澪「!!!」

ルパン「おっと、驚かしちまったか?」

銭形「あのパンクはやはり貴様のせいか。おのれ~」カチャ


コルト・ガバメントを構える銭形
それと同時に後ろからついてきている十数名の警官も銃を構える

銭形「大人しく、その食器棚を返してもらおうか」

ルパン「嫌だと言ったら?」

銭形「この状況でそんなこと言えるかな」


銃口をさらに上へと向ける


ルパン「わかった、わかった。返せばいいんだろ?」ニヤッ


ルパン「ほら…よ!!!」


そう言って思いっきり食器棚を蹴飛ばす
食器棚は加速し銭形や警官がいる方へと突進してくる

銭形「危ない!!」


銭形や警官が慌てて散らばるように逃げる


しかし、そのまま誰にも当たらずスピードの付いた食器棚は
そのまま真っ直ぐ部室のドアへと向かっていく


銭形「まずい、ドアにぶつかってしまう!!」


ガチャッ――

そこに待っていたのは次元と五エ門
二人でドアをタイミングよく開け、スピードがついたままの食器棚を迎え入れる

銭形「次元、五エ門!!」


二人は食器棚を受け止め、下に降りる階段の上に板を敷いておき
そのまま、滑らすように食器棚を華麗に運び出していく

銭形「くそっ、あの二人目め」

ルパン「どきな!!」

銭形「ぐわぁ!!」


一瞬の隙を窺いルパンが走りながら銭形と警官たちを蹴散らす

銭形「まて、待てルパン、逮捕だぁ!!!」


銭形と警官たちも追いかけながら下の階へと消えていった


唯「……」

澪「……」

梓「いったい何だったんでしょうか」

律「一瞬の出来事のようだ」

紬「ティーセット……」


静まり返った部室に取り残された5人はただただ何も出来ずに立ちすくんでいた


―――――

次元「これで準備OKだ」


アルファロメオの後ろに荷台を取り付けそこに食器棚を括りつける


ルパン「いやー、悪いな。おまたせ」


ルパンが乗り込み校舎の隅に止めてあった車を発進させる


五エ門「これで終わりか?」

ルパン「あとはとっつぁんを振り払えばOKだ」


バックミラー越しに後ろから追いかけるパトカーを見る


銭形「まてぇ~ ルパン!!」

次元「悪いがまた修理してもらうぜ」


車から身を乗り出しマグナムを構える


ズキュン――


銃声とともに銭形が乗るパトカーのタイヤが外れる


銭形「うわぁぁ!!」

銭形「俺にかまうな!! 続けてルパンを追うんだ!!」


そう言い放ち、残りの数台のパトカーがルパンを追い続ける

次元「きりねぇな」

五エ門「拙者がやる」


その場で大きくジャンプをした五エ門は近くにある電信柱を軽々と切り込み
電信柱を倒してパトカーの行く手を塞いだ


ルパン「ヌヒヒヒ、一丁あがりだな」

五エ門「また、つまらぬ物を切ってしまった……」

次元「お前のその刀、もうつまらないもの専用だな」


~~~~~~~~~~~


ルパンアジト



ルパン「ようし、これで準備OKだ」

次元「ったくよくやるぜ」

五エ門「……」

テーブルの上にはケーキと高級ティーセットが並べられており
天井には装飾品が飾り付けられていた


コンコン――


ルパン「うひょ、きたきた」

ルパン「いらっしゃい」

不二子「久しぶりね。ルパン」


ルパン「ハッピーバースディ、不二子ちゃん」

不二子「あら、私の誕生日覚えてくれていたの?」

ルパン「忘れるわけないじゃない。ささっ、座って」

不二子「ふふ、ありがとう。まぁ綺麗なティーセットね」

ルパン「あら、わかってくれる? このティーセットはベルギー王室で使っていたものと」

ルパン「同じものなんだぜぇ。喜んでくれると思って用意したわけよ」

不二子「ありがとうルパン。やっとあなたも物の良さがわかったのね」

ルパン「ヌフフフ。さぁ、紅茶を淹れたからお飲みくださいお姫様」

不二子「じゃあいただくわね」ゴクッ

不二子「んっ!?」

ルパン「不二子ちゃん?」

不二子「まずい」バシャ


そう言い放ち、ルパンの顔に紅茶をかける


ルパン「あちゃ、ちゃ、ちゃ、ちゃ!!!! あちーなおい!!!」

ルパン「いきなり何すんだよ不二子!!!」

不二子「ルパン、あなたこのお茶どうやって淹れたの?」

ルパン「どうやってって普通にティーパックの奴をちょいちょいと……」

不二子「せっかくいい食器を使っているのになんで淹れ方にはこだわらないの?」

ルパン「えぇ、んなこといっても。そんなやり方知らないし……」

不二子「このケーキも大したことない味だし」

不二子「これじゃあ、外見だけ気にして中身はすっかすっかな男と同じよ」

次元「おい、それぐらいにしてやれ」

次元「こちとら手間暇かけて準備したというのによ」

不二子「だって私の言っていることは本当のことよ」

不二子「事実を伝えてあげただけ」

次元「てめぇ……」

ルパン「いやぁ、確かにそうだ。これは俺が悪い」

ルパン「すぐに紅茶の達人を連れてきて最高のおもてなしをしてやっからな」

次元「おいルパン」


次元が声を小さく、ひそひそ話で話す


次元「もうあんな女構うなよ」

五右エ門「そうだぞルパン」

ルパン「良いじゃないの。子猫ちゃんがおねだりしてると思えば可愛いもんよ」

次元「おれにはハイエナがたかっているように見えるけどな」

ルパン「んじゃ、もう一仕事言ってくるわ」

次元「おい、ちょっ、どこに行くんだよ。ルパン」

五エ門「拙者は帰らせてもらう」

次元「おい待てよ五エ門。俺を不二子と二人っきりにするつもりか?」

五エ門「いいものをやる。これで凌げ」スッ

次元「猫じゃらしかよ!!」

五エ門「じゃあな」

次元「どうせなら先端にダイヤでも付けてくれねーと……」

不二子「あら、次元何それ?」

次元「そこにあるティーセットみたいなもんさ」

不二子「?」




桜が丘高校部室



紬「……」ショボーン

梓「ムギ先輩」

律「元気出せよ、ムギ」

澪「きっと銭形警部が捕まえてくれているよ」

唯「……」

唯「ねぇ、お茶にしない?」

律「たった今、盗まれたのにどうやって?」

唯「確か、紙コップや紙皿が引出しにあったよね」

唯「それを使ってお茶を淹れようよ」

紬「唯ちゃん……」

唯「準備してくれる? ムギちゃん?」

紬「うん」

律「……そうだなみんなパニックになっていたし一息つくか」

紬「みんな、何のお茶がいい?」

唯「私、ミルクティーで!!」

律「私も」

梓「私も同じので」

澪「私はレモンティーがいいな」

ルパン「んじゃ、俺もレモンティー」

紬「ミルクティー3つに、レモンティー2つねって…… っえ!?」

澪「あ、あなたは」わなわな

律「い、いつの間に」

ルパン「そう、神出鬼没の大泥棒それがこの俺……」

律「ルパン三世!!」

ルパン「覚えててくれたぁ!? うれしいねぇ。グフフフ」

律「汚い笑い方しやがって。ムギのティーセット返せよ!!」

ルパン「まぁまぁ、そう言うなよ。ここは一つ一緒にお茶しようぜぇ」

澪「い、急いで警察呼ばないと……」


慌てる澪を尻目に唯が口を開く


唯「ちょっと待って澪ちゃん!!」

澪「何だよ!?」

唯「わざわざもう一回来るってことは私たちに何か用事があるってことだよね」

唯「だったら話だけでも聞いてみようよ」

澪「本気か!? 唯!?」

梓「彼は犯罪者ですよ!?」

ルパン「さっすが唯ちゃんはわかってる~」

律「お調子者め……」

律「しょうがない。6人分用意だムギ」

紬「わ、わかったわ」


机の席には5人の女子高生と一人の長身の男が座る
その光景は実に奇妙で彼だけが違う世界から来たように見える


紬「レモンティーよね。はいどうぞ」

ルパン「いただきます」

ルパン「おー、こんな紙コップに入れたものでもうまいんだな」

律(容れ物と味は関係ないだろ……)

唯「ムギちゃんのお茶は世界一だよ!!」

ルパン「へぇー」

ルパン「あんたがいつもあのティーセットを使ってお茶を淹れているのか?」

紬「え、ええまぁ」

ルパン「なるほどね」

澪(居心地悪い……)

梓「あ、あの何しに来たんですか?」

ルパン「いや、ちょっと可愛いお嬢さんたちとお茶が飲みたくてね」

律「それだけ? 早くムギのティーセットを返せよ!!」

ルパン「そんな怒んなって。可愛い顔が台無しだぜ」

律「うぅ……」

ルパン「あとよ、あんたらは何なんだ? 音楽室でお茶なんか飲んでいいのか?」

唯「私たちは軽音楽部だよ。練習の前にいつもお茶をしているの」

ルパン「ずいぶん楽な部活だな。てっきり茶を飲んでるから茶道部かなんかだと思ったぜ」

澪「ぜ、銭形警部は……」

ルパン「あっ、とっつぁん? 今頃あっちこっち俺を探してるんじゃねーかな」

梓(捕まえられなかったのか……)

ルパン「しっかし、ケーキもうまいなぁ。上出来だ」


紙皿の上にあるケーキをひょいと手に取り、口に頬張る


ルパン「さてと…… ごちそっさん」


そう言った後に、ポケットをゴソゴソさせ
あるものを取り出した


ルパン「唯ちゃん、これ何に見える?」

唯「白玉団子?」

ルパン「確かに似てけっどもな、ちょっと違うんだな。これが」

唯「う~ん、なんか忍者とかが良く使う煙玉みたいな形だから煙玉?」

ルパン「冴えてんなぁ。唯ちゃん。正解だ」グッ


ルパンがしゃべり終わると同時に煙玉を握りつぶし
煙幕を発動させた


唯「ごぼっ、ごほっ」

梓「なんですか? これは!?」

澪「暗いし、何も見えない。怖いよぉ!! 誰か助けて!!」

律「お、落ち着け、みんな!!」


律「とりあえず窓だ!! 窓を開けて換気だ!!」


部室すべての窓を開け、空気を入れ替える
徐々に見えるようになり、メンバーは落ち着きを取り戻していく

澪「はぁはぁ、怖かった……」

梓「いきなりですからね」

律「みんな、良くまわりを見てみるんだ」

唯「何で?」

律「あいつは泥棒なんだからなんか盗んでいったはずだ」

律「バックとか楽器類は無事か?」

唯「私は大丈夫」

澪「私も盗られてないな」

梓「問題なしです」

律「私も平気だ…… 一体なんだったんだ?」

澪「なぁ、もう帰ろうよ。なんか怖い思いばっかりでもう学校にいたくないよ」

梓「私も疲れました」

律「確かに、もう警察の人たちに任せて私たちは出来るだけ関わらない方がいいかも」

唯「それじゃあ、急いで帰ろうかぁ」

律「そうだな」

4人が部室を後にしようとしたその時……


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最終更新:2011年09月11日 20:35