ジャジャッ ジャーン
律「よーし、今日の練習はここまでにするかぁ!」
梓「はい。お疲れ様です」
唯「おつかれさま~今日はいっぱい弾いたねっ!」
澪「皆お疲れ!」
澪(ふぅ今日は疲れたな…甘い物が食べたい気分)
澪(そうだ、今日は皆を誘って喫茶店に寄っていこうかな)
澪「なぁ皆、今日の帰りお茶でもしていかないか?」
唯「お茶?」
梓「あ…ごめんなさい。今日は私、唯先輩と用事があって…」
澪「えっあ…そ、そうなのか…」ズキ
唯「あぅ、ごめんね~澪ちゃん」
梓「すみません。それじゃお先に失礼します」ペコ
澪「いやっ、いいんだ気にするな!はは」
ガチャ、バタン
澪(行っちゃった…まぁいいや、律とむぎを誘えば…)
律「あ、そうだ……私も今日はむぎと一緒に買い物行く約束してんだよな」
澪「えっ」
紬「うふふ、可愛い雑貨を売ってるお店を見つけたの。澪ちゃんも一緒にどう?」
澪「え?あ……い、いや私は…今日はどうしてもパフェの気分なんだ」
紬「そうなの…残念。また今度一緒に行きましょうね?」
澪「うん」
律「そんじゃーまた明日なー澪ー」ヒラヒラ
紬「また明日ね、澪ちゃん」ペコ
テクテクテク…パタン
澪(………)
澪(私、一人だな)
ポツン
澪「……」
最近こういう事が増えていた
実は唯と梓は先月から付き合い始めたばかりのカップルで今が一番楽しい時期
しかも何となくだが近頃では律と紬も以前より親密な雰囲気を漂わせていたりいなかったりするそんな状況
別にそれで除け者にされるわけでも無いが、澪の性格上気が引けて自分から遠慮してしまうのだった
その日も結局一人で帰ることにした
澪(べ…別に寂しくなんかないぞ私は…)
澪(寂しくなんか…)
澪(…………)
澪「一人で喫茶店行こうかな…」ポソ
澪(……………)
澪(…やっぱやめとこう)
トボトボ…
和(あら?あそこにいるのは澪…?)
澪「……はぁ…」
和(溜息?…何だか落ち込んでるみたいね)
タタッ
和「澪、どうしたの一人で。珍しいじゃない」ポンッ
澪「へっ?…あ、和」
和「他の皆は?」
澪「いやー、それが皆して用事があるみたいでさ。暇なのは私だけなんだ、はは」
和「そうなの…じゃあ一緒に帰らない?私も一人なのよ」
澪「うん、帰ろう」ホッ
澪(いいやつだな、和)
テクテクテク
和「それで……何かあったの?」
澪「え?」
和「何だか最近元気がないじゃない?どうしたのかと思って」
澪「………」
澪(和、気にしててくれてたんだ…)
澪(和になら…話してもいいかもな)
話をするために近くの喫茶店へ入った二人は奥まった席に腰を落ち着けた
注文したアイスティーがテーブルの上に置かれたあと澪はこう切り出した
澪「悩みって程じゃないし、もう終わった事なんだけど」
和「うん」
澪「実は私……」
澪(言うの怖いな…でも和なら…大丈夫)
澪「わ、私……あっ梓の事が好きだったんだ…」
和「え…」
驚いた様子の和に澪は縮こまるように俯いた
澪(い、言っちゃった…言っちゃったぞ…)
和「………」
澪(のっ和…何か喋ってくれ……)ビクビク
反応待ちの間は不安だったが、やがて和は納得したように呟いた
和「そっか、道理で…」
澪「?」
和「だから元気が無かったのね。…唯と梓が付き合いだしてから」
澪「!」
澪(え…!まさか和、その頃から気付いてたのか?自分では態度に出してないつもりだったのに)
澪(…和って凄いんだな…)ジーン
和「じゃあ…やっぱり辛い?今の状況」
澪「そ…そんな事ない。梓の事は好きだったけど、今はちゃんと二人を応援してるんだ」
澪「それに律とむぎだって、仲良くなるのは悪い事じゃないしな!うん、それは寧ろ喜ばしい事だっ」ウンウン
和「…でもさっきは溜息ついてたわよね?」
澪「うっ……」
和「……」
澪「……そ、それはまぁ……」
澪「……やっぱり、ちょっと寂しいけどさ…」シュン
和「うん…」
和(そうよね……失恋したうえに親友も他の子と仲良くなってるんだもの)
和「ねぇ澪、ならこれからこういう時は私と一緒に帰らない?」
澪「!!い、いいのか和」パァァ
和「いいも何も、私達も友達なんだから当たり前じゃない」クス
澪「そ、そうだなっ。ありがとう和!」
澪(ホントにいいやつだな、和)ジーン…
雑貨屋の律と紬
律「お?何だこのぬいぐるみ!不っ細工だなー」ケラケラ
紬「ふふ、可愛いじゃない……まぁ、このティーカップ可愛いわぁ」ニコニコ
律「むぎはそういうの見るの好きだよな!……ん?」
紬「あら?」
律(こっちはアクセサリーコーナーか…結構種類あるんだなー)
律(髪飾りも…あ、このヘアピン可愛いじゃん)ジーッ
律(ちょっと欲しいような)
紬「りっちゃん、それ買うの?」ヒョコ
律「へ!?あ、いや見てただけだぞ!私こういうの似合わないしなっ」
紬「そんな事ないと思うけど……」
律「ホントだよ。こういうのはむぎとかのが合ってるって」
紬「……」
紬(きっとりっちゃんにも似合うのになぁ…)
紬「――あ、そうだわりっちゃん!何か澪ちゃんにプレゼント買ってあげたらどうかしら」
律「へ?み、澪に?」
紬「うん。きっと澪ちゃん喜ぶよ」
律「……そ、そうだな…何か買ってってもいいかなーなんて…はは」
紬「うふふふふふ」
律「あははははは」
紬「大好きな澪ちゃんの為にプレゼントを選ぶりっちゃん…素敵だわぁ」キラキラ
律「あははははは」
律(………はぁ///)
この二人が最近仲良くなった理由
それは律が澪のことを好きだと気付いた紬が話を聞いたりアドバイスするようになったからだった
律「でも、何買えば良いんだろなー…」ウーン
紬「あら、澪ちゃんの好みはりっちゃんがよく知ってるはずよ」
律「つってもさ、いきなり私がプレゼントなんてやってもビビられるだけじゃねーかぁ?」
紬「大丈夫よきっと喜んでくれるわ…あ、このストラップなんてどう?」
律「ん?どれどれ」
紬が指差しているストラップは緑色のハートで四葉をかたどった飾り付きのものだった
紬「恋愛成就のお守りにもなってるんですって…素敵」ポッ
律「れっ、恋愛成就とな!?」ドキッ
律(そんなあからさまなモン渡しちまってもいいのか…?///)
紬「うふふふふふ」
悩んだが、結局は紬に後押しされて律はそのストラップをペアで買うことにした
律「サンキュなむぎ!買い物付き合って貰っちゃってさ」
紬「ううん、私は凄く楽しかったからいいのよ……あ、そうだりっちゃん」ゴソゴソ
律「?」
紬「あのね…さっきこれ買ったんだけど…」スッ
律「えっ、何かくれんのか?」ガサッ
律(……ってこれは…)
律「むぎ、これ………」
袋の中から出てきたのは先程律が店内で眺めていたヘアピンだった
紬「りっちゃんによく似合うと思うの。良かったら使って?」
律「…お、おう……ありがとな」
紬「ふふ、それじゃまた明日ねりっちゃん」
律「ああ、また明日なー!」ブンブン
律(……私がこんな可愛いヘアピンなんて笑っちゃうって…)
律(……むぎのやつ…)
律「…今度、つけてみようかな」ポソ
ある日の教室
キーンコーンカーンコーン
澪(次の授業は数学…)ゴソゴソ
タタタ
クラスメイト女子「ねーねー秋山さん!」
澪(んっ)
澪「うん、何?」クルッ
女子「あのさ、秋山さんって彼氏いる?」
澪「ぶっ!??」ガタタッ
澪「なっっ、何いきなりっ」アタフタ
女子2「あのねっ今度○○高の男の子達と遊ぶ約束したんだけど」
女子「秋山さんも一緒にどうかなと思って。彼氏いるって聞いた事ないし」
澪「ま、まぁいないけど…(これは…)」
どうやら合コンの人数合わせで声をかけられたようだ
澪は困惑しながらどう断ろうか悩んでしまう
澪(私はそういうのはちょっとな…苦手だし…)
澪(そもそもまだそういう気になれないんだよ…まだ一ヶ月位しか経ってないのに)
頭の隅にちらりと梓の顔が浮かぶ
澪(駄目だ。気が乗らないし断ろう)
澪「ご…ごめん、折角だけd」
和「澪が行くなら私も行こうかしら」
澪「えっ」
女子「えっ」
女子2「えっ」
澪「のっ和…(いつの間に後ろに)」
女子2「えっ真鍋さんも行ってくれるの??」
女子「真鍋さん真面目だからそういうの行かない人かと思ってたよー」
澪(ほ、ホントに意外だ)
和「うん…でもたまには息抜きっていうか、気分転換するのも良いかと思って」チラ
澪(!!…もしかして和、私のために?)
澪(最近の私が元気ないから…それで気を遣ってくれたのかも)
女子「秋山さんいい?」
澪「う、うん…和が行くなら私も行ってみよっかな」
女子1・2『やったー』
こうして澪は和、クラスメイトと一緒に合コンに参加することになった
澪(はぁぁ……でもやっぱり不安だ…)
そして合コン当日某カラオケ店
言うまでもなく、澪はガッチガチに緊張しきっていた
○○高男子生徒『よろしくーーーー』
女子1・2『あははよろしくー♪』
澪「よ、よろよろ…よろしくお願いします…」カチコチ
和「ちょ、ちょっと澪…大丈夫?」
男子1「ははっそんな緊張しなくていいってー」
男子2「遠慮とかしなくていいからさ!フレンドリーフレンドリー!」
澪「は…はい…」
澪(そっそうだよな…別に遊ぶだけなんだから気楽にいけばいいんだよな…)ブツブツ
和(澪……顔引き攣っちゃってるな…)
和(ていうかこの人達、思ってたのと随分違うわね)
和(○○高の生徒っていうからもう少し真面目っぽいのかと思ってたけど…)
和の予想とは違い、対面のソファに並んだ面々はいわゆるチャラい系ばかりだった
和(これじゃ澪が怖がるのも無理ないわね…失敗したかも…)
男子3「澪ちゃんっていうんだ。可愛いじゃーーっん」
澪「あははははははは」カタカタカタ
和(これは……駄目そうね)ガクッ
それでもしばらくはクラスメイト女子と男子達中心に和気あいあいとした雰囲気で合コンは進んでいた
澪の緊張は以前解けないままではあったが
男子4「澪ちゃんて髪すげ綺麗だねーー触っていい?」
澪「はい!?いやっ、そそそそそんな」
男子4「あはは冗談冗談!そんなキョドんないでよーー」ゲラゲラ
澪「は、はは…ははは…」
澪(や、やっぱ来なきゃ良かった…逃げたいよぉ…)
和「ごめん澪、私ちょっとトイレ」ヒソ
澪(え!?)
和「すぐ戻るから。ちょっと待ってて」スッ…
ガチャ
バタン
澪(のっ和行っちゃったぞ…わわ私はどうすれば)オロオロ
和がいなくなって空いた澪の隣の席に誰かが座ってきた
男子1「ねね!そういや澪ちゃんて軽音やってるんだって?」
澪「はっ!はい、や、やってます」
男子2「マジで?かっちょいー」
男子1「結構うちの学校でも評判だし。桜高のギャルバンがイケてるって」
澪「そっ、そうなんですか!?」
澪(う、嬉しいかも…)ポワ
思いがけず褒められ澪は喜びかけたが、次の台詞に凍り付いた
男子1「特に去年の文化祭とか超伝説になっててさー」
男子2「ああ、ボーカルの女がパンチラサービスしてたってやつだろ?」
澪「!!!!!」
澪(な、な、な、な……)
男子1「っつかあれ?アレって…もしかして澪ちゃんじゃね?」
男子2「は?…あーあーそうかも!てかそうだよな?ほら、俺写真持ってるし」ゴソゴソ
ピラッ
澪「なっ……」
澪(何でそんなの持ち歩いてんだよおおおぉぉ)
男子1「おー!じゃ歌とかめちゃめちゃ上手いんじゃね?歌ってみせてよ」
男子2「そうそうまだ歌ってないの澪ちゃんだけだし」
澪「えっでも…」
澪(こ、こんなとこで歌うなんて無理だよぉ…恥ずかしい…)
男子1「なんならパンチラ披露してくれてもいいよーアハハナンチャッテ!」
澪「………!」
男子1「ほら~早く歌ってよ!!」
男子2「歌わないと盛り下がっちゃうよー?」
男子1「はい!澪ちゃん歌いまーーす!」
澪「………」ジワ
澪(もうやだ…)
女子「ちょっ、ちょっとやめなよー…」
澪「………」
しつこく迫られ少し涙目になった澪に気づいたのか女子達も困惑顔になる
澪は俯いたまま男子達を無視していたが、無反応の澪に白けたのか男子達は溜息を吐いた
男子2「なんだよ…折角話しかけてんのに無視とか」
男子1「……マジ萎えるわ…ちょっとは空気読めよ…」
澪「……!!」
ポツリと呟かれた言葉
それは澪の胸を抉るには十分過ぎるくらいの一言だった
ガタンッ
ダッ
女子「あっ秋山さん……」
クラスメイトの声が聞こえたが、澪はそのまま部屋を飛び出していった
ドンッ
和「きゃっ!?」
和「み…澪?どうし――」
澪「の…のどか…」ブワァッ
和「!!み…」
澪「うっ」
澪「うわあああぁぁぁぁぁぁぁんん!!」ダッ
ダーーーーーーッ
バタバタバタ…
和「澪っ!?」
最終更新:2010年01月02日 13:52