「ここで躊躇したら、それこそ、ブイ太に申し訳ないよ!」
「……そうですね。サンダース、十万ボルト!」
サンダースの電撃がバタフリーに命中します。
「フリーー」
「バタフリー!」
「サンダース、こうそくいどうで、相手に接近してください!」
「ダース」
サンダースは体が痺れている、バタフリーに一瞬で接近します。そして、再び、強力な電撃を浴びせる技、十万ボルトをバタフリーに浴びせます。
「……フリ」
バタフリーはそのまま、気絶してしまいました。
「やりました、サンダース」
「……ダース」
サンダースの体が光り、イーブイに戻り、倒れました。
「あ、ブイ太」
「やっぱり、体の負担が……」
「それでも、あずにゃんのために一生懸命頑張ったんだよ。それは褒めてあげなきゃ」
「……ですね」
梓 ニューラ イーブイ ひん死
和 バタフリー ひん死
「やるじゃない」
「別に褒められても、嬉しくないです」
「素直に人の好意は受け取りなさい」
「ふん。その余裕も今のうちです!来てください、ニューラ!」
「……一つ、いいことを教えてあげるわ」
「?」
「さっきのバタフリーは私の手持ちでも一番弱いのよ。そのバタフリーに勝てないニューラじゃ勝てないわよ」
「……御託はいいです。サッサと、次のポケモンを出して下さい」
「では……来なさい、ベトベトン!!」
「ベトベトン!?」
梓 ニューラ イーブイ ひん死
和 バタフリー ひん死 ベトベトン
また、めずらしいポケモンを。
「あまり、舐めないほうがいいわよ。ベトベトン、ダストシュート!」
ベトベトンは汚いゴミのようなヘドロをニューラに投げつけます。
「ニューラ、かわして、こおりのつぶて!」
ニューラはそれをさらりとかわし、氷の塊を一瞬でつくり、ベトベトンに投げつけます。
「よし!いいですよ、ニューラ」
「そんな攻撃が通るとでも思ってるの?」
「!?」
「ベトベトン、かえんほうしゃ!」
ベトベトンの口から炎がでて、氷の塊が溶かされます。
「なら、ニューラ、メタルクロー!」
ニューラは身軽に跳ねながら、ベトベトンに接近し、自分の硬いツメで切り裂きにいきます。
「よし!これなら……」
「ベトベトン、かたくなる」
「ベト」
カキーン
ニューラの硬いツメが硬くなった、ベトベトンの体にはじかれます。
「ベト」
ツメをはじかれ、驚いている、ニューラの一瞬の隙を突き、ベトベトンは口から炎を発射してニューラはその炎を浴び、ダウンしました。
「ニューラ!」
梓 ニューラ ひん死 イーブイ ひん死
和 バタフリー ひん死 ベトベトン
「あなた、本当にポケモンマスターを目指しているの?それにしては弱いわね」
「くっ……」
悔しいですけど、この人は強いです。例えるなら、澪先輩くらいの実力です。今の私では勝てないかもしれません。でも、勝たないと、外で1
人で頑張っている律先輩が……。
「あずにゃん、あずにゃん。あの人、めちゃくちゃ強いね」
「……そうですね」
私は自分の手持ちのポケモンを見る。……駄目だ、どれも、和さんに勝てる気がしない。
「あずにゃん、あずにゃん」
「今度は何ですか?」
「ニコー」
「はい?」
「だから、ニコー」
「意味が分かりません」
「笑って、ってことだよ」
「余計に分かりません」
「泣きそうだよ、あずにゃん」
「うっ……」
「もっと、楽しそうにしなよ。ポケモンバトルっていうのは、楽しいものだよ。だから、楽しそうにしなきゃ」
「楽しそうに……」
「それに、こんなに強い人と戦える機会なんて、滅多にないんだしね。負けたら、負けたらでその時だよ。まあ、あずにゃんには私がいるから、負けないけど」
「……ゆい先輩。そうですね!たしかにこんなに強い人は澪先輩以来です。つまり、この人に勝てば……」
「澪ちゃんに近づけるね!私にとっては複雑だけど!」
「そうと決まれば、次のポケモンを出さなくちゃです!」
「あずにゃんが元気になってよかった。ものすごく、複雑だけど!」
「……ポケモンバトルは楽しいものか」
回想
『和ちゃんはピカチュウを進化させないの?』
『可愛いからだよね、和ちゃん』
『違うわよ、唯。憂、どうして?』
『だって、進化させた方が強いから。……和ちゃんはポケモンマスターを目指してるんでしょ?なら、強い方が……』
『そうだけど、こっちの方が面白いでしょ?』
『面白い?』
『皆、強いポケモンを使ってくるのをあまり使わないポケモンで倒すのが』
『だから、和ちゃんはマイナーなのを使ってるんだね!』
『そうよ』
『和ちゃんはすごいなー』
『ありがと』
『憂は和ちゃんが好きだからねー』
『お、お姉ちゃん!』
あの頃は楽しかったな。……・何を考えてるんだ、私は。今は目の前のバトルに集中しなくちゃいけないのに。
「さて、次のポケモンはこれにします!来てください、カイリュー!」
「……カイリューね。なら、戻って、ベトベトン。来て、パルシェン」
梓 ニューラ ひん死 イーブイ ひん死 カイリュー
和 バタフリー ひん死 ベトベトン パルシェン
「カイリュー、ドラゴンダイブ!」
カイリューは相手を威圧しながら、体当たりを仕掛けます。
「パルシェン、からにこもる!」
パルシェンは殻を閉じ、攻撃に備えます。
ガッシーン
カイリューの攻撃はパルシェンによって受け止められます。
「カイリューの攻撃が……」
「パルシェンの防御力を舐めない方がいいわよ。パルシェン、れいとうビーム」
「リューーー」
カイリューに冷気のビームが命中し、カイリューは苦痛の表情を浮かべます。
「カイリューは強力なポケモンよ。でも、そんなカイリューにも弱点はある」
「くっ」
こおりタイプの技はドラゴンタイプとひこうタイプのカイリューにはまさに天敵といっていいほどの弱点です。やっぱり、この人は強いです
ね。こんなに強い人と戦えるなんて……。
「……フフ」
「なにがおかしいのかしら?それとも、絶望で気でも狂ったのかしら?」
「いえ。……こんなに強い人がロケット団にもいたなんて、とびっくりしているだけです」
「それは光栄ね」
「でも、私は負けません!カイリュー、パルシェンを掴んで、十万ボルト!」
カイリューはれいとうビームを受けつつも、パルシェンの体を掴みあげます。そして、体から、電気を発生させ、パルシェンに浴びせます。
「どういうつもり?」
「あなたのパルシェンのれいとうビームでカイリューがやられるか、カイリューの十万ボルトでパルシェンが潰れるかの我慢比べですよ」
お互いの攻撃を互いに受け続けるという状況がしばらく続きます。そして、……
「シェン」
バタンとパルシェンが倒れました。
「パルシェン!」
「やりました、カイリュー」
「……リュー」
その後で、カイリューもバタンと倒れました。
「あ、カイリュー!」
「……引き分けね」
和さんはパルシェンをボールに戻しつつ、言います。
「でも、よくやりました。戻ってください、カイリュー」
梓 ニューラ ひん死 イーブイ ひん死 カイリュー ひん死
和 バタフリー ひん死 ベトベトン パルシェン ひん死
「なかなかやるわね。では、こっちはオコリザルよ」
和さんはオコリザルを出しました。
「心配しないでね。あいつらみたいな弱いオコリザルではないから」
「……でしょうね」
でてきた、オコリザルは軽く、ジャンプし、私がポケモンを出すのを待ってます。
「……出てきてください、プテラ!」
それに対し、私はプテラを出します。
梓 ニューラ ひん死 イーブイ ひん死 カイリュー ひん死 プテラ
和 バタフリー ひん死 ベトベトン パルシェン ひん死 オコリザル
「プテラね。でも、私のオコリザルの前では無力よ」
「やってみなければ、分かりません!プテラ、すてみタックル!」
プテラは勢いよく、オコリザルに突進していきます。
「よし!今度こそ……」
「それはどうかしら?」
プテラがオコリザルに激突する瞬間、その姿が消えました。
「かげぶんしん!?」
「ふ、終わりよ」
突進してきた、プテラの横から両手をクロスさせ、攻撃を仕掛けます。
「テラ!」
その攻撃を受け、プテラは壁まで飛ばされ激突し、壁にめり込みます。
「プテラ!」
「所詮、あなたはそのチビポケモンが強かっただけのトレーナーでしょ?早く、そのポケモンを出して、サッサと負けた方が、あなたのポケモンも傷つかずにすむでしょ?」
「どういう意味ですか。ゆい先輩を倒しても、私の負けじゃないですよ」
「いいえ、あなたの負けよ。その子を倒せば、あなたは精神的ショックで何もできないだろうから」
「えへへ~。それだけ、あずにゃんにとって、私の存在が大きいってことだよね」
「別に私は……」
「それに、他のポケモンじゃ、私の相手にならないでしょ」
「くっ……」
言い返せない自分が辛いです。
「プテラ!」
プテラは壁から脱出し、飛び立ちます。
「やるじゃない。戻って、オコリザル。来なさい、ピジョット!」
和さんはオコリザルをボールに戻し、ピジョットを出します。
梓 ニューラ ひん死 イーブイ ひん死 カイリュー ひん死 プテラ
和 バタフリー ひん死 ベトベトン パルシェン ひん死 オコリザル ピジョット
「ピジョットですか」
「空中戦でも私のほうが上だということを見せてあげるわ」
「……」
「どうしたのかしら?」
「いえ。……随分、楽しそうだなって」
「は?」
「冷静に見てみると、和さんは私とのバトルをとても、楽しそうにしてるなって」
「……別に私は」
「何で、ロケット団なんかに。あなたほどのトレーナーなら、もっと、別な道も……」
「うるさい!!」
突如、和さんは大きな声を上げてます。
「何も知らないくせに……」
「す、すいません」
和・回想
カントー出発・一週間前
『ねえ、和ちゃん。なにか、悩んでいるの?』
『え?どうして?』
『だって、何か考えてるような顔をしてたから』
『別にないわ』
『私じゃ、力になれないけど相談に乗るよ』
『だから、何もないわよ。憂は私よりも、唯の心配をしなさいよ。普段から、ボーっとしてるんだし』
『ははは。お姉ちゃんのことも心配だけど、今は和ちゃんの方が心配だよ』
『私は何も問題ないわ』
『でも……』
『うるさい!』
『ビクッ』
『何も知らないくせに……』
『ご、ごめんね。怒らないでよ』
『……あなたには唯がいるわ。唯を大切にしてればいいの』
『お、お姉ちゃんも大切だけど、それと同じくらい、和ちゃんのことも心配だよ。だって、私は……』
『もう、それ以上、しゃべらなくていいわ』
『でも、和ちゃんはもう、カントーに行くんだし、せめて、私の気持ちくらい……』
『……憂だけには教えてあげるわ。私はロケット団に入りにカントーに行くの』
『……え、どうして?』
『どうして?別に理由はないわ』
『もしかして、家の借金のためとか……』
『……』
『そうなの?そうだよね。和ちゃんはポケモンを悪巧みに利用なんかできないよね』
『……いろいろなポケモンを実験できるからよ』
『へ?』
『私も科学者の娘だからね。いろいろなポケモンを自由に実験できる、ロケット団に入るの』
『そ、そんな……』
『だから、私のことは忘れなさい』
私は席を立つ。
『……嘘だよね、和ちゃん』
憂の泣きそうな声を聞きながら、その場を去っていく。
今のやり取りで昔のことを思い出してしまった。まったく、なんて日よ。それにしても、私は憂を傷つけ、そして、今までたくさんのポケモンを傷つけてきたんだ。そんな、私にポケモンバトルを楽しむ権利なんかないんだ。
梓
「……いいわ。ごめんなさい、大きな声出して」
何かを考えてた、和さんは言います。
「いえ。……って、これ、敵とのやり取りじゃないですね」
「……そうね」
「全力でいきますよ、和さん」
「受けてたつわ」
「プテラ、アイアンヘッド!」
「ピジョット、ぼうふうで接近を封じなさい!」
プテラは接近し、鋼のように固い頭をぶつけようとするも、ピジョットの発生させた、強烈な風をプテラの周りに包み込むように発生させ、動きが封じられます。
「頑張れ、頑張れ、テラ太!」
ゆい先輩も声を大きく出して、応援します。
「プテラ、その攻撃を気にせずにこうそくいどうで突破してください」
プテラはその素早い飛行で、その風を突破し、ピジョットに鋼のように固い頭をぶつける、アイアンヘッドをピジョットにぶつけます。
「ピジョー」
「今です、かみなりのキバ!」
プテラはそのままの勢いで、電気がたまった牙でピジョットに噛み付きます。
「ピギャー」
ここまではほぼ順調。でも、この後、和さんはどんな戦術で返してくるのか、と思って、和さんを見ると、
「……」
何かを考えているかのように下を向き、うつむいています。上空ではそのまま、ピジョットが気絶し、落下しました。
「……あ。戻りなさい、ピジョット」
「どうしたんですか、和さん。ボーっとして」
「きっと、お昼寝の時間なんだよ」
「ゆい先輩じゃないんですから」
「……ねえ、今まで、たくさんのポケモンを犠牲にしてきた、私にバトルを楽しむ権利ってあるかしら?」
突然、和さんがそんなことを言い出しました。
「……」
私が答えあぐねていると
「何でもないわ。変なこと言って、ごめんな……」
「あるよ」
その言葉をゆい先輩が遮る。
最終更新:2011年09月21日 01:12