさちゃん…普段は猫かぶってたりするのかな…)」
絢辻「じゃあ、下校しましょうか、もうこんなに暗くなっちゃった事だし」
唯「う、うん」
絢辻「急いだ方がいいみたいね、見回りの時間もそろそろだし」
唯「あの…つかさちゃん……」
絢辻「なに?」
唯「手帳、勝手に見ちゃって…本当にごめんなさい…
誰だって勝手に覗かれたら嫌だよね」
絢辻「済んだ事だし…もういいのよ
私もまさか落とすなんて思ってもいなかったしね」
唯「…ご、ごめんなさい……」
絢辻「それより!!」
唯「わっ!」ビクッ
絢辻「…ちゃんと約束は守るのよ?」ニコッ
唯「は、はいぃ……(笑顔が怖いよ…つかさちゃん……)」
………
唯「はぁ……」
憂「どうしたの?お姉ちゃん、ため息なんてついちゃって…」
唯「憂ぃ……」
憂「…なにかあったの?」
唯「人は見かけによらないものだね」
憂「なあに?それ…」
唯「ううん、なんでもない!」
憂「…変なお姉ちゃん」
唯「(いつもにこにこで優等生のつかさちゃんにあんな一面があるなんて…)」
唯「(普段のつかさちゃんとのギャップが激しすぎるよ…)」
唯「(とにかく今日起こった事は誰にも言わない方が良いよね!)」
唯「(でないと…私の命が危ないし……)」
唯「(…でもなんだか、つかさちゃんの新しい一面が知れてちょっと嬉しい…かも?)」
唯「(これ知ってるの、きっと全校生徒の中で私だけなんだろうなぁ)」
唯「(でもなんかそう思うと、本当に嬉しくなってきた!
…どうしてだろう…?)」
………
絢辻「(あーあ…なんであんな人形渡されたくらいで納得してしまうのかなぁ
手帳の中身を見られた事は揺るぎない事実だっていうのに)」
絢辻「(あの子と会話すると、調子狂わせられるのよね
でも…口止めは成功した訳だし、現状できる事は何もない…か
あの性格…わざとやってる様には思えないけど…)」
絢辻「(それでも信用するのは危険ね
ま、漏れたら漏れたで最善の手を打てばいいだけの事
あの短時間じゃ見られたとしても多くは把握できていない筈
彼女の頭であれば特にね
あのクラスなら私であればうまく立ち回れる)」
絢辻「……」
絢辻「……もしもの時の為に追加しておくか…」
絢辻「……」
絢辻「
真鍋和……生徒会所属、委員会は生徒会からの派生であるのにも関わらず
こちらからの要求が無い限り学園祭の仕事を一切受けようとはしない
生徒会の責務から考えるに積極性、責任感を欠いた行動である
また、部活と委員会の掛け持ちという無理がある形で平沢唯を委員会に
推薦した張本人である為、学園祭の仕事を軽んじているという認識に
疑いの余地は無い」
絢辻「………」
絢辻「……こんなところかな」カリカリ
絢辻「さて…勉強の続き続き…」
………
澪「何やってるんだよ!律!」
律「お許しくださいませー…!」
唯「ん?どうしたの二人共」
梓「あ、唯先輩」
唯「最近なかなか顔出せなくてごめんね?委員会の仕事が忙しくて」
梓「いえ、今日は練習できそうなんですか?」
唯「うん、早めに終わったから
それよりりっちゃんまた何かしでかしたのー?」
澪「律ったら講堂の使用届けの提出、また忘れてたみたいなんだ」
唯「へっ?」
澪「今日は唯が部活に出れるからみんなで講堂で練習しようって話になってただろ?」
律「すっかり忘れてました!ごめん!」
澪「まったくもう…」
唯「りっちゃん、使用届けの紙は書いてあるの?」
律「うん、一応これなんだけど…」
唯「これから使わせてもらえないかどうか、私が聞いてみるよ」
律「い、今からでも間に合うかな?!」
唯「学園祭準備に伴う講堂の使用はつかさちゃんが担当してるんだ
多分大丈夫だと思うよ」
澪「そうなんだ、ごめんな唯…」
唯「これくらいお手の物だよっ!」
律「宜しくおねがいしますっ!」
唯「うん、ちょっと待っててね?」
梓「(なんか唯先輩が別人みたいに頼れる存在になってきてる…)」
唯「あいたっ」ドガッ
澪「あっ、足元!気をつけて!」
唯「えへへ…転んじゃった…」
梓「(あっ、でもやっぱりちょっと抜けてるかも……)」
………
唯「(話の流れでつい引き受けちゃったけど……
昨日つかさちゃんとあんな事があったばっかりだし…)」
唯「(ちょっと緊張しちゃうなぁ……)」
唯「(あの時のつかさちゃん本当に怖かったなぁ…
もしかしてこの用紙も門前払いされちゃったりして…)」
唯「(えっと、確かつかさちゃんは図書室にいる筈なんだけど…)」
唯「(あ、みっけ!)」
唯「つかさちゃん!」
絢辻「あ、唯ちゃん、どうしたの?
今日はこれから軽音部の練習じゃなかったっけ?」
唯「(…どうやら優しいつかさちゃんの方だよっ、良かった…)」
絢辻「ふふ、どうしたの?」
唯「あのね、実は軽音部としてお願いがあるんだけど…」
絢辻「何かしら?」
最終更新:2011年08月27日 02:02