和「そうかしら」

憂「うんっ、私も思ってた」

唯「もしかして和ちゃんにもついに春が!?」

和「そんなんじゃないわよ」

唯「でも、なにかいいことあったでしょ」

憂「教えてよ、和ちゃん」ギュッ

和「ちょっと離しなさいよ」

憂「えへへ、ごめんなさい」

和「まったく……」

唯「憂、冷たい和ちゃんのかわりに私に抱きつきにおいで」

憂「やったー!」トトッ ギュウ

唯「むふふー」ギュー

和「……」ニコニコ

唯「あっほら、また嬉しそうな顔してるー。なに考えてたの?」

和「なにも考えてなんてないわよ」

憂「うーん……あやしいよ」

和「あやしくないわよ。それより、そんな調子で宿題終わるの?」

唯「うおっ、そうだ! 急がないと!」バッ

憂「ごめんっ和ちゃん!」ババッ

和「まったく……」

和「それにしても、唯が8月31日に泣きついてくるのは例年のことだったけど」

和「今年は憂まで、どうしたの?」ニコニコ

憂「あう……えっとそれはその……」

唯「ほ、ほら! そんなことより宿題、宿題っ!」

憂「そ、そうそう! 無駄話してられないの!」

和「ふーん……まあいいけど」ニコニコ

和「……」

唯「……」カキカキ

憂「……」ペラリ

唯「ねぇ、ういー。これどうするの?」ズイ

憂「ん? んー……」

和「……」ニコニコ

憂「非可算無限次元常微分方程式かな……ごめん、ちょっと無理かも」

唯「んー、そっか……じゃあ和ちゃん」

和「ふふっ」

唯「えっ、何?」

和「いや、二人ともなんだか距離が近くなったなって思って」

唯「距離?」

和「そう。今課題見てたけど、二人ともキスするんじゃないかってぐらい顔近かったわよ」

憂「あ……」カァッ

唯「な、なな何言ってるの和ちゃん! き、きぃっきすなんて私たちしてないよ!」

憂「……」モジモジ

和「あら、そうなの?」

唯「そうだよ! いいからこの問題教えてってば」ドキドキ

和「はいはい……」

憂「……」クイクイ

唯「ん? なーに憂?」

憂「キス……したくなっちゃった」ボソッ

和「……」ニコニコ

唯「えっ、けど……」

和「……あー、ちょっとこの問題難しいわねー(棒)」ニコニコ

唯「へっ?」

和「これを唯に理解してもらって解いてもらうとなると日が暮れちゃうわよ」ニコニコ

和「私が解いておくから、かわりに二人はお昼でも作っておいてくれない?」ニッコニコ

唯「……!!」

唯「い、いいよ! とびきりの作る! 憂っ、おいで」グイ

憂「んー、お姉ちゃあん……」ズルズル

唯「よろしくっ、和ちゃん!」

 ガチャ バタンッ

和「……」

和「さて、答え書き写しといてと」サラッ

和「どうかしら……」コソコソ

 ……チュ チュッチュ

憂『お姉ちゃん、おねえちゃんっ……んむっ』

和「……うふ」ニヤッ

唯『んっ、ここじゃばれちゃうよ憂……』

憂『ばれてもいーもん……ちゅうっ』

和「……なんですって?」

唯『ん……もう、いっかなあ……ういーっ』

憂『ひゃんっ……あっ、んう……』

和「……だめ、だめ……おさえるのよ和……」ワナワナ

唯『ういっ、ういっ……』クチュクチッ

憂『ん、あああんっ、ん……――っ!!』

和「……ああっちくしょう!!」

和「何してるの二人とも!」ガチャッ

唯「ひえっ!」

憂「の、和ちゃん!」

唯「あっの、こ、これはそのっ」アセアセ

憂「ちち、ちがうんだよっ。これは姉妹のスキンシップでね……」

和「言い訳はいらないわよ。3ヶ月前からでしょ?」

唯「うっ……ばれてたの」

憂「さすが和ちゃん……お見通しなんだね」

和「あんな風にあちこちでちゅっちゅちゅっちゅされてたら誰だって気付くわよ!」

和「……だめよ、そんなんじゃ。それともみんなにバレたいの?」

唯「バレたくは……ないです」

和「だったらもっと、周りに気を付けなさいよ」

憂「だけど、我慢できなくて……」

和「……気持ちは分かるわ。でも気付かれたくなかったら我慢するしかないじゃない」

憂「そうだよね……」

唯「……あのさ、和ちゃん」

和「なに、唯?」

唯「和ちゃんは……私たちが付き合ってていいの?」

和「それはまあ、ね……心配だけど、唯と憂はいずれ結ばれるって思ってたもの」

和「だから反対するつもりなんてないし、むしろ応援するつもりよ」

唯「よかった……」

憂「和ちゃんやさしいね……」

和「とりあえず、二人とも昼食にしましょうよ。考えるのはそれからでも遅くないわ」

憂「あの、和ちゃん……私まだやり足りなくて」

和「……じゃあ台所借りるわよ」

唯「ありがとう、和ちゃん」

憂「あとでちゃんとお礼するから」

和「いいのよ。いつももらってるわ」ニコッ

憂「……お姉ちゃん、またキスから……ん」


 お台所

和「うーん」

和「困ったわね。我慢もできないなんて」

和「じゃあ学校でも隠れてキスしてたの? ……気付かなかったわ」

和「とにかく、なんとかして二人が我慢できるよう方策を練ってあげないとね」

和「いずれはみんなにも……だけど、今は隠された百合としての官能を楽しむ時期よ」

和「さてどうしたものかしら……」

和「あら、これは?」

和「マスク……どうして台所なんかにあるのかしら」

和「でも、これは使えるかもしれないわね。持っていきましょう」

和「よし、用意も整ったし二人を呼びましょ」

和「唯憂ー! 降りてきなさい!」


和「……」

唯『んっはむっ……ちゅ』

憂『おねえっちゃ……和ちゃんが、呼んでっ』

唯『いーよ。ほら、3回目いっちゃお』

憂『ああっ……はあああっ! だめっ、もう……』

和「……」

憂『っく……ふ……』ギシッ

和「いかないで来なさいって言ってるのに……」

唯『ふふぅ……ちゅ。和ちゃん、今いくねー!』

憂『ま、まだ……立てないっ』

唯『ご心配なく! お妹様だっこぉ!』

憂『ひゃっ……すごぉい、お姉ちゃん!』

和「……ま、こんな苦労も二人のためならね」


――――

 パクパクモグモグ

唯「ごちそうさまー。憂、キスしよー」ノソノソ

和「宿題がまだでしょ。それに、これから二人には我慢の訓練をしてもらうのよ」

憂「んむ……ちゅっ。訓練?」

唯「ういー、歯みがき歯みがきー」ベー

和「ねぇ……」

憂「ごめんね、和ちゃん。これは日課だから」

和「ん……まあ、それだけなら」

憂「ありがとう。おまたせ、お姉ちゃん……」

唯「はぁくー」チロチロ

憂「ん……んはっ」ピクッ

和「……」ニコニコ

唯「んーっ……ちゅぱ!」

憂「んはっ。えへへ、唇にキスマークついちゃう」

和「つくの?」

唯「つくとしたら憂の唇、毎日まっかっかだね。口紅いらずだよ」

憂「口紅はいらないけどお姉ちゃんはいるー」ギュー

唯「んふふ、そうかそうか。じゃあまだまだちゅーしないと足りないね?」

憂「うん……」

和「唯、そこまでよ」

唯「なにが? んー」

和「キス我慢の訓練するって言ってるでしょう!」グイグイ

唯「んー! んむー!」ギュー

憂「んんっ! んーっ」ギュギュ

和「離れなっ……く!」

和「ハァハァ……」

唯「んー♪」チュッチュチュ

和「こうなったら最終手段ね……」スチャ

和「こんなこともあろうかと使いきりカメラを用意しておいたのよ!」

和「のどかちゃん☆フラッシュ!」バシャッ

憂「お姉ちゃん……ん、ん……」

唯「憂ー……さわっていい? んむ……」

和「……」ジリッジリッ

和「……のどかちゃん☆フラッシュ!」カシャッ

憂「いいよ……えっちしよ、お姉ちゃん!」

和「いい加減にしてくれないかしら」ハァハァ

唯「あ、ごめん」

和「まったくもう……唯たちがいつまでもキスやめないから私まで変にテンション上がっちゃったじゃない」

憂「和ちゃん☆フラッシュとか言ってたね」

和「とにかく、二人がキスしてるところはばっちり記録させてもらったから」

和「今後、私の言うことをきかないで勝手にキスしたら、これをバラまくわよ」

唯「ええっ! どうしてそんな……」

和「こうでもしないとあんたたちキス我慢しないどころか人の話聞かないじゃない」

憂「う……」

唯「まあそれは確かに……」

和「自覚はあるのね……さてそれじゃあ、学校でキスを我慢できるようになるための訓練をしましょう」

唯「訓練って、きついのはやだよ」

和「安心して。ただマスクをつけるだけよ」

唯「マスク?」

和「そう。唯、これをつけて」

唯「ムグッ」

憂「ふつーのマスクだね……」

和「見た感じ、どうも先にキスが我慢できなくなるのは憂のほうみたいよね」

唯「うんうん、私の唇見てたら、キスしたくなってる証だよ」

唯「かーわいいよ。ほんとに私の唇だけじーっと見てるの。そーっと近付いてね」

和「だから唯には、これで唇を隠してもらうわ。憂、今はまだ平気?」

憂「ぜんぜん平気じゃない」

和「じゃあ落ち着きなさい」

唯「ねえ和ちゃん、これだったら憂にもマスクしたほうがよくない?」

和「普通だったらそうなんだけど、憂の場合ね」

和「唯はわかると思うけど、憂のほうがキスに敏感に反応してるの」

唯「おおっ、すごい和ちゃん。よく見てるね」

唯「舌の裏なめたげると、それだけでぶるぶるぶるっ! ってするんだよ」

憂「うぅ……ううー」

和「……憂、がんばって」

和「それできっと、憂にマスクをさせたら、唇に触れるマスクの感触のせいで」

和「よけいにキスしたくなっちゃうだろうと思うから。だから唯だけにマスクをしてもらうの」

唯「私はつらいなぁー」

和「お姉ちゃんなんだから頑張りなさい」

唯「はーい。うい、がんばろうね」

憂「……無理」

唯「って言ってますけど」

和「とりあえず、1時間我慢。それまで宿題よ」

――――

唯「和ちゃん、これむずいー」

和「10+7? うわー、二桁とはエグいわね。ちょっと待ってなさい」

憂「……」モクモク

唯「憂はえらいねー、ずっと宿題やってる」

唯「……!!」ドキッ

和「どうかした?」

唯「う、憂のノート……」

憂「……」モクモク

和「……キスしたい、って書き続けてるわね」

唯「か、かわいいよお……かわいすぎるう! はやくちゅーしてあげたい……」

和「はいはい、あと20分よ」

唯「ううぅ……」

和「あと憂は宿題やりなさい」

憂「むー……」

和「ちゃんとやらないと時間延ばすわよ」

憂「う……、ふ」グスッ

唯「うーい、泣かない泣かない! あとちょっとだけ、がんばろう憂!」ナデナデナデ

憂「うっ、ん……」

唯「和ちゃん、さっきのやつの答えは?」

和「ああ、17よ。さ、続きやりなさい」

唯「よしっ。がんばろうね憂」

和「……」

憂「……」カキカキ

和「さすがに……心が痛むわね」ボソ


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最終更新:2011年09月06日 16:18