店員「すいません、当店は猫ちゃんお断りしてるんですよ……」
梓「!」ガーン
律「あらま。どうする? 他いく?」
紬「でも他にお店ないし……」
唯「じゃああずにゃんはしばらく外でお留守番だね」
澪「いい子にしてるんだぞ」
梓「……わかりました」
店員「よろしいですか?」
唯「はい」
店員「四名様入りまーす」
――――
梓「……お腹すきました」
JK「キャーかわいー!」
JK2「えらいねぇ、御主人様待ってるの?」ナデナデ
JK3「いい子だね」
梓「……」グゥー
JK「お腹すいてるっぽいよ!」
JK2「あたしお菓子あるけど!」
JK3「えー猫ってチョコたべていいのー?」
JK1「さー?」
ゲラゲラ ゲラゲラ
梓「……」イラッ
梓「……はぁ、最近はペットお断りなお店多くてヤだな」
梓「てかペットじゃないし」
梓「……私って何」
野良猫「こんにちわ」
梓「あ、ども……」
野良猫「最近よくみるね。この辺の子?」
梓「そうですけど」
野良猫「主人と一緒にひっこしてきたの?」
梓「いえ……」
野良猫「あれ? じゃあ君はどこからきたの?」
梓「どこからって……」
ナレーション:梓には悩みがあった。深い深い悩みだった。
ナレーション:しかしそれは人に言っても理解できない。いや、届きもしないのだ。
野良猫「森で生まれでもしたいのかい?」
梓「……私、実は人間なんです」
野良猫「はぁ?ww」
梓「……ほんとです」
野良猫「嘘つきは嫌いだな。あとついでに飼い猫も嫌いだった。じゃあね」
梓「うぅ……ホントなんですけど」
野良猫「猫はまっすぐ生きるもんさ」
ナレーション:それは数ヶ月前のこと。
ナレーション:梓たちは部室の物置の古い箱から、とあるものを見つけた。
唯『まぁまぁ! いいからいいから!』
梓『嫌ですよぉ、そんな汚い猫耳……』
澪『どうして物置にこんなものが……』
唯『つけてみようよ! あずにゃんはどんな猫耳でもきっと似合うよー』
梓『むぅ……一瞬だけですよ』
スチャ
梓『……あ、なんか変な感じします』
唯『おおお! 可愛いねぇ』ナデナデ
梓『えー、そうですかね』
律『どうでもいいけどほこりが舞ってるぞ、へくちっ』
梓『というわけで外しますね』
紬『もっと見たかったのに!』
唯『そうだそうだー』
梓『はいはい。また今度ー』
梓『……あれ?』
唯『ほえ? どうかした?』
梓『あれれ……んぐっ、あれ?』グイグイ
唯『あずにゃん?』
梓「……あ、あ゛」
梓『あ゛あ゛ぁぁあああ! 猫耳がとれませんん゛ん゛!!!!』
唯『とれないの?』
梓『とれないです……』
律『なんだよひっぱってやろうか?』
梓『……ほんととれないです』
律『よっしゃいくぞー』
ググッ
梓『あいだだだだ、勘弁してください髪の毛ちぎれちゃいます』
律『あっれー、なんでとれないんだよ』
紬『ねぇ……これ、付け根のとこ』
澪『……梓、ちょっとみせてみろ』
梓『はい』
澪『……くっついてないかコレ』
梓『はい?』
澪『……髪の毛っていうか、頭皮とくっついてるような……』ブルブル
梓『う、嘘ですよね……』
唯『ボンド?』
梓『ボンド塗ったんですか!?』
唯『塗ってないし……』
梓『……』
紬『まさにオカルトね……』
澪『オカルト!?』
律『ひょっとして化け猫耳!』
澪『ひぃいいい!!』
梓『いやあああああ! とってくださいとってください!!』
唯『無理にひっぱったらあずにゃんの頭の皮がちぎれちゃうよ……』
梓『えぐ……』
律『そうだ! オカルト研! あいつらなら何かわかるかも!』
梓『オカルト研って……』
唯『いこうあずにゃん! こんなの絶対おかしいよ!』
ナレーション:そして一行はオカルト研へと向かった。
ナレーション:だが……。
唯『あけて!! あけてください!! あずにゃんの猫耳が!!』
ドンドン
律『うちの後輩のピンチなんだよ!! あけてくれって!!』
<イケナイ、ソレハイケナイ
<アケルコトハデキナイ アァ、オソロシイ
律『なんなんだよ!! 教えてくれよ!! 頼む! オカルト詳しいだろ!!』
<アケルコトハデキナイ イケナイ
<イケナイ イケナイ イケナイ イケナイ
澪『……どうしたんだろう』
紬『梓ちゃん、体に変わったことはない?』
梓『……えぇ、まぁ……とれない以外には』
唯『少しでいいから! お願い話をきいてよ!!』
<……ソノコハ、アキラメタホウガイイ
唯『……どういうこと?』
律『扉ごしでいい……教えてくれないか……』
<……動物の野生なる呪いは、時に人のそれを越える
律『……?』
<……カエッテ、ハヤク
律『おい、意味わかんねーって! 呪いって!? やっぱ呪いなのか!?』
梓『あの……私……』
<キィェエエエエ!!!!
<悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散
梓『ひっ!!』
唯『い、いこ、あずにゃん……きっとお風呂で頭を洗えば取れるよ』
梓『……』
紬『心配しないで。きっと大丈夫よ』
澪『……』ピクピク
律『あ、失神してやがる』
ナレーション:その日は解散となった。
ナレーション:梓は帰宅し、早速風呂場へと向かい、熱いシャワーで頭を流す。
梓『とれろ……とれろ!』
ザァァァァ
梓『とれろ……とれろ!!』
ザァァァァ
ナレーション:しかし、それが外れることはなかった。
ナレーション:梓は落胆し、同時に絶望した。
ナレーション:鏡で見てみるとよくわかる、唯たちの言うようにそれははっきりと自分の頭に溶け込んでいるのだ。
梓『……私の、猫耳……』
梓『……う、あ……』
梓『どうして……とれないのよ……』
梓『最悪……』
ナレーション:翌日、梓は頭巾をかぶって登校した。
ナレーション:事情をしらないクラスメートに笑われた。
ナレーション:ただ純と憂だけは、けいおん部の先輩と等しく、真剣に梓の猫耳に向い合ってくれた。
純『呪いねぇ。なんか悪いことでもした?』
梓『してない……』
純『ほんと? 猫いじめたりしてない?』
梓『してないってば』
憂『お姉ちゃんずっと心配してたよ……』
梓『……』
憂『私のせいだ私のせいだってずっと悔やんでた……』
梓『……唯先輩は悪くないよ』
憂『でも、とれないと困るよね……』
梓『オカルト研にいったけど、中に入れてもくれなかった』
純『そっか……とりあえず色々調べてみるしかないね』
お昼休み
純『よぅし。食べ終わったら図書館で調べてみようよ!』
憂『そうだね。オカルト関係の本とかあるかな?』
純『パソコン室ってつかえるっけ?』
憂『許可とればお昼休みだけなら使えたはず』
純『じゃあそういうことで……ん、梓?』
梓『はふはふ、がつがつ。ムシャムシャ』
純『あはは、何さそんなにがっついて。お弁当は逃げやしないよ』
梓『がつがつムシャムシャムシャ!』
純『梓……?』
梓『がつがつ、モグモグ、ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ』
憂『……? 急ぐ気持ちはわかるけど……』
梓『ゴクン。ふぁ~』
純『……』
梓『にゃむ……おやすみ……』
純『梓!』
梓『!!』
純『こっちは真剣に考えてんのになによそれ!』
梓『えっ、え!?』
憂『純ちゃん落ち着いて……』
純『ご、ごめん。でもさー梓そういうのよくないと思うな、ほんとよくない』プリプリ
梓『私……なにかした?』
純『は?』
梓『あれ……お昼休みだよね。お弁当たべなきゃ』
純『いやいや今食べてたし。どんなボケだ』
梓『食べた……っけ? そういえば食べたような……あれ』
純『あ、あんた……やっぱり』
梓『……』
憂『梓ちゃん……呪われてるよ……』
…………
梓「きいてます?」
野良猫「ふぁ~ぁ、聞いてるよ。作り話が得意なんだね」
野良猫「まぁそういう猫がいてもおかしくはない。猫は自由で無限だからね」
梓「作り話じゃないんですけど……」
野良猫「証拠をみせてほしいな。君がもともと人間だっていう」
梓「……」
野良猫「ほら、やっぱり。嘘つき」
梓「この体じゃ無理なんです」
野良猫「人にほだされた猫はすぐ嘘をつくんだ。そんなとこだけは似るんだね」
野良猫「またね。名前はなんて言ったっけ」
――――
唯「わぁあずにゃんおまたせ~」
ナデリナデリ
梓「……唯先輩」
澪「いい子に待ってたな」
律「このあとどうする?」
唯「解散?」
澪「いやいや、ミーティングだろ」
律「今さんざんしたじゃん」
澪「唯の家いけるかな」
唯「いいよー」
紬「じゃあおじゃまするね」
唯「憂に電話するー、いまなら晩ご飯みんなの分間にあうかも!」
律「なんだか悪いなぁ」
唯「あ、もしもし憂ー? いまからさー三人大丈夫?」
唯「うん、いつもの。けいおん部」
唯「じゃあよろしくねー」
唯「やった! オムライスだって!」
律「へぇ。おいしいよな憂ちゃんのオムライス」
澪「晩ご飯いらないってママにメールしとかないと……」
唯「あずにゃんもいこうねー、よいしょ」ダキッ
梓「……降ろしてください。自分で歩けます」
唯「にゃーにゃー♪ あずにゃんは今日もゴキゲン~♪」
梓「歩けますってば」
唯「んーどうしたのかなー。待たされていじけてるのかな」
唯「ごめんねー、あずにゃんもパフェ食べたかったよねー」
澪「猫ってパフェ食べて平気なのか」
律「さぁ?」
梓「唯先輩のバカ」
唯「そういえばさー、駅前にケーキバイキングのお店できたんだよ!」
梓「律先輩のバカ」
律「おー、そりゃ一度行かないとな!」
梓「澪先輩のバカ」
澪「律はたべすぎて太ってしまえばいい! うんそれがいい!」
梓「ムギ先輩のバカ」
紬「たまーにりっちゃんがうらやましくなる……いくら食べても太らないなんて……ずるい」
梓「みんなバカ……」
唯「ふんす! 食べても一生懸命演奏してカロリーを消費すれば余裕です!」
律「澪もムギもドラムやればいいんだよ! 汗かくぞー、あっはっは」
澪「……なるほど」
紬「……いいかも」
梓「……」
野良猫「ほら、わかったろう? 君はただの猫。所詮は愛玩動物さ。決して人の輪には入れない」
律「お、もう一匹登場」
澪「なんか品のない猫だな」
唯「澪ちゃんひどすぎ!!」
紬「こっちをじっと見てるわ……」
梓「……」
野良猫「ずっと人といれば、自分も人だったような気もするだろうさ」
野良猫「でもそれは幻影。君は夢見ているだけ」
梓「そんなことない……私は確かに人間だった。ううん、いまでも人間。中野梓っていう……猫じゃなくて」
野良猫「そう思い込むことが幸せなら、それでいいけどね」
野良猫「だけど君は不幸そうな顔をしているよ。だからもう忘れたほうがいい」
野良猫「って、野良なんかの意見を聞き入れる耳はないか。飼い猫っていつもそう」
澪「猫どうし会話してるのはじめてみたかも」
律「たいてい猫って喧嘩してるよな」
唯「きっとこの子はあずにゃんの恋人、じゃなくて恋猫!なんだよ」
紬「……そうなのにゃんこちゃん?」
唯「猫どうしってどんな会話してるのかな?」
澪「きっと、あそこのお魚はおいしいにゃん!とか!」
律「ないない」
紬「きっとお天気の話よ」
律「ないない」
梓「……」
最終更新:2011年09月04日 20:23