「……つまり、私達がここに来るように、ここまでの道のロケット団の数を少なくし、通りやすいようにしたんですよ」

「おお、なるほど!……ってことはこれって罠!?」

「でしょうね」

「だが、ここでじっとしてるわけにもいかないな」

「ですけど、ジムに特に異常も見られませんし、カツラさんも逃げ出したと思うんですけど」

「中に隠れているかもしれないだろ。とにかく、一度は中を見ないとな」

「危険ですよ」

「どっちにしろ、この島に安全な場所なんかないよ。それに、室内なら、あれの電撃にも耐えられるだろ」

律先輩は上空のサンダーを指差します。

「しかし、どうして、無差別に攻撃をしてるんでしょうね」

「これは私の勘だけど、あのサンダーはロケット団でも完全に操れてないんじゃないか?」

「?」

「つまり、捕まえたはいいけど、全然、命令を聞かないんじゃないか?だから、無駄に操ろうとするよりも、自由にさせてるんだろ」

「じゃあ、なんで、サンダーは逃げ出さないんでしょうか?暴れてる理由が分かりません」

「それは私にも分かんないよ。あくまでも、勘だから」

「ねえねえ。結局、どうするの?」

「……仕方がありませんね。虎穴に入らずんば虎子を得ずといいますからね。行ってみましょう」

「よし!じゃあ、梓も納得したから、中に入るか」

「頑張ろうね!」

私達は慎重にジムに潜入します。中はポケモンの爪で破壊された後や焦げた跡など生々しい戦闘の後が残っています。

「ひどいな」

「ええ」

私達はフィールドの中央に来て、止まりました。

「それにしても、カツラさん達がいませんね。やはり、ロケット団に……」

「いや。カツラさんは強いから、大丈夫だろ。たとえ、梓との戦闘の後でもロケット団には負けないさ。……まあ、今はカツラさんの心配をしてる場合じゃないけどな」

その言葉を合図に周りから、私達を取り囲むようにロケット団が現れました。

「久しぶりね」

ほとんど、男の人の中で、眼鏡をかけた女の人が話しかけてきました。

「タマムシシティ以来ね」

「たしか……和さん」

「覚えてくれて光栄ね」

「ピカチュウ」

和さんの下に可愛らしいポケモン……ピカチュウがいました。

「わ~、可愛いね~、こっちにおいで~」

ゆい先輩はピカチュウをこっちに呼び寄せようとします。

「ゆい先輩!すこしは緊張感を持ってください!」

「えー、でも、可愛いよー」

「ピカチュウ♪」

「……それは否定しませんけど」

「もういいかしら」

「す、すいません」

「それにしても、あの時でやめておけばいいのに、とことん、私達に絡むのね、梓ちゃん」

「好きで絡んでるわけじゃありませんけどね」

「……あなたはなんで旅をしているの?」

「はい?なんですか、突然」

「私達にかかわらなければ、もっと、快適な旅になったと思っただけよ」

「まあ、それは私も思いますけどね」

「あずにゃん、あずにゃん」

「何ですか?」

「そこは『私はポケモンマスターになるために旅をしているんです。ポケモンを悪用するあなた達になんか負けません!!』っていうところだよ」

「なんですか、それ」

「うむ、熱いな」

「さすが、りっちゃん。分かってるねー。りっちゃんはなんて言うべきだと思う?」

「そうだな。こういうのはどうだ。『私は最強になりたいから旅をしているんです。あなたも、私が最強になるための礎になってもらいます』」

「いい感じに厨二だね」

「だろ?」

「……少しは緊張感を持ってくださいよ」

「はーい」

「ほーい」

「……あなたはポケモンマスターを目指してるの?」

「まあ、一応目指してますけど」

「……そう。あなたみたいなちんちくりんでもポケモンマスターを目指せるなんて、いい時代ね」

「なっ!!」

「ぷっ。そりゃ、そうだな」

「お子様は家で、ママの乳でも吸ってろ」

今の一言で、ロケット団の連中が下品な笑い声を上げます。

「失礼な人達だね。あずにゃんはこのお子様体型だから、いいんだよ!」

「そうだ。ゆい、良い事言った。梓がこ○亀に出てくる、秋○麗○みたいにスタイルが良かったら、それはもう、梓じゃない」

「りっちゃんの言うとおりだよ!」

「律先輩達は私に恨みでもあるんですか!」

「……いいわ。私が戦ってあげる。あなたに実力の違いを見せてあげる」

「え?」

「あなた達は下がってなさい」

「し、しかし……」

「あなた達が戦っても、無駄に戦力が削られるだけよ。だから、下がってなさい。……で、どうするの?」

「……律先輩」

「なんだ?」

「周りのロケット団の人達を頼みます」

「……任せろ」

「ありがとうございます。では、和さん。その勝負、受けます。やってやるです!!」

「じゃあ、ルールは6対6で全滅させた方が勝ちでいいかしら」

「もちろんです」

「(夢破れた者と夢を追う者の戦いね。これも若干、厨二くさいけど)では、始めましょうか」

「いつでもいいですよ」

「では……」

「「バトルスタート!」」


VSロケット団編② 「夢」 終了





今回のメンバー ゆい ハッサム プテラ カイリュー ニューラ イーブイ

「「バトルスタート」」

私のデータはおそらく、和さんに知られているでしょう。とすると、私のメンバーの弱点をついてくるでしょう。その上で、最初のポケモン
は……。

「行きますよ、ニューラ!!」

「来なさい、バタフリー!!」

相手はバタフリーですか。もっと、強いポケモンを出してくるかと思ったんですけど。

「なにか、意外そうな顔をしてるわね」

「いえ、別に……」

「ポケモンは戦い方しだいよ。今、それを見せてあげる」

「ふん、見せてくださいよ。ニューラ、こおりのつぶて!」

ニューラは氷の塊を一瞬で作り上げ、バタフリーに向かって、投げつけます。

「バタフリー、ちょうのまいでかわしなさい」

バタフリーは美しい舞を舞ってるかのようにこおりのつぶてを避けます。

「くっ」

「ちなみに今のは避けるためだけの技じゃないのよ」

「!?」

「バタフリー、むしのさざめき!」

バタフリーは羽の振動から、超音波を発生させ、ニューラに攻撃します。

「ニュラ!?」

ニューラはその攻撃を受け、まるで、弾丸のような勢いで、私の横を通過し、壁に激突します。

「ニューラ!?どうして、あのバタフリーでそこまでの威力が……」

「フフフ。ちょうのまいはとくこう、とくぼう、すばやさを強化する技。だから、むしのさざめきの威力もアップする。そのうえ、あくタイプ
にむしタイプの技はこうかばつぐん。それだけのことよ」

「……」

「どうしたの?もう、降参かしら」

「そんなことはしませんよ。ただ……」

「?」

「あなたみたいな人がどうして、ロケット団にいるのかなって」

「……あなたにはどうでもいいことよ」

「今がチャンスだ。あの、ニューラに追撃を加えるぞ」

「し、しかし、隊長からの命令が……」

「そんなもん関係ねえ。今、追撃しないでいつするんだ。さあ、いけ、ニドキング!」

「ニド!」

ロケット団はニドキングを出し、ニューラに迫ろうとする。

「大人しくしててくれないか?」

そのニドキングに大量の水が濁流のように迫り、その行く手が閉ざされる。

「邪魔すんなよ、楽しい戦いをさ」

私はニョロボンを出し、ロケット団を牽制する。

「くそっ。お前、1人くらいならすぐに突破してやる」

「へっ」

相手は50人くらいか。あるいはそれ以上か。正確には分かんないが、ここで対決すると梓達の戦いの邪魔になるな。

「外で相手してやるよ」

「は?」

「外で相手してやるから、外に出ろよ。ここじゃ、2人の邪魔だ。もっとも、私に負けるのが怖いなら、いいけどな」

「くっ、上等だ。てめえから倒して犯してやる」

ものすごく単純な奴らだな。皆外に出て行く。

「勝てたら、好きにしていいぜ」

私も、それに続く。

「律先輩!」

「りっちゃん!」

私達はロケット団と外に出ようとする、律先輩を止めます。

「心配するな。私はあいつらになんか、負けないよ。今はそっちに集中しろ。どうしても心配なら、サッサと降参するか、サッサと倒して加勢してくれ。ちなみに、前者だったら、ぶっ飛ばす」

「……ぶっ飛ばされるのは嫌なので、後者にします」

「なら、早くしろよー」

律先輩は手を振りながら、外に出ます。

「まったく、あいつらは……。それにしても、余裕ね。もう、1匹、負けているのに」

「私はポケモンを悪用するような連中には負けません。それに……」

「ニュラ!」

壁にめり込んだ、ニューラは立ち上がり、フィールドに戻ります。

「私のニューラはまだ、負けていません」

「……上等よ!!」

「やれやれだな」

私は10匹以上のニドキングが私を取り囲むのを見る。

「もっと、他にポケモンはいないのかね」

さて、梓に格好つけたのはいいが、この数どうしようかね。正直、どうしようもないが。

「この数、相手にどう戦う?」

「まあ、やれるだけやるしかないか」

「お困りのようだな。貧乳デコ娘」

「だ、誰だ!」

「……うるせー。今日はジム戦じゃねーから、私に心理戦を仕掛けてどうするんだ」

私は突然の来訪者……カツラさんに話しかける。

「もっと、命を大事にしようぜ。この戦いの後はカツラさんだからな」

「すまんすまん。怒らないでくれ」

「カツラだと!?」

「慌てるな。あいつらが出た後、ポケモンセンターは破壊したはずだ。回復されるようなことはない」

「破壊した!?ジョーイさんとかはどうしたんだ!」

「今頃はご奉仕で忙しいんじゃないか。くっくっくっ」

「……お前ら!!」

「まあまあ、落ち着くんじゃ。ところで、そのジョーイというのはあの人のことかな?」

カツラさんが指差す方にはジョーイさんやポケモンセンターに隠れていた人達がいた。

「……何だと」

「実はさっき、ポケモンセンターを襲撃してきたよわっちい集団を倒してきたんじゃ。あれはお前さん方の仲間じゃったのかな?」

「……貴様!」

「さすがだぜ、カツラさん!さっきのは夕食の奢りで勘弁してやるぜ」

「……仕方がないのう」

「まあ、いい。ここで、カツラもろとも始末してやる」

「ふん。上等じゃ。いくぞ、ウインディ」

カツラさんはウインディを出す。

「足を引っ張るなよ、律君」

「そっちこそな、カツラさん」

私のニョロボンとカツラさんのウインディはその言葉を合図に跳躍した。


――――

「いけ、ニューラ、みだれひっかき!」
「バタフリー、かぜおこしで、接近させないで!」
ニューラは接近しようとするも、バタフリーはその羽で、激しい風を起こし、接近を防ぎます。このバタフリーは……強い!
「ならば……ニューラ、戻って」
私はニューラを一旦、ボールに戻します。

梓 ニューラ 

和 バタフリー

「来て下さい、イーブイ!」
「ブイ♪」
「イーブイ……!?」

梓 ニューラ イーブイ

和 バタフリー

私がイーブイを出すと、和さんは表情を歪めます。
「どうしたんですか?」

「……一つ、いいことを教えてあげるわ。そのイーブイの力は私が宿したのよ。たくさんの実験でね」

「!?」

「(本当はミュウツーのための過程だけどね)今よ、バタフリー、むしのさざめき!」

「ブイ~」

和さんの言葉で、一瞬の隙をつかれ、再び、弾丸のような勢いで、私の横を通過し、壁に激突します。

「イーブイ!」

「油断はいけないわよ」

「くっ」

バタフリー自体は強いポケモンでは決してない。だけど、現実問題、私はバタフリーに苦戦している。むしろ、追い詰められている。やっぱり、この人はすごい。

「だけど、私のイーブイは負けません!」

「……なら、来なさい。私が創ったイーブイで」

「……イーブイ、かみな……」

「やっぱり、いしを使うのね。私の実験も無駄じゃなかったでしょ」

「なっ……!?」

「そうよね。所詮、ポケモンは戦うための道具。便利な方がいいでしょ」

「ち、違います!ポケモンは道具じゃありません!」

「でも、自由に進化する能力は便利でしょ?実際、私が創った人工的な力をあなたは利用している。今もね」

「……」

「それにその能力は体に負荷がかかるのよ。本当に仲間として扱ってるなら、使わないわよね、その力」

「……」

私はかみなりのいしを当てようとした手を下げる。

「あら、進化させないの?サンダースに進化させれば、有利に戦えるわよ」

「……くっ」

「来ないの?なら、こっちから、いくわよ。バタフリー、もう一度、むしのさざめき!」

バタフリーは羽の振動から、超音波を発生させ、イーブイに攻撃します。

「……ブイ!」

イーブイの体が光り輝きます。まさか、これはシオンタウンでロケット団のマコトさんと戦っていた時に見せた……。

「駄目です、それをするのは!」

「ブイ!」

バタフリーの攻撃を光り輝きつつ、かわす。そして、光がなくなり、サンダースの姿が。

「な!まさか、いしを使わずに進化を……」

「あずにゃん、今がチャンスだよ」

「でも……」


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最終更新:2011年09月21日 01:11