「とにかく、まずはポケモンセンターに行かないといけませんね」

私の手持ちのうち、ゆい先輩を抜いても、ラプラスとポリゴン2は厳しいですし、ここを抜けるにも、プテラが手持ちにいませんしね。

「じゃが、問題は……」

「ええ」

上空にいるサンダーと下に迫ってきている、ロケット団ですね。今はなんとか、他のトレーナーの方々が進行を止めてくれているので、何とかなっていますが。

「それにしても、どうして、サンダーがここに。ヤマブキで一気に攻めた方が……」

「たしかにのう。思うに、お前さんをここに足止めしときたかったんじゃないかな」

「どうしてですか?」

「シオンの事件を解決したのはお前さん達じゃないのか?」

「まあ、そうですけど」

「じゃから、ここで足止めをしておくのが無難な選択じゃ。もし、倒せれば、それはそれでいいじゃろ」

「たしかに。でも、そこまでして、私を止める意味はあるんですかね」

「梓君を止めたいんじゃなくて、ゆい君を止めたいのかもしれんのう」

「ほえ、私?まっさか~」

「いやいや、ゆい先輩はそれに値するポケモンですよ」

「あずにゃんまでそんな~。照れますな~」

クネクネと顔を赤らめるゆい先輩。そりゃ、何をしてくるか、トレーナーの私ですら、分からないんですから、相手なんか、もっと分からないでしょうし、警戒は当然でしょうね。

「いたぞ!ツインテールのガキと幼稚園児のクソガキだ。捕獲しろ」

私達がグレンジムの前で、そんな話をしていたら、ロケット団の連中の姿が見えました。

「やばい、のんびりしすぎた。こっちから……」

逆のほうを見ると、そっちからもロケット団の連中の姿が。

「くっ。一旦、ジムに戻るんじゃ」

私達はジムの中に逃げ込み、カツラさんはドアに鍵をかけます。

「さて、梓君」

「なんですか」

「ドアに鍵をかけても、おそらく、すぐに突破されるじゃろう」

「……」

「じゃから、ここはワシ達が囮になる。その間に、裏口から逃げるのじゃ」

「それじゃ、カツラさんは……」

「大丈夫です!」

私の後ろにカツラさんのジムに所属するトレーナーの方々が話に入ってきました。

「安心してください。私達も戦います」

「でも、私のために皆さんが危険に……」

「これは梓さんのためだけじゃありません。僕はこの島の出身なのですが、あんな連中にこの島やジムを好き勝手にされたくないだけです」

「ほっほう、頼もしい言葉じゃ。どうじゃ、梓君。こやつを彼氏に……」

「駄目だよ!あずにゃんは私のなんだよ」

「そうか、そうか。残念じゃ、もう、振られてしまったのう。これで、何連敗じゃ?」

「も、もう、カツラさん」

ジムに所属するトレーナーさんとカツラさんに笑いが起きます。

「こら!!サッサと開けろ!!!」

ドアをドシドシと蹴る音がします。

「おっと、のんびりしてる場合じゃないな。これで分かったじゃろう。ワシ達は大丈夫じゃ」

「……カツラさん。分かりました。皆さんを信じます」

「うむ。では、裏口まで案内してやれ」

「はい。……こっちです」

「カツラさん」

「なんじゃ」

「もう一度……戦いましょうね」

「……ああ。頑張るんじゃよ」

「はい!」

私はカツラさんに背を向け、駆け出しました。

梓が裏口に駆け出した後、ドアがガチャンとドアが蹴破られた。

「これはこれは、ジムリーダーのカツラさん。ツインテールのガキはどうした?」

「もう、ここにはいないぞ」

「そうかい。まあ、いないなら残念だが、カツラのじいさんだけでも、潰しておくか」

「……すまんのう」

カツラはロケット団ではなく、自分のジムに所属するトレーナーに言う。

「こんなジジイと心中は嫌かもしれんが、悪く思わんでくれ」

「……思う必要はないでしょう」

「そうですよ、勝つんですから」

「フッ。ではいくかのう」

カツラを先頭にトレーナー達は自分達の倍以上もいるロケット団に向かっていった。

「大丈夫かな、カツラさん達」

「今はそれを信じましょう」

私達はヘルガーにまたがり、ポケモンセンターに向かっています。

「それよりも、私達のすべきことです」

「えーと、なんだっけ?」

「まったく、ゆい先輩は。私達はサンダーを倒すんですよ」

「いつも、思うけど、無茶だよね。ただの女の子なのにさ」

「それは思いますけどね。……ヘルガー、止まってください!」

私はヘルガーを止めます。というのも、前には……。

「ロケット団!」

ロケット団が5人くらいいて、それぞれ、ニドキング、ニドクイン、オコリザルが10匹くらいずついて、私の行く手をさえぎります。どうしますか、中央突破か、迂回して逃げるか。でも、ノロノロしてるとポケモンセンターもやばいですし。

「ここは中央突破です。皆、来てください!」

私は手持ちのハッサムとニューラ、そして、さっきの戦いで体力が万全ではないポリゴン2を出します。

「くくく、たった、5匹で30匹もいる俺達を突破できると思っているのかな?」

「やってみなければ、分かりませんよ」

「上等だ。こっちは力押しでいくぜ。いけっ、お前ら」

その言葉を合図にオコリザル達が突撃してきます。

「こっちも、迎え撃ちます!」

「私も応援するよ!」

皆、いつでもいいとばかりにやる気を見せています。

「ザルザル!」

オコリザルが足に力をため、メガトンキックをニューラに繰り出します。

「ニュラ(サルの癖に生意気な奴だ)」

ニューラはそれをひらりとジャンプで避けて、オコリザルの背後に回り、オコリザルの背中を切り裂きます。

「ザル!」

オコリザルは背中から、血を噴出し、倒れます。

「ニュラ(さあ、次はどいつだ)」

ニューラはオコリザルのほうを向き、挑発をしているようです。

「さすがはニューラですね」

「そうだね」

「ゆい先輩も戦いましょうよ」

「私は切り札だもん。それよりも、早く、ここを出発しなきゃね」

「そうですね、敵も集まってくるかもですし。……やっぱり、ゆい先輩が戦った方が早い気もしますが」

「無理だよ」

「なら、仕方がありませんね」

「ポリ!」

その時、バシンという音ともにポリゴン2が飛ばされてきます。

「ポリ太!」

「戻ってください、ポリゴン2!」

やはり、カツラさんとの戦いのダメージが大きいですね。

「クイン!」

ニドクインは咆哮を上げ、こちらに向かってきます。

「ヘル!」

ヘルガーは私に向かってなにやら、ほえ始めます。

「どうしたんですか?」

「私が戦うから、いったん、降りてだって」

「……分かりました。頼みましたよ、ヘルガー」

私はヘルガーから降りて、急いで、その場を離れます。

「このままじゃ、不利ですね」

皆、頑張ってくれていますが、そもそもの数が違います。

「サム!」

私が不安そうにしていると、ハッサムが2匹目のニドキングを倒しました。

「おおっ、さすがはサムちゃん。あずにゃん、不安そうにすることないよ。皆、とっても、強いもん」

「ですね」

「たしかに、あのハッサムは強いな」

「ああ。……だが、これまでだな」

「強がりですか?一体何を言って……」

んです?と言おうとしたところに、ハッサムに向かって、ビシャーっと、稲妻が落ちます。

「サムーーーー」

鋼鉄の体を持つ、ハッサムも黒焦げになり、膝をつきます。

「い、一体何が……」

「上を見てみな」

私が上を見てみると、そこには……。

「サンダー!!」

上空には無差別に雷を落としている、伝説のポケモン……サンダーがいました。

「今の攻撃はサンダーの……」

「そのとおりだ。お前が無駄な抵抗をするから、サンダーは無差別に雷を落としているんだ」

「……サム」

なんとか、立ち上がろうとする、ハッサム。

「無駄だ。さっきまでの仕返しをしてやれ、ニドキング」

「キング!」

ニドキングはハッサムを上に放り投げ、その大きくて硬いツノで思い切り、突き刺す技、メガホーンを放とうとします。

「このままじゃ……」

「私に任せ……ひゃー」

ハッサムを助けに行こうとしたゆい先輩は他のニドキングに摘み上げられます。

「は、離してー」

ジタバタと暴れるゆい先輩。

「お前はこれから、ご主人様のあられもない姿を見ることになってんだよ」

いつの間にか、ロケット団の連中が私に近づいてきます。

「あ、あずにゃんに何をする気だー。変なことしたら許さないぞー」

ジタバタ

「おお。怖い、怖い」

「うう、サムちゃーーん」

ゆい先輩は大きな声で叫びます。

「……サム!」

突如として、やられるのを待っていた、ハッサムの目に光が戻り、その硬いハサミで敵を攻撃する技、メタルクローを落下を待っている、ニドキングに攻撃します。

「キング!」

ニドキングもメガホーンで対抗します。

ガッシーン

お互いのハサミとツノが激突します。

「……キング」

ニドキングのツノがガラスのようにビキビキとひび割れ、粉々になり、倒れました。

「……サム!」

ハッサムは怒りの目で私達の方……ロケット団とニドキングを睨みます。

「ひっ」

「落ち着け。まだ、こっちには7匹のニドキングがいる。あんな手負いのハッサムごときでは相手にはならん」

「じゃあ、私のサワムラーはどうだ?」

そんな声とともに、私に一番近づいていた男が何かに蹴り飛ばされます。

「り、律先輩」

私がその方向を見ると、律先輩とサワムラーが立っていました。

「あ、りっちゃん。こっちも助けてよー」

「くそ。ニドキング、そいつをサッサと倒せ」

「ええっ!?」

ニドキングはさっきのハッサムにやったように、ゆい先輩を放り投げます。

「ひゃー、あずにゃーん」

「ゆい先輩!!律先輩、ゆい先輩を助けなきゃ」

「落ち着けよ、梓。ゆいがあれくらいでやられるか?」

「……それもそうですね」

「ええっ!?ひどいよ、2人とも!」

そんなことを言ってるうちにニドキングまで、落下してきます。

「もう!こうなったら、ゆいちゃん真拳奥義『アイス☆ミサイル』」

ゆい先輩はアイスをどこからか取り出し、ニドキングの目に向かって、落とします。

「キング!」

ニドキングは目を押さえて、うずくまります。

「律先輩!」

「はいよ」

律先輩はサワムラーに命令し、サワムラ-はうずくまっているニドキングを蹴り飛ばし、ゆい先輩を回収します。

「わーん、怖かったよー」

「よしよし」

私はゆい先輩の頭をなでてあげます。

「くそが。こうなったら、ニドキング6匹、全部で……」

「それは無理だろう」

「は!?」

「後ろ」

「……キング」

背後で、5匹目のニドキングがハッサムによって、倒されました。

「何だと!?」

「すごいです、ハッサム!」

「だが、まだ、オコリザルが……」

「……ザル」

その言葉と同時に8匹目のオコリザルが倒れました。

「おおっ!ニュー太もすごい!」

「ならば、ニドクイン!」

「クイン」

ヘルガーも頑張って、4匹は倒し、1匹と戦っていますが、残りの5匹のニドクインがこちらに向かってきます。

「でも、5匹じゃ足りないだろ。その程度の強さじゃ」

「う、うるせえ!」

「だが、ここは退いた方がいい」

「ああ。ツインテールのガキなら、このまま、押し切れるがもう1人はさすがに」

「たしかに」

「応援はどうした」

「今、ここにいるトレーナーの妨害にあっている」

「なら、一旦、退くぞ」

「おお!」

ロケット団の連中はポケモンを回収して、逃げていきました。

「まったく、腰抜け共だな」

私がハッサム達をボールに戻している時に、律先輩が話しかけてきます。

「ありがとうございます、律先輩。危ないところでした」

「ん?気にするなよ、ピンチの時はお互い様だろ」

「……そうですね」

「ところで、梓達はどうして、ここに?」

「私達はグレンジムに挑戦に来たんです。律先輩は?」

「実はあずにゃんの様子を見に来たとか、だったりして~」

「まさか~」

「実はそうなんだ」

「はい?」

突然、律先輩は私を抱き寄せます。

「!?」

「ちょ、律先輩」

「嫌か?」

「嫌とかじゃなくて……」

「会いたかったよ、梓」

「わ、私は……えーと」

というか、顔が近すぎですよ、律先輩。

「駄目だよ!!」

バーン、とゆい先輩に体当たりをされます。

「な、な、な、なんのつもり、りっちゃん!!」

「何って、冗談だよ、冗談。大体、ゆいが変なことを言うからそれにのっただけだよ」

「のりすぎだよ!」


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最終更新:2011年09月21日 01:04