テレビ「今日、動物園で子ぶたの赤ちゃんが生まれ……」
梓「子ぶたさん美味しそう」ジュルッ
律「もっと他の感想ねえのかよ」
梓「夕飯はトンカツにしてください!」
律「……」
律梓「はじまり!」
「おしおき!」
ガチャッ
律「ただいまー」
梓「……」ムスッ
律「おっす、今帰ったぞ」
梓「ふぅん」
律「不機嫌だなぁ」
梓「どうしてか胸に手を当てて考えてください。当てるほど胸があるかは知りませんが」
律「うっせーお前の胸触んぞ」
梓「殴りますよ?」ギロッ
律「」ビクッ
梓「……」
律「なーそう怒んなって」
梓「ふんっ」
律「ゼミの飲み会だったんだからしょうがないだろ」
梓「それは分かってます。ですからそのことについては怒ってません」
律「じゃあ何を梓「今何時だと思ってるんですか」
カッチコッチ カッチコッチ
律「……十一時半」
梓「を十分ばかり過ぎていますね」
律「……ごめんなせえ!」ドゲザッ
梓「……」
律「早く帰りたかったんだけど、強引に二次会に連れてかれて……」
梓「他人のせいにするんだ」
律「そ、そういうわけじゃ」
梓「遅くなるならなるで連絡してくれてもいいんじゃないですか?」
律「そ、その通りでございますっ」
梓「……」ハァ
律「私が悪かった! この通り、何でもするから!」
梓「へぇ、何でも」
律「そう、何でも!」
梓「……」
テレビ「明日のお天気は……」
律「……」
梓「……」ギュウウウウ
律「あの、梓さん」
梓「何ですか?」
律「ひざが重いんですけど」
梓「私一人乗ったぐらいで柔なこと言わないでください」
律「あと、お前に抱きしめられてんのが苦しい」
梓「うるさいです」
律「コアラかお前は」
梓「何でもするって言ったじゃん」
律「はい」
梓「……」ギュッ
律「で、これは一体」
梓「あずさ縛りの刑です。律先輩にはお仕置きが必要ですから」
律「あずさ縛りってお前……」クスッ
梓「……」ギュウウウウウ
律「ちょ! 中のもの出ちゃう!」
三十分後
梓「……」プクー
律「……まだ拗ねてんのか?」
梓「当たり前です」
律「テレビが見えないんですが」
梓「知りません。知る筋合いもございません」
律「ひどっ」
梓「……」ムスッ
律「……」
律「あのぉ」
梓「」ギロッ
律「」
梓「何でございますか田井中先輩」
律「たい焼きアイス買ってきたんだけど。お前の好きな」
梓「!」ピクッ
律「食べる?」
梓「食べる!」
梓「♪」ハムハム
律「美味しい?」
梓「うん!」
律「そいつはよかった」
梓「♪」ニコニコ
律(……単純なやつ)クスッ
梓「あ、食べ終わったらお仕置きの続きしますから」
律「えっ」
「なつかぜ!」
律「……ゲホッゲホッ」
梓「風邪ですか?」
律「んー何か喉が痛くて頭がぼーっとする」
梓「ひどい声してますね。ちょっと失礼」ピタッ
梓「わっ、すごく熱いじゃないですか」
律「あーそうなの?」
梓「そうですよ! 完全に風邪です!」
律「参ったなー、今からバイトなのに」
梓「そ、そんな体で行ってどうするんですか!」
律「でもシフトが……」
梓「ダメです、今日は休んでください」
律「……」
梓「後ろめたいなら私から連絡しますから」
律「……分かったよ」
律「……」
梓「ふんふん♪」
律「何してんだ?」ムクリ
梓「あ、寝てなきゃダメですよ」
律「だって気になんだもん」
梓「卵かゆです。さっきネットで作り方調べてきました」
律「お、嬉しいな」
梓「もうすぐできますから待っててください」
律「へーい」
梓「……」ジー
梓「うーん、どのタイミングで卵入れたらいいんだろ」
ゴトゴトゴトゴトゴト
梓「わ、わ、吹きこぼれてる!」
ドンガラガッシャーン
梓「にゃっ、お椀落としちゃった!」
梓「とにかく火を止めなきゃ……あつっ」
モクモクモク
梓「うっ、湯気が目に……」
ドタドタバタバタ
律(卵かゆってお粥に卵かけるだけじゃないのか……?)
梓「できましたよ律先輩!」
律「お、おう」
梓「さぁ、勝負です!」
律(勝負ってなんだよ)
律「」ソー
梓「……」
律(すっげーおどろおどろしい色してるんだけど)
ぷ~~ん
律(ぬぐっ、刺激臭の一歩手前だぞこりゃ)
梓「」ジー
律「……はっ」
梓「」キラキラ
律(う、うう……そんな目をされたら食べない訳にはいかない)
律(か、覚悟を決めるか)
律(鼻から息を吸わないようにして、少量をなるべく味わわないように)
律「」パクッ
律「……」
梓「……」
律(塩っからぁ、、こいつ醤油入れすぎただろ。てか底の方焦げてるし……)
梓「あの、どうですか……?」
律(そ、そんな不安そうな目をしないでくれよマイハニー)
律「う、うぅ……」タラリ
梓「う?」
律「うううぅぅうまい」タラタラタラ
梓「ホントですか!?」
律「あ、ああホントだ、よ」
律(私今受験勉強の時よりも頑張ってると思う)
梓「わぁーい、どんどん食べてくださいね♪」アーン
律「ちょ、すとっ……」
梓「いっぱい食べて、早く治してください」ヒョイヒョイ
律「んーっ、んーっ」ムグムグ
梓「どうしたんですか律先輩?」
律「んー……」バタッ
梓「り、律先輩!?」
律「」
梓「一体どうしたんだろ」
梓「……」ジー
梓「」パクッ
梓「うわまずっ」ペッ
――――
律「んー」
律「はれ、私寝てた?」ムクリ
律「ん、熱が下がったような」
律(あの刺激粥が利いたとか……なんてな)
律「ん……?」
梓「zzz」
律「……こいつ、ずっと看病してくれてたのか」
律「迷惑かけたな」ナデナデ
梓「……」ニヤー
律「治ったら、何かお礼しないとな」
梓「りーつ……ん……い」
律「ふふ、寝言かよ。可愛いやつ」
梓「夏かぜなんて……おばかさん」ニヤニヤ
律「」ムカッ
「うらない!」
デート中!
梓「あ、見てみて律先輩!」
律「何だよ」
梓「相性測定だって」
律「あー昔流行ったよな」
梓「ちょっとやってみましょう!」
律「はいはい」
梓「……」ピッピッ
律「どれどれ」
名前を入力してね!
女:あずさ 男:りつ
律「くぉらあああぁぁぁっ!!」
梓「うるさい人だなぁ」
律「『男:りつ』ってどういうことだよ!!」
梓「だって私が男じゃおかしいじゃないですか」
律「私でもおかしいだろ!」
梓「あ、もうすぐ結果でますよ」
律「聞けよ」
パンパカパーン
大恋愛!!
あずさ ちゃんと りつ くんの相性度は100パーセントです!
梓「やったぁ! 見てください、律先輩」
律「……何か素直に喜べない」
「あいあい!」
ザーザー
律「うっひゃぁ、すげぇ雨だなぁ」
梓「……」
律「まぁ、帰りが電車でよかったよ。自転車なら最悪だったな」
梓「そ、そうですね」
律「ぁん?」
梓「……」ドギマギ
律「何緊張してんだ」
梓「だ、だって」
律「?」
梓「これっていわゆる『相合い傘』じゃないですか」
律「いわゆるも何もそのまんまだけど」
梓「だ、だからその……緊張しちゃって」
律「ばっ! い、今さらだろっ」
梓「そうですけどっ……」
コツコツ コツコツ
律「……」
梓「……」
律「お、おい」
梓「な、何ですか」
律「何か話せよ」
梓「律先輩こそ」
律「私は別に何も」
梓「いつも騒がしいくせに」
律「お、お前だって」
梓「何ですか!」ズイッ
律「何だよ!」ズイッ
律梓「……はっ」
律「……」
梓「……」
律「……」
梓「……」
律「な、何かあれ思い出すな」
梓「あれって?」
律「付き合って間もないときの、こそばゆい感じ」
梓「っ……///」ボンッ
律「あ、いや別にそういう意味じゃなくてっ」
律(てか私は何言い出してんだよ!?)
梓「じゃあどういう意味?」
律(聞くなよそれ)
律「い、いやぁ、まぁ。な?」
梓「……ヘタレ」
梓「……」
律「……」ジー
梓「な、何ですか?」
律「あ、いやうん何でも」
梓「そ、そうですか」
律「……」
梓「……」
梓「あ、あの」
律「何?」
梓「手握っていいですか?」
律「い、いいんじゃねーの?」
梓「それじゃ」キュッ
律「……」
律(あー緊張して心臓が鳴りっぱなしだよ)
梓「……」
律(でも、もう少しこうしていたい)
律(早く過ぎ去ってほしいような、もう少し長く続いてほしいような)
梓「……」
律(何か、不思議な時間)
梓「……」
駅員(何であの二人、駅の中で傘さしてるんだろう……?)
最終更新:2011年09月04日 23:52