…
絢辻「そういうことなら…仕方ないもんね」
唯「そ、それじゃあ!」
絢辻「うん、確かこの時間…ブッキングしてる部は無い筈だから
講堂使用してもらって問題無いわよ」
唯「やったぁ!」
絢辻「先生には私の方から言っておくから」
唯「ありがとう!つかさちゃん」
絢辻「ふふ、軽音部の練習…頑張ってね?応援してるわよ♪」
唯「うん!期待に応えられる様に頑張るよ!」
絢辻「………」
絢辻「(うーん……)」
………
唯「(ふいー…今日は講堂で良い練習できたなぁ
つかさちゃんのおかげだよ)」
絢辻「唯ちゃん」
唯「あ、つかさちゃん!さっきはありがとう」
絢辻「いいのよ、こんな時間までお疲れ様
もし良かったら一緒に帰らない?」
唯「うん、いいよ!一緒に帰ろう」
絢辻「良かった♪」
唯「(おぉ…弾けるような可愛い笑顔…)」
絢辻「あはは♪そうなんだぁ」
唯「(も…もしかしてこの前の事って夢でも見ていたんじゃ…)」
絢辻「へぇ…それは知らなかった
唯ちゃんのお話ってとっても面白いわ♪」
唯「(そうだよ、そうに違いないよ!この間の事は何も無かった
何も無かったんだ!夢だったんだ!)」
絢辻「…そろそろいいかな」
唯「えっ?」
絢辻「平沢さん、これ」
唯「これって…」
絢辻「ケロン…だっけ?」
唯「………」
唯「(現実でした……………)」
絢辻「あたしが持っていても意味がないし
これは平沢さんにお返しするわ」
唯「でも…それじゃああの時の約束が…」
絢辻「いいのよ、大事なお人形なんでしょ?
だったら大切にあなたが持ってなさい」
唯「でも…どうして突然…?」
絢辻「……」
絢辻「あたしと違ってあなたは猫をかぶってないと思ったから」
唯「え?どういう事?」
絢辻「そんな人形を貰わなくても
あたしはあなたを信用するって言ってるの!」
唯「あ、えっと…」
絢辻「それともなに…?
私が猫かぶってる事…既に誰かに喋っちゃったとか?」
唯「それはないよ!つかさちゃんの約束は絶対守るよ!」
絢辻「よろしい
流石に私が見込んだだけの事はあるわね」
唯「………」
絢辻「なに?」
唯「つかさちゃんって…すごいよね」
絢辻「…なにが?」
唯「図書館で話した時も感じたんだけど
昨日の事って私が勝手に見た夢じゃないんだろうかって思ったんだぁ」
絢辻「それは…周りの目もあったしね
そう簡単にボロは出さないわよ」
唯「流石つかさちゃん…恐るべし…!だねっ!」
絢辻「割り切ってやってるだけ
慣れれば簡単よ?」
唯「そうかなぁ?…私にもできるかなぁ?」
絢辻「あなたには一生できない事かもしれないわね
人には得手不得手があるものだから」
唯「むむ…ばっさりだね…」
絢辻「ふふ、冗談よ」
唯「あ、つかさちゃん」
絢辻「ん?」
唯「つかさちゃん音楽とかって聴く?」
絢辻「ええ、勉強の合間に聴くようにしてるわ」
唯「そうなんだ!あの…これもし良かったら…」
絢辻「テープ?どうしたの?これ」
唯「気に入ってもらえるかどうか解らないんだけど…
私達軽音部の『ふわふわ時間』っていうのが入ってるんだ」
絢辻「へぇ、そうなの
ありがたく聴かせてもらうわね」
唯「えへへ…なんか照れるな」
絢辻「それじゃあ、私はこれで」
唯「うん、また明日ね」
絢辻「………」
唯「つかさちゃん?」
絢辻「平沢さん、一つ聞いてもいい?」
唯「なーに?」
絢辻「あたしに対してこんなに良くしてくれるのは何故なの?」
唯「え…?」
絢辻「だってあなたはこっちのあたしを知ってしまった訳でしょ?
それに放課後あんな事があったのなら
あたしだったらその人と距離を置くようにするわ
今後あたしと関わっていく中で、自分の身に不安を感じたりしない訳?」
唯「へ?だってそんなの…気にしないよ」
絢辻「どうして?」
唯「だって、つかさちゃんはつかさちゃんだもん
みんなの前でにこにこ可愛いのもつかさちゃん
私に厳しくパソコン教えてくれるのもつかさちゃん
全部ひっくるめて私の大好きな、つかさちゃんだもん」
絢辻「………」
唯「それにさっき、つかさちゃんはケロン無しでも
私を信用してくれるって言ってたでしょ?
そんな人に不安なんて感じないよ」
絢辻「まぁ、確かに言ったけど…」
唯「ね?」
絢辻「………」
唯「つかさちゃん?…どうしたの?」
絢辻「えっ…い、いや…
そんな事言われたの…初めての経験だから…」
唯「つかさちゃん?ほっぺた真っ赤だよ?」
絢辻「へっ?!…そ、そんな訳…無いじゃない?!」
唯「本当だよ~、えーと、はいっ鏡」
絢辻「…うっ」
唯「大丈夫??つかさちゃん」
絢辻「へ、平気っ!ちょっと熱っぽかっただけ!」
唯「もしかして風邪ひいてるの?今日は早く寝ないとダメだよ~?」
絢辻「あなたにそんな事言われなくても解ってるわよっ!
いちいちうるさわいね!」
唯「うー…怒られた……心配してあげたのに…」
絢辻「………」
唯「?」
絢辻「……ぁりがと……」
唯「え?」
絢辻「 あ り が と う って言ったの!
バイバイ!また明日ねっ!」
唯「えっ…あの、つかさちゃん?」
バタンッ!
唯「もぉ…素直じゃないんだから……」
唯「(でもでも…顔真っ赤にしたつかさちゃん可愛かったな~)」
………
唯「つかさちゃん!」
絢辻「……」
唯「おはよ~♪」
絢辻「あぁ、平沢さん、おはよう」
唯「風邪は治った?」
絢辻「ええ、大した事なかったからね」
唯「良かった~、私一人じゃ委員会の事できないもん」
絢辻「ええ、あたしもあなた一人に仕事を任せるのは心許ないもの
休む訳にはいかないでしょ?」
唯「う~…つかさちゃん…今日も言葉に棘が……」
絢辻「冗談よ、あ、平沢さん、これ」
唯「へっ?…なにこれ?」
絢辻「どう?できそうかな?」
唯「なんか円グラフできっちり書いてあるけど…これってもしかして…」
絢辻「そっ、あなたは純粋すぎて危なっかしいので
あたしがこれから管理してあげます」
唯「えぇ~~?!どういう事?!」
絢辻「まずは一日一日の時間の使い方を見直すところからね
委員会の仕事に加えて軽音部に所属している訳だから…厳しくなるわよ?
あ、それと勉強もあたしがきっちり教えてあげるから安心してね」
唯「そ、そんな突然言われましても…!」
絢辻「なに…?何か問題でも?」
唯「このスケジュール…少しというかそうとう無理がある気がするんですが…」
絢辻「あら…これでも甘めに組んだつもりなのよ?
こんなんで音をあげている様じゃ、先が思いやられるわね」
唯「せめてお菓子…ティータイムとか…」
絢辻「そんなものはありません!」
唯「やだぁぁぁぁぁ………!」
………
<放課後>
絢辻「それでここの予算の総計が…―――」
和「あ、それなら昨年度の数字を参考にしてもらって…―――」
唯「(…話についていけない……我ながら情けなし……)」
和「問題…無さそうね…すごいわ、絢辻さん」
絢辻「いえ、真鍋さんのアドバイスのおかげよ」
和「そんな事ないわ、私は何もしてないもの」
唯「(和ちゃんが感心してるよ、やっぱり凄いんだなぁ、つかさちゃん)」
絢辻「うーん……」
唯「どうしたの?…つかさちゃん」
絢辻「当日のスケジュール表、ここと…」
唯「うんうん」
絢辻「ここの間が、空きすぎている気がするの
当日、円滑に事を運ばせるには考え直す必要があるかもね」
唯「あっ、じゃあ軽いお芝居なんかやったらどうかな?」
絢辻「うーん…それだと、今からとりかかって間に合うかどうか不安だわ」
唯「そうかなぁ?」
絢辻「それに…肝心の人はどうするつもり?
わざわざやりたい人がいるとも思えないんだけれど…」
唯「ちょっと待ってて!」
絢辻「えっ?唯ちゃん?」
……
エリ「えっお芝居?」
唯「うん、少し時間が空いちゃいそうでさ…なんとかやってもらえないかな?」
エリ「うーん…」
唯「お願いエリちゃん!このとーり…!」ペコリ
エリ「ふふっ、わかったわ、私で良ければ力になるね」
絢辻「(へぇ…)」
姫子「お芝居かぁ、私にできるかな?」
唯「姫子ちゃんなら大丈夫だよっ!なにより私が見てみたいしっ!」
姫子「あはは、唯の頼みじゃ断れないもんね、わかったわ」
唯「ありがとー!姫子ちゃん!」
絢辻「……」
信代「わかったよ唯、私の演技力見せつけてあげる」
唯「期待してますっ!」
……
唯「なんとか人は集まったよ!これで大丈夫かな?」
絢辻「これだけいれば十分だと思うけど…脚本とかはどうするつもり?」
唯「ムギちゃんに頼んでみるよ、ムギちゃんそういうの得意なんだぁ」
絢辻「へぇ…琴吹さんが…知らなかったわ」
唯「なんとか大丈夫そうだね」
絢辻「……」
唯「つかさちゃん?」
絢辻「すごいのね…あなた」
唯「へっ?そうかな?」
絢辻「だって普通、みんなの前でのお芝居なんて引き受ける人いないわよ?
こんな短時間にこれだけの人数集めちゃうなんて…呆れた…」
唯「み、みんなのおかげだよ」
絢辻「それもあるでしょうけど、一番はあなたの人望が為せる技という事ね
あたしじゃ到底不可能な事だもの」
唯「そ…そっかなぁ…」テレ
絢辻「(引き受けた人達の気持ちも、
彼女のこの笑顔を見れば解らなくもないかな…)」
………
絢辻「……」カチャ
絢辻「……」
ボォォォォ………
絢辻「(委員会の仕事で、私が彼女に助けられる日が来るなんてね)」
ボォォォ…
絢辻「(どうかしてるわ、まさかこの手帳を自ら手放したいと思うなんて)」
絢辻「(彼女の屈託のない純粋な心が、あの人望に繋がるのでしょうね)」
ボォォ…
絢辻「(そんな彼女を近くで見ていると
必死にクラスメイトを観察して、粗探しに精を出していたあたしがバカみたい)」
絢辻「(本当に滑稽よね、惨めに思えるくらいに)」
シュウウゥ……
絢辻「全部燃えたみたいね…」
絢辻「……」
絢辻「……」
絢辻「こんな気持ち…初めて……」
絢辻「……」
絢辻「……」
絢辻「私は…キミの事が……」
最終更新:2011年08月27日 02:03