ルパン「なぁ次元桜が丘高校って知ってるか?」

次元「知らねぇな」


ウィスキーを口に運びながら答える


ルパン「何でもな、女子高でそこの音楽室にはベルギー王室で使っていたのと
同じティーセットがあるんだとよ」

次元「だからどうした?」

ルパン「その高級ティーセットでお茶したいと思わない?」

次元「思わん」

ルパン「まぁ、そういうなって。一緒に拝借しに行こうぜぇ」

次元「なーにがお茶だ!! お前そんなキャラじゃないだろ!!」

次元「もう不二子絡みはごめんだ」

ルパン「あら、わかっちゃった?」

ルパン「でも、もう予告状も出しちゃったのよ。これが。ヌフフフフ」

次元「また勝手なことを……」

次元「でもよ盗んだところでせいぜい50~70万程度の品物だろ?」

次元「不二子がそんな額程度で喜ぶのか?」

ルパン「今回はな、金額じゃなくて気持ちが大事なのよ」

ルパン「不二子の誕生日が明日に控えているからそのティーセットで
お祝いのパーティをしてやろうってわけ」

次元「また回りくどいことを」

次元「適当に金目のものでも渡せばあいつは喜ぶだろ」

ルパン「次元はそれだからモテないのよー」

ルパン「こういう、小さな気配りが女性を口説くのには必要なんだよ」

次元「けっ」

ルパン「高いウィスキーごちそうしたんだ。ちーと手伝ってもらうぜ」

次元「そのためのウィスキーかよ…… ったく一回だけだからな」

ルパン「あんがとさん」

ルパン「決行は明日だかんな」

次元「結構なこって」


~~~~~~~~~~~


紬「お茶入ったわよ~」

唯「待ってました!!」


今日もいつものように5人が席に着く――

紬「今日はねクッキー焼いてみたの」

律「ムギの手作りかぁ」

梓「ムギ先輩流石です」

澪「美味しそうだな」

紬「さぁ、どうぞ」

唯「おいしいよぉ、ムギちゃん」モグモグ

律「サクサクでバターの良い香り」

梓「唯先輩食べすぎですよ」

紬「喜んでもらえて作った甲斐があったわ」

澪「お茶も美味しいし言うことなしだな」

さわ子「言うことあるわ!!」

律「さわちゃん、いつの間に!?」

梓「相変わらずの神出鬼没ですね」

紬「クッキーじゃダメだったかしら?」

さわ子「そうじゃないのよ」

さわ子「実は、職員室にこんなものがあって……」

緊迫した表情で5人に一枚の紙切れを見せる

律「なになに、『近日、音楽室にあるティーセットを頂きに参上します ルパン三世』」

唯「ルパン三世?」

澪「ルパンってあの小説のアルセーヌ・ルパン?」

さわ子「あなたたちルパン三世知らないの!?」

さわ子「世界を又にかける大泥棒よ。彼の手によればどんな物も盗みだせるんだから!!」

唯「そ、そうなんだ」

梓「このティーセットが高級なものだと嗅ぎつけ、盗もうというわけですね」

律「でもなんでわざわざ予告なんてするんだ?」

律「予告したら盗みにくくなるだろ?」

さわ子「彼は予告をしたうえで盗みに来ることが多いわ」

さわ子「わざと知らしめて楽しんでるのよ」

さわ子「ゲーム感覚のように」

梓「悪趣味ですね」

紬「でも、盗まれちゃったらみんなとティータイムが出来なくなるわ」


不安そうな顔をする紬


唯「ムギちゃん……」

律「ティーセットはムギのものだからな」

律「ムギは特に心配になるだろ」

唯「ムギちゃんのティーセットをそんな見知らぬ泥棒さんに取られたくないよ!!」

澪「そうだな」

律「なんとかムギのティーセットを守れる方法はないかな」

さわ子「ふふ、そう思ってもう手は打ってあるわ」

唯「さすがさわちゃん先生!!」

澪「どういうことです!?」

さわ子「この予告状を見つけてすぐに警察の方へ連絡したの」

さわ子「そしたら、ルパン三世を専門に追っている銭形警部という方が」

さわ子「明日、この音楽室全体を警備してくれるって」

紬「本当ですか!?」


紬の表情が明るくなる


律「よかったな、ムギ」

澪「警察の方が直接守ってくれるなら安心だな」

さわ子「私もティータイムがなくなったら死活問題ですから」

梓「大げさすぎですよ」

さわ子「あら、それくらい重要だと思うけど」

さわ子「ムギちゃん、私にもお茶とクッキー!!」

紬「あっ、はい。今用意しますね」

唯「でもいくら高級だからって盗むのは良くないよね」

澪「全くだ」

律「いったいどんな奴なんだろ?」

さわ子「あら、気になるの?」

律「そりゃ、まぁ……」

紬「先生、お茶とクッキーです」

さわ子「おいしそうね」

さわ子「いただきまー……」


ガチャッ――


部室のドアが開く


教師「山中先生、明日警察が来るということで緊急職員会議をします」

さわ子「……タイミング悪いなぁ」


さわ子先生は手をつけることなく部室を後にする


澪「行っちゃった……」

律「ルパンのこと聞きそびれたな」

唯「さわちゃん先生の分のクッキー食べてもいい?」

紬「そうね、いいわよ」

律「とりあえず、明日来る銭亀警部って言う人に任せるしかないか」

梓「銭型警部ですよ律先輩? 間違えないでください」

澪「銭形警部だろ? しっかりしろよ二人とも」

律・梓「ごめんなさい」

唯「クッキーおいしい~」


~~~~~~~~~


次の日


ルパン「んじゃ、そろそろ行くか次元、五エ門」

五エ門「まて、本当にそれだけでいいのか?」

次元「俺たちの役目はそれだけかよ」

ルパン「あぁ、楽なもんだろ?」

五エ門「たったそれだけのために拙者たちを使うのか?」


そう言ってルパンを睨みつける

ルパン「そんな怖い顔すんなって」


ルパン「もっとプラスに考えようぜ」

ルパン「すぐ終わる仕事だからこそちょっとだけ手を貸してほしいのよ」

次元「でもよ予告状出したんだろ?」

次元「いつもの如く現れるとっつぁん対策はどうするんだ?」

ルパン「もちろん対策済みよ。昨日のうちにちょっと仕掛けをしておいた」

ルパン「まっ、今回の仕事はマフィアや悪の組織と戦うわけじゃないんだ」

ルパン「いつもと違ってきら~くにやればOKよ」

ルパン「んじゃ、桜が丘高校に向かうとするか」


そう言って三人はアルファロメオを走らせる



一方桜が丘高校に向かう人たちがもうひと組――


こちらはパトカーに乗り込み、学校へと向かう


銭形「桜が丘高校まであとどれくらいだ」

警官「はい、あと1時間くらいでしょうか」

銭形「いつ奴が盗みに来るかわからん。出来るだけ急げよ」

警官「はい」

銭形「ルパンめ。女子高にあるティーセットを盗むとは何を考えているんだ」

銭形「犯罪者の考えることはよくわからん」


ガタッ!!!!

大きな音とともにパトカーのスピードが緩まる


銭形「な、なんだぁ」

警官「ど、どうやらタイヤがパンクしているようです」

銭形「パンクだとぉ!?」

銭形「くそぉ、こんな時に……」

銭形「はやくスペアと取り換えるんだ!!」

警官「は、はい!!」

銭形「もたもたしているとルパンに先を越されてしまう……」

銭形「急げ!! 急いで取り換えるんだぁ!!」


~~~~~~~~~~

放課後


唯「今日、銭形警部が来るんだよね?」

律「らしいな」

梓「何時に来るんでしょう?」

律「さぁな」

澪「今は、こうやって練習してるけど」

澪「警察たちが来たらちょっと練習しにくいな」

紬「確かにね」

トントン――

部室のドアをノックする音が聞こえる

唯「もしかして」


ガチャッ――

唯がドアを開けると茶色のコートを身にまとった大柄の男が立っていた


銭形「どうも、こんにちは」

銭形「わたくし、インターポールから来ました銭形です」

唯「おぉ、あなたが噂の」

澪「初めまして」

梓「大きい……」

銭形「ところでルパンが狙っているというティーセットはまだ無事かな」

紬「はい、こちらです」


ティーセットがしまっている食器棚に案内する


銭形「良かった、間に合って」

唯「間に合う?」

銭形「あぁ、ここに来る途中パトカーのタイヤがパンクしてね」

銭形「おそらくルパンの仕業だが、とにかく奴が来る前に間に合ってよかった」

紬「そんなことがあったんですか」

銭形「この食器棚の中身全てがティーセットなんだな?」

紬「はい」

銭形「よし、ルパンが盗みに来る前にこの食器棚を移動させよう」

律「移動って何処に?」

銭形「ルパンが最も盗みに入りづらい所、警視庁だ」

律「本気ですか!?」


律が驚きの表情を見せる


銭形「あぁ、ここじゃすぐに盗まれてしまう」

銭形「なにせ赤外線や監視カメラといった防犯の類が一切ないこんな学校じゃ」

銭形「盗んでくださいと言っているようなもんだ」

銭形「だが、警視庁で保管すればルパンも狙いにくくなるってもんだ」

梓「なるほど」

澪「でもこんなに大きくて重い食器棚どうやって移動させるんですか?」

銭形「なぁに簡単さ」


そういって銭形は食器棚の端を持ち上げ、少し浮かせた


銭形「浮いたここにこれを取り付ける」

唯「これって……」


彼が取り付けたのはローラーであった


銭形「これを同じように端の4ヵ所全てに取り付ける」

銭形「ほら、これで移動しやすくなっただろ?」

律「ホントだ」


銭形「よし、さっそく警視庁にもっていくからな」

律「お願いします」

紬「大切に保管してくださいね」

銭形「ははっ、もちろんだよ。お嬢ちゃん」


食器棚を押しながらドアへ向かおうとしたその時


ガチャッ――


銭形「遅れて申し訳ありません、インターポールの銭形です」

唯「えっ!?」

律「はっ?」

梓「どういうことです?」

紬「銭形警部が二人!?」

銭形「ル、ルパン!! 貴様また俺に変装しやがって!!」

銭形「思ったより早かったじゃないのとっつぁん」ビリッ


マスクを破り正体を現す


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最終更新:2011年09月11日 20:34