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律「なんかもやもやしてるな」

澪「りつぅ…今からでも遅くないよ…?引き返そうよ…」

律「ダメだ、さわちゃんどうなってもいいのかよー?」

澪「私だって心配だけど…私達だけじゃ不安だよぉ……」

律「大丈夫だよ、私がついてるから」

澪「………」

律「ほっ…ほら、転ばない様にちゃんと手握ってろよ!」

澪「……うん」

律「………」

澪「………」

律「あっ、なんかドアがある」

澪「これが出口なのか?」

律「多分な…よし開けるぞ」

ギィ……

律「わっ、眩しい」

澪「…うっ」

律「………」

澪「………」

律「………」

澪「………」

律「ぷっ!澪小さくなってるぞ?!」

澪「律だってりつになってる…!」

律「うわっ、なんか服まで昔私が着てたやつになってるし…!」

澪「これ…本当に過去に来ちゃったのか…?」

律「そうだろ…どう考えても…
ここって…私達の家の近くの公園だよな?
  昔から有名だったトイレの開かずの扉…まさかここが出口になってるとは…
  っていうかこの扉、鍵掛かってなかったっけ?外したのさわちゃんかな?」

澪「たぶんさわ子先生だと思う、外してくれてて良かったな
  私達の力じゃ難しそうだ」

澪「………」

律「ん?どうしたんだ澪?」

澪「この渦…消えないんだな…」

律「あー、私達が近くにいるせいじゃない?
  条件が揃わないと出てこないって言ってたし…」

澪「この渦…その一番大切な人と一緒っていう条件なら誰でも開くのかな?」

律「んー多分そうじゃない?」

澪「……」

律「さっきからどうしたんだよー?澪」

澪「もし、この世界の私達が施錠されて無いこの開かずの扉を開いてしまったら…
  そして表れた渦を面白半分に潜ってしまったとしたら…」

律「それってもしかして!…りつとみおの事?!」

澪「うん…まだ言いきれないけど
  可能性はとても高いと思う」

律「そういう事だったんだ!りつとみお、元の世界へ戻せそうじゃん!」

澪「まだ決めつけるのは早いって!この世界の私達は普通に生活してるのかもしれないし
  この世界の私達が行方不明にでもなっていたのなら間違いない思うけど」

律「なるほど…ん?なんかチラシがまってる…」ペラ

澪「チラシ…?」

律「……これって…」

澪「ちょっと律、私にも見せて!」

律「……捜索願い…だよな?」

澪「うん、私達の顔写真思いっきり載ってるし…」

律「確定だな」

澪「うん」

律「よしっ!やる事は決まったな澪!
  さわちゃんさっさと見つけてりつとみおをこの世界へ戻そうぜ!」

澪「もう1人だろ」

律「えっ?…もう1人?」

澪「ゲートは2人じゃないと潜れないんだから
  さわ子先生ともう1人、誰かいる筈」

律「あ、そっか…頭良いなぁ澪」

澪「(なんだかもう…不安になってきた………)」

律「とりあえず桜校に行ってみようか!」

澪「そうだな、他にさわ子先生の手がかりも無さそうだし……」

………

律「~♪」

澪「ご機嫌だな律…」

律「いやだってさー、7年前の町並みってとても懐かしくないか?
  それに目線が下がるとこうも世界が変わるんだなー」

澪「適応能力ありすぎだよ律…こんな非現実的な世界にいるんだぞ?
  私は不安でしょうがないよ…」

律「不安になったって何も得にならないだろ?
  澪も覚悟決めてこの世界を楽しもうよ
  なかなか得られる体験じゃないぞー?」

澪「うぅ…そのポジティブシンキング…少しだけでもわけて欲しい……」

律「あ、ほら澪!あの駄菓子屋さんまだ改装前だよ?
  昔はよく澪と2人で行ったよなー
  お店新しくなってからムギと一緒に行ったんだけどさ」

澪「本当だ、懐かしいなー
  昔の姿も味があって私は好きだ」

律「だよなー、あっ…おばちゃん!元気?!」

澪「ちょ…!ちょっと律!!」

律「え…?なに…?!」

澪「隠れろ!早く…!」

律「えっ…ちょっと!どうしたんだよ澪」

澪「………」

律「………」

「……気のせいかしら…今りっちゃんの声が……」

澪「……行ったか…」

律「……あっ、そっか…」

澪「気付いた?」

律「うん…私達この世界じゃお尋ね者だもんな」

澪「そう、見つかったら警察に連れて行かれるに決まってる
  そうなったらさわ子先生を探すどころじゃないんだぞ?」

律「あははっ…ごめんごめん」

澪「なるべく人に見られない様に桜校へ行こう」

………

律「さて澪」

澪「うん」

律「校門の前まで来たはいいけど………どうする?」

澪「うーん…ちょうど放課後の時間になってるし
  ここで遠目にさわ子先生が出てくるのを待つのが無難だと思う」

律「わざわざ過去に来てまで学校通うなんて事するのかな…?」

澪「仕方ないだろ…他に探すあてもないんだし」

律「まぁ…そうだけど…
  ちょっと待って澪、さわちゃんも私達と同じように若返ってるんだよな?」

澪「そう言ってたな、オカルト部の人が」

律「高校時代のさわちゃんって…どんな感じだ…?」

澪「それはえーと……ピンク色のエクステを目印にしたらどうだ?」

律「普段からそんな派手なもの身に付けてる訳ないだろ?
  絶対校則で引っかかるって…」

澪「そ、そっか…よく考えたらライブ衣装のさわ子先生しか知らないな…」

律「それだよ澪、平常時のさわちゃんを遠目に見て判断するって難しいと思うぞ?」

澪「た、確かに…どうしよう…」

律「……」

澪「……」

律「秋山さん…私に良い案があるんですけど…」

澪「なに…?ものすごく嫌な予感がする」

律「………」

澪「………」

律「忍び込もう」

澪「はぁ?!…忍び込むって…!!…学校に?!」

律「バカ!声が大きい!」

澪「だって…そんなの無謀だって」

律「よく聞いてくれ澪、この時間、音楽準備室でさわちゃんは
  軽音部の部活に励んでいる筈」

澪「うん、まぁ…放課後だからな…
  でもそこに辿りつくには校門を潜って守衛室を突破しないといけないだろ?
  私達小学生の姿した部外者だし」

律「そんな事をしなくても秘密の入口があるだろ?」

澪「秘密の入口って…まさか律が遅刻しそうな時に使っているアレの事か?」

律「そう…アレだ、学校敷地内裏側に位置する秘密の入口を利用して
  一気に音楽準備室まで駆け上がろう」

澪「本気なのか?…放課後といえども人はまだいっぱい残ってるんだぞ?」

律「この際すれ違うであろう生徒の方々は無視だ
  大丈夫だよ、体も小さくなったし見つかりにくくなってる筈だから」

澪「高校に小学生がいたらむしろ思いっきり目立つと思うんですけど…」

律「………」

澪「…やっぱりやめた方が…」

律「よしっ、いこう」

澪「………」

律「どうした澪、早く」

澪「もう…どうなっても知らないからな…」

………

律「秘密の入口はこの時代でも健在みたいだな」

澪「……」

律「おぉ、体が小さいから楽に潜れる!」

澪「……」

律「みーお、何やってるんだよー、早くしろー」

澪「あぁ…なんでこんな泥棒みたいな事…」

律「しょうがないだろ?さわちゃんの為だ」

澪「うぅ…」

律「さて…まずは裏庭から校舎へ潜り込まないとなー」

澪「これ不法侵入だよ…?犯罪だよ…?」

律「人少なければ良いんだけど…顔隠していくか?」

澪「あぁ…ママ…パパ…私今日…人の道を踏み外してしまったかもしれません…」

律「あっ!…あの先生知ってる!この時代から桜校にいたんだ
  だからさわちゃんもペコペコだったんだなー」

澪「こんな娘でごめんね…パパ…ママ……こんな私を許して下さい…」

律「なーにブツブツ言ってんだよ澪、ほらここから校舎に入るぞ」

澪「人…たくさんいるけど…」

律「仕方ないよ、他に入口無いし、サッっと場の空気に溶け込もう
いいか?こういうのはオドオドしてると挙動不審で余計に疑わしくなるんだ
正々堂々と、胸を張って行くぞ」

澪「裏口から忍び込んでる時点で正々堂々じゃない」

律「今だ!」

澪「うわっ」

律「………」

澪「………」

ざわ…ざわ…

律「………」

澪「………」

「なに?この子達」

「かわいー、お姉さん探しにきたの?」

律「え…?まぁ…そんなとこです…」

澪「………」

ひそ…ひそ…

澪「(りつぅ…すごく見られてるよ…?!)」

律「(問題無い…!さっさと行くぞ!)」

澪「うわっ…!」バタッ

律「澪…大丈夫か?!」

澪「いたた……まだこの体で歩くの慣れてなくて…」

律「ほら…気をつけろよ」

澪「うん…ごめん」

ざわ…ざわ…

澪「…?」

律「………」

「フフ…シマシマダッタヨ…」

「カーワイ♪」

澪「うわぁぁぁぁ!!!」

律「?!」

澪「ああぁぁぁぁ!!」

たったった…

律「ま…待てっ!みおー!私を置いてくなー!!」

………

律「はぁ…はぁ…
  なーにが歩くのに慣れてないだよ…全速力で走っちゃってさ」

澪「見られたんだよ?!…見られちゃったんだよ…?!」

律「そんなの別にいいだろ?初めての事じゃないんだし」

澪「うっ…」

律「あっ…ごめん澪」

澪「私もう……この学校トラウマで来れなくなっちゃう…」

律「そんな切ない事言うなって…
  何はともあれ部室の前まで辿りついたな」

律「よし…じゃあ早速……」

澪「えっ…ちょっと待って律
  いきなり入るつもりか?!」

律「えっ?ダメなの?」

澪「中にいる人達が知らない人ばかりだったらどうするんだ
  さわ子先生が確実にいるとも言いきれないんだぞ」

律「そっか…じゃあドアのガラス越しに中の様子を見てみよう」

澪「うん…でも…」

律「んにー………」

澪「………」

律「ダメだ!私達の背じゃガラスの面まで届かないよ」

澪「律、あそこにあるイス使わせてもらおう」

律「おおっ、なんてご都合な」

澪「よし…っと」

律「よっこらせ」

澪「見えるか?律」

律「うん、けっこう人いるよ?
  いちにいさん…………7人もいる!」

澪「見つからない様に気をつけろよ」

律「わかってるよ…あ、あれさわちゃんだ!間違いない!
  それと紀美さん…?多分紀美さんだな、あの人」

澪「中にいるのはDEATH DEVILの人達って事か?」

律「うーん…見た感じメンバーじゃない人達も混じってる気もするけど…
  紀美さんの時の結婚式で見た人もいるよ」

「だからこんなんじゃ相手に魂伝わらねぇんだよ!!」

澪「ひいぃ!!…なにっ?今の声なんなの律?!」

律「なんか…険悪ムードってやつ…?
  さわちゃんと紀美さんが言い合いになっちゃってる」

「てんでバラバラなのはあたしらが本気でやってねぇからだよっ!」

「何を目的にバンドやってるかって話だよ!その点不純なんだよ、さわ子は」

「はぁ?!ちょっとどういう事よっ?!」

澪「律ぅ……」

律「…なんだ?」

澪「取りこんでるみたいだし退散しようよ…」

律「ちょっ、ちょっと待て澪!なんの為に私達…?!」

「もういいよ!」ガタッ

律「うわっ!こっち来る!逃げろ澪!」

澪「えっ!?いきなりそんな事言われても…!」

ガチャッ

クリスティーナ「………」

澪「……う…」

律「…あはは…どうも」

クリスティーナ「なに…この子達」

澪「…え、えっと……」

律「(ヤバイ…殺される……)」

クリスティーナ「ここで何してたの?」

律「え、えっと…さわちゃんを探しに……」

クリスティーナ「さわちゃん…?さわ子の事?」

澪「は、はい…」

クリスティーナ「さわ子、アンタに用みたいだけど」

キャサリン「私に用?」

律「さわちゃん!助けにきたよー!」

キャサリン「………。私この子達知らないわ」

律澪「(えぇー?!)」

律「ちょっと待ってさわちゃん!過去にいったまま戻ってこれないんじゃ…」

キャサリン「…過去…?あはは、何の話?面白い事言うわね、キミ達
    お母さんはどうしたのかな?」

律「そんな…悪ふざけはやめてy」

澪「律、よせ!」

律「(…だって…どういう事だよ澪?!)」

澪「(この人…この世界にいる本来のさわ子先生だ)」

律「(えぇ?!)」

澪「(だから下手な事言うな!ここは穏便に済ませてひとまずこの場を…)」

ミホコ「ね、ねぇ!その子達…今テレビでやってる子達じゃない?!」

キャサリン「テレビの子…?あっ、行方不明の?!」

律澪「(なにぃ?!)」


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最終更新:2011年09月06日 16:43