ふう~、ゆい先輩のおかげで助かりました。まだ、心臓がドキドキしてます。まったく、律先輩は…。
「本当はふたごじまに伝説のポケモンの1匹、フリーザを見に来たんだよ。もう、ポケモンリーグにエントリーして暇だったし」
「……」
「でも、いなくてな。やっぱり、伝説のポケモンはなかなか見つからないもんだな、と思って、カツラさんともう一度戦おうかと思って来たん
だが、こんな状況だったんだ」
「……」
「一体、何があったんだ?」
「実は……」
これまでのことを律先輩に説明します。
「なあ、1ついいか」
「なんですか?」
「この大馬鹿野郎」
「なんですか、突然。それに、律先輩に言われたくありません」
「その話なら、こんなところでのんきに話してる場合じゃないだろ」
「まあ、そうですけど……って、早く、ポケモンセンターに行かなきゃ」
私はヘルガーにまたがります。
「私も行くよ」
律先輩はリザードンを出します。
「律先輩。上空に出ると、サンダーに……」
「低空飛行で行くに決まってるだろ」
「そうですよね。さあ、行きますよ、ゆい先輩」
「ムスー」
ゆい先輩はほっぺを膨らませて、ご機嫌斜めのようです。……そんな姿もかわ……いやいや、今は見とれてる場合じゃないです。
「ほら、行きますよ、ゆい先輩」
私はゆい先輩を抱き上げ、ヘルガーにまたがり、出発します。
「なにさ、なにさ。プンプン」
「機嫌を直してくださいよ」
「つーん」
「すっかりご機嫌斜めだな」
「誰のせいだと思ってるのかな」
「すまんすまん。……それより、ポケモンセンターだぞ」
「ええ」
私達がポケモンセンターに到着すると、ロケット団とトレーナー達との熾烈な争いのあとがありました。今は何もなく、静かなようですが……。
「やはり、ロケット団もここも狙ってきたんだな」
「そうみたいですね。大丈夫でしょうか」
「外にロケット団もいないし、大丈夫だろ」
「でも、シャッターが閉まってますから、入れなさそうですね」
「そうだな。……ここは呼びかけてみるか」
律先輩はそう言うと、ドアを叩きます。
「おーい、中に誰かいるかー」
ガシャンガシャンとシャッターが揺れますが、中から誰か出てくる気配はありません。
「つーん」
「いい加減、機嫌直してくださいよ」
「なんだ、ゆい。まだ、機嫌直ってないのか」
「誰のせいだろうねー」
「まったく……、おい、梓。かわりに呼びかけてくれ」
「はい」
「さてと。……ほれ」
律先輩はゆい先輩を抱き上げます。
「わっ、り、りっちゃん」
「これで平等だろ」
「……」
「うーん、たまにはあずにゃん以外に抱かれるのもいいね」
「!?」
「だろ?どうだ、私のポケモンにでもなる……」
「ここまでです!!」
私は律先輩から、ゆい先輩を取り上げます。
「いつまでも、遊んでいる場合じゃありません。サッサと中に入らないと」
「……」
「どうしたんですか、ゆい先輩」
「あずにゃん、やきもち?」
「なっ!ち、違います。そんなわけありません!」
「ええー、私はさっきやきもち焼いてたのに、あずにゃんはやいてくれないんだー」
「うっ、さっきのはやきもちですか」
「うん!あずにゃんとお揃いだね!」
「わ、私は違います」
「えへへ~、でも、顔真っ赤~」
「もう!」
「……」
「どうしたんですか、律先輩」
「……いいや。それよりも、ポケモンセンターには入れないみたいだし、どうするか」
「?そうですね~」
なんだか、一瞬、律先輩が寂しそうな顔をしていたんですけど、気のせいでしょうか。まあ、それはともかくとして。
「なんとか、ここに入らないと、律先輩はともかく、私は何も出来ません」
「さっき以外には手持ちのポケモンはないのか?」
「ええ。カツラさんとのバトル後でしたし。今、戦えるのはニューラとヘルガーとゆい先輩だけですね。ハッサムも戦えるでしょうけど、無理
はさせたくありません」
「じゃあ、どうするか。このまま、シャッターを壊すか」
「それは最終手段で」
その時、シャッターがガチャガチャと上に上がりました。
「あなた達、すぐに中に入って」
「は?」
「早く!」
私達はすぐに中に入りました。そして、すぐにシャッターが下ろされました。
「慌しいな」
「まあ、仕方がないですけどね」
「あなた達はどうしたの?」
私達を中に入れてくれた人……ジョーイさんが話しかけてきます。
「実はかくかくしかじかで」
「なるほど。グレンジムから逃げてきたのね」
「はい。早速ですけど、私のポケモンの回復お願いします」
「任せてちょうだい」
ジョーイさんはゆい先輩を含めて、回復させに行ってくれます。
「ところで、ここにはジョーイさんだけですか?」
「いいえ。こっちに来て」
私達は奥に連れられて行くと、何十人かの人達がいました。
「ロケット団が攻めてきた時、あそこは広いから、戦闘場所にしたいから」
たしかにあそこに人がいたら、戦いづらいですからね。
「それじゃ、回復も終わった頃だろうし、戻りましょう」
私達は回復させたポケモンを受け取り、パソコンに向かいます。
「さて、メンバーをどうしますか。律先輩は?」
「私はこのままでいいよ。じっくりと考えて頂戴な」
「それじゃ、遠慮なく」
さて、どうしましょうか。まず、ゆい先輩は当然として、残りの5匹です。当然に、ハッサムを入れます。サンダーとの戦いもありますから、
プテラも必須です。後は……いろいろなタイプに対応できるイーブイに、素早く動いてくれる、ニューラ。最後の1匹は……。
「うーん」
「じっくりとは言ったけど、なるべく早くしろよー」
「分かってますよ」
最後の1匹は……ハクリューにしましょう。
今回のメンバー ゆい ハッサム プテラ ハクリュー ニューラ イーブイ
「よし!では、行きましょう、律先輩」
「おう!」
「あなた達はどこに行くの?」
ジョーイさんが私達に聞きます。
「危険なことをするなら、私はあなた達を止めます」
「……なら、戦うしかないな」
「ちょっと、律先輩」
「……本気?怪我とか、もしかしたら、死ぬかもしれないのよ」
「たしかにそのとおりだな。でも、どっちにしても、このままじゃ死ぬんだ」
「……」
「カツラさん達だって、戦ってるんだ。私達だけ、安全な場所に逃げてられるか。それに相手はロケット団だけじゃなく、伝説のポケモン、サンダーもいる」
「……倒せるの?」
「倒せるかはわかんないけど、倒す。私達、2人……いや、3人か、の力で」
「……律先輩」
「……りっちゃん」
「……分かったわ。頑張ってね。無理はしないようにね」
「もちろんだ」
「はい!」
「私に任せてよ~」
ガシャーン
私達が決意を固めていると、ホールの出入り口から、大きな音があり、ドアが破壊され、そこにはロケット団やニドキング、ニドクインなどの姿がありました。
「ロケット団!」
「てこずらせやがって、このガキ達」
「さっきは5人で負けたからな。今度は倍の10人で来た。これで、60匹だ。それに……」
「!?危ないです、ジョーイさん」
私はジョーイさんを庇うように倒れこみます。
ドカーン
ジョーイさんがいたところには雷が落ちてきました。
「まさか、この上空には……」
「そうだ、サンダーは上空にいる。もっとも、屋根で見えないがな。町は大変だぞ。なにしろ、無差別に雷を落としまくってるからな」
「くそっ」
「……律先輩。行きますよ」
私はハクリューを出します。
「おう。足を引っ張るなよ」
律先輩はサワムラーを出します。
「そっちこそ」
「2人とも、頑張ってー」
「ゆい先輩も後で戦うんですよ」
「分かってるよー」
「それじゃ、いくぜ、梓」
「ええ」
私と律先輩はそれを合図に、一歩を踏み出しました。
VSロケット団編① 「ポケモンセンターへ」 修了
前回までの状況(トレーナとポケモン)
梓 ゆい ハッサム ヘルガー イーブイ ニューラ ガルーラ ハクリュー ポリゴン2 プテラ ラプラス
澪 ゼニガメ エビワラー デンリュウ
律 リザードン サワムラー ニョロボン レアコイル
ムギ フシギバナ カポエラー ギャラドス
純 うい カビゴン ゲンガー
VSロケット団編② 「夢」
今回のメンバー ゆい ハッサム プテラ ハクリュー ニューラ イーブイ
私の父はポケモンを研究する科学者だった。ただ、オーキド博士みたいにポケモンの生態を研究するんじゃなく……。
『これでうまくいけば、新しいポケモンが出来るぞ』
ポケモンの遺伝子操作を研究するものだった。
「ここが、父の研究していた場所か」
私はポケモン屋敷跡地を見る。ここにはミュウツーを研究していたポケモン研究家……私の父が暮らしていた。
「昔が懐かしい?」
「……懐かしむような思い出はここにはないわ」
私はAYUの問いに答える。
「ところで、何をしに来たの」
「忘れ物だよ」
「ピカチュウ♪」
家に置いてきたはずのピカチュウが私に飛び込んでくる。
「駄目だよ、お父さんのプレゼントを置いてきちゃ」
「……どうして、こんなことを」
「だって、今日で終わっちゃうかもしれないじゃない」
「……あなたは一体、何がしたいの」
「……詳しくは言えないけど」
AYUは一息入れて、こう言った。
「家族との絆は大切にしなさいな」
絆か。私は再び、昔を思い出した。
真鍋和・幼少期
ジョウト地方・ワカバタウン
『お父さんな。カントー地方のグレンタウンで、ミュウの遺伝子を使ったポケモンを作る研究に参加することになったんだ』
『すごいねー』
『だから、寂しいかもしれないけど、ここで待ってるんだぞ』
『うん!』
『それからな、プレゼントだ』
『ピカチュウ♪』
『わー、ピカチュウだー。可愛い』
『お前はポケモンマスターになるのが夢だったな。これで頑張るんだぞ。夢は頑張れば、叶うんだ』
『うん!』
『わー、和ちゃん、いいなー。』
『お父さんに貰ったの』
『私もプレゼントしてもらおうかなー』
『無理じゃないかしら、唯には』
『ぶー、私だってもらえるよ』
『まあ、頑張ってね』
『うん!』
それから、数年後、ポケモン屋敷で何かが、暴走し、たくさんの死傷者が出たと報道された。
『私の所で、ポケモンの研究をしないか』
サカキに誘われたのは、私が15歳の時だ。
『お前の父はポケモン屋敷で、ミュウツーの研究をしていただろう。私のところでもしてほしい』
『私にそんな技術はないわ』
私はその場を去ろうとする。
『……お前の家には莫大な借金があるだろう』
『!?』
その言葉に私は足を止める。父は研究をしていて、研究機材などの借金がまだ、たくさんあった。母親が頑張って返しているが決して楽な話ではない。
『それを私が代わりに返してやろう』
『……どうして、そこまで』
『ミュウツーにはそれだけの価値がある。それだけだ。それにお前も興味があるだろう。お前の親父さんがやっていた研究が』
『……』
『で、どうする?』
『……分かったわ』
私はそれを承諾した。
『そっかー。和ちゃんはカントーに行くんだー。寂しくなっちゃうな』
『そうね』
『でも、また、会えるよね。なら、寂しくないかな』
目に涙を浮かべながら、そんなことを言う、唯。おそらく、強がっているのだろう。私が寂しくないように。多分、もう、会う機会もないだろうけど。
「もう、昔を思い出すのはいいかい?」
「……ええ。それで、用は?」
「あの子達が見つかったって。場所はグレンジムの近く。おそらく、ポケモンセンターに向かってるんだろうね」
「……分かったわ。私も向かうわ」
「その子はどうするの?」
「ピカチュウ?」
「……連れて行くしかないじゃない」
「フフフ、頑張ってね」
「あなたは来ないの?」
「私はまだ早いから」
「そう」
私はそう言って、ロケット団の基地に向かった。
最終更新:2011年09月21日 01:06